「日本のインディーゲームは欧米のような注目を浴びるべき」 日本産インディーゲームを世界に紹介する“ビット・サミット”主催者を直撃!

日本のインディーゲーム開発者を世界に紹介するイベント“ビット・サミット”。本イベントのディレクターを務めるジェームズ・ミルキー氏にメールインタビューを行った。
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 日本のインディーゲームデベロッパー(開発者)を世界に紹介するイベント“ビット・サミット”が、3月9日に京都府のKyoto Fanj Hallで行われる。
 今回が第1回のイベントでありながら、デジタル配信プラットフォームSteamを運営するValveや、エピック・ゲームズ、Unityなどのゲームエンジンメーカー、そしてGamespotや1up.comなどの海外メディアがスポンサーに名を連ねているほか、デベロッパーの参加募集も早々に満員に到達。各界から注目を集めている本イベントについて、ディレクターを務めるジェームズ・ミルキー氏にメールインタビューを行った。


●日本のインディーゲームに光を当てたい

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――なぜこのイベントをはじめようと思ったのか、そのきっかけを教えてください。
ジェームズ・ミルキー(以下、ミルキー) 1UP.com(※1)で日本のインディーゲームシーンについての記事を書いていた時に、アメリカのインディーゲーム開発者でもある同僚に、日本のシーンについての意見などを聞いたことがあるんです。でも、誰もここ(日本)にインディーゲーム開発シーンがあるなんて知らなかった。「これは問題だな」と。もちろん、多くの日本のインディーゲーム開発者はそれが問題だとは思わないかもしれません。でも私は、もっと多くのプレイヤーを獲得したいと考えている人もいるに違いないと思ったんです。

 そして、私がQ-Games(※2)でプロデューサーとして働くようになったある日、代表取締役のディラン・カスバートに、日本のインディーゲームを世界に向けてもっとちゃんとプロモーションするためのサミットを開いてはどうかと提案したんです。そこから話が動き始めました。
 とてつもなく労力が必要な話で、もちろん日本のメディアにも加わってほしいし、それだけなら難しいことじゃないのですが、世界に紹介するには、欧米のジャーナリストの力が欠かせません。でも彼らに日本の小規模な開発者たちに会うためだけに日本に飛んできてもらうには、とてつもなく労力が必要です。しかし、何人かの核となる人々の協力を得て、何とか実現することができました。今はビット・サミットでどんな化学反応が起こるか興奮しています。

※1 1UP.com: 海外のオンラインゲームメディア。ユニークな視点によるコラムや、オンラインメディアでありながら雑誌のように毎週さまざまなテーマで古今東西のゲームを取り扱う特集記事など、独自の路線が特徴だったが、大手メディアグループのZiff-DavisにIGN.comとともに買収され、残念ながら先日IGN本体への吸収が発表された。(公式サイト
※2 Q-Games: 京都にあるゲーム会社。2001年に『スターフォックス』シリーズのプログラマーなどを務めたディラン・カスバート氏と下岡賢吉氏によって設立。『スターフォックス64 3D』などのタイトルのほかにも、インディーゲームデベロッパーとして『PixelJunk』シリーズの開発などで知られる。最新作として“PixelJunk 1-6”が開発中のほか、『PixelJunk 4am』がインディーゲーム賞Independent Games FestivalでExcellence In Audio(音響賞)部門にノミネートされている。(公式サイト


――どうやってスタートしたんですか? Valve(※3)などの業界の大物がスポンサーに名前を連ねていますが、彼らは本当に日本のインディーに興味があるんでしょうか?
ミルキー どこから手を付ければいいかわからなかったので、最初は大変でした。ゲーム業界やメディアに関わるようになって15年、こういったイベントを体験したことはありますけど、ゼロの状態から作るっていうのはチャレンジですから。それでも、幸運にもQ-Gamesとキューエンタテインメント(※4)で働いた経験によって、私がいくらか信用を勝ち得ていたのが助けになりました。

 私達は最初に、3つの原材料を確保しなければなりませんでした。その3つは、デベロッパー、スポンサー、そしてメディア。どれかを得るためにはほかのどれかが必要という、難しいサイクルがこの3つにはあります。
 スポンサーを納得させるためには参加デベロッパーがたくさん欲しい。デベロッパーに来てもらうには、プロモーション相手であるメディアがそれなりの数必要だ。そしてメディアに来てもらうには、デベロッパーが集まる必要がある……。
 我々はゼロからのスタートで、どれも確保していない。難しい状況ですよね。

 だからまずは、私が関係あるメディアに声をかけてみるしかなかったんです。そこで昔からの友人たちに聞いたんです。「もし我々がこのイベントを京都でやるとしたら、キミは来れる?」って。
 これもまた難しい話ですよね。だってタイミング的に、サンフランシスコで行われるGDC(※5)に近いし。でも結果的に多くのメディアが、この新しいタイプのイベントを取材することに興味を示してくれたんです。そこで先程のサイクルに戻りましょう。メディアが来てくれるっていうなら、デベロッパーの興味を惹くこともできる……。

 ジャーナリストとしてのキャリアを通じて、私には日本のデベロッパーとのコネクションがすでにありました。まずは小さなデベロッパーに参加しないかと相談するところから始めんです。いくつかのデベロッパーから色よい返事を得られたら、あとはほかのデベロッパーもどんどん加わってくれるようになりますから。
 ひとつ学んだのは、日本のデベロッパーは、よそのデベロッパーが参加するのかどうかをとても知りたがるということ。それぞれ理由があるのだろうし、私は細かなニュアンスまではわからないんですが、これは大きな要素でしたね。
 そして、今月メディアに向けて公式に発表を行い、Active Gaming Media(※6)の援助を得られるようになると、参加リストは我々が思っていたよりも早いスピードで埋め尽くされることになりました。IGDA Japan(※7)に記事が乗ったのも、我々の信用保証になりました。とてもありがたいことですね。

 スポンサー獲得は予想していたよりも簡単に話が進みました。私はエピック・ゲームズ(※8)と繋がりがあったので、話を持ちかけたら、あとはもう日本での担当者は誰なのか聞けば良かった。お互い情熱を持って話を進められたので、そこからは早かったですね。
 そしてUnity(※9)とも話をしました。エピックと同じく、とても熱心に乗ってきてくれて、すぐにイベントのメジャースポンサーとなってくれました。そこからは、さまざまなスポンサーが加わってくれた。
 こうした経験を通じて、私はこのイベントや日本のインディーゲームシーンへのサポートは力強いものだと言えると思います。そしてこれは、日本のゲーム業界にとっても健康的な兆候と言えるでしょう。

※3 Valve: アメリカのゲームメーカー。『ハーフライフ』、『レフト 4 デッド』、『ポータル』などを開発した(ある意味世界最大のインディー)デベロッパーであると同時に、世界最大のデジタル配信プラットフォーム“Steam”を持つプラットフォーマーでもある。小型のマシン“SteamBox”計画も進行中。Steamはインディーゲームもよく配信されているが、“ファンがSteamで配信してほしいゲームに投票する”という、いかにもインディー向けなSteam Greenlightというシステムもある。(公式サイト
※4 キューエンタテインメント: 『ルミネス』シリーズや、『NINETY-NINE NIGHTS』などで知られるゲームメーカー。ミルキー氏は『ルミネス エレクトロニック シンフォニー』でプロデューサーを務めている。(公式サイト


※5 GDC: サンフランシスコで毎年行われるゲーム開発者会議ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンスのこと。今年も3月25日から29日にかけて行われる。前述のIndependent Games Festival(IGF)も同時開催されるので、ここでは「(欧米の)インディーネタはIGFで十分拾えるから来たがらないんじゃないか」という意味の推測。(公式サイト
※6 Active Gaming Media: ゲームに関する翻訳・ローカライズを行う会社。海外のインディーゲームを日本語に、日本のインディーゲームを英語などにローカライズして配信するPLAYISMという配信サイトも運営している。(公式サイト
※7 IGDA Japan: 国際ゲーム開発者協会(IGDA)の日本支部であるIGDA日本のこと。昨年末にNPO法人化。インディーゲーム周辺の専門部会はSIG-Indie。(公式サイト
※8 エピック・ゲームズ: 古くは『アンリアル』シリーズ、今なら『ギアーズ オブ ウォー』で知られるゲームメーカーであり、ゲームエンジン“アンリアルエンジン”を開発・提供するメーカー。インディーデベロッパーや学生向けのバージョン“Unreal Development Kit”もある。(公式サイト


※9 Unity: インディーゲーム開発者から大手ゲームメーカー、PCからスマートフォンまで、幅広く使われるゲームエンジン“Unity”を提供するゲーム会社。(公式サイト


●業界の大物から気鋭のデベロッパーまで、多数参加決定

――デベロッパー/プラットフォーマー/パブリッシャー/海外メディアはどれぐらい参加するんですか? 代表的な名前を教えてもらってもいいですか?
ミルキー 非常に多くのデベロッパーに興味を持って頂いたおかげで、非常に小さいながらも情熱のあるデベロッパーから、より大きく洗練されたデベロッパーまで、本当に、本当に多くの人が参加します。多すぎて会場が人数オーバーになってしまい、事前受付を早期に終了しなければいけなかったほどです。

 私は天谷大輔さん(※10)にお会いできるのがとても楽しみです。個人的には、現代のインディーゲームにおいて非常に大きな影響を発揮した開発者のひとりだと思います。彼は非常に小さなチーム(たとえひとりでも)で偉大なゲームを作れること、通常のビジネスルートの外側からでも成功できることを教えてくれました。
 『ラ・ムラーナ』を開発したNIGORO(※11)も参加します。彼らもまた素晴らしい。ジニアス・ソノリティ(※12)や、ヘキサドライブ(※13)も参加します。スゴいことですね。

※10 天谷大輔氏: 開発室Pixelとして『洞窟物語』などを開発。『洞窟物語』はフリーゲームとしてリリースされた後、『CAVE STORY』として海外でも知られるようになったほか、家庭用ゲーム機版などもリリースされた。ちなみに動画のDSiウェア版は配信終了。PC用のオリジナル版は作者サイトからダウンロードできる。(公式サイト


※11 NIGORO 株式会社アスタリズム内のゲーム制作集団。Flashゲーム『薔薇と椿』、『めくり番長』や、2Dアクションゲーム『ラ・ムラーナ』などで知られる。『ラ・ムラーナ』はWiiウェアで配信されているほか、PC版も配信中。(公式サイト


※12 ジニアス・ソノリティ: ポケモンシリーズのスピンオフタイトルなどを開発してきたゲームメーカー。昨年はAR(拡張現実)を活かしたニンテンドー3DS用ソフト『電波人間のRPG』、『電波人間のRPG2』などを開発・発売。(公式サイト


※13 ヘキサドライブ: 『ザ・サード バースデイ』や『メタルギア ソリッド スネークイーター 3D』など、多くのゲーム開発に関わる大阪のデベロッパー。直近では『エクストルーパーズ』プレイステーション3版や、『大神 絶景版』の開発を行なっている。(公式サイト


ミルキー 七音社(※14)の松浦雅也さんも参加します。私が思うに、彼はヒーローですね。ソニー・コンピュータエンタテインメントのような会社とも仕事しながら、独立したスタジオも持っていて、とてもユニークな仕事をしている。
 日本と欧米の“インディー”会社の違いに、欧米ではソニーや任天堂やマイクロソフトといった家庭用ゲーム機の会社と仕事をしなくても存続しやすいということがありますが、日本でそうしたからといって、それが“インディー”ではないということにはなりません。ほかの会社のためにゲームを作るのは、しばしばインディー会社の成長を助けもします。

※14 七音社パラッパラッパー』、『ビブリボン』などを手掛けたゲームメーカー。近作はKinect用ホラーゲーム『ホーント』、iOS用ゲーム『WINtA』(共同開発)など。(公式サイト


ミルキー 当日はゲストスピーカーも登壇し、“ジャパニーズスタイル”を維持しながらいかに海外のゲーマーにアピールするかといった議論を行う予定です。
 クリスピーズの片岡陽平さんはそのひとりです。理由はやっぱり、『トーキョージャングル』ですよね。東京を舞台にし、動物のキャラクターでプレイするにも関わらず、北米と欧州で大きな反響を巻き起こしました。
 もうひとりはアクセスゲームズの末弘秀孝さん。欧米では『Deadly Premonition』(レッドシーズプロファイル)で成功を収めました。Sweryサンは日本では“インディー”とみなされないかもしれません。でも欧米ではそうなのです。見方の違いでしかないですが、大事なのは“インディー精神”です。日本ではしばしば“インディー”という言葉が“アマチュア”という意味合いを内包するということを知っていますが、ゲームはゲームです。そして私は彼らのゲームをリスペクトしています。


 欧米のメディアでは、Polygon(※15)(編集者を2名、そしてビデオ班が2名やってきます)、1UP&IGNの合同チームもやってきますし、Wiredもリポーターがやってきます。そしてGamespotも3人のスタッフが来ます。Indigames.comからのジャーナリストも来ますし、彼らはGamasutra(※16)の一部でもありますね。そのほかのサイトも個人的な参加自体はできなくとも、Destructoidなどは記事を掲載すると約束してくれました。UKのメディアもいくつか、何とか人を送り込めないか検討していますし、ビットサミットの記事がいくつも世界中で載ることになると思います。

※15 Polygon: テクノロジー、アート、カルチャーなどの気合の入った記事を展開するVergeのゲーム部門がスピンオフしてできたオンラインゲームメディア。レイアウトもカッコよく、コラムや特集などは必見。(公式サイト
※16 Gamasutra: ゲーム開発に特化したメディア。現役開発者によるコラムなども掲載される。コメント欄に開発者が意見を書き込んで興味深い議論に発展することも。(公式サイト


●まずは今年を成功させ、来年は拡大へ

――僕の周りのゲーマーが何人かこのイベントに行きたがっていました(注:ビット・サミットは一般には開放されていない)。このイベントを拡張してIndiecade(※17)みたいなものにしたり、一般のゲーマーに開放する予定はありますか?
ミルキー ビット・サミットにとってこれが最初のイベントです。作業量が増えるとそれが時間を食うようになりますし、我々がコントロールできる規模でなくてはならないということもあって、我々には小規模のボランティアスタッフしかいません。でも年々大きくできればいいなと思います。
 何人かの人が個人的に、このイベントが日本だけでなく海外の注目も惹けるということで、GDCのように日本にとって重要なイベントになるのではないかと語ってくれたことがあります。そうなるのを見てみたいですが、まずは地道に成長させたいですね。
 Indiecadeは確かに参考になりました。しかし彼らはカリフォルニアというすべてが揃った場所でやっているわけで、京都で同じようにというわけにはなかなかいかないものです。
 しかし来年は、参加できるデベロッパーの数を増やします。来年やるならもっと時間をかけて打ち合わせをしなければならないと思いますが。今回は短期間で進めたので。

 オープンなイベントにする必要性はあまり感じていません。それはちょっと頭痛の種になりかねません。TGSがインディーゲームコーナーを開くそうですが、それはTGSの周辺で行うものです。ビットサミットは既存タイトルにせよ秘蔵の新作にせよ、さまざまな形でこれで完結しているものですので、大分異なります。日本で公開イベントを運営することがどう作用するのか私がまだよく理解できていないこともあって、現状では一般への公開は考えていません。

 しかしながら、何かスピンオフのようなものをやるというのはおもしろそうです。公開イベントであることを念頭に置いた“ビット・サミット ガイデン”と呼びましょうか。開発者の意見をまず聞いてみたいと思います。もし彼らが気に入ったら、なんでもできます!

※17 Indiecade: インディーゲームのショーケースイベント。カリフォルニア発祥で、東海岸で行われる“Indiecade East”もある。LAタイムスいわく「インディーゲームのサンダンス映画祭」(注:サンダンス映画祭にはインディペンデント映画が集まる)。(公式サイト


●「日本のインディーゲームデベロッパーが、欧米のそれと同じぐらいの注目を得る手助けをしたい」

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――あなたは欧米の業界で有名な編集者・ライターでした。そして日本に来たりして、今は日本のインディー開発者のひとりでもある。そして……。
ミルキー ハハハ、ありがとうございます。私を知っているとは驚きです。そう、GamespotやEGMや1UPで働いたことがあり、ファミ通Xboxにコラムを書いていたこともあります。

――どうして日本に来ることにしたんですか? 最新のマンガやアニメを見るため?(冗談です)
ミルキー マンガは好きですね(日本の家族がアメリカの親戚、つまり私のためにDr.スランプやドラゴンボールを送ってきていましたので)。でもアニメはもうあんまり見ません。多分、年を取りましたから(笑)。

 さて、私はゲームメディアやジャーナリズムの領域で、やりたいことは全部やってしまったように感じたんです。宮本茂さんも、小島監督も、水口哲也さんも、神谷英樹さんも、飯野賢治さんも、天野喜孝さんも、坂口博信さんも、植松伸夫さんも、野村哲也さんも、堀井雄二さんも……そのほかにも何人もの日本のメジャーな開発者を何度もインタビューしました。それで、もう新鮮な質問が出てこないような気がして、状況を変えたくなったんです。

 私の母が日本人ということもあって、いつか日本に住みたいと思っていました。そして妻が日本人だというのも大きかった。ジャーナリズムの世界からゲーム開発の道へ進もうとした時、板垣伴信さんと水口哲也さんからそれぞれチームに加わらないかと誘われたのですが、子供がいたのでキュー・エンタテインメントに加わって、小さなサイクルで音楽ゲームを開発していく方が自分に合っているのではないかと思い、そうすることにしたんです。
 おふたりと非常によい関係を築けたこと、会社に誘われたことはとても幸運でした。

――日本のインディーゲームシーンについてはどう思いますか?
ミルキー 『ドンキーコング』や『パックマン』などの日本のゲームを遊んで育った者として、日本のインディーゲームには本当に思い入れがあります。それは非常にピュアだからです。
 もちろん、同人グループが、よりクレイジーな何かをやろうとするよりも、すでに確立されたジャンル(例えば2Dシューティング)に情熱を注ぐようなことももちろんありますが、それでもなお、こういったジャンルにも本当にクレイジーなものを見出すことができます。私はゲームが変わっているほど好きなので、ここ日本のインディーゲームはすばらしいと思います。
 海外のゲーマーは変すぎると思って同意しないかもしれませんが、そこはビットサミットが助けられる部分でもあります。アイデアをうまくチューニングして、より大きなファンを得たいと考えているデベロッパーたちが集まって経験をシェアすることによって、より大きな成功を得られるのではないでしょうか。

 より多くの幅広い人に遊んでほしい、だから我々はゲームを作るんだと思うんです。わかりますか? 私はゲームをアメリカ人のためとか、ヨーロッパ人のためとか、ラテンアメリカ人とか、日本人とか中国人用に作るわけではありません。みんなに向けて作るんです。
 もちろん、ある特定の層(例えば日本のみとか)に向けてゲームを作るデベロッパーもいるかもしれませんが、それもまぁいいでしょう。でもビットサミットに集まる人々の多くは、少なくとももっと枝を伸ばせるか知りたがっているのだと思います。

 私はただ、日本のインディーゲームデベロッパーが、欧米のそれと同じぐらいの注目を得る手助けをしたいんです。
 そして、さまざまな形で欧米のメディアや開発者が口にする「日本のゲーム開発は終わった」とかいう言い掛かりをはねのけるのを助けたい。私は日本の開発者たちがこんなことは真実でないと証明するための団結と魂を見出してほしいんです。

――欧米のインディーシーンと比較して、日本のシーンは何がいいところ/悪いところ/変わったところだと思いますか?
ミルキー さて、日本のゲームプレイヤー(ユーザー、消費者は)非常に保守的になる傾向があるので、ここで特定のジャンルがくり返し作られ、氾濫するのをよく見かけがちです。

 ビジュアルノベルは日本では日本での魅力がありますが、欧米の多くの人にとって、単に興味を惹かないことが多いものです。ゲーム自体はいいと思うんです(私は審判をしようというんじゃありません)。こういったゲームは、もし例を挙げるならば『シュタインズ・ゲート』は秋葉原という特別な場所をベースにしていますよね。日本のゲーマーにとっては彼らが行ったことある場所が舞台で、コスプレなんかにも興味があるからこそ、親しみやすいと思うんですね。そしてそういった文化などはヨーロッパやアメリカにはないので、興味を持つきっかけがあまりない。

 でもこういったゲームは日本のために作られているとしても、その上にさらに、幅広く、普遍的な興味を惹く、そしてとてもインディペンデントなゲームが日本にはたくさんあります。『洞窟物語』、『ラ・ムラーナ』、『Revolver 360』(※18)などのたくさんの2Dシューティング、Route24(※19)の西健一氏が手掛けたiOSゲームの数々、アルヴィオンの『マリシアス』シリーズ(※20)、ドラキューの『機装猟兵ガンハウンドEX』(※21)などなど。
 これらはユニークで、多様性があるゲームです。私はこれらのゲームをすべてできるだけ多くのデバイスで遊びたい。ゲームをし続けて30年以上になりますが、まだまだ成長が見たいんです。アイデアの爆発を見ようじゃありませんか。

※18 Revolver 360 クロスイーグレットが開発した横スクロールシューティング。自機の進行方向を軸に世界を自由に回転させるギミックがある。Xbox LIVEインディーズゲームで配信され、PC版も同人ショップで販売中。第2弾『REVOLVER360 RE:ACTOR』も開発中の模様。(公式サイト


※19 Route24: 元ラブデリックの西健一氏によるインディーメーカー。故・飯野賢治と開発した『newtonica』は、追悼の意を表してシリーズ作品が無料で配信されるようになった。(公式サイト


※20 アルヴィオン  大阪にあるゲームメーカー。PSNのアクションゲーム『マリシアス』、PS Vitaの『マリシアスリバース』のほか、ソーシャルゲーム『ドラゴンタクティクス』共同開発など、さまざまなゲームの開発を手掛ける。(公式サイト


※21 ドラキュー ゲームの受託開発などを行なっているメーカー。PCでリリースした『機装猟兵ガンハウンドEX』が最近PSPに移植されてグレフから発売された。(公式サイト


――違いがあるのかはともかく、しばしばインディーとは別に語られることも多い“同人ゲーム”はどうでしょう。インディーとしての同人ゲームへのあなたの意見は?
ミルキー 同人ゲームはすばらしいと思います。同人ゲームとインディーゲームが日本ではちょっと違った意味合いを持つことがあるのは知っていますが、商業的な方法から外れて、市場性ではなく熱意によって作られており、とても純粋なものだと感じます。ABA Games(※22)や上海アリス幻樂団(※23)によるゲームは、どちらも尊敬と称賛に値すると思いますね。
 彼らの純粋性もまた称賛すべきものです。もし私が同人ゲーム作家で、誰かがやってきて、フルタイムの仕事として手伝おうかって言ってくれたら、多分その機会に飛びつくと思うんですよね。私はゲームを作るのが好きだから。シンプルな話です。

 より組織されたゲームスタジオが、(同人ゲームと)同じカテゴリーに含まれたくないと思うかもしれないということはわかります。
 でも日本のシーンが強いプライドとコミュニティを持ち、ゲーム業界のクエンティン・タランティーノとみなされ、より多くの信用を勝ち得て、時には何百万本ものセールスを記録するような欧米のインディーデベロッパーと同じように脚光を浴びるのならば、そこは乗り越えるべきだと思うんです。

※22 ABA Games: 長健太氏(ABA)によるゲーム開発プロジェクト。長年さまざなまゲームをフリーで世に送り出している。記者はこれを注釈を書くためにいろいろ調べている最中、昔死ぬほど遊んだ『まさしくんハイ!』が氏によるものだと気付いてちょっと声が出た。(公式サイト
23 上海アリス幻樂団: ZUN氏による同人サークル。おもに弾幕シューティングの“東方Project”シリーズなどで知られる。(公式サイト

――好きな日本のインディーゲームを教えてください。
ミルキー 上海アリス幻樂団、同じくエンドレスシラフ(※24)のシューティングゲームなどを愛してます。『機装猟兵ガンハウンドEX』や、トライアングル・サービス(※25)やグレフのゲームも好きですね。まぁ、全般的にシューティングゲームが好きなんでしょう(笑)。えーでるわいす(※26)もとてもクールなゲームを送り出していると思います。
 また、最近好みがアーケードスタイルのゲームに戻ってきてもいるので、もっと多くのデベロッパーが2Dプラットフォーマーやそのほかの新たなタイプのアイデアを見せてくれるのを期待したいですね。クレイジーなほどいいです! PDW:HOTAPEN(※27)はすばらしい格闘ゲームを作っていますので、ビットサミットで見るのを期待しています。ZenithBlue(※28)も『巫剣神威控』という本当にクールな3Dアクションゲームを作っていますよ。

※24 エンドレスシラフ: ビジュアルノベル、シューティングゲームなどを手掛ける同人サークル。(公式サイト


※25 トライアングル・サービス: 少人数でシューティングゲームを開発する“シューティングラブ。”で“ゲーセンラブ。”なゲームメーカー。昨年10周年を迎えた。(公式サイト
※26 えーでるわいす: 『花咲か妖精』シリーズ、『ETHER VAPOR』シリーズなどを開発した同人サークル。(公式サイト


※27 PDW:HOTAPEN: 2D対戦格闘ゲーム『ヤタガラス4』で知られる。(公式サイト


※28 ZenithBlue: 3Dアクションゲーム『巫剣神威控』を昨年リリースした同人サークル。(公式サイト


――では最後に読者に向けて何かメッセージはありますか?
ミルキー まず今年申請を受け付けられなかったデベロッパーの皆さんにお詫びしたいと思います。恐らく今回のビットサミットは成功すると思いますので、来年はもっと拡大します。
 “インディー”のイベントはほかにも日本で行われていることは知っていますが、私はこのイベントがデベロッパー、メディア、スポンサーが一堂に会する、注目するに値するユニークな集まりだと思います。私は日本のゲーム開発に光を投げかけ、海外メディアが日本のゲームへの愛を取り戻してほしいのです。

 我々はこのイベントからお金は得ません。スポンサーから頂いたスポンサー料は、最新のモニターを借りたり、イベントTシャツを作るといった形で、すべてイベントに還元します。
 参加した誰もが楽しめるハイクオリティなイベントにしたいですし、願わくばデベロッパーの皆さんが新たな友を見つけ、メディアにパートナーを得て、メディアは日本のインディーゲーム開発者のコミュニティーを発見することを期待しています。こうしたことが実現すれば、私はこれまでの努力が価値のあるものだったと思えるでしょう。

 私は日本のゲームを人生の一部として育って来ました。これは私にとってお返しをするチャンスでもあるんです。

[追記]ミルキー氏から、言い忘れたことがあると追加メッセージが到着したので追記する。

「3つの会社に謝辞を追加させてください。まず最初に8-4。ローカライズなどを行う東京の会社で、毎年東京ゲームショウに合わせてすばらしいパーティーも行なっています。私は彼らを知って13年以上になりまして、我々はビット・サミットへと繋がる同じビジョンを共有しています。ビット・サミットのコンセプトは、彼らの存在抜きでは語れません。
 次にDigital Development Managementのベン・ジャッド。DDMはビット・サミットの共同設立者でもありますし、彼の専門知識や経験は非常に役だっています。イベントではMCも勤めます。過去にカプコンのイベントで見たことがある人も多いかもしれません。
 三番目はQ-Gamesです。ディラン・カスバートの承認がなければ、まだ企画が始まってすらいなかったと思います。私の同僚の多くが、運営のための組織づくり、計画、勧誘、アートデザインで途方もなく助けてくれました。これらはすべてビット・サミットを形作るもっとも重要な要素となっています」