組み合わせの妙を楽しむのが『Evolve(エボルブ)』の奥深さ
2014年8月13日(水)~17日(日)の5日間、ドイツ・ケルンのケルンメッセにてヨーロッパ最大のゲームイベントgamescom 2014が開催中だ。
gamescom 2014で大きな注目を集めているタイトルといえば、2Kの『Evolve(エボルブ)』だ。残念ながら発売日は2015年2月10日に延期されてしまったものの(国内の発売日は未定)、E3 2014で数々の賞を受賞した(⇒関連記事はこちら)注目度の高さは衰えることなく、ブースには多くの来場者を集めていた。『Evolve(エボルブ)』最大の特徴は、4対1という非対称のマルチプレイを実現していることだ。今回のgamescom 2014でも非対称のマルチプレイタイトルはぽつぽつと出てきていて、協力プレイの一大潮流となりつつあるが、その嚆矢にして最大の注目作が、『Evolve(エボルブ)』だと言える。
『Evolve(エボルブ)』のgamescom 2014における新情報は、Xbox Oneのメディアブリーフィングで公開された(⇒関連記事はこちら)、新マップの“Distillery”。北極圏にあり、過酷な雪嵐が特徴だ。ここでは、最新トレーラーをお届けしよう。
会期中に、この“Distillery”のマップを使ってのプレゼン&試遊に参加できた。最新バーションのデモで強調されていたのが、ハンターもモンスターもミックス&マッチ可能なことが今回初公開されたこと。これはどういうことかというと、これまで『Evolve(エボルブ)』では、アサルト、トラッパー、メディック、サポートの4つのクラスでそれぞれ2キャラ(つまり8キャラ)と、“ゴライアス”と“クラーケン”という2体のモンスターが公開されていたが、試遊ではどの組み合わせでもマルチプレイが楽しめた。もちろん、各クラスからはそれぞれ1キャラずつの参加となるが、これにより、「ハンターの相性はこっちのほうがいいな」とか「このハンターのほうが、このモンスターには有利になりそうだ」といった、マッチングも妙を実感できるのだ。もちろん、今回の試遊でそこまで深くマッチングを実感できるわけではないが、「『Evolve(エボルブ)』の真の奥深さと可能性を示すものだ」とプレゼンをしてくれたタートルロックスタジオの担当者。
クラスごとに特徴が異なるハンターだが、同じクラスでも微妙に個性が違う。たとえばトラッパー。モンスターの追跡・捕獲を担当する重要な役どころのトラッパーだが、グリフィンが、“サウンドスパイク”で、設置型センサーによりモンスターの接近を検知して味方に知らせるのに対して、マギーは“デイジー”というペットを活用して積極的にモンスターを探すなど、少しずつ立ち回りかたが異なる。同じアサルトでも、ハイドよりもマーコフのほうが若干防御寄りだ。マーコフに対しては、2Kの担当者は「ディフェンス・オフェンス的なアプローチを取りたければ、マーコフを選ぶといいよ」と語っていたが、“アークマイン”という地雷をフィールド上に仕掛けておき、“ライトニングガン”でおびき寄せて仕留めるのが戦術だと語ってくれた。
当然モンスターを選ぶにしても、“ゴライアス”にするか、“クラーケン”にするかで、プレイは異なる。“ゴライアス”はどちらかというと、力押しで行けそうなのに対して、“クラーケン”はある程度戦術的な立ち回りが要求されそうだ。各キャラクターの特徴については、以下の記事でおさらいをされたし。
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キャラクターの特徴をしっかりと把握してからこそが、『Evolve(エボルブ)』が真に楽しくなる瞬間と言えそうだ。しかも組み合わせの妙を配慮する必要もあり……と、まさに奥が深い。と、いまになってみるとわかったふうに語ってみたりするものの、当然のこと試遊時にはそんな余裕のあるはずもなく、バタバタすることこのうえなし。最初に選んだのが、モンスターの“ゴライアス”。「とにかく進化しなければいかん!」と思い、最初は逃げまくったものの、あえなく捕獲。“ゴライアス”だと第1段階でもある程度ゴリ押しでイケるかも……と気付いたときにはすでに遅く、ハンターに狩られていた。「アビリティーをもうちょっとうまく活用するとよかったね」とはタートルロックスタジオの方の言葉。そんな余裕ないんですってば! つぎに選んだハンターのトラッパー(グリフィン)は、なおいけなかった。トラッパーはモンスターの追跡・捕獲がおもな仕事になるのだが、記者はその役割を一切果たせずに右往左往するだけ。チームは劇的なことは何もできずにモンスター(クラーケン)に倒されてしまった。最後に選んだのが、比較的役割を果たさなくても、チームに迷惑をかけないだろう……と推察される(と記者が勝手に思っているだけ)、アサルト(ハイド)。慎重に立ちまわったものの、モンスター(ゴライアス)が思いのほかに強く、進化の第一段階であっさりとチームは全滅してしまった。見ると、モンスターを担当していたのは、タートルロックスタジオの方。「えー! もうちょっと接待プレイしてよ~!」という感じなのだが、これも現実。狩られるもののきびしさを味わってしまった……といったところだろうか。いずれにせよ、悔しい。「いろいろなハンターやモンスターをミックスしたりマッチしたりしてトライしてみてください。それによってユニークな状況が生まれます。ミックス&マッチすることで、素晴らしいコンボができますよ」(タートルロックスタジオ担当者)とのことで、とにかく、2015年1月に行われるベータテストでがんがん鍛えるしかあるまい! と決意する記者なのでした。日本でもベータテストが行われることを期待しつつ。
クリエイティブ・ディレクターが語る、『Evolve(エボルブ)』発想の源とは?
そんなわけで、プレゼン&試遊のあとに、タートルロックスタジオの共同創業者のひとりにして、『Evolve(エボルブ)』のクリエイティブ・ディレクター、フィル・ロブ氏にお話を聞くことができた。フィル・ロブ氏にお話をうかがうのは、今年5月に行われた“プレE3”時についで2度目だ(⇒関連記事はこちら)。
――なぜ、4対1という非対称のマルチプレイを思いついたのですか?
フィル オレたちは、もともと『レフト 4 デッド』を作っている会社なので、みんな協力プレイが好きだったんだ。次回作を開発するにあたって、“協力プレイ”という要素は捨てないで、どうにか活かしたいと思ったのが、第一。そこにコンペティティブ(競争)の要素を加えたいと思ったんだ。で、自分たちのやりたいものは何かということを考えたときに、「4人でモンスターと戦うのは楽しいだろなあ」と発想したんだ。映画で『キングコング』が街を破壊するのを見て、「ああいうのをやりたね」となったわけ。誰もやっていなかったので、ゲーマーとしてやってみたいという思いもあった。あと、ヒントになったのは、『レフト 4 デッド』の“タンクバトル”かな。『レフト 4 デッド』に、タンクが出てきて全員で倒すというフィーチャーがあったんだけど、すごく盛り上がって、「タンクを人が操作できることにしたらおもしろいんじゃない?」というアイデアが出たんだ。そのへんが最初のきっかけだね。でも、非対称のマルチプレイの開発に取り組み始めてみて、誰もやっていない理由がわかった(笑)。すごくたいへんで。
――やはりバランス調整がたいへんだったのですか?
フィル そうだね。とにかく忍耐強く取り組んだよ。最初の4ヵ月でゲームのプロトタイプを作って、プレイしたんだ。そのときから、『Evolve(エボルブ)』のコアとなる部分は変わってない。そこから3年間ずっとテストプレイを続けたんだ。毎日1時間は、会社のすべてのスタッフがゲームを遊ぶということを決まりにしたね。もちろん、1時間以上遊ぶスタッフもたくさんいたよ(笑)。「自分たちが遊びたいものじゃなければ、ほかの人は楽しまないだろう」というコンセプトのもとに、とにかくプレイしまくった。オレのパートナーに、クリス・アシュトンという男がいて(タートルロックスタジオ共同創業者)、彼はつねに全体のバランスを考えているんだけど、“テレメトリー”という勝敗のバランスを見て、調整していったんだ。たとえば、誰がプレイしたやつが「モンスターが強すぎるよ」と言ったら、それが本当かどうか数字でチェックする。それが正しかったら修正するという方法で調整してきた。まあ、がんがんプレイすると、とにかく取り組みべきことが溢れてきて、最後は忍耐の勝負になったね(笑)。
――なるほど。実践で調整したということですね。しかも、数字の裏付けをしっかりと取りつつ。ちなみに、3年間のゲームプレイで、「この要素が加わったから、『Evolve(エボルブ)』はイケる、という手応えを感じたアイデアは?
フィル というよりは、4ヵ月のプロトタイプの段階で、すでに大きな手応えは掴んでいたよ。“どんなゲーム経験を提供したいのか?”というのが、タートルロックスタジオの開発のもっとも肝心な部分になるんだけど、4対1で、“仲間とモンスターを倒す”あるいは、“モンスターとなってハンターを倒す”というシンプルなアイデアが、ある意味で『Evole(エボルブ)』のすべてと言えるんじゃないかな。4ヵ月で作ったプロトタイプでダメだったら、このプロジェクトはきれいさっぱりとやめるつもりだった。Goサインを出した瞬間で、「イケる!」と思っていたのさ。ゲームの完成1ヵ月前までプレイアブルの状態じゃないというのは、この業界ではありがちなことだけど、それは絶対にやっちゃいけないことだし、うまくいかないゲームを出さないといけないことは、自分たちの名前も傷つくし、ユーザーにも駄作を提供することになってしまう。いいことなんて、ひとつもないよね。
――『Evolve(エボルブ)』にはキャンペーンモードが収録されていませんが、それは「とにかくマルチプレイを楽しんでほしい」との思いからですか?
フィル ストーリー自体はないわけじゃない。ときおりキャラクターどうしか会話を交わすシーンがあるんだけど、そのやり取りを聞いていれば、プレイヤーは背景となるストーリーがちょっとづつわかるんだ。それは、『Evolve(エボルブ)』の舞台となるのは、地球から離れた植民地となる惑星で、プレイヤーたちは、その惑星に出てきた野生の動物たちを鎮めることが目的となる。そんな中、予想外のモンスターが出てくるので倒さければならない……というのが基本のストーリーだ。ただし、『Evolve(エボルブ)』には、いわゆるストーリーモードは存在しない。ほかの開発会社でストーリーモードに特化したゲーム作りに取り組んでいるところももちろん知っているけど、オレたちの強みはそこにはない。ストーリーモードに力を入れようと思うと、自分たちにないリソースが求められるし、手に負えないチャレンジになりそうだった。そこで、自分たちの得意分野にフォーカスして開発することにしたんだ。
――ハンターは、アサルト、トラッパー、メディック、サポートとクラスが分かれていますが、それは明確に役割分担をして、協力プレイを楽しんでほしいという意図から?
フィル そうだね。で、4つのクラスには、それぞれ個別のキャラクターがいるわけだけど、ユーザーには「どのキャラとどのキャラの組み合わせがベストか」といったことを探しながら、ゲームを楽しんでほしいと思っている。戦略を練るということだね。なにしろ、『Evolve(エボルブ)』は今後何年も楽しんでほしいから、ゲームに奥深さを出したいと思ったんだ。
――ということは、将来的には違ったクラスが出てくる可能性もある?
フィル 可能性はあるね。キャラクターは順次増やしていくと思うけど、ゲームというものは1回リリースしたら、コミュニティーの手に渡るので、彼らがどう遊ぶのか、何をしたいのかといった反応をよく見て、新しいアイデアがあったら取り込んでいきたいと思う。ユーザーはつねに、意外なことをするものだからね。
――本作のキモともいうべき、モンスターについて聞かせてください。モンスターを3段階に進化させることにした理由は?
フィル ゲームの“ボスバトル”ってあるじゃない? あれを広げたものだと考えてもらえばいいんじゃないかな。ふつうボスバトルだと、どこかしらに弱点があって、そこを攻撃すればプレイヤーの勝利となる。でも、それだけだとつまらないなと思ったんだ。ボスバトルをどうすれば深くできるか……ということを考えたときに、“進化”という考えを取り入れることで、ボスの強さを変化させたらどうだろう? って思いついたんだ。最初の段階だとモンスターはソコソコ弱い。ハンターは、それをすぐに見つけてやっつけたいわけだけど、モンスターは逃げまわって、強くなりたい。その追いかけっこがある。けっきょく3段階まで進化すると、モンスターはものすごく有利になって、逆に追う立場になる。ハンター側からみると、つねに弱いのではおもしろくないので、最初は自信を持ったハンターの気分が味わえて、だんだんと自信が崩壊していく。モンスターからすると、最初は弱いけど、だんだん強くなっていく。そういうバランスの変化が、ダイナミックなゲームプレイにつながると思ったんだ。まさに、evolve(進化する)というわけ。
――モンスターのデザインがおどろおどろしくて秀逸ですが、アイデアはどこから?
フィル モンスターがいまの形になるまでには、いろいろと進化の過程があった(笑)。最初はなんだかよくわけのわからないようなエイリアンのようなモンスターを作ってみたんだけど、突拍子もなさすぎて、なかなか自分に関連付けられないんだ。つまり感情移入ができない。プレイヤーが自分にちょっとでも引き付けられるものが必要だということで、動物的な要素を入れることにしたのさ。たとえば、ゴライアスの場合は、ゴリラがモチーフになっている。長い腕はゴリラそのものだろう? クラーケンは、もちろんイカだね。ドキュメンタリーでイカがダイバーを攻撃しているシーンを見て、「これは使えるな!」と思ったんだ。地球の自然を紹介するドキュメント番組はよく見るよ。地球にも怖いものは存在するので、そこからヒントをもらったんだ。
――ゴリラ、イカときて、さらなるモンスターのモチーフとなる動物は?
フィル それは……って、言えないよ(笑)。ただ、リリース時には3体のモンスターが登場することはすでに発表済みだから、最後のモンスターのモチーフがどんな動物になるのか、楽しみにしておいてほしい。ちなみに、『Evolve(エボルブ)』の予約をするとさらにもう1体のモンスターが追加されるから、最初の段階では全部で4体のモンスターで遊べるね。
――てっきり、gamescomで3体目のモンスターがお披露目されるものと思っていましたが(笑)、3体めのモンスターのお披露目はいつに?
フィル どこかに隠れていて、出てくるのを待っているよ(笑)。すぐにでも見せたいけどね。
――最後に、今回“Distillery”という新マップが公開されましたが、遊びどころを教えてください。
フィル これまで公開されていたものに比べて、比較的コンパクトになっているんだけど、高低差が温で、高地からモンスターがよく見えるし、モンスター側にとっても同じくらいに高さになって回りやすいんだ。洞窟があるので、うまく隠れ家にするといいかもね。雪が多いところなので、雪嵐もある。視界が悪くなるので注意が必要だね。道が見えなくなったりして、ゲームプレイに影響するよ。野生の動物としては、ブリッツレパードというエイリアンタイガーがいて、ストーカーみたいに追いかけてきて、急に飛びかかってくるのでやっかいだ。“Distillery”では、チームから離れないことが重要な場合もある。もう1体は豚みたいなスティーマトン。こいつもスティームガスを出すやっかいな相手だ。それで視界が悪くなるんだけど、逆に敵から視界を遮ることにも使える。モンスターの場所がそれでわかるんだ。あとは、グレイショパンという虫のクリーチャーがいて、洞窟のなかで餌を集めている。それをモンスターが食べるので、ハンターはグレイショパンを見つけたら、すぐに退治したほうがいだろう。
(取材・文 編集部/F)