本日(10月3日)より配信開始!
『rain』ディレクター池田佑基氏(写真中央)
『rain』アートディレクター寺島誠一氏(写真右)
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)より本日(10月3日)配信開始となったプレイステーション3用ダウンロード専売タイトル『rain』。本記事は、この『rain』の魅力にさまざまな角度から迫る特別企画。第3回となる今回は、前回の記事でSCEJAの外山圭一郎氏にゲストとして登場していただいた“他のクリエイターから見た『rain』”のパート2。ゲストは『TOKYO JUNGLE(トーキョー ジャングル)』などを開発した、クリスピーズの片岡陽平氏。『rain』の池田佑基ディレクター、寺島誠一アートディレクターとともにお話を聞いた。同世代で、SCEのゲームクリエイター発掘オーディション“ゲームやろうぜ!2006”から池田氏、寺島氏と親交があるという片岡氏ならではの視点から、本作をプレイしての感想を聞いた。
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同世代クリエイター、その出会いは?
――皆さんは、ソニー・コンピュータエンタテインメントのゲームクリエイター発掘オーディション。“ゲームやろうぜ!2006”からのお付き合いなんですよね?
片岡 僕、今日、初めて池田さんたちとお会いした時のズボンを履いてきたんですよ。
――それは何かいわくつきの代物なんですか……。
片岡 これがですね、“ゲームやろうぜ!2006(※)”に応募して、初めての合宿に参加したときに履いていたものなんですが、そのときに寺島さんが「変なスボン履いてるね」って声をかけてきて……覚えてます?
寺島 覚えてないなあ(笑)。
片岡 さらに「なんかカリスマ性を感じるよね」とも言ってました(笑)。
――おふたりともその時が初対面なんですよね?(笑)
片岡 もちろんです。しかもそのふた言の直後に「俺、鼻毛に白髪が混じってるんだよね」って言い出して、僕は「うわっ、この人ヤバイ」って。
池田 それはヤバイね。
片岡 その記憶があまりにも強烈すぎて、どうしてもこの話をしておかないといけないと思って、履いてきたわけです。シャツは当時のものではないですが、ズボンに合わせてきました(笑)。
一同 (笑)
――ここまででわかるのは、若かりし頃の寺島さんのヤバさと、皆さんが7年の付き合いになるということですね。
片岡 そうですね、“ゲームやろうぜ!2006”から、池田さんとはたまに会って仕事やプライベートの事など色々と話したりしますね。寺島さんはそういう場にはあまりいませんけど(笑)。
寺島 俺は付き合い悪いからね。
池田 いきなり入り込んできたかと思ったら、すぐ出ていっちゃうっていう謎のスタンス。
片岡 だいぶ慣れましたけど、さっきの話も僕にとってはわりとトラウマですからね(笑)。それしか会話を覚えてないくらい。
――クリエイターとして同世代ということで、やはり共感できる部分というのは多いですか?
片岡 同世代で、ディレクターとしてオリジナルのゲームを作っている方があまりいませんからね。池田さんたちとはシンパシーを感じます。当時を思い出しても、僕と池田さんたちは「自分たちの作りたいゲームを作る」という部分に対してガツガツしていましたから、似た者同士というところもあるんじゃないですかね。もちろん、ライバルというか負けたくない相手というか、刺激を受ける関係でもあります。
――当時、池田さんたちが『rain』のようなゲームを作ることを想像できましたか?
片岡 “ゲームやろうぜ!”というもの自体が「これまでにないゲームを作るんだ」という人間が集まっていたのですが、そのなかでも池田さんたちの企画は変わっているというか尖っているというか、群を抜いて規格外でしたね。
寺島 それゆえに、お蔵入りになった企画も実は山ほどあるんですけどね(笑)。
片岡 池田さんたちの企画書を見ると、まず最初に思うのが「これゲームにできるの?」ということなんです。これまでのゲームのロジックやセオリーが通じない部分が多くて、切り拓かないといけないところが沢山あるんです。
――ですが、池田さんはゲームの企画書を書いているわけですよね?
池田 そうですね。僕の中ではもちろんゲームになると思って書いています(笑)。
片岡 例えば『rain』も、“雨が降っていて、雨に濡れると姿が現れて、雨に当たっていないと姿が消える”という企画書を僕が見ても、ステージひとつなら作れるかもしれないけれど、その先はどうするの? って不安になります。結局どこかで武器を持ち出したりすることになりそう、という未来が見えたりしますが(笑)、それは絶対にやらないんですよね。
池田 『rain』に関しては「こうなれば『rain』は完成する」というのが僕の中では最初からわりと見えていて、みなさんが心配するほどには心配していなかったですね。
思い出したのは最初の企画
――片岡さんは、『rain』を実際にプレイしてみていかがでしたか?
片岡 今回初めてしっかり触らせていただいたんですけれど、まず最初に、“ゲームやろうぜ!”のころに池田さんたちが最初に作った企画を思い出しましたね。
――どういう企画だったんですか?
池田 夜に子どもたちがパレードするというゲームです。
――ごめんなさい、全然わかりません(笑)
片岡 夜に起きた少年が、ラッパみたいなパレードを作る道具を持っていて、寝ている子どもたちを起こしてパレードを作りながら世界中を旅するというゲームでしたね。
池田 よく覚えてるね(笑)。絵本式になっていて、ページをめくると寝ている子どもたちがいて、その子たちを加えてパレードを大きくしながら世界を周るんです。まあ企画だけで実現はしなかったので、フワッとしたものですけど(笑)。
片岡 7年前は実現しませんでしたけど、僕はいまならこの企画を受け入れる土壌があると思うんですよ。ゲームで実現できること自体はそんなに変わっていないと思いますが、プラットフォームも売り方も多様化し、間口はすごく広がっていますよね。そういう意味では、時代がやっと池田さんに追いついたなぁって(笑)。『rain』も、そういう時代だからこそ実現したタイトルだと思います。
池田 最初の企画は僕も思い入れがあって、タイトルが『夜と子どもたち』だったのですが、これを『rain』のチャプター1のタイトルにしています。まったく違う形ですが、7年越しにこの名前を世に出せるのはうれしいですね。
片岡 7年越しの池田さんの情念がしっかり繋がっている気がして、僕もプレイしていて嬉しかったです。
足すことと引くこと
――ほかに印象に残ったことはありますか?
片岡 まず、絵本を読んでいるような触り心地、すごく良質な物語を読んでいる感覚でした。物語に惹かれてプレイしていると、いつの間にか最後までたどり着けてしまう。つぎに、意外にも王道なアクションゲームだったことですね。パッと見、いわゆる“雰囲気ゲー”に見えますが、実際はアクションゲームのロジックやセオリーがしっかり詰まっています。かといってゲーム経験のあまりない人でも最後まで遊べるくらいの難度になっていて、このあたりのバランスは見事ですね。それから、僕が一番スゴイと思ったのは、見た目も含めたいい意味でのシンプルさ。少し言い方が難しいですけれど“足さなさ加減”と言うか。これがスゴイです。ゲームって作っていると、分かりやすく面白くしようという気持ちから、どんどん要素を足していっちゃうんですよ。このゲームで言うと、例えば体力ゲージがあったほうがいいんじゃないかとか、少しくらい攻撃手段があったほうがいいんじゃないかとか。足すのってすごく簡単で、足した分見た目も遊びも派手になるし、そのときは手応えを感じるんですけど、それで実際にできあがってみると本質には影響がなかったり、いたって普通のゲームになってしまう、というのはよくあります。それらしい理由で足したけれど、そのときに言い訳がほしかっただけ、というパターンですよね。もちろん考え抜いた結果足したことであれば納得できるのですが、そうでないと後悔する。でも足すと簡単に効果が目に見えるから足しちゃう(笑)。ゲームの作り手として『rain』を見ると、“これ以上は絶対に足さない”という厳しいラインがあって、作っていく過程では“引き算をする”ことが多かったと思います。足すより引くほうが絶対大変で、不安になるときもあったと思いますが、そこで歯を食いしばって足さなかったから、こういう美しいゲームができたんじゃないでしょうか。
寺島 最終的にはかなり引きましたね。また、足したからといって自分たちの考える遊びやすいものになるとも思わなかった、ということもあります。
池田 最初から軸がしっかりしていたので、例えばわかりやすく、遊びやすくしようとするときにも、いまあるものでどうにかしようというやり方でしたね。説明を入れたりゲージを出したりというやり方ではなく、カメラを調整したりすでに置いてあるオブジェクトを使ったりという方向性ですね。どうしてもうまくいかないようであれば、それは“このゲームでは成立しないもの”として入れませんでした。アイデアはたくさんありましたが、実際にゲームにして動かしてみたときに「これは必要なの?」という部分はとにかく時間をかけてしっかり考えましたね。
片岡 もうひとつ、プロローグ部分で流れる「月の光」(ドビュッシーの“ベルガマスク組曲”の第3曲)がすごくいいですよね。雰囲気もぴったりマッチしていますし。「月の光」にしようと思ったのは?
池田 みんなと感情を共有したかったので、あまり知られていない曲ではなく有名な曲を、というのがひとつ。「月の光」を選んだのは、冒頭のテンションというか感情のレベルが「このくらいですよ」というのを表現するのに最適だと思ったからですね。
片岡 ゲームって後から曲をつけることも多いんですけど、「月の光」はプロモーションビデオの段階ですでに使われていましたし、ゲームとプレイヤーを違和感なくつなげる、共感させようという池田さんたちの意図がよくみえる選曲ですね。先ほどの話もこの「月の光」もそうですが、『rain』はテーマの純度をキープしているという部分で池田さんたちらしい作品ですね。以前池田さんたちが作った、『100万トンのバラバラ』(※当時の池田氏たちへのインタビューは→コチラ)も面白いゲームですけど、作り手を知っているとわかる“らしさ”は、『rain』のほうが出ていますね。
――では最後に、片岡さんから『rain』を楽しみにしている方にひと言お願いします。
片岡 お得感極まりないゲームだと思いますね。これが「雰囲気だけ楽しんでね」という内容だったら微妙ですけど、ゲームとしてすごくおもしろいですから。アクションゲームを楽しみたいという人にもぜひ遊んでもらいたい作品ですね。



