気心しれた仲間とのガチすぎる冒険
特集“ファイナルファンタジーXI ~15年目のヴァナ・ディール”の第3回は、ゲームの思い出を彩るサウンドについて。最終章“ヴァナ・ディールの星唄”(以下、“星唄”)のエンディング曲『ヴァナ・ディールの星唄 -Rhapsodies of Vana'diel』でメインボーカルを担当し、ゲームの熱心なプレイヤーでもある歌手RiRiKAに話を聞いた。
ツインボーカルユニット、ファンタスマゴリックのメンバー。作曲、舞台出演など、マルチにこなす。
──まずは、RiRiKAさんと『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)の関わりからお聞かせください。2007年から『FFXI』のプレイを始められて、いまも続けているそうですね。
RiRiKA もともとゲームが好きで、ある日、舞台の仲間から『FFXI』に誘われたんです。2007年は『アルタナの神兵』が出た年ですし、冒険者としてはかなり後発にはなりますね。最近は忙しくてほとんどログインできてないのですが、時間があれば競売所のチェックとフレンドたちのお手伝いをしている感じです。
──最初はどんな感じでプレイされていたのですか?
RiRiKA 誘ってくれた仲間が「レベル75のジョブを3つは作れ」といきなり言うんですよ。当の本人は、レベル30制限だったプロミヴォンでみんなに迷惑をかけすぎて、ひとりで泣いたりしていましたね。でも仲間が本当によくしてくれて、「『プロマシアの呪縛』のミッションに行ってこーい」とか、ちょっとスパルタ気味でしたが、濃密な冒険者生活を送れました。仲間も大半がリアルの知人だったので、直接電話で話しながら作戦を立てたり、私がチャットだけではプレイが追いつかないので、攻略本とノートを持ってお店などに集まって、細かい立ち回りを決めたりもしました。
──仕上がった仲間に囲まれ……(笑)。
RiRiKA そうなんですよ。「お前は歌手だから詩人をやれ」とか。「私、だまされてる?」って思ったりして(笑)。でも、シャイルマンティルのかわいさにひと目惚れして、それを自分で装備したくなったことを覚えています。
──実際のところは、RiRiKAさんの呪歌で自分たちの攻撃力を上げたかったのが狙いという疑惑が……(笑)。
RiRiKA 詩人が支援役ということを後から知ったんですよ。それでいて、「詠唱が遅い」とかみんなから文句を言われたりして(笑)。
──それで、いっそうシャイルが欲しくなり(笑)。
RiRiKA そうです(笑)。どういうわけか、私はヴァナ・ディール内でよくモテて、知らない方から「素材をあげるよ」とか「合成してあげようか?」なんてお誘いもあったんですけど、そこはテレポ屋をしながら400万ギルを自力で稼ぎました。
──歌の詠唱時間を短縮するだけなら、イギトゴムレフという比較的入手が容易な装備もありましたけど、そこはシャイルなんですね。
RiRiKA そこだけは絶対に譲れなくて……。シャイルを着て詠唱時間が短くなったときの喜びは最高でしたね。
──ガチだ……(笑)。
RiRiKA オンラインゲーム自体初めてでしたので、言われるがままにプレイしていましたね。私自身、コツコツと取り組むことが大好きなので、一時期は24時間ログインしっぱなしでした。やばいやばい、トゥー・リアに行かないと、みたいな状態で(笑)。ジュワユースを取るために、海蛇の岩窟に何日もこもったりしました。
泣き通しだったレコーディング
──そんな濃密な冒険を経験してきたRiRiKAさんに、“ヴァナ・ディールの星唄”(以下、“星唄”)のエンディングテーマの話が来るわけですよね。
RiRiKA 何も知らされないままスクウェア・エニックスさんに呼ばれて、このお話をいただいて。もう言葉になりませんでしたね。まず、最終章という事実に泣いちゃって。この10年でいちばん泣きましたよ。
──“星唄”のお話はいつごろ聞いたのですか?
RiRiKA 去年の夏くらいですね。その後、いただいた曲を聴いて『ヴァナ・ディールマーチ』がモチーフだったことに号泣して。レコーディングのときも、最初のフレーズが私のソロパートなのですが、すばらしい歌詞に感動して歌えなくなってしまったんです。気持ちを込めて歌いたいのに、そう思えば思うほど高まってしまうんですよね。
──レコーディングは泣き通しだったとうかがっています。
RiRiKA 私、冒頭の歌詞がいちばん好きなんです。もう、最初から気持ちが溢れちゃって……。とくに、“家族となり”という部分では、仲間たちのキャラクターが浮かびました。毎週日曜日の深夜1時から5時まで活動していたトゥー・リアLSで、みんなの白虎佩楯を取るためにがんばっていたこととか、寝落ちしたところを電話で起こされたりとか、そんな当時のことを思い浮かべていました。みんなとは多くの時間を共有してきたので、まさに家族なんです。
──水田さん(水田直志氏。『FFXI』のコンポーザー)も、その泣きっぷりに驚いたのでは?(笑)
RiRiKA いったん落ち着きましょう、と気を遣っていただいて。レコーディングは涙をこらえるのにたいへんでした。
──レコーディング中、水田さんから具体的な指示はあったのでしょうか?
RiRiKA 水田さんはとてもやさしい方なので、「好きなようにやってくださいね」と言ってくださいました。ただ1点、「これで『FFXI』が終わるのではなく、ここから始まる、続いていくんだという希望を込めて歌ってほしい」とアドバイスをいただきました。
──『ヴァナ・ディールマーチ』のメロディーって、『FFXI』を知らない人にとっては何の感情も湧かないかもしれませんが、冒険者にとっては特別ですよね。
RiRiKA そうなんですよね。だから、責任重大だなって思いました。皆さんが、どれだけこの曲を大切に想ってきたか。知らないうちに宝物のようになっている曲なので、込められるだけの想いを込めて歌いました。
──曲の後半は冒険者によるコーラスになっていますが、レコーディングのときにこの仕掛けはご存知だったのでしょうか?
RiRiKA はい、知っていました。ただ、レコーディングのときは自分のパートだけだったので、仕上がったものを聴いたときは、これでもかってくらい泣きました。私、けっこう涙もろくはあるんですけど、こんなに泣いたことはないってくらい涙が溢れましたね。
──RiRiKAさんを『FFXI』に誘った仲間たちも、まさか“俺たちの吟遊詩人”が“星唄”のエンディングテーマを歌うとは想像もしていなかったでしょうね(笑)。
RiRiKA そうですよね。いまも変わらない仲間たちが、今回のエンディングテーマを喜んでくれている。これは、本当に幸せなことだと思います。
──気持ちを込めた曲ですから、多くの人に聴いてほしいですね。
RiRiKA いつ戻ってきてもヴァナ・ディールは変わらずそこにあって、ちょっと散歩すればいろいろな思い出が蘇るはずです。休止中の方は、ぜひ“星唄”をプレイしてほしいですね。
ファミ通.comでは3月22日から4日連続で特集企画“ファイナルファンタジーXI ~15年目のヴァナ・ディール”をお届けしている。
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