プレイステーション4とXbox Oneの切磋琢磨は歓迎

 2014年8月13日(水)~17日(日)、ドイツ・ケルンのケルンメッセにてヨーロッパ最大のゲームイベントgamescom 2014が開催。会場にて、エレクトロニック・アーツのCOO、ピーター・ムーア氏に取材をする機会を得た。ムーア氏に取材をするのは、gamescom 2013についでのこと(⇒関連記事はこちら)。“EA's 2014 gamescom Press Briefing”にて、年末から来年にかけての期待作を披露したムーア氏だが(⇒関連記事はこちら)、思い描く戦略とは?

エレクトロニック・アーツのピーター・ムーア氏に聞く 大切なのはソフトに“息吹”を吹き込むこと【gamescom 2014】_01

――“EA's 2014 gamescom Press Briefing”では、10タイトルをプレゼンしましたが、ブリーフィングでの意図は?
ピーター E3のプレスブリーフィングでは、実験的なタイトルを数多くお披露目したのですが、今回は完成間近の10タイトルをお届けしました。E3から2ヵ月半経ったこともあり、そのあいだにタイトルの開発が着実に進んだという理由もありますが、やはりgamescomはユーザー向けのイベントですので、30万人の来場者に向けて、完成に近いバージョンをお見せしたかったというのもあります。

――とくに手応えを感じているタイトルは?
ピーター もちろんすべてのタイトルを愛しています(笑)。子どもといっしょで1作は選べませんよ。たとえば、『The Sims 4』。本作は前作から5年ぶりの新作となるのですが、エレクトロニック・アーツにとっては、非常に大切なIPです。『FIFA』シリーズは毎年リリースしていますが、とても巨大なタイトルです。日本以外では……。『バトルフィールド ハードライン』にしても、『バトルフィールド』らしさは残しつつも、違うストーリーを構築して、警察VS犯罪者という新機軸を展開しています。みんなそれぞれに特色のあるタイトルですね。

――10タイトル中、バイオウェア開発のタイトルが3本と、信頼度の高さを感じましたが……。
ピーター バイオウェアは、業界の中でも極めてユニークな存在だと思います。とても時間をかけて、ゆっくりといいゲームを作るし、ストーリーテラーとしてベストに入る開発会社です。キャラクターの作りかたもすぐれている。私たちは、バイオウェアに関しては「こういうものを作ってください」とお願いをしたあとは、彼らの自由に任せています。バイオウェアは、バイオウェアとして期待される作品をきちんと作ってくれる開発会社ですね。

――バイオウェアといえば、『マスエフェクト』の新作が明らかとなりましたが(⇒関連記事はこちら)、こちらはもしかして、来年のE3でおそらく発表されますか?
ピーター おそらく、もしかしたら(笑)。

――改めて伺いたいのですが、COOに就任されてからの方針と、その成果は?
ピーター “プレイヤーファースト”、プレイヤーを第一に考えることです。彼らからのフィードバックを活かしてソフト作りに活かすことは欠かせません。あと、ソフトに関しては、ソフトに“息吹”を吹き込むことが、個人的には大事なことだと思っています。この3年間で、ある程度の成果を上げられたのではないかと、自負しています。

――ソフトに“息吹”を吹き込むですか?
ピーター 私は、とにかくゲームは楽しくないと始まらないと思っています。残念ながらそうではないゲームが多かった。私がセガ時代に学んだことは、アーケードゲームを遊んで、90秒おもしろくなければ、さらにワンコインを出してはくれないということです。90秒間できちんとわかるようなおもしろさを注ぎ込まないと“息吹”が入ったとは言えないですね。

――おもしろさの真髄みたいなものでしょうか……。
ピーター たとえば、『FIFA』だとファンの皆さんがサッカーに対して抱いている感情をしっかりとゲームに落とし込んで、喜んでいただけるタイトルに仕上がっています。Ultimate Teamでは、サッカーファンなら誰もが抱くであろうような「年代を飛び越えた夢のチームを作りたい」という夢を叶えたモードになっています。

――ムーアさんがCOOになってから、それまで年間70本近くあったタイトルを相当数絞ったとお聞きしていますが、“息吹”を吹き込むには、ある程度数を絞る必要があった?
ピーター 3年前は67タイトルありましたね。67タイトルもあると、どうしても個々のタイトルのクオリティーが下がってしまいます。また、プロジェクトが大きくなるのに従って、ひとつのプロジェクトに対してより人員を割かなければならないという事情もありました。数を絞ることによって、ひとつひとつのプロジェクトを大きくできる。今年はコンシューマータイトルは12本リリース予定ですが、いずれも“息吹”が吹き込まれた、すばらしいタイトルばかりです。

――今後、さらに狙って行きたい領域などはありますか?
ピーター 新しいプラットフォームが誕生すると、もちろん新しいIPやジャンルはたくさん出てきますが、私たちにとっては『スター・ウォーズ』のライセンスを得ていることが、とても大きいと思っています。『スター・ウォーズ』は世界でも屈指のライセンスですね。ふつう、IPというとローカルのものも多く、見ても検討が付かないケースが多々あります。ところが『スター・ウォーズ』は違う。最初に『スター・ウォーズ』が公開されたのは1977年でしたが、広大な宇宙空間を宇宙船が飛行していく映像は衝撃的でした。2013年にE3のプレスカンファレンスで『スター・ウォーズ バトルフロント』を発表できたときは、とても感慨深かったです(⇒関連記事はこちら)。“スター・ウォーズユニバース”はものすごい広がりを持っているので、いろいろな可能性が広がると思っています。

――2015年には、『スター・ウォーズ/エピソード7』の劇場公開も予定されていますが、今後“スター・ウォーズ ユニバース”はさらに広がっていきそうですね。
ピーター そうですね。ただし、映画は映画、ゲームはゲームで別軸のストーリーが展開されますよ。キャラクターのシェアはあるかもしれませんが、映画と同じ世界観をモチーフにした別のストーリーが展開されます。インタラクティブ性があるぶん、ゲームのほうがおもしろくなるかもしれませんよ。

――プレイステーション4とXbox Oneについて聞かせてください。ムーアさんは現状をどう分析していますか?
ピーター 業界にとって、競争があって切磋琢磨するのはいいことだと思います。先日、プレイステーション4の全世界累計実売台数が1000万台を突破したとアナウンスされましたが、非常に明るい話題です(⇒関連記事はこちら)。マイクロソフトさんもさまざまな施策を打っているので、今後差は詰まっていくのではないでしょうか。両ハードが盛り上がってくれることは、エレクトロニック・アーツにとってもうれしいことです。両ハードの発売から9ヵ月を経て、エレクトロニック・アーツがソフトハウスとしてナンバーワンのボジションにあるのは、光栄なことですね。

――一方で、アプリにも力を入れていく感じですか? 『Plants vs. Zombies』は大人気を獲得していますが……。
ピーター そうですね。『Plants vs. Zombies』は、モバイルから入ってコンシューマーゲーム機でリリースされるという、極めてユニークなゲームですね。中国でも人気が高い。アプリ展開のいいモデルケースになります。

――最後に、日本市場に関しては、今後もプッシュしていただける?
ピーター もちろん! 日本が重要なマーケットであることは間違いありません。ファンの方は、エレクトロニック・アーツの作品を楽しみにしていてください!

(取材・文 編集部/F)