増子直純(ますこ・なおずみ)●バンド“怒髪天”のボーカルにしてフロントマン。大成功を収めた結成30周年記念の武道館ライブの模様を収めたDVD『怒髪天結成30周年記念公演“いやぁ、こないだ、ほんと、どうもね。”LIVE AT BUDOKAN』が、2014年3月19日にリリースされる。また、2014年4月18日の京都を皮切りに、全国47都道府県を回るツアーの開催も決定。その半生を描いた初の自伝『歩きつづけるかぎり』(音楽と人刊)も話題となっている。

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みんなが勧めてきた理由がわかった!

――まず最初に、『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)』の感想をお聞かせください。

増子直純(以下、増子) すごいゲーム。ずっと周りから「絶対やったほうがいいよ」と言われ続けていたんだよね。『ソルサク』に合わせてプレイステーション Vitaを買った人も多かった。でも、なかなか機会がなくて、プレイできていなかった。やらなきゃいけないことが多いうえに、遊びたいゲームが次から次へと増えていたから、新しい携帯ゲーム機に手を出す余裕がなくて……。でも、やっと2013年末あたりに『ソルサク』とPS Vitaを手に入れてプレイしたんだけど、“これは、おもしろい”と。みんなが勧めてきた理由がわかった。

――どのあたりが、増子さんにヒットしたのでしょうか?

増子 魔法のみで戦う、というシンプルさがいいよね。コンセプトがしっかりしていて、わかりやすい。たとえば、剣や斧を使った戦いは、やろうと思えばだけど、包丁やバットを使えばイメージしやすいじゃない?

――極端ですが、確かに(笑)。

増子 でも、魔法はそうはいかないでしょう。いろいろな種類の魔法が用意されていて、自分では想像できない“闘い”が体験できるのは楽しいし、気持ちいいよね。ダークな世界観も好きだよ。いい意味で“中二”っぽい(笑)。男女の声が二重になっているリブロムの声とか、“あしゅら男爵”(※編註:永井豪原作の作品『マジンガーZ』に登場するキャラクター)を思い出した。マンガもそうだけど、“中二感”はゲームにも重要だよ。一気に世界へ入り込みやすくなるから。あと、これはオレ自身もすごく感じたし、みんなも言っていたことだけど、ボリュームがすごくちょうどいい。ひとつのクエストにかかる時間が、“長すぎず短すぎず”で。これは、大人にとって非常にありがたい(笑)。

――通勤通学の時間や、ちょっとした休憩時間で遊べるくらいですよね。

増子 よく考えられていると思うよ。大人と言えば、“何かを手に入れるには、それに見合った代償を支払わなければならない”というシステムも響いたね。これは、世の理(ことわり)でもあるから。子どもたちも『ソルサク』で学べるんじゃないかな、“欲しいものがあっても両方は手に入らんぞ!”と(笑)。まだクリアーはできていないんだけど、サクサク進められるのもうれしい。同じクエストを何度も挑戦するにしても、さっと遊べるじゃない? 本を読むことで物語が進行するシステムにマッチしているよ。

――リブロムに描かれた物語を追体験するというゲームシステムは、独創的ですよね。

増子 リブロムがまたいいんだよ。生意気だし、自分の指で涙をぬぐってあげられるのもおもしろい。本というデザインがゲームに活かされていて、メニューが目次のようになっている点や、それぞれの物語が派手なムービーではなくイラストとテキストで描かれる点も落ち着くね。現実とファンタジーの境目が、ちょうどいいところで感じられると言うのかな。あまりに非現実的ではない、大人のファンタジーを楽しめる気がする。物語もしっかり描かれているから、ただ目標を消化するだけのようなアクションゲームではなく、RPGのように腰を据えて遊べるし。それに、それぞれの章を選択する画面で、和風に描かれた魔物のイラストが表示されるでしょ。あれ、『鳥獣戯画』(※編註:『鳥獣人物戯画』。国宝の絵巻物で“日本最古の漫画”とも呼ばれている)っぽくて、好きなんだよ。イラストを描いた手ぬぐいとか、欲しくなるもの(笑)。リブロム風のブックカバーも。立体的であればあるほど、いいな。

――すごく生々しいものになりそうですが……(笑)。

魔物は生贄に捧げまくるね!

――どのようなプレイスタイルで遊んでいるのですか?

増子 魔物がもともとは生き物や人間であるという設定が刺激的で好きなんだけど、倒した魔物はバンバン“生贄”に捧げまくるね。まったく“救済”はしない。「俺に立ち向かったのが、間違いだ」と魔物たちに思い知らせるためにも(笑)。

――そのうち、魔法使いの見た目が“魔の姿”になってきますよ。

増子 カメみたいにね。カメに肉ばっかり食べさせると、甲羅が岩みたいにごつごつしてくるんだよ。逆に草を食べ続けると、おだやかな甲羅になる。それと同じだね(笑)。

――いっしょかどうかはわかりませんが、とにかく前のめりにプレイされていることはわかります。

増子 確かに攻撃一択なところはあるけれど、どのゲームでもそういうスタイルだから。救済を選ぶのが“いい魔法使い”とするなら、俺は“悪い魔法使い”をとことんまで突き詰めたいね。

――そうなると、ただひたすら魔法で攻撃するのでしょうか。

増子 そうだね。敵に突っ込んで、近接魔法で攻撃するスタイルかな。中でも気に入っているのは、剛腕系の魔法。手がデカくなるのが、カッコイイよね。近接魔法は、攻撃している感覚をより楽しめるから、好きなんだ。回復魔法は、途中までまったく使っていなかったんだけど、さすがにキツくなってきて使うようになった。

――それで魔物を倒せるというのは、逆にスゴイですよ。

増子 大変だったよ!(笑)。ジャック・オ・ランタンも“攻撃を避けては近づいて殴る”のくり返しで、なんとか倒せたから。突進攻撃やロケットパンチは強かったよ……。

――ジャック・オ・ランタンの場合は、盾で突進攻撃を防ぐのと投擲魔法で体力を削るスタイルが定石かと。

増子 なるほど! でも、まずは魔物の攻撃方法を観察して、把握できたら挑戦するようにしているから、倒せたのかも。ひとつひとつを理解しながら、じっくりとプレイするタイプだからね。ただ単純に、前のめりで遊んでいるワケじゃないよ(笑)。投擲魔法を使いこなせるようになるのは、まだまだこれからかな。

――でも、『ソルサク デルタ』のジャック・オ・ランタンは、盾を使って投擲魔法を防ぐようになります。

増子 学んで賢くなったんだ(笑)。『ソルサク デルタ』では、戦略そのものが変わっちゃうこともあるんだね。でも、魔法の威力を数値的に下げるのではなくて、魔物の動きを変えたというのはすばらしいね。

――ちなみに、仲間が助けを求めてきても、やっぱり生贄に捧げます?

増子 そうだね……状況によるかな。あと少しで魔物を倒せる状態なら、迷わず生贄に捧げるけれど。まだまだこれからというところなら、救済してもいいよね。

――それは意外です。

増子 序盤なら「もうちょい頑張れるだろう」と応援するけれど、後半だと、正直言ってわからないかな。でも、そこはきちんと判断するよ!(笑)

第2回の後編では、増子氏の“魔物”愛が止まらない!? 禁断の魔法“禁術”、そして『ソルサク デルタ』についても語ります。お楽しみに!

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