プレイステーションのプラットフォームはすべてUnityに対応
2014年4月7日と8日の両日、Unity最大の公式カンファレンスイベント“Unite Japan 2014”が東京・お台場にあるホテル日航東京で開催された。ここでは、開催2日目に行われたソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)によるセッション“Unity で開発する PlayStationプラットフォーム向けゲームタイトル”の模様をお届けしよう。講演者はSCEJA パブリッシャーリレーション部 ディベロッパーリレーション課 課長 多田浩二氏と、開発サポート部 ジャパンテクニカルサポート課 課長 秋山賢成氏だ。
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「プレイステーション4の世界累計は600万台を記録しています(2014年3月2日)」と、華々しい販売実績の話題から講演をスタートさせた多田氏は、プレイステーション4のロンチから、いかに多くのインディーゲームが開発され、さらにUnityの開発者のあいだでもすばらしいプレイステーション4向けゲームがリリースされているかを強調し、「すべてのプレイステーションのプラットフォームでUnity対応を実現します」と、Unityへの注力ぶりを改めて示した。「さまざまなプラットフォームが用意されているのがプレイステーションの強み」と多田氏が語る通り、プレイステーション4、プレイステーション3、プレイステーション Vita、PlayStation Mobile(PSM)という、プレイステーションの誇るプラットフォームがすべてUnityに対応しているのは、壮観と言える。
プレイステーションプラットフォームの中でも、もっともインディーゲームデベロッパーにとって間口が広いのが、PSMだろう。プレイステーション4、プレイステーション3、PS Vitaが法人契約のみなのに対し、PSMは法人に加えて個人契約も可能。さらに“グローバル契約”なので、手軽に世界配信ができる。開発は市販のプレイステーション Vitaを使って行うので、比較的安価に開発できるのも魅力だ。このPSMは、Unityとの相性も極めていいようだ。PSMに対応した“Unity for PlayStation Mobile”は、ただいまクローズドベータを提供中だが、Unityは3Dの表現能力にすぐれているので、「PSMだと3Dのゲームがうまく作れない」というクリエイターの不満を補完するものになるからだ。また、PSMは独自のSDK(開発キット)だったことから、なかなか開発に踏み切れなかったクリエイターも、Unityのサポートにより、開発もしやすくなった。
詳細は公式リリースに詳しいが(→記事はこちら)、セッションでは、本日(2014年4月8日)より、PSMのパブリックレビュー版が開始されたことや、夏には正式版のリリースを予定していることなどが明らかにされた。さらに、5月29日より“PSM Developer Program”のサービス提供地域を新たに12ヵ国増やすという。PSMが世界的により利用しやすくなるとの印象だ。
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と、PSMの新情報が明らかになったSCEJAのセッションだが、ハイライトはむしろ、「PSMがいかに簡単にゲームを作れるかを証明するため」(多田氏)を目的として行われたゲームのデモだろう。なんと、GDC 2014で発表されたばかりのVRヘッドマウントディスプレイ“Project Morpheus”のデモが披露されたのだ(→関連記事はこちら)。“Project Morpheus”のデモがオープンな場で公開されるのは、もちろん国内初! デモプレイを担当した秋山氏は、Unite Japanの基調講演でも話題になった、Oculus Riftを引き合いに出し「Oculus RiftとUnityとの相性はいいかもしれませんが、PSMとUnityとの連携も良好です」とコメントし、“Unity for PS4”で作られたデモとして、SCEとNASAが共同開発したという“project Mars”が披露された。こちらは、おそらくはGDCでのプレゼンでも言及されていた、火星探査機“キュリオシティ”が取ってきた本物の火星のデータを使い、火星に立っているような感覚が味わえるというデモ。秋山氏いわく「“Project Morpheus”ではオーディオも大切な軸だと考えています。本デモは3Dサウンドにも対応しており、Unityだと音も出力できるんです」とのこと。開発期間は明確には明らかにされなかったが、比較的短期間で完成したデモのようで、秋山氏は再度PSMとUnityの相性のよさを強調した。
さらに、セッションでは、UnityのブートキャンプのFPSのデモに“Project Morpheus”を組み込んでVR化。“Project Morpheus”でのデモプレイを披露してくれた。「プラグイン・スクリプトを組むだけで作れる」(秋山氏)というUnityの“Project Morpheus”への対応だが、素人目には「え、これだけでVR化が実現するの?」といったくらいのあっさりさだったようにも見えたが……。いずれにせよ、想定よりも容易にVR化は実現するのかもと思わせた。
とはいえ、秋山氏が「凄さが伝わっていないのでは……」と心配していた通り、いくら外部出力に対応しているとはいえ、端から見ていると“Project Morpheus”の凄さがあんまり伝わってこないのは仕方のないところかも。実際に体験してみると、まさに“異世界の体験”といったところなので、いち早く体験できる機会が訪れることを期待したい。いずれにせよ、「いろいろな体験を提供できる、かなりいい時代がきたと思います」という秋山氏の言葉には、全面的に納得のセッションだった。
(取材・文 編集部/Ful)