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「作ったのは、量産品ではなくキャラクター」 『シャイニング・レゾナンス』3Dモデルの魅力とは? Tony氏&フライトユニット松本氏インタビュー

更新日時:2020-08-11 19:54:24

イクサ』から7年、3Dキャラクターはついにここまできた!

プロフィール

 『シャイニング・レゾナンス』では、Tony氏(キャラクターデザイン担当)のイラストをそのまま3D化したようなキャラクターが、フィールドを駆け巡る。このキャラクターモデルは、数々のゲームの3Dキャラクターを手掛けてきたフライトユニットが制作したものだ。

 今回お届けするのは、イラストレーターTony氏と、フライトユニットの松本浩幸氏のインタビュー。3Dキャラクターが生まれるまでの過程や、こだわったポイントなどをうかがった。

※本記事は、東京ゲームショウ 2014で配布された冊子『週刊シャニ通』に掲載されたインタビューに、加筆・修正を行った完全版です。

■Tony(左)
フリーのイラストレーター。『シャイニング・ティアーズ』(2004年発売)で、初めて家庭用ゲームのキャラクターデザインを担当。以後、多数の『シャイニング』シリーズ作品に携わる。

■松本浩幸(右)
フライトユニット代表取締役。ゲームプランナー・ディレクターとして活動した後、2002年にフライトユニットを設立。現在は3Dキャラクター制作を中心に、ゲーム作りに取り組んでいる。


■Tony氏のイラストを3Dでどのように表現するか

――フライトユニットが『シャイニング』シリーズの3Dキャラクターを制作するのは、『シャイニング・フォース イクサ』(2007年発売)以来となりますね。

松本浩幸氏(以下、松本) そうですね。フライトユニットにとって、『イクサ』は転機となった作品でした。ゲームオリジナル作品の主人公の3Dモデルを作らせていただくのは、『イクサ』が初めてだったんです。幸いにも高評価をいただけて、「これからもメインキャラクターの3Dキャラクターを作りたい」と思ったことが、現在につながっています。

――『イクサ』のモデルを見ると、このときから、2Dイラストのテイストを活かしたキャラクター作りを意識されていることがわかります。

松本 そうですね。“イラスト調”は、自分たちにとってのひとつのキーワードでした。当時はトゥーンシェーダーが流行っていたのですが、それとは違うことをやりたいと思っていたんです。

Tony氏(以下、Tony) 『イクサ』のモデルを見たときは、「うわぁ、すごい」と思いました。リアルな等身のキャラクターが動き回っていて、「僕の絵もポリゴンモデルにしてほしいな」と、ちょっとうらやましく思っていました(笑)。

トウマ3Dモデル シリル3Dモデル
ムービー1 ムービー2

▲『イクサ』のキャラクターモデルとムービーシーン。『イクサ』はプレイステーション2のゲームだが、いま見ても、色あせていないクオリティーだ。

――では、『イクサ』から7年、ついにフライトユニットがTonyさんの絵をもとに3Dキャラクターを作ることになりましたが、『レゾナンス』への参加が決まった時は、松本さんはどのようなお気持ちでしたか?

松本 以前から、Tonyさんのイラストは3Dに向いていると思っていたので、「すごくいいものができるな」と感じました。『イクサ』のころから技術も進化しているので、3DでTonyさんらしさを出すにはどうすればいいか、研究しましたね。『イクサ』では、ムービー用のプリレンダモデルと、バトルなどでプレイヤーが操作するリアルタイムモデルを別々に作っていましたが、いまはムービー用クオリティーのモデルを直接動かせるようになりましたし。

――その“Tonyさんらしさ”をいかに表現したのかについて、詳しくお聞かせいただけますか?

松本 Tonyさんの絵のいちばんのポイントは、繊細さだと思っています。線が細く、そしてディテールが細かい。ですので、3Dキャラクターの眉毛や目の線、ちょっとした衣服のシワなど、細部がイベントシーンでアップになっても耐えられるぐらい細かく描き込んでいます。昔のゲームでは、眉毛は3ドットぐらいで表現されていたと思いますが、いまでは描写が全部見えてしまうので。

Tony 本当に、細かいところまで表現していただいているんです。PSPのタイトルについては、3Dモデルで表現できることに限界があったのですが、今回はPS3ということで表現の幅が広がったので。松本さんからも、「ディテールがあるほうが映える」とご提案いただいて、キャラクターの衣装の細部を追加でデザインしたりもしました。

松本 たとえばリンナの服は、最初は模様が入っていなかったんです。ですが、3Dモデルにすると、お腹のあたりがちょっと間延びするので、模様をデザインしていただきました。

Tony 3Dのポリゴンで、僕の絵を忠実に再現していただけて、本当にうれしかったですね。

松本 いい色合いが出るように、シェーダーも調整しました。

Tony フライトユニットさんは、イラストレーターの特徴に合わせて、シェーダーを作ってくださるんです。

松本 調整にはかなりの時間をかけましたね。シェーダーには、“キラリ成分”が多めに入っているのがポイントです。

――キラリ成分とは?

松本 ツルッ、キラッとした感じが、セガさんのゲームらしいかな、と思いまして。たとえば、キリカの服の模様が、動きに合わせて光ったり。

Tony キリカについては、振り袖を動かすという、無理なお願いを叶えていただきました。「これが動くんだ、すごい!」って。

松本 最初にキリカの絵を見たときは、「動かすのがたいへんそうだな」と思いました(笑)。でも、デザインの段階で制限をつけたくはなかったんです。苦労はするだろうけど、できるだろう、という感覚もありました。モーションを担当したメディア・ビジョンさんには苦労をかけてしまいましたけどね。アグナムのローブなども、とてもカッコよく翻るので、ぜひ見てください。

キリカ3Dモデル

▲キリカの揺れる振り袖は見どころのひとつ。

アグナム3Dモデル

▲Tony氏も松本氏もお気に入りのアグナム。顔をよく見ると、眉毛など、ひとつひとつのパーツが繊細に作られているのがわかる。

■ラフ画や落書きからイメージを膨らませる

――3Dキャラクター作りは、まず、どのような作業から始めるのですか?

松本 新しいプロジェクトを始めるときは、最初に1体のキャラクターモデルを提示して、「こういうゲームを作りましょう」と、目標をはっきり打ち出すことが大事だと思っています。とくに最近のゲームには、いろいろな会社のスタッフが関わっていますから。キャラクターを見れば、「ああ、このキャラクターが動くゲームを作るんだ」と全員が共有できますよね。

――今回は、初めにどのキャラクターのモデルを作ったのですか?

松本 ソニアです。立ち位置がすごくはっきりしているキャラクターだったので。3Dキャラクターは、ポリゴン数を考えつつ、破綻がないように、丁寧に作るものですが、最初に目標として提示するモデルに関しては、そういった土台は無視して作り始めます。みんなで手分けして、1週間ぐらいで仕上げてしまいますね。とにかく、「こういうモデルを作る」とスタッフ全員が共有できることが大切なので。

――そのモデルが出来上がって、目標を全員で共有した後、改めて3Dキャラクターを作り始めるということですね。

松本 はい。1週間で仕上げるモデルとは違って、地味な作業をこつこつと重ねて作ります。キャラクターモデルをひとつ仕上げるまでには、半年とか、1年かかったりもします。

Tony 驚いたのは、フライトユニットさんから、「カッチリしたデザイン画だけではなくて、ラフ画なども大量に欲しい」と言われたことですね。自分の絵が3Dキャラクターになるだけでもうれしいのに、ラフ画まで見て、イメージを膨らませて作ってくださるなんて。

松本 しっかりしたデザイン画だけだと、拾える情報が少なすぎるんです。もっとラフな絵とか、落書きとかを見て、そのキャラクターの特徴を掴んでいくんです。ラフ画のほうが、描いた人の感情が出ていますしね。

――ちなみに、3Dキャラクター制作には、何人の方が携わっているのでしょうか。

松本 ボディの部分は数人で分業しますが、顔の部分は、チームのリーダーがすべて作っています。3Dキャラクターの顔って、やっぱり作った人の特徴が出るんですよね。もちろん、基本はTonyさんの絵に忠実に作るのですが、担当者のクセはどうしても出ますし、そのクセは活かしたほうがいいものになると思います。ときに担当者がこだわりすぎてしまって、スケジュール通りに進まず、ご迷惑をおかけしてしまったりもするんですけど(苦笑)、僕たちが作っているのは量産品ではなくキャラクターなので、作り手の情熱やノリは大切だと思っています。

――『レゾナンス』チームのリーダーの方は、どのようなクセを持っているのですか?

松本 桑田という若手スタッフがリーダーなのですが、繊細さが特徴です。今回は、桑田のテイストと、Tonyさんの絵のテイストがマッチしたと思いますね。

■フィギュアと3Dキャラクターには共通点がある?

――『レゾナンス』のキャラクターの中で、3Dモデルが作りやすかったのは、どのキャラクターですか?

松本 『レゾナンス』は、どのキャラクターも特徴がはっきりしているので、みんな作りやすかったです。フィギュア化されることを想定して、ぱっと見ただけでキャラが立つようなデザインになっていますよね。

Tony キャラクターのシルエットがどう見えるかは、つねに意識していますね。

松本 3Dキャラクターを作るにあたって、Tonyさんのフィギュアはかなり参考にさせていただきました。イラストを立体にしているという点では、フィギュアも3Dキャラクターも同じですので。「ああ、こういう風に落とし込むのか」と。

Tony 昔、僕の絵は「フィギュアにはできない」と言われていたことがあったんです。でも、澤田さん(セガの澤田剛プロデューサー)は「そんなことはない」と言って、フィギュア化を始めました。じつは、いつかゲームで3Dキャラクターを作るときの参考にしよう、という意図もありまして……。

――狙い通りになったというわけですね!

松本 ちなみに桑田は、じつは趣味でフィギュアを作っていたりするんですよ。澤田さんに桑田を紹介するときは、桑田が作ったフィギュアを見せて、「これだけのフィギュアが作れます!」とアピールしました(笑)。

――(笑)。桑田さんを始めとする、フライトユニットの皆さんが作った3Dキャラクターが動くのを早く見たいです。

Tony 皆さんにも、早く見ていただきたいです。僕の絵が高解像度の3Dキャラクターになって動くというのは、長年の夢でしたから。

松本 『イクサ』から7年、フライトユニットの3Dキャラクターが「ようやくここまで到達した」という気持ちがあります。『レゾナンス』の発売を、ぜひ楽しみにしていてください。


リンナイラスト リンナ3Dモデル

▲左がTony氏のイラスト、右がフライトユニットの3Dモデル。比べて見るとわかるが、Tony氏の絵と3Dモデルは、まったく同じ造形をしているわけではない。しかし、この3Dモデルは、誰が見てもTony氏のキャラクターだとわかるし、魅力的に見える。クオリティーが高いフィギュアが、もとの絵とまったく同じ造形をしているわけではないように、3Dキャラクターもまた、作り手の作家性や解釈が入ることによって、魅力を増すということだろう。

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シャイニング・レゾナンス
■タイトル
シャイニング・レゾナンス
■ハード
プレイステーション3
■ジャンル
竜と奏でるRPG
■発売日
12月11日(木)発売予定
■価格
通常版・ダウンロード版は
8222円[税抜](8880円[税込])
フィギュア付き特別限定版は
16800円[税抜](18144円[税込])
■CERO
15歳以上対象
■備考
キャラクターデザイン:Tony(AlbionWorks)、開発:メディア・ビジョン、キャラクターモデル制作:フライトユニット、楽曲制作:Elements Garden、シナリオ監修:火野峻志
■発売・販売
セガ
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