大軍勢でのバトルがすごい

 2014年9月18~21日まで(18、19日はビジネスデイ)、千葉県・幕張メッセにて東京ゲームショウ 2014が開催。会期に合わせてBLUESIDEによるプレイステーション4/PC用ソフト『キングダム アンダー ファイアII』のプレゼンテーションが行われた。BLUESIDEといえば、熱心なゲームファンにとっては、Xbox 360用ソフト『ナインティナイン・ナイツ』や『キングダムアンダーファイア : サークルオブドゥーム』などの開発を手掛けた開発会社としておなじみ。韓国発の高い開発力を誇るメーカーとして存在感を放っている。そんなBLUESIDEによる最新作が『キングダム アンダー ファイアII』だ。

『キングダム アンダー ファイアII』がそのベールを脱ぐ 随所にこだわりの詰まったBLUESIDEの超大型MMORPGだ【TGS 2014】_07

 同作は、じつはけっこうな紆余曲折を経たタイトルでもある。同作の開発が発表されたのが、『キングダムアンダーファイア : サークルオブドゥーム』発売後の2008年。当初オンライン版(PC)、シングルプレイ版(Xbox 360)として構想されていた同作は、諸般の事情からPC版のみに移行。そこからプレイステーション3が追加され、さらにプレイステーション4の発売に伴い、同ハードへとシフト。いまは2015年発売を目指して開発中となっている。

 プレゼンテーションを担当してくれたのは、『キングダム アンダー ファイアII』のプロデューサー兼ディレクターを務めるBLUESIDEのサンユン・リー氏。ファミ通.comではリー氏が来日を果たすたびに取材をお願いしているが(⇒たとえばこの記事をご参照のこと)、こうして改めてお話を聞くのは、おそらく3~4年振りとなる。で、リー氏のプレゼンを聞いて実感させられるのが、『キングダム アンダー ファイアII』の圧倒的なスケール感。なかなか短文ではその魅力を伝えるのにハードルが高いが、ここではその一端を紹介していこう。と、その前に、まずは東京ゲームショウにあわせて公開された最新トレーラーを紹介しよう。それにしても、この軍勢感といったら!


 超大型MMO(多人数参加型)RPGとして開発中の『キングダム アンダー ファイアII』。同作ならではの要素として、とくにリー氏がこだわっているのが“戦略性”だ。『キングダム アンダー ファイアII』では、プレイヤーはプレイヤーキャラである“英雄”として、世界に飛び込んでいくことになるのだが、ひとりで戦う……というわけではない。“英雄”らしく、部隊を率いて戦うことになるのだ。部隊は4~5まで持つことができて、ひとつの部隊には100人まで所属されることが可能。つまり、最大500人まで配下を従えられることになる。『キングダム アンダー ファイアII』では、500人の軍勢を率いて、いかに戦うかがカギとなる。バトルにあたっては、「この部隊の配置はこうして……」とか「ここの敵にはこの部隊をぶつけて……」といったシミュレーション要素がカギを握るわけだ。

 さらに部隊には成長要素もある。最初、部隊は“募集”することで集まってくるわけだが、育成することでぐんぐん成長する(もちろん、強力になればコストもかかるわけですが……)。さらにスキルもつけることができ、独自の部隊として成長させられるのだ。さらに“士気”という要素も加味されており、部隊を鍛えて“士気”を上げることによって、戦闘力を上げられるという。

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 もちろん、「シミュレーションは苦手」という人のための措置も用意されている。アクションに注力したいという方は、シミュレーションパートはAIに任せきることも可能。部隊のAIは、“敵を探す”、“防御重視”、“英雄をサポートする”の3つのタイプに分かれており、“英雄をサポートする”を選べば、プレイヤーはアクションに専念できる。「『ナインティナイン・ナイツ』のように、ひとりで敵を蹴散らすこともできるわけです(笑)」とリー氏。一方で、「アクションは苦手」という方への対応もある。プレイヤーは“コマンダー”として、指揮に専念できるのだ。ということを考え合わせると、アクションからシミュレーションまで、幅広いゲーム性を取り込んだゲームが『キングダム アンダー ファイアII』なのだと言える。

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 現時点で、本作で公開されているプレイヤーキャラクターのクラスは3つ。魔剣士(女)、狂戦士(男)、そして銃剣士(男)だ。各クラスは相当個々の能力に特化されているようで、「ひとつのクラスを極めようと思うとけっこうたいへんかもしれません」とのこと。BLUESIDEがプレゼンテーションを行う際も、クラスごとに担当が分かれているというからも、そのことはうかがい知れる。で、こだわりが見えるのが各クラスのカスタマイズ。「カスタマイズの種類が豊富に用意されている」というのは、この手のゲームではある意味で常套句になってしまうが、BLUESIDEのすごいところは、そんな常套句をしっかりと支える技術力を持っているところ。「『キングダム アンダー ファイアII』では、各パーツごとにキャラクターをカスタマイズできるようになっていますが、ここまでリアルにできるのは、自社エンジン(BLUESIDEエンジン2)があればこそです。ほかの主要ゲームエンジンでは、ここまではカスタマイズできないのです」(リー氏)とのこと。自社エンジンを作り上げてしまうあたり、さすがは技術にこだわりを持つBLUESIDEといったところだが、その恩恵を受けて、カスタマイズもほかタイトルにはない魅力と言えそうだ。なお、各クラスの性別は固定されている。これはキャラクターのアクション表現に特化したため。男女の性別が異なれば、スキルも異なるし、攻撃のアニメーション(動き)も異なるべしというのがBLUESIDEの流儀で、異なる性別のクラスはしっかりと作る予定だという。こんなところにもBLUESIDEのこだわりがうかがえる。クラスの種類も現時点では10タイプほど作成しており、徐々に公開予定。近々3タイプを解禁する予定なのだとか……。

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 ちなみに、現在最新のBLUESIDEエンジンはバージョン3で、秘密のプロジェクトで駆使されているという……。今回の取材のテーマである『キングダム アンダー ファイアII』とは別の話になるので、ここではあまり深く追求しなかったが、いずれ何らかの形で世に出てくることになるのであろう……。

 さらにプレゼンで深く言及されていたのが、コントローラーによる操作へのこだわり。『キングダム アンダー ファイアII』ではPC版をベースに開発して、それをプレイステーション4に移し替えるという作業をしている。そこでネックになるのが、操作方法の移し替え。具体的にはキーボード&マウスによる操作からコントローラーによる操作への移植だ。聞くところによると、『キングダム アンダー ファイアII』ではけっこう複雑な操作方法が要求されるという。それをコントローラーに移し替えるにはさぞかし苦労が伴ったものと思われるが、「慣れるまでが少したいへんかもしれませんが、最終的にはコントローラーのほうが素早く操作できるようになりますよ」(リー氏)とのこと。コントローラーによる操作性の向上には、プレイステーション4のタッチパッドが大きく寄与したようだ。

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▲レイド戦では5~8人のプレイヤーと協力して戦う。8人が500人の部隊を持ち寄るとして、その数4000人。実際はもっと多人数でのバトルが展開されるという。

 さて、気になる本作の開発状況については、ベースとなるPC版は、ほぼ最初から最後まで動く状態となっており、あとはプレイステーション4版への移植作業が待っているという。完成度を聞いてみたところ、「60~70%です」とのこと。ひと通りできあがっていて完成度が60~70%とは、意外と低いようにも思われるが、これからはチューニングが待っているのだという。「瞬間瞬間で快適なゲームプレイを提供できるように心掛けています」というから、ゲームバランスやレスポンスなどの操作性に、ぎりぎりまでこだわり抜くのだろう。『キングダム アンダー ファイアII』は、ただいまフィリピンやマレーシアでPC版のクローズドベータテストを実施中。12月から2015年1月くらいまでには、韓国や中国などでオープンベータを開始する予定だという(韓国や中国ではオープンベータは、サービス開始とほぼ同義らしいので、このタイミングをもってサービス開始となる)。で、リー氏によると、日本ではやはりプレイステーション版を優先したいとのこと。となると、やっぱりプレイステーション4版の発売時期が気になるところだが、日本を始め、韓国、中国などアジア地域先行で、2015年6月のサービス開始を考えているという。

 話を聞くだけで、ますますもってスケールの大きな『キングダム アンダー ファイアII』だが、最後にリー氏がひとこともらした言葉に少し驚かされた。「本作は基本プレイ無料で提供するんです」というのだ。5年以上の月日をかけて開発された『キングダム アンダー ファイアII』。「本作のスケールは『キングダムアンダーファイア : サークルオブドゥーム』の10倍、開発費も10倍です(笑)」と、プレゼンの途中でリー氏は冗談めかして語っていたが、想像するに数十億円は下らないと思われる。これだけの大作ともなれば、パッケージ版でリリースされるものと勝手に思い込んでいたが……。「それはびっくりしました」と正直に告げると、「それだけタイトルに自信があるからです!」(リー氏)ときっぱり。続けて、「将来的にはすべてのゲームが基本プレイ無料になると思っています」というから、先を見据えての戦略なのであろう。本作は、基本プレイ無料版を配信する一方で、さまざまなプレミアム特典をつけたパッケージ版も販売する予定とのことだ。

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 正直言って、プレゼンを聞いただけでも相当歯ごたえ満点と思われる本作は、おそらく初心者には敷居の高そうな1作。だが、熱心なゲームファンには間違いなく満足してもらえるに違いないであろう意欲作だ。