デジタルの利便性を残しつつ、究極に直感的な3Dモデル作りを実現
先日もVRドキュメンタリーの話をお伝えしたが、VRの可能性はビデオゲームのためだけにあるのではない。平面のスクリーンにあったもの、すなわち情報、コミュニケーション、映像作品、教育、アート……すべてがVRで新たな価値を得る可能性があるのだ。
VRヘッドマウントディスプレイ“Oculus Rift”を展開するOculus VRが本日ロサンゼルスで発表したのは“Oculus Medium”。来年発売されるOculus Riftと、その専用VRコントローラー“Oculus Touch”を使って直感的に3Dモデルを作れるVRスカルプティングツールだ。Oculus Touchの出荷時(Rift製品版とは別売り)に同梱されるという。
粘土をこねるようにして3Dモデルを作る“スカルプティング”は、アーティストが直感的に3Dモデルを作れることから、3DCG制作では欠かせない分野となっている。あなたが普段ビデオゲームやCG映画で目にする3Dモデルも、原型はZBrushなどのスカルプティングツールで作られていることが多いはずだ。
“Oculus Medium”では、Riftを通じて自分の目を、VR向けのモーションコントローラーであるTouchを通じて自分の手をVR空間に投入して、このスカルプティング作業を行うことができる。恐らくZBrushのようなプロ用ツールに求められる機能は足りないだろうが、VR空間内で自分の目と手を使った直感的作業ができるのは大きなメリット。少なくともホビー用途としては相当に面白い体験になるだろう。
VRをアート制作ツールの場として利用するプログラムとしてはペイントツールの『Tilt Brush』などがあり、デジタルの利便性を活かしたまま眼前に自分の作品が「あたかもそこに存在するかのように」出来上がっていくのは、圧倒的に新たな芸術的感覚で、創作意欲を刺激する(Tilt Brushの試用レポートについては本誌で以前掲載している)。
Oculus VRを率いるパルマー・ラッキー氏やジョン・カーマック氏といった現代の天才が見ているのは、こうしたビデオゲームをプレイしない人にもVRが意味のあるものとなる世界であり、Facebookが20億ドルという巨額の出資によってOculus VRを傘下に収めたのも、その可能性を見込んでのこと。いよいよ来年に迫ってきているVRの本格的普及開始によりどんな新たな行動、そして感覚が誕生するのか、期待して待ちたい。