バンダイナムコゲームスの代表として石川祝男社長が登場
2014年3月6日、公益財団法人科学技術融合振興財団(FOST・フォスト)は、東京・帝国ホテルにて第7回FOST賞授賞式を開催した。
FOSTは、シミュレーション・ゲーミングの研究など、科学と技術との融合を促すような研究協力に対し助成などを行うことを目的に、1994年4月に設立された団体で、コーエーテクモゲームス社長の襟川陽一氏が理事長を務めている。本団体は、研究助成金に基づいて優秀な成果を発表した研究者を対象に、毎年賞の授与を行っており、今回はFOST賞を関西大学の広瀬幸雄氏が、FOST新人賞を日立製作所の八島敬暁氏が、FOST社会貢献賞をバンダイナムコゲームスがそれぞれ受賞した。
■FOST賞
研究助成金に基づいて優秀な研究結果を発表した研究者が対象となるFOST賞は、関西大学の広瀬幸雄氏が受賞。広瀬氏の研究テーマは“ゲーミングを用いた市民参加型会議による環境計画策定合意形成と社会的受容に関する研究”。受賞理由としては、「市民参加型会議のゲーミングの形成と、市民参加型会議の社会的受容とその規定因についての社会調査を行い、社会的認知および考慮すべきことなどを考察したため」としている。
広瀬氏のコメントを簡単に要約すると、それぞれ価値観が違う人間たちがどのようにして合意にたどり着くのか、それを市民参加型のゲーミングを用いてシュミレーションしたのが今回の研究になるという。さらに広瀬氏は、先の東日本大震災の後で問題となった震災瓦礫に対してもゲーミングを用いた研究を行ったとのことで、ゲーミングの社会貢献は今後も進みそうだ。
■FOST新人賞
研究補助金に基づいて優秀な研究結果を発表した若手研究者が対象のFOST新人賞は、日立製作所の八島敬暁氏が受賞した。研究テーマは“緊急計画立案支援のための地理空間情報に基づいたシュミレーションとエージェントの意思決定の可視化”。受賞理由は、「災害時などの緊急避難計画の立案支援を目的としたシュミレーション環境の構築を行い、シュミレーション結果を可視化するためのエージェントの思考内容を可視化したため」とのこと。
なお、受賞者の八島氏は、業務の都合上残念ながら欠席となった。
■FOST社会貢献賞
ゲームの研究、開発、応用などで顕著な業績をあげた人や団体に贈られるFOST社会貢献賞はバンダイナムコゲームスが受賞。受賞理由は、「教育事業を通しゲーム業界に新たなビジネスチャンスを示し、ゲーム産業の社会的評価および社会的受容の向上に大きく貢献したため」とのこと。
授賞式では、代表としてバンダイナムコホールディングス社長の石川祝男氏が登壇。「栄誉ある賞を本当にありがとうございます。涙が出るくらい感動しています」とコメントした。
次期FOST賞審査委員長の白鳥令氏は受賞理由を説明するにあたって、「ゲーム業界の弱点のひとつとして、ゲームそのものが社会的に害悪だと思われがちであるという点が挙げられます。これまで教育機関ないし政府が、ゲームというものに対してある種の拒否反応を示してきたことは否定できません」と白鳥氏。そんな中、「ゲームをどのようにして社会に受け入れてもらうか、またどうやって社会的に貢献させるか、そういった懸案事項に真摯に向き合ったのが、バンダイナムコゲームスです」(白鳥氏)とのことだ。
引き続き白鳥氏は、バンダイナムコゲームスがどのように社会に貢献してきたかを振り返る。それによると、ナムコ(現・バンダイナムコゲームス)は1985年に福祉事業を立ち上げ、発声障害のある人向けに“トーキングエイド”という携帯型意志伝達装置を開発。そして、その技術や経験を活かしてバリアフリーエンターテインメント構想を掲げ、楽しくリハビリができる“リハビリテインメントゲーム”を開発した。たとえば、ワニをハンマーで叩いて撃退する『ワニワニパニック』、軽快な音とともに現れる蛇のターゲットを踏んで退治する『ドキドキへび退治』、いまや国民的タイトルとも言える『太鼓の達人』などがリハビリテインメントゲームとして挙げられる。いまやリハビリテインメントゲームは、さまざまな病院や介護施設に導入され、認知症に悩む人、体力の衰えた人のリハビリに使われている。
一方で、バンダイナムコゲームスは教育分野へも進出している。学校図書株式会社と共同で、授業時間以外でも開きたくなるような、おもしろい教科書の開発に着手しているという。
このように、ゲームの持っている一体感、相互コミュニケーション、娯楽性といった特性を活かした事業は、ゲーム業界に新たなビジネスチャンス、新たなビジネスの分野を提供し、ゲーム業界の社会的な受容と評価を大きく高めたものとして評価され、審査員たちの圧倒的支持を受けてバンダイナムコゲームスはFOST社会貢献賞に選ばれたとのことだ。
授賞式終了後には、襟川陽一氏からコメントをもらうことができたので、以下に紹介する。
「バンダイナムコゲームスさんのエンターテインメントゲームは非常に社会的貢献の度合いが高くて、とくに介護、医療などでその活躍が顕著だということで、今回FOST社会貢献賞を授与させていただくことになりました。バンダイナムコゲームスさんはゲームの可能性をアウトプットして形あるものとして作り上げてきました。そして、だんだんとエンターテインメントとしてのゲームが社会で認められてきています。そのことは、同じゲーム業界の人間である私にとっても、すごくうれしいことです。今回バンダイナムコゲームスさんの代表として登壇された石川祝男社長は、『ワニワニパニック』などを実際に作られたクリエイターでもありますので、エンターテインメントとして作ったものが介護や医療で役に立っていることに対しての喜びはひとしおなのではないでしょうか。
1978年に石川社長がバンダイナムコゲームスさんに入社されたとのことですが、私もちょうど1978年にコーエーを創業しましたので、私たちは同じ時代をともに歩んできたということになります。コーエーも、『信長の野望』シリーズや『三國志』シリーズを作ってきまして、歴史に興味を持ってもらえるような、歴史の勉強になるような要素を散りばめています。このように、おもしろくてちょっとためになるゲームを、我々も作っていきたいです。これからもバンダイナムコゲームスさんには新しい可能性を追求し、新しいことにチャレンジしていっていただきたいと思いますし、我々もそのような思いでゲームを作っていきたいと考えています」