フランスでのインタビューを補足する、開幕直前インタビュー

 『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)初の拡張パッケージ、『蒼天のイシュガルド』は、6月19日にアーリーアクセス、23日にサービス開始を迎える。世界中のファンがその瞬間を待ち望むなか、吉田直樹プロデューサー兼ディレクターにインタビューをする機会を得た。このインタビューは、去る5月中旬にフランスの都市ナントの郊外の城にて行われたものを補足する内容となっている。今回は“蒼天編”メインクエストの見どころや、レベル60到達後に楽しめるアイテムレベル強化の流れなど、開幕に向けて知っておきたいポイントを中心に幅広く語ってもらったのだ。件のインタビュー記事と、続いて公開されたバトルリポートと合わせて読むことで、必ずや『蒼天のイシュガルド』への理解が深まるだろう。(2015年5月26日収録)

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『FFXIV: 蒼天のイシュガルド』サービス開始直前、プロデューサー兼ディレクター吉田直樹氏に聞けるだけ聞く!_01
▲フランスでのメディアツアーから帰国後、息つく暇もなく再びインタビューに応じていただいた。ちなみに屋内なので雨は降らない。

“蒼天編”にも古代アラグ帝国が関係? ウルダハ騒乱の物語も決着!

──メインテーマ“Dragonsong”のムービーとダンジョンのウォークスルー映像が公開されて以降、シナリオ方面への注目がかなり高まってきましたね。

吉田直樹氏(以下、吉田) プレイヤーの方がダンジョンウォークスルー動画のワンシーンでカプセルに入ったイクサル族を見つけていらして、すごいなと思いました。

──『蒼天のイシュガルド』のシナリオに、古代アラグ帝国はどれくらい絡んでくるのですか?

吉田 うーん……。重要なポイントなので、いまはお答えできません(笑)。

──存在感でいえば、ガレマール帝国よりも大きめになるのでしょうか?

吉田 ストーリー上で大きく語られるのは古代アラグ帝国ではなく、どちらかと言えばガレマール帝国のほうです。彼らが絡んでくることで事態が複雑になり、「何をしてくれるんだ!」と言うところはあります。詳しくは秘密ですが、最終的にすべての話が向かっていく先に、古代アラグ帝国の影が見えたりはします。

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▲先日公開されたダンジョンのウォークスルー映像の中に、古代アラグ帝国を連想させるシーンがいくつか登場した。

──そうしたアラグの影の部分が、“蒼天編”のメインクエストで垣間見られるわけですね。

吉田 むしろ“新生編”のストーリーよりも明確に見えるかもしれません。大迷宮バハムートにずっと通ってくださった方は「古代アラグ帝国はもうお腹いっぱい」と言われるかもしれませんが、何しろ彼らはかつてハイデリンのほぼ全域を支配していた大帝国なので、支配下に収まらなかった土地は少なくともエオルゼアにはないのです。エオルゼアの歴史をきちんと語るうえで、古代アラグ帝国は絶対に避けて通れないということです。

──アラグの遺構は、経年で消滅するとはとても思えない規模ですしね。

吉田 とはいえ、イシュガルドを旅しているあいだは、アラグらしさはまったく感じられないと思います。なぜそうなっているのかは、実際にプレイして確かめていただければと(笑)。

──カルテノー平原の地中深くに眠るオメガは、いつごろ目覚めるのでしょうか?

吉田 オメガについては、ストーリーのもっと上位のレイヤーで考えています。今回は“竜詩戦争”に焦点が当たるので、オメガについては物語中にあまり撒き散らさないようにしました。

──オメガは、言わば別格の存在なのでしょうか。

吉田 『FFXIV』開発チームの中で、オメガは『FF』シリーズのトータルキャラクターという位置付けです。“竜詩戦争”で語られる人類とドラゴン族との戦いは『FFXIV』のシナリオなのですが、オメガは『FF』シリーズを包括するぐらい大きな存在のキャラクターというイメージ。バハムートも同じく『FFXIV』の次元を飛び越えた存在であるため、単なる1エピソードではなく、影響範囲が広いと捉えていただけるとわかりやすいかもしれません。

──今回のシナリオで、オメガに関する秘密や謎がすべて解明されるわけではないと。

吉田 単純に『蒼天のイシュガルド』リリース時のメインクエストにおいて、オメガのエピソードが主ではないだけで、オメガについては、まだまだこれからということになります。

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▲カルテノー平原に眠るオメガを手中に収めれば、対外的な発言力を高められる。そのために各都市は“アウトロー戦区”でいまでも三つ巴の戦いをくり広げている。

──オメガのストーリーに、砂蠍衆のロロリトが絡んだりは……。

吉田 ロロリトの真意は『蒼天のイシュガルド』の中でしっかりと描かれています。

──それは今後のパッチで明らかになるのですか?

吉田 いいえ。パッチ2.5シリーズを通じて語られた「ウルダハで起きたあの騒乱は、誰の意志によるもので、なぜそうなったのか」という一連の事実関係と、「それぞれのキャラクターが根底に持っている思惑や思想がどこにあるのか」といった心情の部分は、『蒼天のイシュガルド』開幕3.0のメインクエストですべて描かれています。メインストーリー担当の前廣(和豊氏)や、世界設定の織田(万里氏)、コージ(マイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏)とも徹底した部分ですので、謎は残らないようにしたつもりです。

──ちなみに、今回のメインクエストのボリュームは相当あるんですよね?

吉田 本当に長いです。チェック作業が大変でした(苦笑)。

新規プレイヤーも短期間で『蒼天のイシュガルド』に追いつける

──『蒼天のイシュガルド』の発売を機に、既存のエリアやコンテンツに対して、初心者や復帰者を念頭に置いた調整や緩和は行われるのでしょうか。

吉田 いちばん大きな変更点は、パッチ2.1から2.55までに公開されたメインクエストを進めるだけで、アイテムレベル110までの装備が手に入るようになる点です。メインクエストに関係のないコンテンツをすべてスルーして一連のシナリオを進めるだけで、装備一式が揃うようになります。

──装備収集を大幅にショートカットして、すぐにイシュガルドの大審門を越えられるわけですね。

吉田 はい。先輩たちといっしょに『蒼天のイシュガルド』側の要素を楽しんでから、腕試しだったり、ミラージュプリズム用の装備を求めて『新生エオルゼア』側のコンテンツに挑んでいただいたりしてもまったく構いません。

──メインクエストで得られるアイテムレベル110までの装備というのは、新しく追加される武具でしょうか。

吉田 最終的に、既存の強化された戦記装備がフルセットで揃うようになっています。ロールに応じて装備のタイプが選べるので、コンプリート時の報酬画面でふさわしいものを取得していただければと思います。

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▲アイテムレベル110の戦記装備一式が、メインクエストの報酬で手に入るようになる。『蒼天のイシュガルド』発売以降に、新たに『FFXIV』のプレイを開始する場合には、これまで以上にサクサクとゲームが進められるようだ。

──パッチ2.1以前までのメインクエストについてはどうでしょう?

吉田 レベル50以下のメインクエストを通じて得られる経験値を、おおよそ倍に増やしてあります。F.A.T.E.やギルドリーヴに寄り道しなくても、導線上に現れるダンジョンを攻略していくだけで、サクサクとレベルが上がります。先ほどもお話をしましたが、一連の依頼をこなすことで高性能な装備を大量にお渡しするようにもなっているので、まっすぐにゲームが進められます。これは「ほかのコンテンツをプレイしなくていい」ということではなく、「さらに大きく間口を広げたので、自由に選んでください」という思想に基づいての調整です。

──『蒼天のイシュガルド』から始めたプレイヤーが短期間で、先輩プレイヤーに追いつき、いっしょにプレイできる日もそう遠くなさそうですね。メインクエスト以外のコンテンツでも、得られる経験値は増加しているのですか?

吉田 2ジョブ目以降の育成時に得られるアーマリーボーナスを、現在の1.5倍から2倍に引き上げています。

──おお。それはレベル50以降も適用されるのでしょうか。

吉田 アーマリーボーナスは、レベル50に到達した時点でもとの1.5倍に戻ります。

──なるほど。つぎのレベルまでに要する経験値の量も引き下げられたりは?

吉田 経験値はたくさんのコンテンツで払い出されているため、つぎのレベルに到達するまでの経験値、つまりネクストEXPを変えてしまうと、想定していないバランスの破綻を招きかねません。ですので、制御可能な範囲のコンテンツ側の経験値排出量を調整しています。

──ギルの排出量については。

吉田 これから『FFXIV』を始める方のために、“新生編”のメインクエストを終えた時点で50万ギル程度貯まるように、”新生編”側のギル排出量を設計し直しました。MMORPGは運営が続く過程で、システムからのギル排出がある以上、ジワジワとインフレーションしていきます。レベル50に到達したあと、ある程度は「ギルに余裕があるな」と思ってもらえないと、ギルの使い控えが出てしまうので、その点を考慮してレベル50到達時の合計ギル量を増やした、ということです。おそらく所持金に余裕が出てくるはずなので、ミラージュプリズムなどにも目を向けていただきたいと思っています。

──そうした一連の緩和は、ジョブクエストにも及ぶのでしょうか。

吉田 既存の報酬に加えて、神話装備も手に入るようにしました。ジョブクエストを通じてアイテムレベル90の装備が徐々に揃い、メインシナリオ側でアクセサリや武器が揃っていきます。パッチ2.2メインクエスト、パッチ2.3メインクエスト……と、段階的にアイテムレベルが上がり、パッチ2.55のシナリオまで終えると、自身の平均アイテムレベルが110に。その状態で『蒼天のイシュガルド』のコンテンツへ突入すると、そのまま成長を続けられるようになっています。ジョブクエストと、メインクエストに関連して登場する真蛮神討滅戦・ダンジョンを攻略するだけで、新エリアを冒険するための最低限の準備が整うことになります。

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▲メインクエストの過程で現れるバトルをプレイすることで、ジョブごとの最低限の立ち回りも理解できる作りだ。

──たとえば超える力の強化版を導入するなど、コンテンツ側に変化はありますか?

吉田 コンテンツに調整は加えていません。なぜなら、それを行うとコンテンツバランスの崩壊やギミック上の混乱を招いてしまうからです。いわゆる「削りすぎで全滅」というパターンです。いまでもすでにあるくらいなので。

──その代わりに、少人数でコンテンツに参加できる要素を追加したのでしょうか。

吉田 少人数トライでは、レベルシンクやアイテムレベルシンクを行わずにコンテンツへ突入できるので、メインクエストを進めるためだけの目的でプレイすることも可能です。

──ものすごく便利な機能ですね。

吉田 突入前にパーティを組む必要があるのに加えて、レベル差の大きなプレイヤーどうしだと、道中のモンスターからは報酬を得られません。コンテンツをクリアしたときの経験値やギル、ボスノドロップ品はこれまでと同じです。たとえば復帰者のフレンドを3人集めてパーティを編成。少人数トライを利用して、メインクエスト関連のコンテンツを一気に最後まで突破するといったことが可能です。一方でコンテンツファインダーは、すでに初心者が最優先でマッチングされるようになっているので、最少の待ち時間でコンテンツに参加できます。