



旧ソビエトの社会体制崩壊後、独立し主権国家となった東スラブ共和国。しかしその後、富裕層(オルガルヒ)の支援を受ける政府側と、貧困層の民衆で構成される反政府勢力側との間で紛争が繰り返されていた。この内乱が過激化する中、各地で「戦場でモンスターを見た」という奇妙な噂が流れ始めるのだった……。
この情報を受けた米国はB.O.W.拡散を危惧し、大統領直属エージェント、レオン・S・ケネディを現地に単独潜入させる。だが、政府事情により米国は突如撤退を決め、レオンにも退去命令が下る。
「B.O.W.の手掛かりがここにある以上、俺は残る――。」
米国政府のサポートない中、独り戦場へ駆け出すレオンだったが、リッカー(B.O.W.)が現れ、反政府勢力側に拉致されてしまう。
反政府勢力のメンバーであるアレクサンドル(サーシャ)・コザチェンコ /バディ(相棒)とJD、長老会議の指導者アタマン(長老)であるイワン・ジュダノビッチ、そして椅子に縛られたレオン。絶体絶命の状況の中、政府軍の攻撃が開始される――。

ここでは、『バイオハザード ダムネーション』の神谷誠監督とカプコンの小林裕幸プロデューサーに見どころや開発秘話などをうかがったインタビューをお届けしよう。
――まずは、小林プロデューサーにお伺いしますが、『バイオハザード ダムネーション』についてのご感想は?
小林裕幸氏(以下、小林) 制作費や時間などの問題もあって、3D立体視版の制作をどうしようかと思っていたんですが、世の中的な流れ、またフルCG映画ということもあって、神谷監督にムリを言って、3D版の制作もお願いしました。3Dを観たときに「3Dにしてよかった!」と改めて感じましたね。神谷監督は3D映画の制作は初めてですよね?
神谷誠監督(以下、神谷) 監督をするのは初めてですね。
小林 2D版のほうを先に観ていてたのですが、3D版は、その効果をわざとらしく使う映像ではなくて、ふつうに映画として観ていて、立体感を感じる3D映画になっていたので、3Dにしてよかったなと思いました。ですので、2D版ももちろんですが、ぜひ3D版も観ていただきたいなと思います。
――3D版の制作にご苦労などありましたか?
神谷 最初に2D版を制作して、そのあと、3D版の制作に取り掛かり、視差チェックなどをしながら、飛び出し過ぎて気持ち悪く見えるものはそうならないように、逆に飛び出させたいシーンは、しっかり飛び出すように立体視の調整をしていきました。監督として携わる3D映画は本作が初めてなのですが、実写での3Dは助監督時代に何度か携わったことがありましたので、3D立体視の仕組みなども勉強していたので、さほど苦労や戸惑いはなかったですね。小林プロデューサーも仰っいましたが、ムリして飛び出すシーンを多く入れて、結果的に観ているうちに気持ち悪くなったりするようなものは作りたくないと思いっていました。ただ、コンテを切るときに、3D立体視が効果的なシーンは計算して入れていきました。
小林 コンテを作る段階では3D対応は決まっていたんですが、脚本段階では3D対応は決まっていませんでしたね。
――脚本はどういった流れで?
小林 菅さん(脚本担当の菅正太郎氏)が書くんですが、私と神谷監督、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントさんのプロデューサーを交え、何度も打ち合わせを重ねました。
神谷 時間はすごくかけましたよね。
――『バイオハザード ダムネーション』の物語は、ゲームのナンバリング最新作『バイオハザード6』へと続く物語、いわゆる『6』の前日譚となっていますが、どう『6』につなげるかといった感じで脚本を考えていったんですか?
小林 違います(笑)。『バイオハザード ダムネーション』の制作に先に取り掛かったので、脚本も先に完成しました。そのとき『6』は何もなかったです(笑)。『バイオハザード ダムネーション』の制作は2009年初頭から取り掛かったのですが、『6』はその年の7月くらいから本格的にスタートしたので。
――『6』は『バイオハザード ダムネーション』制作開始から半年後にスタートしたわけですね。『バイオハザード ダムネーション』制作中は『6』のことは、意識しましたか?
神谷 いえ、じつはいまだに『6』についてはよく知りません(笑)。
小林 『6』を意識せずに作ってもらおうと思っていたのでずっと黙っていました(笑)。
神谷 なので、探り探りなんですよ(笑)。たとえば、エイダをこういう展開にもっていって大丈夫ですか?」と聞いたら「エイダは……」みたいな(笑)。『6』の脚本もかたまってきたころには、「エイダはそれをやってもらったら困るなぁ」とか(笑)。そういうことがありながらの作業でした。
小林 『6』のチームにも『バイオハザード ダムネーション』の情報は入れなかったので、両方を知っているのは私だけという(笑)。
神谷 (笑)。
小林 互いに意識せずに制作を進めてもらいました。「こう展開したい」という監督の想いをできるだけ実現できるよう調整しつつ、『6』と大きな齟齬ができる場合は、こちらの意向を汲んでいただいたりしながら、進めてもらいました。
――そもそも神谷監督はゲームの『バイオハザード』シリーズのファンということですが、もっとも大きく惹かれてるところはどこなのですか?
神谷 私はジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』という映画が大好きなのですが、それ以前にホラーやアクション映画も大好きなんですね。『ゾンビ』はアクション的な要素とホラー的な要素がすごくマッチして、ゾンビという存在も強烈なインパクトでした。ですので、もともとゾンビファンでしたので、『バイオハザード』というゾンビが登場するゲームが気になって。それまで家庭用ゲーム機というものを持っていなかったかので、『バイオハザード』のためにプレイステーションも購入して、プレイしてハマってしまいました。当時は仕事が忙しかったんですが、徹夜してプレイしていましたね。やめられないんですよ(笑)。また、『バイオハザード』は1作目から演出などが映画的じゃないですか。なのでゲームの世界に入りやすかったというのもあるかもしれません。
――ゲームの『バイオハザード』シリーズのエッセンスを『バイオハザード ダムネーション』に落とし込んだ部分はありますか?
神谷 カメラアングルは多少は意識してますが……。
小林 神谷監督には映画として制作してもらっているので、さほどないかもしれません。ただ、脚本担当の菅さんはセリフなど、ゲームのエッセンスを入れていただいていますね。もともと『バイオハザード ダムネーション』はゲームの世界観を踏襲してもらっているのですが、とくにレオンの雰囲気は前作以上に非常にゲームに近いです。
――この秋は実写版の『バイオハザードV:リトリビューション』にもレオンとエイダが登場します。
小林 たまたまなんですけどね(笑)。『バイオハザードV:リトリビューション』のほうはポール(ポール・W・S・アンダーソン監督)がふたりを出したいと打診してきて。
神谷 この秋の3作のうち、いちばん最初にレオンとエイダの登場を決めたのは私だと自負してます(笑)。
――レオンとエイダはお気に入りのキャラクターなんですか?
神谷 レオンは前作の主人公で、今作もレオンを主人公で、という話が小林プロデューサーからありましたので、それだったから今回はエイダを出さないとダメだろう、と思って、いちばん最初の構想ではレオンとエイダのラブストーリーのようなものになればいいなと思っていました。
小林 そのエイダと対比する存在として、レオンにバディ(相棒)をつけて、いわゆる“バディムービー”(主人公がふたりひと組で活躍する映画ジャンル)にしたいという構想もあって、その名のとおりバディというキャラクターも登場させました。ですので、構想段階では、レオンとエイダ、そしてバディという登場人物が決まっていて、そこから脚本もスタートした感じですね。
――バディを登場させたい、というのは何か理由があったのですか?
小林 前作はレオンとクレア、もしくはアンジェラという男女の組み合わせだったので、今回は男どうしで違いを出したいというのはありました。『6』では、また女性(ヘレナ)と組むことになりますし。
神谷 ただ、単純なバディムービーにはしたくなかったので、敵対している関係からスタートさせることにしました。バディの相棒にはもともとJDというキャラクターがいるのですが、そこからレオンと組むことになる関係性の変化も見どころのひとつだと思います。
小林 映画は物語も大切なので、レオンとエイダを軸に、映画のオリジナルキャラクターで、映画らしい物語をどう展開していくかというは意識しましたね。なかでもJDは、いいキャラクターになりました。
神谷 JDは“遊べるキャラ”で、作品にいろいろ広がりを持たせてくれました。幸運だったのが、モーションアクターを担当したヴァル(Val Tasso)が、ボイスのオーディションにも来てくれて。私たちもそのころには「JDはヴァルしかいない」と感じていたので、ボイスにも起用しました。ただ、ヴァルは声優としてのキャリアは浅かったので収録は時間がかかりましたが(笑)。
――神谷監督もモーションアクターとして加わったそうですが。
神谷 怪物っぽい動きを演出していると、「自分がやったほうが上手いよな」っていつも思うんですよ。
――平成『ゴジラ』や平成『ガメラ』シリーズの特技監督を担当されてきた経験から、そっち系の動きは得意だと。
神谷 自信過剰かもしれないですが、そうなんです(笑)。今回は、エキストラ的なゾンビの役や、プラーガを口に押し込まれる兵士の役を演じました。
――小林プロデューサーは?
小林 私は絶対やらないです! 以前、実写映画の『バイオハザードII』の日本語吹替の収録を見に行ったときに、突然、役を振られて収録させられたんですが、ひと言のセリフに30分くらいダメ出しされ続けて。それでトラウマになりました(笑)。
――今回は激しいアクションシーンも見どころのひとつですよね。
小林 はい。女どうしの戦いもありますし。
――今回、ぜひ挑戦したかったことは?
神谷 難しい質問ですね……。私の中では、映画のシリーズものって2作目がいちばんおもしろい傾向があると感じていて。ですので、CG映画の『バイオハザード』の続編が決まったときには、あれもやろう、これもやろうといろいろと妄想を膨らませて、すべてが挑戦だったような気がします。その中にカーチェイスがあったんですが、今回はいろいろな事情もあって実現できませんでした。
小林 脚本まであったんですけどね。
――気が早い話ですが、もし次回作があれば……。
神谷 入れたいですね(笑)。
――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
小林 『バイオハザード6』をプレイしている人にとっては前日譚になりますし、『バイオハザード』シリーズを知らない人にとっては、アメリカ合衆国のレオンという人物が東欧でのミッションをどうこなしていくか、といったお話が楽しめると思います。バディという相棒とどう活躍するかが見どころのひとつですし、アクションがバランスよく入っていて、ドラマとの緩急もあり、ミステリアスな展開にもなっています。レオン最大のピンチ、と言えるほどハラハラドキドキする内容にもなっていると思いますので、ぜひ劇場で、できるなら3Dでご覧いただければと思います。
神谷 いろいろな自分の妄想の中から、自分が好きなホラーやミリタリー、怪物モノなどといった要素を盛り込んでいます。もちろん、ドラマや登場するキャラクターもいいものになっていると思います。フルCG映画ということで、敬遠しようと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、映画好きの人にとってもおもしろいものに仕上がっていると思います。『バイオハザード』ファンの方にとっても、「こういう映画が観たかったんだ」と仰っていただける作品になっていると思いますので、ぜひご覧いただければと思いますので、よろしくお願いします。
1965年生まれ。東京都出身。平成『ゴジラ』シリーズの川北紘一特技監督、平成『ガメラ』3部作の樋口真嗣特技監督などの助監督を務め、2000年『ホワイトアウト』で特撮監督デビュー。ゲームのムービーやCM、メイキングビデオ、テレビ番組の再現ドラマなども幅広く手掛ける。2007年には『真・女立喰師列伝 /「歌謡の天使 クレープのマミ」』にて脚本・監督デビュー。2008年の『バイオハザード ディジェネレーション』で監督を務める。
1972年生まれ。愛知県出身。1995年、カプコンに入社。『バイオハザード』、『DINO CRISIS』などのゲーム開発に関わる。1999年、『DINO CRISIS2』で初プロデュースを手掛け、『デビル メイ クライ』シリーズ、『バイオハザード』シリーズ、『戦国BASARA』シリーズなどにプロデューサーとして参加。ゲーム以外にも、映画『バイオハザード』シリーズ、アニメ『デビル メイ クライ』、アニメ・舞台・テレビドラマと広がった『戦国BASARA』などに携わっている。
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