会場にはゲーム業界の重鎮がズラリ
2014年12月4日、都内・明治記念館にてFOST設立20周年記念講演会が行われた。公益財団法人 科学技術融合振興財団(foundation for the Fusion Of Science and Technology)、略称FOSTは、「シミュレーション&ゲーミングの研究など、社会や文化の文脈のなかで科学技術の融合を促進させる 研究課題に対する助成事業と、その成果を広く還元する普及啓発事業を活動の柱として」(公式サイトより)設立されたもの。ファミ通.comでも、同財団がすぐれたシミュレーション・ゲーミングの研究者に対して授与するFOST賞の授賞式の模様を、毎年お伝えしてきた(※第7回授賞式の模様、※第6回授賞式の模様、※第5回授賞式の模様、※第4回授賞式の模様、※第3回授賞式の模様、※第2回授賞式の模様)。
そんなFOSTの設立20周年を記念して企画された講演会では、公益財団法人科学技術融合振興財団 理事長 襟川陽一氏、ソニー・コンピュータエンタテインメント 取締役 SCEJAプレジデント 盛田厚氏、ディー・エヌ・エー 取締役 ファウンダー 南場智子氏、東京大学大学院 教授 馬場章氏、KADOKAWA・DWANGO 取締役 浜村 弘一(登壇順)という、そうそうたる顔ぶれが登壇し、“ゲームの未来”をテーマに、ゲームの将来像や期待像などについて語った。まずは、公益財団法人科学技術融合振興財団 理事長であり、コーエーテクモホールディングス 代表取締役社長の襟川陽一氏の講演の模様をお届けしよう。
私財を投じて設立されたFOST
襟川氏はFOST理事長であり、コーエーテクモホールディングス・代表取締役社長、そしてゼネラル・プロデューサーのシブサワ・コウという3つの立場それぞれから、ゲームの未来についての講演を行った。
まずは、FOSTの理事長としてFOST設立の経緯や意義などについての簡単な紹介から。1994年に設立されたFOSTだが、設立以来20年に渡って、襟川氏が理事長を務めている。設立の経緯は、光栄(当時)の歴史シミュレーションがヒットししていた1980年代、シミュレーションゲームが学術の部門で活用されていることを知ったという。そこで襟川氏は、1989年、シミュレーション&ゲーミング学会設立の際の発起人のひとりとなり、その財務基盤を確実なものとするため、日本学術会議会長・近藤次郎氏の協力のもと、科学と技術の融合したシミュレーション&ゲーミングの研究助成を目的としたFOSTが設立された。財団設立の基金(10億円!)は、襟川氏が個人で出資しているのだが、それは、光栄のシミュレーションゲームがヒットし、1991年に株式上場したことを受け、「社会に貢献し、還元したい」(襟川氏)という意志からだそうだ。
FOSTのおもな活動内容は、シミュレーション&ゲーミングに対する研究助成と表彰だ。おもな研究テーマとして、国際関係や都市計画、経営など多岐にわたり、国際関係ゲームは立命館大学で必修科目に採用され、経営シミュレーションゲームは、慶應大学や青山学院大学などの経営学やMBA(経営学修士)の講座で、疑似体験敵に経営を理解するための手法として用いられているそうだ。経営助成は多数の申し込みの中からFOSTの審査を経て、助成対象となる。20年間の総助成件数は529件、助成金額は3億3600万円にもなっている。また、2007年から創設されたFOST賞では、優秀な研究者・実務家などを対象に表彰を行っている。ちなみに、2013年のFOST社会貢献賞を受賞したバンダイナムコゲームスは、『ワニワニパニック』や『太鼓の達人』などのゲームを通じ、老人介護施設でのさまざまな機能回復にゲームを活用していることが評価された。
襟川氏によると、この20年間に研究助成のテーマも時代とともに変化していったという。最近では、ネットワーク、インターネット、モバイル、クラウド、AIといった技術を切り口としたテーマが増え、またシミュレーション言語やシミュレーションシステムなどの開発環境のテーマも増えてきている。2013年度の研究助成リストには、ゲーム実況や防災シミュレーションなども対象となっている。補助金リストは若手の研究者を対象にしたものだ。
「今後のシミュレーションゲームが、より豊かな社会と文化の実現に貢献できるように、研究者やその他の方々を支援していきたい」(襟川氏)と、FOSTの目指す未来を語った。