●“Kinectでどこまでできるか?”を追求

 今後発売予定のXbox 360用ソフトを手掛けるクリエイターが、東京ゲームショウ2011の会期にあわせて来日。『フォルツァ モータースポーツ4』を開発するマイクロソフト傘下のTurn10スタジオ。そこで活躍する日本人クリエイター、谷口潤氏(シニア・ゲーム・デザイナー)によるプレゼンテーションが日本マイクロソフトの本社で行われた。まるで実写映像を見ているかのようなトレーラームービーが公開されて注目を集めている本作。Kinectの可能性や、対戦だけに留まらないXbox LIVEでのコミュニケーションなど、グラッフィック以外の魅力や新要素についても聞くことができた。以下、谷口氏のナマの言葉で、『フォルツァ モータースポーツ4』の魅力を語ってもらおう。

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 『フォルツァ モータースポーツ 4』は、ただKinectに対応させるのではなく、“Kinectでどこまでできるか?”をファーストパーティのショーケースタイトルとして追求しました。クルマを閲覧できる“オートビスタモード”で快適にKinectが使えるのはすでにお話ししていますが、そのほかにもKinectを活用した新機能のひとつに、“ボイスハイパーリンク”があります。たとえばプレイ中にほかのプレイヤーからオンラインプレイの招待が来たとき、通常ならボタンを何度も押してメニューに戻らならければなりません。しかしKinectがあれば、“キャリアプレイ”と話すだけでダイレクトにレースメニューへ飛べます。

 “ヘッドトラッキング”もKinect対応の機能です。プレイ中に首を振ることによって、(振った方向に)視界が広がります。コーナリングのときに進行方向へ視点を向けたり、インにほかのクルマがいるかどうかを確認したりすることができます。

 さらに、“バーチャルハンドリング”。コントローラーを持たずにハンドルを回すような動作を行なうだけでプレイできます。ただしアクセルやブレーキなどの操作まで行なうのは大変なので、アシストが自動で効くようにしました。たとえば、コースオフするとステアリングを自動的にコースへ戻す“オートステアリング”という新機能が搭載されています。もちろん、コントローラーやワイヤレスコントローラーでプレイした場合も、『フォルツァ モータースポーツ 3』と同様にアシスト周りを細かくセッティングできます。アシストをすべてオフにすると運転がむずかしくなりますが、クルマ本来の動きが楽しめます。

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▲東京ゲームショウ2011にあわせて公開された日産フェアレディZ。左端は昔なつかしい1969年モデル。

●“そこに本物のクルマがある”かのようなグラフィック

 グラフィックに関しては、われわれが“IBL(Image Based Lighting)”と呼ぶ技術で、環境光や風景の写り込みを細かく表現しました。目指したのは、「そこに本物のクルマがある」感覚です。たとえば"背景に建物や自然があって、遠くに雪山が見えるアルプスで、クルマに強い日光が当たるとどう見えるか"といったことまで計算しています。描画エンジンに厳しいことばかり要求しているわけです(笑)。クルマを鑑賞する“オートビスタ”モードの背景は、クルマのハンガー(格納庫)になっています。これは、クルマをより美しく見せるために行き着いた答えです。実際のクルマのショールームと同じように、たくさんのライトでディテールまで美しく見えるようになっています。質感に関しても、アルカンターラやカーボンといった素材による見えかたの違いを表現しています。通常、クルマのゲームを作る側としては、ディテールの粗さが目立つといけないので車体に視点を寄せてほしくないと考えるものですが、『フォルツァ モータースポーツ 4』に関しては、「ぜひ、視点を近づけて見てください!」と自信を持って言いたいです。

 オートビスタモードでは、本作でコラボレーションした“トップ・ギア”(イギリスの自動車番組)の司会、ジェレミー・クラークソン氏のコメントが聞けます。彼は非常に辛口で、好きなクルマはべた褒めするけれど、嫌いなクルマは徹底的にけなすんですよ。各車に“Point of Interest”という白いドットが隠されていて、クルマをよく見ると発見できます。その中に、ジェレミーの批評や通常の音声解説などが入っているわけです。そういった発見があることも、オートビスタモードの楽しみのひとつです。インタラクティブな図鑑といった感じですね。実際のショールームでは、エンジンやコクピットはなかなか覗けないし、「テストドライブでもしようか」とエンジンキーを回すわけにもいきません。でもオートビスタモードでは、そういった体験がすべてできてしまいます。

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●クルマだけの楽しみに留まらないオンラインのコミュニティー

 本作で新たに登場した“コミュニティー”は、FacebookやmixiといったSNSのように、もっとユーザーどうしのつながりを広げて遊んでもらいたいと考えて用意しました。ひとりで遊ぶのではなく、みんなで楽しむための場です。マルチプレイでは最大16人のプレイヤーが対戦できるようになっていますが、楽しみはレースだけではありません。オークションハウスやストアフロントといったものもあります。オークションハウスでは、クルマを売買することができます。ストアフロントは、自作したペイントなどの“商品”を自分の店に置いて、ほかのユーザーに(ゲーム内のクレジットで)売ったり、評価してもらったりするシステムです。ペイント以外にも、チューニングセットアップやビデオ、写真など、いろいろな“商品”を扱うことができます。たとえば、チューニングのスペシャリストとしてコミュニティで有名になることもできるんです。

 また、本作ではユーザーどうしでクラブを結成することができます。“BMWクラブ”とか、“峠ドリフトクラブ”とか、“1970年代の旧車愛好家クラブ”とか、何でもいいんです。僕らが用意するのは“クラブ”という枠組みだけ。それをどのように使うかは、皆さんの自由です。メンバーを招待するには、ゲーマータグを直接入力してもいいですし、オンラインでいっしょに遊んだプレイヤーのリストから招待を送ることができます。リーダーから招待を送ったり、入りたいクラブのリーダーに申請して承諾を得ればメンバーになります。クラブでは何ができるのか? 典型的な例としては、メンバーを呼んでレースを開催できます。それから、クラブのガレージがあって、メンバーどうしでクルマを共有することができます。また、メンバーのあいだでクルマを共有することもできます。そのクルマのオーナーがオフラインであっても、ほかのメンバーはいつでも共有されているクルマに乗れます。特別なチューニングが施されたクルマや、ペイントの凝ったクルマなど、いろいろなクルマがシェアされることになると思います。また、ゲーム内でもフェラーリやランボルギーニなどのスーパーカーは値段が高いので、ひとりで何台も買い揃えるのは大変ですが、各メンバーが所有しているスーパーカーを共有すれば、何台ものスーパーカーが使えるわけです。ただし、クルマのオーナーがクラブから脱退すると、その人が共有していたクルマはクラブのガレージからなくなります。

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●“トップ・ギア”とのコラボレーションで生まれたユニークなレース

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 レースにはいくつもの種類があるのですが、“トップ・ギア”とのコラボレーションで“サッカー”というゲームが新しく加わりました。“トップ・ギア”のおバカ企画の一環で、実際にサッカーボールを使い、クルマでサッカーの試合をやっているんです。そして、“カー・ボウリング”も非常にユニークです。クルマでコース上に設置されたボウリングのピンを倒し、スコアを競い合います。ボウリングのピンのレイアウトはクラスごとにいくつか用意されています。ドリフトで入ると倒しやすいレイアウトだとか、「こんなの全部倒せない!」と言いたくなるようなむずかしいレイアウトまであって、攻略のしがいがあります。お茶目で楽しいイベントです(笑)。

 また、『フォルツァ モータースポーツ2』にあったパブリック/プライベートレースが戻ってきました。フレンドどうしで集まって開設したプライベートロビーを、パブリックに変えて公開することができます。パブリックにすると世界中のプレイヤーがレースを検索して参加できます。レースの名前は自由に変えられるので、好きなタイトルをつけて楽しんでください。

●リアルさにこだわったクルマの挙動

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 本作ではバンピー(路面の凸凹)も効果的に取り入れられていて、高速領域に入るとクルマの挙動が不安定になります。それと、FOV(フィールド・オブ・ビュー。視野角のこと)についても、高速領域に入ると視界の周りにブラーがかかったようになって、視野角が狭くなるという体験が表現されています。さらに大きな変更点は、タイヤです。従来は、数社のタイヤメーカーから提供してもらったデータをわれわれが解析して利用していたのですが、今回はピレリ(イタリアのタイヤメーカー)から提供してもらったタイヤの生データを、そのまま入れているだけなんです。『フォルツァ モータースポーツ 4』ではタイヤが4種類(ストック、ストリート、スポーツ、レース)がありますが、すべてピレリのデータをそのまま使っているので、よりリアルなタイヤの表現になっています。タイヤのよじれひとつを取っても、ただよじれの影響を計算しているのではなく、ビジュアル面でもちゃんとよじれています。見た目ではタイヤの空気圧を落とさないとよく分からないんですが、よじれによって起こる現象もちゃんと計算されています。

 Kinectへの対応だけに留まらず、レースそのものについても真面目に追求しています。もしかしたら“Kinect仕様になっただけでしょ?”と思われている方がいらっしゃるかもしれませんが、それは大間違いです。Kinect、コミュニティを初めとするXbox LIVE、ゲームプレイ、ビジュアル。あらゆる面でパワーアップしています。“『フォルツァ モータースポーツ 4』をやらないで、どうするの!?”と言いたいですね(笑)。

 と、1時間では語り切れないほど『フォルツァ モータースポーツ 4』の要素はてんこもり。谷口氏のプレゼンを聞いていて実感するのは、開発者のクルマに対する愛とこだわり。レーシングシミュレーターとしてのクオリティーを上げる一方で、コミュニティー要素を追加してさらなるクルマの魅力を訴求するなど、クルマとレースゲーム作りに対するこだわりをひしひしと感じる。願わくば、より多くの日本のゲームファンが『フォルツァ モータースポーツ 4』でクルマゲームの楽しさに触れんことを! 『フォルツァ モータースポーツ 4』は2011年10月13日発売予定だ。

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[東京ゲームショウ2011 Xbox 360クリエイターインタビュー]
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