第4回ライター・浅葉たいがによる最速プレイリポート

 プレイステーション3で2013年12月5日にリリース予定のアドベンチャーゲーム『解放少女 SIN』。発売を間近に控えたいま、ファミ通.comでは短期集中特集を実施。改めて同作の魅力に迫る。【第4回】

【更新スケジュール】
■第1回 『解放少女』の世界設定と魅力を公開!(配信中)
■第2回 魅力的なキャラクターたちを紹介(配信中)
■第3回 『解放少女 SIN』を彩るメカとキーワード(配信中)
■第4回 ライター・浅葉たいがによる最速プレイリポート(本記事)

熱く、深い『解放少女』の物語が、アドベンチャーゲーム形式で開かれる。

 グラスホッパーマニファクチュアの須田剛一氏が手がけた3Dシューティングゲーム『解放少女』の設定を掘り下げ、さらに先の物語を描いた『解放少女 SIN』がこの冬、MAGES.から発売される。MAGES.代表取締役の志倉千代丸氏とグラスホッパー・マニファクチュアの須田氏が手を組んだことから制作がスタートし、アドベンチャーゲームとして生まれ変わった本作には、意外な変化球のオンパレードともいえるような設定と熱く、濃厚な物語が詰め込まれている。

 急激な気候変化で混沌とした近未来の世界、10代の美少女、大空翔子が大統領として統治する“新日本国”、国家の繁栄に関わるロボット“解放機”、“神獣”、超常物質“ミスティクル”など、キーワードだけを並べると、この作品のテイストが、コミカルによったものなのかと想像してしまうが、物語の根底にあるのは、タイトルにもある解放のカタルシス。プレイヤーは、主人公・海堂清人となって、人や、国を、しがらみや過去から解放するための道を作っていくことになるのだ。

いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_01
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_02
▲新日本国は大統領制。その頂点に立つのが、2代目大統領の大空翔子。そのまわりを固める閣僚たちも、10代の少女たちだ。彼女たちは、解放機・カムイと呼ばれる巨大ロボットに搭乗できる特性を備えている。
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_17
▲キャラクターデザインは、『NO MORE HEROES(ノーモアヒーローズ)』シリーズのコザキユースケ氏。メカニックデザインは『トップをねらえ2!』のメカニックデザインや、劇場版『ヱヴァンゲリヲン』シリーズのデザインワークスを手がけるコヤマシゲト氏。
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_03
▲勢力の拡大を目指す“大国”との戦争をどう乗り越えるかも、作品の大きなテーマのひとつ。10代の運命に選ばれた少年少女たちが持つ素養“解放力”に、国の未来は委ねられている。

『解放少女 SIN』あらすじ

いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_04
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_05

 突如として日本を侵略した“大国(たいこく)”と、自主独立をかかげて戦い、ついに独立を勝ち取ったかに思えた新日本政府だったが、敵の航空勢力出現により大国は再び勢力を盛り返し、国土をほぼ二分とした状態で“第二次解放戦争”が勃発した。新日本側も、東日本を拠点とした防衛戦線を張りめぐらし、解放機の増産を開始。多様な機体が誕生し、戦備を増強していった。

 またこのころ、解放機パイロットの適性に関しての研究がさらに進み、“解放力”と呼称されるようになる。解放力は霊的素粒子“ミスティクル”を引き寄せる性質に左右され、適合が認められた者は、すべて10代の少年少女だった。このことから、ネクスト・ニューエイジ派の支持を集め、彼ら、彼女らは時代を牽引する選ばれたリーダーとして閣僚へ、あるいは与野党首脳部へと推挙された。

 そして、翔子の幼なじみで本作の主人公である“海堂清人”も大統領首席補佐官として赴任する。

 こうして大空翔子内閣は、大統領および閣僚みずからも出撃する“決戦型内閣”として第二次解放戦争を展開することになる。しかし、その影では政治的策謀がうごめき、新日本内部にも徐々に影が広がっていく。果たして戦争の結末に待つものは……!

物語分岐に大きく関わる“クオリア”

 主人公の海堂清人には、他人の言葉に秘められた“クオリア”を読み取る能力が備わっている。この能力は誰にでも無制限に発動できるわけではないが、何気なく発した言葉から、その裏にある真意や感情を読み取ることができるという超能力的なものになっている。このため、清人は、相手を注意深く観察することで、言葉以上の情報を得ることができるのだ。さらに清人には、この能力発動で得たクオリアを無限に蓄積し、状況に応じて情報を精査するという能力や、特定の相手の精神に潜入する“ミスティクル・ダイブ”という能力を行使することもできる。“ミスティクル・ダイブ”を行ったあとは、清人が持っている“クオリア”から、探る場所を決定するため、“クオリア”をどれだけ、どのように読み取っているかが、ダイブの成果に大きく関わってくる。

 アドベンチャーゲームというと、選択肢によって物語が分岐していくものが一般的だが、本作には選択肢のほかに、“クオリア”による分岐も随所で登場する。重要な“クオリア”を拾い損ねてしまうと、後に行なう情報の精査や、“ミスティクル・ダイブ”で、検討外れの要素を調査してしまうということになりかねないので、登場人物との会話の際には、注意をして画面を見ておくといいだろう。

 MAGES.の代表作である科学アドベンチャーシリーズのこだわりのひとつである、選択肢を使わない物語分岐がもたらしてくれる心地よい刺激は、本作の“クオリア”システムにも継承されていると言っていいだろう。

いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_06
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_07
▲誰かと会話をしている際、“クオリア”を抽出できるタイミングになれば、画面右上にサインが発生するので、これを見逃さないように物語を読み進めよう。
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_08
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_09
▲どのような“クオリア”を蓄積しているかによって、情報の精査や“ミスティクル・ダイブ”の際にとれる行動が異なってくる。
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_10
▲“ミスティクル・ダイブ”は、相手との同調なくしてはとれない行動なので、赤面するような展開になることも。

戦闘できない主人公を、戦いの場に置く選択肢

 戦闘が絡むアドベンチャーゲームは、戦闘シーンの描写に緊張感を持たせるのが困難で、作品によっては、戦闘パートはアクションやシミュレーション形式にしているものが多いが、本作はMAGES.の土俵である、アドベンチャーゲームとして全体を作り上げている。媒体がアドベンチャーゲームで、主人公が、戦場に立つロボットに搭乗できる資質を持たず、あくまで大統領の参謀的なポジションということもあって、戦闘はさらりと流す程度だろうかと想像していた筆者だったが、その予想は、いい形で大きく裏切られた。

 本作の戦闘では、“選択肢”が大きな意味を持つ。本作では、戦闘中に多くの選択肢が出現し、主人公が指揮官となって戦場をコントロールしていくことになる。もちろん、戦闘中に選択肢を間違えると、悲惨なバッドエンドに一直線というのも、珍しい出来事ではない。そう、本作では、設定どおり、プレイヤー(主人公)に大統領の補佐官として役割をまっとうさせてくれるのだ。ロールプレイ的な感覚を楽しみつつ、戦闘の緊張感も味わえる本作は、現実からかけ離れた世界の出来事とはいえ、没入感が非常に高いのだ。

 アドベンチャーゲームファンの中には、90年代の作品でよく見られた、何気なく選択肢を選ぶと即バッドエンドという、懐かしい構成に、ニヤリとさせられることもあるだろう。とはいえ、本作は現代風にアレンジされているので、それほど理不尽な選択肢はなく、事前の情報を応用したり、記憶していたりすれば、それほど苦労せずにヤマ場を抜けられるようになっているので、理不尽すぎてクリアーできないというようなことはないので安心してもらいたい。

 筆者の個人的な好みではあるが、アドベンチャーゲームの戦闘パートを別ジャンルのゲームで表現した作品は、くり返しプレイしてさまざまな分岐を楽しむマルチエンディングとの相性が悪いことが多いため、この形式でかつ、戦闘パートで適度な緊張感を味わえる本作は、非常に快適に遊ぶことができた。また、一度選択肢がわかってしまえば、戦場を切り抜けるのは容易になるものの、本作はバッドエンドのバリエーションが非常に多いため、あえて正解の選択肢とは違ったものを選ぶというプレイを楽しむことができるのもうれしいところだ。

いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_11
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_12
▲戦闘中の選択肢を間違うと、即バッドエンド行きになることもある。

異色のコラボの生み出す、新鮮な驚き

 本作には、MAGES.の代表作である科学アドベンチャーゲームシリーズともリンクするような科学的な描写や、同社の得意とする“萌え”、そして、須田氏の持ち味である意表をつく変化球のような物語展開と設定など、さまざまな要素と驚きが散りばめられている。

 須田氏の手がけた、『ムーンライトシンドローム』、『シルバー事件』、『花と太陽と雨と』、志倉氏原案の『シュタインズ・ゲート』など、アドベンチャーゲームの名作とも言える作品を好んで遊んできた筆者としては、この異色のコラボでどんな作品が飛び出してくるのかと心待ちにしていたが、本作でも、意外すぎるユーモアと飛び抜けて熱い展開に、すっかりやられてしまった。

 本筋となる物語以外にも、バリエーション豊かで、ユニークなバッドエンドの数々には驚かされた。主人公が賭博の道へと踏み込み、相手の心を読める能力を使って、負けなしの勝負師として堕落した人生を送る“伝説ノ賭博者”エンドなどは、専用のイベントCGまで用意されている周到さ。物語中の行動ミスから、思いもよらぬ方向へと物語が転換し、バッドエンドへと突入したことを匂わせる描写を見ると、わくわくしてしまうアドベンチャーゲームというのも珍しいのではないだろうか。

いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_13
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_14
▲アドベンチャーゲームとして非常にクオリティーが高い。先が気になる物語運びに、どんどん引き込まれるはずだ。
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_15
いままでにない驚きが丁寧に詰め込まれた『解放少女 SIN』――ネタバレなしの最速プレイリポートをお届け!_16
▲バッドエンドが見たくなる作品というのも珍しい。伝説ノ賭博者エンドは、物語序盤で見られるバッドエンドのひとつ。専用のイベントCGが設けられた、ユニークなイベントとなっている。

前日憚となる『解放少女』もチェック!

 『解放少女 SIN』の物語は、本作1本で完結しているが、前日憚にあたる『解放少女』のほうもチェックしておくと、より作品世界への理解が深まるはず。『解放少女』はレベルファイブからリリースされたオムニバス作品集『GUILD01(ギルドゼロワン)』に収録された作品のひとつで、現在はニンテンドー3DS用ダウンロードソフトやiOS用アプリとして単体でも配信されている。『解放少女』は、オムニバス作品集のひとつだが、非常にクオリティーが高く、シューティングとしてはもちろん、物語としても楽しめる作品となっているので、発売前のこの時期にプレイしておくことをオススメする。

(text:浅葉たいが)

■著者紹介:浅葉たいが
インテリアデザイン会社所属のゲームライター。ロールプレイングゲーム、2D対戦格闘ゲーム、美少女ゲームが好物で、『ファントムブレイカー 公式コンプリートガイド』(エンターブレイン刊)執筆。月刊アルカディアや週刊ファミ通などで活動しています!

解放少女 SIN
メーカー 5pb.
対応機種 PS3プレイステーション3
発売日 2013年12月5日発売予定
価格 7140円[税込]
ジャンル アドベンチャー / 戦争・SF
備考 原案:須田剛一、ゼネラルプロデューサー:志倉千代丸、キャラクターデザイン:コザキユースケ、メカニックデザイン・監修:コヤマシゲト、原作:MAGES.、協力:グラスホッパー・マニファクチュア、レベルファイブ、開発:5pb.、プラネットG