ポーンとの賑やかな旅路

 うちのポーンは、じつにおしゃべりだ。

 冒険中も、移動中も、そして異界から戻った報告のときも、まるで「早く話したくて仕方がないですよ!」とばかりに、元気にまくし立てるのである。

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【大塚角満の『#ドラゴンズドグマ2』冒険譚】「ゲームの中に入りたい!」という夢のその先へ。俺は“このゲームを”やりたかったのだ

※本稿は『ドラゴンズドグマ 2』の提供でお送りします。

 それも、ときに溌剌に。ときに気だるげに。そして、少々のイヤミと、たくさんの優しさを込めて。

 「完璧な連携でしたよ、覚者様!」

 「この一撃が決まるのが、気持ちいいんですよね」

 主従逆転したかのような、上から目線の発言をしたかと思ったら……。

 「もう撤退ですか? 調子が上がってきたのに……」

 「まったく、無茶しすぎです……!」

 明らかなジト目になって(そう見えるだけだけど)、心から面倒くさそうに吐き捨てたりする。

 第1作『ドラゴンズドグマ』のポーンも人間臭さには定評があったけど、この『2』はそれに収まらず、そこはかとない温もりすら感じるから驚いてしまったよ。

【大塚角満の『#ドラゴンズドグマ2』冒険譚】「ゲームの中に入りたい!」という夢のその先へ。俺は“このゲームを”やりたかったのだ

 ソロで冒険していることは間違いないのに、彼らが傍にいる限り“寂しさ”、“孤独”、はたまた“ぼっち”なんて単語は最後の最後まで無縁だ。より洗練され、より人間に近づいたポーンの存在により、『ドラゴンズドグマ』という稀代の冒険活劇は、オープンワールドアクションを新たな地平へと導いたのである。

 ◆ ◆ ◆

 『ドラゴンズドグマ』に俺が出会ったのは、いまから12年前の2012年5月のこと。

 “カプコンが放つ、アクションに重点を置いたオープンワールドRPG”

 というコンセプトと、巨大なグリフィンやキメラ、ドレイクにしがみついて戦う戦士たちの姿に魅せられるのに、刹那の飛石にすっ飛ばされるほどの時間もかからなかったと思う。くすんだハイファンタジーの世界で躍動する巨大な生き物と、運命に抗わんとする人間たちのドラマは、俺が子どものころから追い求めていた世界観に不思議なほど合致していたのだ。

 「これこそ、ずっと俺が遊びたかったゲームに違いない!!」

 そう予感した俺はすぐさま、「『ドラゴンズドグマ』のプレイ日記を連載するぞ!!」と決めて、特設サイト“『ドラゴンズドグマ』で暮らす”を開設。当時、俺はファミ通のニュースチームの責任者兼ファミ通.comの次長をしていたし、『モンスターハンター』のプレイ日記である『逆鱗日和』を運営していたことでノウハウがあったので、そんなワガママ放題な立ち回りも許されたんだけどなw いまじゃ、まず無理だろうなぁ。

 さて、そんな“『ドラゴンズドグマ』で暮らす”は、このゲームに関するあらゆる情報と、俺が毎日のように綴るプレイ日記で構成された“ファンブログの鑑”のようなサイトで(自画自賛)、のちに『『ドラゴンズドグマ』で暮らす本』のタイトルで単行本にもまとめられている。つまり俺は、最初に覚えた予感に赤子のように素直に従い、純粋な“好き”という気持ちの赴くまま『ドラゴンズドグマ』というゲームを応援していたことになる。あれほど衝動的な行動をしたのって、この業界での編集者歴は30年(!)にもなるけど、『ドラゴンズドグマ』のときだけだったと確信するわ。

 そして、本格的にプレイを始めた『ドラゴンズドグマ』というタイトルは、俺が幼少期から抱き続けていた、

 「ゲームの世界に入りたい!」

 という夢想を、間違いなく具現化してくれた作品であった。

 広大な世界、カプコンらしい磨き抜かれたアクション、魔物たちの恐怖、ポーンとの他愛のないやり取り、そして人間ドラマ……。そのすべてがすばらしくて、拡張版の『ダークアリズン』もやり込んだときに、

 「早く『2』も作ってくださいよ!! 伊津野さん!!」

 と、どれほど伊津野英昭ディレクターにラブコールを送ろうと思ったことか……。

 あれから、早10年以上――。

 ゲーム機の進化に比例し、10年前では考えられなかったような超弩級の名作の数々が俺の前を通り過ぎていったが、それらを見るたびに込み上げてきたのは、

 「『ドラゴンズドグマ』みたいなゲーム、出ないかな……」

 という、初恋に想いを馳せるティーンエイジャーのような無垢な想いであった。

 そんな、

 “『ドラゴンズドグマ』みたいなゲームで遊びたい”

 というひたむきな想いに応えてくれたのは……やはり、『ドラゴンズドグマ』だった。前作が空けた大きな穴を、この『2』は瞬時に埋めてみせてくれたのだ。

 「大塚さん、こんなので遊びたかったんでしょう?」

 『ドラゴンズドグマ 2』を初めて起動したとき、伊津野ディレクターがおしゃべりなポーンのようにニコニコと俺に語り掛けてきたような気がした。そう、俺はこういうゲームで遊びたかったのだ。

 『ドラゴンズドグマ 2』は、やっぱりすばらしかった。

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 基本的な遊びは第1作や『ダークアリズン』を踏襲しつつも、より極まったアクション、

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 各ジョブが提供してくれるまったく違う操作感、立ち回り、

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 ポーンとの連携……!

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 そして……!!

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 一段と凄みを増した魔物と、それでも挑まねばならない圧倒的な恐怖が、過去作の比じゃなくなっている……!!

 第1作もそうだったが、サイクロプスにしてもグリフィンにしても、彼らは“ふつうに”この世界の中で生きている。ゆえに、同一線上で暮らす人々と動線がぶつかり、

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 文字通り生きるための生存競争を行わなければいけなくなる。その目的は殺戮や暇つぶしではなく、健気なまでの“生”である以上、どちらも折れるわけにはいかない。明日の朝日を見るために、必死に生きようと“努力をする”のである。

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 第1作も世界観自体は同じくしているので、バトルシーンに感じる感動は近しいものがある。が、よりクレバーになった魔物たちのAIにより、確実に高度な知能を持った生き物と戦っている実感がある。

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 弱点の尻尾を守るように立ち回るリザードマン。倒れたポーンの蘇生を妨害するために、やたらと石を投げつけてくるゴブリン。そして、ジェリー状の生き物の恐怖を我々に教えてくれたスライム……w

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 いわゆるザコも単純なザコではなく、キチンとした知能と性質を与えられているので、ひと筋縄ではいかない。ゴブリンはゴブリンなりに、スライムはスライムなりに、「あの邪魔者、どうにかして排除しなきゃ!」という意志を持っているから、何気ない行きずりのバトルですら名勝負になったりするのだ。これは、前作でもついぞ感じることのなかった感覚だ。生きるための戦いに、凡戦などあるわけがないのである。

 だからこそ、『ドラゴンズドグマ 2』での生存競争には、独特の迫力と感動、さらには悲壮感すら漂う。研ぎ澄まされた武器と技、ポーンを率いる覚者ですら、日がとっぷりと暮れた夜闇の中での行軍は死と隣り合わせで、もしもここで大型のクリーチャーと出くわそうものなら……!

 思えば、言葉の通じない魑魅魍魎が跋扈する世界において、何よりも恐ろしいのは“暗闇”であると教えてくれたのは、ほかでもない『ドラゴンズドグマ』であった。

 ここは、24時間ネオンがさんざめく現代社会の繁華街ではない。1歩でも街を出ようものなら、月明かりすら頼りにならない問答無用の夜の世界が続いているのである。

 そんな暗闇のどこかから、やけに物騒な声が聞こえた……気がした。

 オオカミどもの遠吠えなら、まだいい。徒党を組んでこられると厄介な相手だが、体力に余裕があるうちだったらどうにかなる……と思う。でも……!

 「グォォォアオォオオオ……!!」

 地響きを髣髴とさせる、どこか苦しそうなあの声は……明らかに咆哮……!! こ、この、ランタンの灯りすら届かない暗闇のどこかに、我々よりも遥かに強い凶悪な魔物がいるかもしれないという戦慄たるや!

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 「暗闇を、本当の闇にしたんです。そこでの戦闘が、いかに危険なものなのかを実感してもらおうと思いまして」

 第1作の発売後、幾度となく語り合った際に伊津野ディレクターから出た言葉が、いまになって脳裏で反響した。あのときの言葉は、この『ドラゴンズドグマ 2』においてもしっかりと生きている。いや、そこにたゆたう恐怖は、確実にあのとき以上のものだ。

 もしかしたら、この廃墟の陰でミノタウロスが舌なめずりをしているかもしれない。

 それどころか、月の光が逆光になって見えるあの影は……え? もしかして、サイクロプス……!??

 「ここで戦っちゃダメだ!!!」

 早鐘のように鳴り出した心臓を抑えつつ、ポーンたちに“COME”の命令を出しながら走り出す。

 「覚者は心臓がないから、ドキドキすることもないんかな」

 そんなくだらないことを口走ってしまうのは、緊張が限界に達している証左だったかもしれない。

 そして、そういうときは得てして、悪い予感が当たるもので……!

 「オーガです! 危険な相手ですよ!」

 ポーンの誰かが叫んだ。

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 そんなことはわかってる。まだまだキャラが弱い序盤において、体毛が真っ黒なオーガと暗闇の中で戦うなんて……そんなムチャなこと、やりたくねええええ!!

 「に、逃げろおおおお!! まだ戦っちゃ、ダメだあああ!!」

 “生き残ること”を唯一の目標として、スタミナの限界まで走る。すでに街道から逸れて、森の中に駆けこんでしまっているけど、安全な場所ならどこでもよかったのだ。

 しかし、そういうときに限ってだなぁ……!!

 「サイクロプスです! 逃げるのも戦略のうちですよ!」

 さっきから逃げてるんだよぉぉおおお!!(泣)

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 その場をどう切り抜けたのか、正直あまり記憶にないのだが(マジで怖えからな)、どうにか宿屋に逃げ帰ったときの安堵と解放感たるや……。

 「まったく、世話が焼けますね!!」

 たびたび回復スキルで俺を救ってくれたメインポーンの“stella”が、プリプリしながらそんなことを言う。このメイジの娘は公式ポーンとして全世界の覚者のもとでも働いているので、同じような憎まれ口をアチコチで叩いているんだろうなぁ……と思い至って、ちょっと肝が冷えた(苦笑)。

 「悪かったよ……! でも、急にオーガが出てきたんだから、仕方ないだろ……!」

 そんなメインポーンに、まるで人間の相方に返すかのような“ふつうの”レスポンスを行う。

 長旅から戻った後の、いつものやり取り。街だろうが森の中だろうがダンジョンだろうが、のべつ幕無しに話し掛けてくるポーンの距離感のなさと、そんな彼らとナチュラルに会話をしている自分の姿を顧みて、思わず「ぷっww」と笑ってしまう。

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 第1作を遊んだときに達成したと感じた、「ゲームの中に入りたい!」という夢は、この『ドラゴンズドグマ 2』の登場によって別の想いに昇華したように思う。
 
 この世界観には、まだまだ“その先”があったのだ。発売日からすでに30時間以上プレイしているが、毎日のように“その先”は更新されていると確信する。

 ここから紡がれていく物語の中で、多くの人物(ポーン含む)との出会いと別れ、そしてまだ見ぬ恐ろしい魔物との生存競争が待っているのだろう。リアルすぎるやり取りの中で、ときに街から出る足が重くなることもあるかもしれない。

 でもそんなときこそ、おしゃべりな相棒がポンと背中を叩くのだ。

 「元気にいきましょう! 旅はまだまだ続きますから!」

 屈託なく放たれたセリフを聞いて、俺の足はウソのように軽くなる。

 「よーーーーーし! 今日は、まだ開いていないマップを開けにいっちゃいますかねーーー!!」

 俺が出した声が聞こえたのか、メインポーンのstellaはほんわかと笑った。

 「また、素晴らしい冒険の再開ですね!」

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 いま、確信した。

 俺は、“このゲームを”やりたかったのだ。

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