とてつもない熱気! 日本のインディーゲームを海外に紹介する“ビット・サミット”をリポート

3月9日、京都のFanjホールで、“ビット・サミット”が行われた。簡単に説明するとその目的は“日本のインディーゲームを海外に紹介すること”。

●『洞窟物語』のPixelの新作も公開!

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 2013年3月9日、京都のFanjホールで、日本のインディーゲームを主軸としたイベント“ビット・サミット”が行われた。
 その理念や開催理由について詳しくは、すでにファミ通.comに掲載したメールインタビューを参照してほしいが、簡単に説明するとその目的は“日本のインディーゲームを海外に紹介すること”。というわけで、欧米からGamespot、EDGE、Polygon、Wiredといったゲーム関連の大手メディアから記者が集結し、出展した各デベロッパーを熱心に取材していた。


●「作りたいゲームを作ろう!」というメッセージ

 基調講演を行ったのは『レッドシーズプロファイル』が海外でカルト的な人気を得ているアクセスゲームズのSWERYこと末弘秀孝氏(実際、GDC11の講演はコアなファンが駆けつけていてスゴかったのだ)と、こちらも『トーキョージャングル』の独創性が評価されているクリスピーズの片岡陽平氏。“日本のインディーゲームを世界に紹介する”というイベントの趣旨に沿って、独創性を失わずに海外のゲーマーへのアプローチをどう行うかというテーマで両氏の思いが語られた。


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▲左から、冒頭の挨拶を行うジェームズ・ミルキー氏、基調講演を行ったSWERY氏と片岡氏。

 先に登壇した末弘氏は、自身の好物であり作品のモチーフともなっているコーヒーになぞらえて、海外の成功しているインディーゲームなども参照しつつ自身の考えを展開。
 中でも重視していたのが、「作りたいものを作る」ということ。パブリッシャーからの制約や、マーケティング的な理由からの束縛から自由なゲームを作れるのがインディペンデントの醍醐味であり、前に作ったからとか流行だからといった理由が優先してしまってはインディーの強みを活かしきれないと説く。むしろ作りたいゲームを買ってくれる人を探す努力をした方がいいというのがその考えだ。それが近くにいなくても、地球の裏にはいるかもしれない、といった辺りは本イベントの趣旨とも呼応する。
 海外に合わせて作るのではなく、作りたいものを作り、それで十分な収益をあげるために、選択肢を増やすのだ。

 21才という若さでクリスピーズを創業した片岡氏の原動力も「作りたいゲームを作りたい」ということ。しかし「他と似たようなゲーム、ありきたりなゲームは作りたくない」と語る一方で、新しいだけのゲームを作るのは難しくないが、それはエゴになりかねないとも留保をつける。
 そこで『トーキョージャングル』で片岡氏が模索したのは、普遍的なものと普遍的なものとを掛けあわせて、オリジナルなものを作り出すということ。崩壊した都市とか、東京とか、動物が出てくるといったことそのものは普遍的だが、崩壊した東京で動物がサバイバルするというのはとてもオリジナルなものになるというワケ。
 それでもSCEアメリカからは、主人公が動物であることや、舞台がアメリカではないといった部分で難色を示されたこともあるそう。もちろん最終的にはリリースが決まり、評価されることになるわけだが、海外のマーケティングを意識して作る必要はなく、面白さを突き詰めるべきと語っていた。それは鳥獣戯画や浮世絵に西洋絵画とは異なった魅力が潜んでいるように、日本人の独特な感性は他にはない強みとなるからだ。

 もちろん、出展者は作りたいゲームを作って、海外へのアプローチも興味があるからこそ出展しているわけで、本イベントにふさわしい、それを後押しするような基調講演だったと言えるのではないだろうか。


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▲スポンサー各社も登壇した。こちらはQ-Gamesの吉田謙太郎氏。『Pixel Junk』シリーズなどをリリースしてきた同社の歴史を振り返った。

▲司会も務めたDDMのベン・ジャッド氏。“バイオニックコマンドーのベンベン”で記憶している人が多いかも。

▲エピック・ゲームズ・ジャパン代表の河崎高之氏は、インディーデベロッパーが商用ゲームエンジンを採用した場合のメリットを解説。

▲Unity Technologiesの大前広樹氏はナイスなTシャツで登壇し……。

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▲このオープニングムービー、なんかキャラが任意に動いてるぞ! 実はUnityで当日朝から組んだもの。これだけ早くイメージを実現できるという実証をしてみせたというわけ。

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▲任天堂はUnityとグローバルライセンス契約を締結し、インディー開発者向けに提供されている。マイクロソフトは以前よりインディーゲームを支援しているし、SCEもプレイステーション4でインディーのサポートを強化する流れ。家庭用ゲーム機のプラットフォーマー3社にとっても、インディーゲームは見逃せない存在なのだ。

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▲ゲストライブを行ったサカモト教授。ファミコンの名曲の数々を生演奏したかと思えば、途中で“スーパーサカモト教授”に変身し、『クロノ・トリガー』や『マザー2』、そしてオリジナル曲などを披露。

 海外への関心の高さは、イベントのスポンサーの1社でもあるValveによる講演の質疑応答でも伺えた。
 講演自体は同社の世界的な配信プラットフォームであるSteamの紹介や、Steamで配信するソフトが使えるSteamworks(これによりマルチプレイのマッチメイキング機能などを簡単に実装できる)や、ファン投票をベースにSteamで配信されるタイトル(おもにインディーゲームを想定している)を採用する仕組み“Steam Greenlight”といったものの紹介だったのだが、質疑応答では、Steam Greenlightに応募してから配信までにかかるコスト(デベロッパーの初期登録に預かり金のような意味合いで100ドル必要)、そして配信が決まった際のValveとデベロッパーの利益配分、配信決定前のソフトにSteamworksを組み込み可能かどうかといった、かなり具体的な内容が交わされていた。


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▲Valveからもスタッフが来日!

●Pixelの新作はiOSタイトル『Gero Blaster』!

 そしてサプライズとして、『洞窟物語』で世界のインディーゲームに影響を与えたPixelの新作『Gero Blaster』のトレイラーも世界初公開された。ドット絵のiOS向けの2Dアクションシューティングで、主人公はゲロゲーロな蛙。話を聞いたところ、擬似ゲームパッドでのプレイをどう操作しやすくするかにかなり注意している様子。全9ステージ、2013年春の配信を予定している。


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●あっという間の7時間!

 そしてイベントの後半は、海外プレス(+我々日本の記者陣や業界関係者)が自由に各ブースをまわるプレゼンタイム。ここからが本番だ。ぎっしりと埋め尽くされたホール内はものすごい活気で、人をかき分けないと奥へと進めないほど。そんな中、あちらこちらでビデオインタビューやデモプレイなどが行われていた。
 派手なデコレーションやステージなどなく、椅子と机、開発者と見に来た人と、デモ機や映像を再生するためのタブレットやPCなどがあるだけなのだが、熱気だけで言えばE3やTGSにまったく引けを取らないイベントだったと言えるだろう。ぜひ来年も、もっと大きい会場で開催してほしいところ!


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▲「世界よ、これが日本のインディーだ!」熱心に取材する海外プレスたち。Active Gaming Media(インディーゲーム配信サイトPlayismを運営)のスタッフが通訳サポートを提供していた。

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▲一番「このイベント良かったなぁ」と思ったのは、登壇者も有名クリエイターも、誰もが並列に参加し、楽しんでいたこと。左から『モンケン』を説明する飯田和敏氏、Valveと話していたベン・ジャッド氏、デモを楽しんでいるUnity大前氏。

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▲イベントのラストでは、ジェームズ・ミルキー氏らと個人的な親交のあった、故・飯野賢治氏に捧げるビデオが流された。若くして独立系の開発会社を立ち上げ、新しい表現にどんどん飛び込んでいった飯野氏は、今何を思っているのだろうか……。

●個人的に気になったヤツをピックアップ!

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▲奥のブースに行くにはどう歩いていけばいいんだろうか……という、ブースにたどり着くルートを探すゲームです。

 というわけで大成功と言えるのではないでしょうか! ……と締めくくっちゃうともったいないので、記者が個人的に気になったヤツをご紹介。
 全ブースを周りきれなかったし、前述のインタビューで大分基礎的な紹介はやっているし、記者のグッと来るポイントは結構偏っているし、ということで、あくまで個人的なセレクトであるのをご承知頂きたい。


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▲明らかに異常なクオリティーになっている『アスタブリード』が気になりまくり。普通に売れて多くの人に遊ばれて欲しい。

▲『ラ・ムラーナ』はすでにWiiウェアやPC版が発売されているが、Steam Greenlightを通り、4月よりSteamでも配信予定。実績などのシステムも既に組み込み終わっているとか。

▲Playismのブースではフリーゲーム『片道勇者』の英語版をプロモーションしていた。

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▲エンドレスシラフ『∀kashicverse - Malicious Wake』は、シューティングゲームと格ゲーのコマンド入力を合体させたという発想がおもしろすぎ!

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▲『TENGAMI』は、動く絵本の仕組みをゲームに取り込んだ、一種のアドベンチャーゲーム。イギリスのプログラマー&ゲームデザイナーと、沖縄のアーティストがコラボレーションして開発している。2013年夏にiOSでリリース予定。PC版やMac版も検討しているとか。

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▲『モン○○』という名前のゲームは数あれど、飯田和敏氏らが参加する“チーム・グランドスラム”の『モンケン』はモンスターとは関係ない。建物をブッ壊す巨大な分銅を“モンケン”と言うのだ。あさま山荘事件さながら、モンケンでテロリストが立て篭もるビルをブッ壊して人質を解放していくというゲーム。PCほかスマートフォン/タブレットで今夏配信予定。

 あとからプレスキットを見て「うわなんだこれ!」と気がつくこともあり(特に七音社の『Solaria』とFullPowerSideAttack.comの『BREAKS』。現場で気づかなかったのは記者失格である)、非常に充実したイベントだったのではないだろうか。「すでに海外向けにバリバリやっている人のワークショップとか対談があるといいな」とか、いろいろ考えるとキリがない。願わくば来年以降も開催され、日本の超カッコいいゲームがもっと多くの人の手に届きますように。


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▲七音社の『Solaria』は、会場で出展タイトルをまとめた動画が流れた時に一番最初に登場。