“ポケモン”と“初音ミク”によるコラボプロジェクト“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE 18 Types/Songs (ポケミク)”。

 2023年末にファミ通.comで株式会社ポケモンとクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の企画陣にインタビューを掲載した際、ポケモンと初音ミク双方へ向けられた深すぎる愛が話題となった。

 約半年間にわたる全18もの楽曲公開を終えてひと区切りとなる本プロジェクトについて、第2回となるインタビューを敢行。企画のキーマンとともに、ポケミクについて、“創作”についてを振り返る。そしてsasakure.UKさんによる追加楽曲やポケミク楽曲のCD化など、今後の展開についても直撃。

 さらに、週刊ファミ通2024年4月4日号(2024年3月21日発売)では、ポケミク特集の第二弾が掲載決定! 前回の週刊ファミ通2024年1月25日号(2024年1月11日発売)では未掲載分の、2024年に公開された【10曲の楽曲インタビュー&コメント】+【応援イラスト&コメント】を一挙紹介。18曲目の楽曲『Glorious Day』を作曲したEveさんへのロングインタビューも。

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的場 昴樹(マトバ タカキ)

株式会社ポケモン
“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE 18 Types/Songs”立案・制作リーダー

佐々木 渉(ササキ ワタル)

初音ミク生みの親。『初音ミク -Project DIVA』、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』など数々の企画に関わる。

ファンとのインタラクティブな企画が実現

――さっそくですが、2023年8月31日・初音ミクさんの記念日からスタートしたProject VOLTAGEは2024年3月9日・ミクの日にひと区切りがつきました。まずは現在の心境をお聞かせください。

佐々木とにかく情報量も物量もすさまじかったので、ひとつひとつ振り返ろうとすると頭が完全にパンクしてしまいそうですが、いまは何とか走りきることができてホッとしています。

的場月並みな感想ですが、本当にあっという間だったように感じます。3月9日という、初音ミクさんや彼女に関わる皆さん、世界中のクリエイターやファンの皆さんにとって大切な日に、18曲目までを出しきれたのは、“ポケミク”にご参加いただいたクリエイターの皆さんやクリプトンさん、何よりポケモントレーナーの皆さんやファンの皆さんがここまで応援し続けてくれたおかげだと思っています。本当にありがとうございました。

――18タイプの初音ミクさん&相棒ポケモンのイラスト、18のボカロPさんたちによる楽曲、そして応援イラストなど、本当に圧倒的なボリュームでした。これらが約半年のあいだに詰め込まれていたというのも驚きです。

佐々木我々企画陣としても、そのすべてを最初から具体的に想像していたかというと、そうではありませんでした。最初のひと区切りはピノキオピーさんの『ポケットのモンスター』までの4曲を公開するところだったと思います。そこから先はどうなるのか100%明確には見えないまま進めていて、反響を見ながら走っていました。

 ひとつのテーマに対して18もの楽曲が作られる企画なんて僕も初めてのことで、すごい体験をさせていただけたと感じています。しかもクリエイターさんごとに色の異なる世界観があって、バランスよく被りがない。

的場振り返ってみれば、18というタイプの数が、すごく綺麗にはまってくれましたね。ポケモンと言えばの数字のひとつで、かつ楽曲制作として見ても、決して少なくなく、ただ多すぎるというほどでもなく。ほかに、ポケモンや初音ミクさんの象徴的な数字といえばなんでしょうね。01、6、8、16、39……151……1025?(笑)。まぁ、たくさん数を作ることを目的にすべきではないのですが。

佐々木的場さんなら時間が許せばやりそう、とも思えてしまいますが(笑)。

的場(笑)。多ければ多いほどうれしい! という方々もいてくださるとは思うのですが、あんまり作りすぎても、作る側も聴く側も、初音ミクさんもポケモンたちもたいへんすぎますからね。企画当初は、手持ちにちなんで“6”という数も候補にはあったのですが、6曲では初音ミクさんやボカロ曲、ポケモンたちの多種多様な魅力を引き出しきれなかっただろうな、と思っています。結果的に、やはり18がベストなバランスだったと考えております。それでもけっこうなボリュームで、たいへん! だったのは間違いないですね(笑)。ほかにも“18”をテーマにしてよかったなと思うことがありまして。

――それはどのような?

的場この企画が、ひとつひとつのコンテンツ公開へのリアクションを受けて、つぎの展開をどうすればより楽しんでいただけるか考えられる、ある意味でインタラクティブなプロジェクトになったことですね。公開→検討→またつぎの公開、というように、短いスパンでブラッシュアップしていくサイクルを繰り返していたら、半年が経ったような。

 リアルタイムかつ運用的な側面を持って楽曲やイラストなどを展開していく企画は、とくにポケモンにおいては珍しく、ファンの皆さんといっしょに作りあげているプロジェクトだなぁと感謝しています。もちろん多くの関係者がいるプロジェクトなので、きちんとした計画はベースにありますが……。なので、誤解を恐れずに言えば、“アドリブ”ですね。

――なるほど、具体的にはどんな“アドリブ”があったのでしょうか。

的場わかりやすいのは、楽曲の公開タイミングですね。その決定には、さまざまな幸運が重なっています。たとえば、まらしぃさんの『むげんのチケット』をKAITOさんの記念日である2月17日に公開できたのは、非常にラッキーな“アドリブ”です。最初から決まっていたわけではなく、さまざまな条件が噛み合ったんですよね。どこかでやれたらと思っていた、“記念日公開”でした。

 いよわさんの『たびのまえ、たびのあと』も、ポケモンの記念日である、2月27日“ポケモンデー”に合わせて公開することが、ご依頼時から決まっていたわけではありません。楽曲デモを聴かせていただいたときに、いよわさんご自身の、ポケモンと初音ミクとの体験や記憶、ボカロPとしてのいまにいたるまでの“たび”の道のりを、ポケモンにおける“たび”に巧みに重ね合わせてくださっていると感じました。そのときに、これはポケモンデーに合わせるべき1曲だな! と。多くのトレーナーが旅に出て、これまでとこれからの旅に思いを馳せて、そして誰かが旅立つ背中を押す日なので。

【ポケミク】企画陣インタビュー。ポケミクの軌跡を振り返り&創作への熱と未来へつなぐ想い。追加の新曲&CD発売など今後の展開にも迫る
【ポケミク】企画陣インタビュー。ポケミクの軌跡を振り返り&創作への熱と未来へつなぐ想い。追加の新曲&CD発売など今後の展開にも迫る

――前回のインタビューでもクリエイターさんの個性を最大限発揮してもらうために、要望は最小限にという話もありましたし、アップする日に合う曲を作ってもらったのではなく、その作品を公開するベストな日程を後から選んだということなのですね。

的場はい。1曲1曲、前後の曲との兼ね合いも踏まえて、“セトリ”的に決めています。かいりきベアさんの『メロメロイド』は、“とあるポケモン”をフィーチャーした曲でしたので、そのポケモンの全国図鑑番号である“0303”から、3月3日に公開するのはどうか? と、かいりきベアさんにご相談させていただきました。楽曲の長さを3分03秒にする、という仕掛けも施してくださっていたので。

 2024年3月3日は日曜日ですので区切りもよく、そこからカウントダウンをしていき、3月9日の18曲目の公開日につなげられたのも、非常に運がよかったですね。8月31日にスタートし、4つの記念日と2月27日を経て、3月9日に1つのゴールを迎える美しさは、皆さん感じ取ってくださるだろうと信じて決めていました。

【ポケミク】企画陣インタビュー。ポケミクの軌跡を振り返り&創作への熱と未来へつなぐ想い。追加の新曲&CD発売など今後の展開にも迫る

佐々木クリエイターさんたちも、先行して公開された楽曲やイラストを見て、そしてそれに対するファンの皆さんの反応や熱量を感じたことで、ご自身のクリエイティブに影響があったのではないかと思うのです。ゆえに、自然とバラエティ豊かになっていきました。

的場クリエイターの皆さんは情報収集力や共感力が非常に高い方々です。だからこそファンの方たちの反応や、ポケミクの中でのトレンドの移り変わり、聴く人の気持ちの移り変わりをすごく敏感に察知して、“いま”求められているものと自分の強みを緻密にかけ合わせた作品を作ることができるのだろうなと。そのすばらしい発想の数々には、本当に何度も感動させられました。

――18曲目となるEveさんの『Glorious Day』では、MVに“18タイプの初音ミク&相棒ポケモン”が登場しますよね。これも同じように、“アドリブ”によるものだったのでしょうか。

的場はい。いちばん幸運な“アドリブ”ですね。“18タイプの初音ミク&相棒ポケモン”はポケモンのタイプの多彩さを伝えるための、デザインとイラストによるビジュアル的なコラボレーションとしてスタートしたものであって、18のボカロPさんが紡がれる、それぞれの“ポケモン feat. 初音ミク”とは、別の地点にあるイメージでした。おなじ“ポケミク”ですが、拠点にしている地方はちょっと違うと言いますか。

 この未来にたどり着いた要因はさまざまありますが、いちばん大きいのは、イラストからずっと追い続けてくださったファンの皆さんが、“ポケミク”という企画を地続きの声援で囲んでくださったことにあります。皆さんの歓声が、多種多様なクリエイターが紡ぐ個性溢れる“ポケモン feat. 初音ミク”を、「これもポケミクだ」と、楽しんでくださったからこそ、18のデザイン・イラストと18の楽曲・MVが鮮やかに合流できたのです。もちろん私自身、18タイプの初音ミクさんと相棒ポケモンたちが、音楽といっしょに存在している瞬間をどうにかプロデュースできないかとずっと考えていたこともあります。やはり、音楽を介して生まれた18の組み合わせでしたので。

 Eveさんが目指してくださった楽曲が“ポケミクという企画そのもののアンセム”だったことも要因のひとつでした。楽曲デモを聴いて相談を持ちかけ、Eveさんサイドとのディスカッションも重ねたうえで、この半年間の集大成として、イラストと音楽、それぞれで走り続けているものが交わる初めての瞬間にするべく、初音ミクさんとポケモンたちに総出演していただくことになりました。

【ポケミク】企画陣インタビュー。ポケミクの軌跡を振り返り&創作への熱と未来へつなぐ想い。追加の新曲&CD発売など今後の展開にも迫る
【ポケミク】企画陣インタビュー。ポケミクの軌跡を振り返り&創作への熱と未来へつなぐ想い。追加の新曲&CD発売など今後の展開にも迫る
【ポケミク】企画陣インタビュー。ポケミクの軌跡を振り返り&創作への熱と未来へつなぐ想い。追加の新曲&CD発売など今後の展開にも迫る
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【ポケミク】企画陣インタビュー。ポケミクの軌跡を振り返り&創作への熱と未来へつなぐ想い。追加の新曲&CD発売など今後の展開にも迫る

佐々木そもそも何十人というクリエイターさんたちが、全員おなじ世界線で作品に携わり、こんなにもバランスがよく魅力の溢れる作品群になったのは本当にすさまじいことだと感じています。ただ、すべての曲が異なる色で強く光り輝いているからこそ、それをまとめ上げるのは至難の業でした。Eveさんの楽曲、Rellaさんのイラストが、この個性豊かな企画をきれいにまとめてくれたと思っています。

的場本当にすばらしい個性を放つクリエイティブの数々が生まれたのですが、佐々木さんが仰るように、どうすればバシッとまとまるのか……というのは、楽しくも悩ましいお題でした。

 Eveさんが選んでくださったテーマが、ポケモンの物語のひとつの到達点である“チャンピオン”で、さらにそこで終わりではなく、その後も冒険は続いていくというメッセージ性をも持たせてくださいました。この後くわしくお話ししますが、皆さんの応援のおかげで追加楽曲の制作も決定しています。『Glorious Day』は、さまざまな楽しみかたができる楽曲ですが、まさに“いま、この瞬間のポケミク”を表現した1曲にもしていただけたなと。

 もちろん、まず最初に“ポケミク”を視覚的に象ってくださったイラストレーターのみなさんや、楽曲・MVの先陣を切ってくださったDECO*27さんをはじめ、クリエイティブのバトンを受け渡しながら、さまざまな可能性の広がりを見せてくださったすべての参加クリエイターの皆さんには、全員に390%の感謝の気持ちを伝えたいです。どれかひとつでも欠けていたら、3月9日という“輝かしい日”にはたどり着けなかったと思います。

 ところで、これも“アドリブ”ではあるのですが、ナユタン星人さんの『エスパーエスパー』とかいりきベアさんの『メロメロイド』を16曲目、17曲目で続けることができたのも“ハピナスラッキー”でしたね。

【ポケミク】企画陣インタビュー。ポケミクの軌跡を振り返り&創作への熱と未来へつなぐ想い。追加の新曲&CD発売など今後の展開にも迫る

――ハピナスラッキー! 具体的に理由をお教えください。

的場エスパー→フェアリーの流れが、ポケモントレーナーの皆さんにとってひとつニヤリとできるピンクさを誇っていることはありつつ……。ここからはあくまでも私の個人的な解釈なのですが、ふたつの曲はそれぞれエスパータイプとフェアリータイプをモチーフにした“ラブソング”という聴き方ができるのかなと。1曲目の『ボルテッカー』も、ピカチュウをバディに選んだ“ラブソング”でした。1曲目から、いろいろな楽曲の世界を経て、またふしぎな恋の歌に戻ってくる流れがおもしろいなぁと。

 “恋”や“愛”というキーワードは同じでありつつ、こんなにも違う。いろいろな楽曲を経てきたからこそ、『ボルテッカー』と『エスパーエスパー』と『メロメロイド』、そしてそれ以外の楽曲の個性の違いやおもしろさが膨らむところもあったりして、まさに“18 Types/Songs”のいいところだなと感じています。ラブソングはボカロ曲のひとつのテーゼではあると思いますし。

佐々木ファンの方も含めて、この企画の参加者みんなで18曲と数多くのイラストを観て、聴いて、たくさん心が動かされた半年間でした。もともと大好きでお世話になっているクリエイターさんたちですが、ポケミクの楽曲を聴いてあらためて好きになりました。そして、純粋に曲を聴くということの楽しさを感じられ、それをポケモンファンの方々に伝えられたと思います。

 いまは何だか、旅をした後のような気持ちになっています。そんな旅の想い出である楽曲たちをまた振り返って聴きたいなと思いますし、旅の仲間たちと想い出話を語り合いたい。また、別の順番でもういちど楽曲を聴いて、旅してみたいなという気持ちもありますね。たとえば、『たびのまえ、たびのあと』を聴いた後で『ポケットのモンスター』を聴くと、また違った気持ちになれそうな気がしています。

的場旅をしたかのような、というのはまさにその通りですね。とくに実感が湧いたのは、18曲目直前のイッキ見配信や#ポケミクカウントダウンで、皆さんが楽曲やイラスト、それに幕間に流した引用元のゲームBGMについて思い思いに語ってくださっているのを見たときでした。いっしょに足跡や風景をもう一度眺めるあの感じは、険しさ以上に楽しさばかりを思い出させてくれるようで。

 ぜひこれを読んでくださっている皆さんにも、この半年ほどの旅路を振り返りながら、それぞれのお気に入りの曲やイラストを選んでみていただけるとうれしいです。「全部よかった!」と言っていただけることはものすごくありがたいという大前提で、何かを自分で選んでみるというのも、『ポケットモンスター』の旅の中で欠かせないエッセンスなので。

 ひとつには絞れなくとも、たとえば「手持ちに入れるなら……」といったニュアンスで6つ選んでみたり、「エースはこいつかな……」という感じで、並び順にもこだわってみたり。ポケモントレーナーよりはボカロリスナーだなと自負されている方々であれば、“ポケミク◯選”みたいな、自分だけのプレイリストを作るような楽しみかたもうれしいですね。こうして語り合える作品の数々を、皆さんといっしょ紡いでこられた体験は、我々にとって大切な宝物です。

祝! ポケミク継続決定! ファンの声に応えて追加楽曲を展開

――18曲目に続き、追加楽曲の制作が決定したとお伺いしました。この展開は前々から決まっていたことだったのでしょうか?

的場いえ、“Project VOLTAGE 18 Types/Song”の名の通り、18曲で完結するプロジェクトでした。それを変えた要因はさまざまありますが、皆さんからいただいた応援の声がとても大きいです。SNSでの投稿、YouTubeの再生やコメントなどがひとつひとつ積み重なったおかげですね。皆さんの拍手のおかげで起きたアンコールです。本当にありがとうございます。

――追加楽曲の制作を担当するのは、sasakure.UKさんとのことで。

的場私がわざわざ解説するまでもなく、ゲームサウンド×初音ミクさんと言えば! のボカロPさんですね。18曲目と予想されていた方々も多かったのですが、sasakure.UKさんには、ここまでにクリエイターの皆さんがバトンを繋ぎ、EveさんとRellaさんがひと区切りをつけてくださった冒険、その未来への新たな一歩をいっしょに踏み出していただけることになりました。

――sasakure.UKさんに依頼した理由を教えてください。

的場ポケモン』のゲームサウンドとの相性のよさがイメージしやすかったことがまずあります。くわえて、ここからは“クリア後”の未来に広がる可能性のニュアンスもあったほうがいいのではないかと考えた末、sasakure.UKさんにお願いできることになりました。もちろんsasakure.UKさんには“19曲目”であることをあらかじめお伝えしています。

 なお、ここでお伝えしている企画陣の意図やねらいが、sasakure.UKさんの楽曲・MVの内容を指し示しているわけではないので、そこは気にせず、これまで通り、純粋にワクワクしてお待ちいただければと思います。私もワクワクしております。

――いつごろ公開されるか決まっているのでしょうか?

的場現時点ではまだ具体的にはお伝えできません。公式Xアカウントで必ずお知らせしますので、楽しみにお待ちくださいませ! そして、それ以降についても現段階では検討中です。我々もつぎの冒険、つぎの未来への歩みを始めたばかりですので、どうかゆっくりとお待ちいただけますと幸いです。

――ではもうひとつ発表されている新展開、CDの発売について教えてください。

的場おかげさまで、“ポケミクのCDアルバム”をみなさまにお届けできる未来が見えてきました。こちらもまだ、具体的な商品詳細などのお知らせはお待ちいただけますと幸いです。もちろん、お手にとっていただける実物です。

 本当にありがたいことに、多くのファンの皆さんからご要望をいただき、私もいちユーザーとして、形に残るものが欲しい気持ちは非常にわかりますので、クリプトンさんといっしょに、ご満足いただけるものを目指します。

――グッズ販売についても待ち望む声は多いです。なにか決まっていることはありますか?

的場現時点ではございません。ただ、もちろん皆さんのお声はしっかりと聞こえているので、いろいろな可能性を探っていきます。

佐々木最初に的場さんの話を聞いたときも感じたのですが、すごい話ですよね。いまの時代に企業どうしのコラボで、こんなにも商売っ気なしのプリミティブな初音ミクの企画が立ち上がって、それが続いていくのですから。僕としてはうれしいですが、やっぱり驚きますよ。

的場商売っ気がなさすぎると逆に怖い……、という方のお気持ちも理解できます。このプロジェクトのいまにおいては、ポケモンたちと初音ミクさんを取り巻く、企画陣とクリエイター、ファンの皆さんとの珍しくふしぎな関係性を、逆に楽しんでもらえたらありがたいです。

――クオリティの高いコンテンツに対して、「(もっと)対価を払わせてくれ」というファンの“応援したい”という気持ちの主張は、近年多い声ですよね。純粋に現物としてグッズが欲しい気持ちももちろんありますが。

的場ありがたいお話です。あらゆるお約束はできないのですが、我々もグッズに限らずいろいろな検討を続けていきたい気持ちはありますので、数カ月、1年、2年、あるいは数年先かもしれませんが、「やるよ!」と叫べるときがくるかもしれません。そのときに皆さんが駆けつけてくださると、本当に心強いなと思います。

 それまでの間は、まだ知らないポケモンとの冒険だったり、聴いたことのない初音ミクさんの音楽だったりを楽しみながら、ふとしたときにポケミクを思い返して話題にしていただけるとうれしいです。その小さな会話が、予想外の未来を呼び寄せるかも……しれません。といいますか、そうなるようにがんばってみます。

みんなで「好きなものを好きだ」と表現していこう

――ここからは、ポケミクを通しておふたりが感じたことにフォーカスを当てていきたいと思います。まずはファンの皆さんからの反響について、どのように受け止められていましたか?

的場企画を世に送り出す前は、SNSなどで感想を言葉にしてくれたらうれしいですし、そうでなくても、ただシンプルに作品や企画を楽しんでもらえたのなら、それだけで大感謝だなぁという気持ちでした。振り返ってみれば、とてもありがたいことにこの企画にいろいろな可能性を見出して思いっきり楽しんで語って回ってくださった方々が、想像以上に多かった印象です。

 たとえば、18タイプの初音ミクさんの意匠に込められたモチーフだったり、楽曲に使われているBGMや歌詞の引用元だったり、MVの小ネタだったりを、ポケモンファン・ボカロファンそれぞれが紐解いていってくださったのは、もちろんクリエイターとファンの皆さんを信じていましたが、予想を遥かに超える盛り上がりだったと思いますね。

――YouTubeのコメント欄を見れば、有志が一覧にしてまとめてくれていたりしますよね。

的場そうなのです。前回のインタビューでも少し触れましたが、そういった熱心で知識も豊富なファンが、ライトなファン、とりわけ今回は“もう片方”のファンをやさしく引き込んでいく様子も見られて、それも反響が大きくなった要因のひとつだと思っています。未知を知る楽しさもありますし、そうでなくともアツい語りを聞くだけで、何倍にもおもしろくなったりする楽しさも間違いなくありますし。本当に感謝しかないです。

――佐々木さんはいかがですか?

佐々木正直に言うと、最初はこの企画をポケモンさんとごいっしょするのが、少し不安だったのです。初音ミクという存在は、明確な中心軸は実在していなくて、それぞれのクリエイターさんが描くミクが、歌わせるミクが、ミクである。そんな神話のようなスタンスで16年間やってきました。いっぽうで、もとはゲームという電子の世界の存在でありながら、28年以上の歴史が蓄積された壮大な世界観があり、生命の営みをリアルに感じさせるふしぎな生き物・ポケモンという存在とコラボするにあたってミクは期待される役割を担えるのかなと。

――まさかそんな不安を感じられていたとは思いませんでした。

佐々木不安でしたよ(笑)。ミクはあまりにも多くの曲がありすぎるためか、たくさんのミクファンが集まって同じテーマで何ヵ月も語り合うようなことは、ふだん多くはないと思っています。でも、今回はポケミクというひとつのテーマでポケモンファンとミクファンがひとつになって、楽しそうに語り合っている場面がたくさん見られました。その風景は僕にとって新鮮で、感動的なものでした。

 ミクって、ポケモンとこういう形の企画やムーブメントも起こせるんだ。ポケミクによって、16年間見てきた僕でも知らないミクの一面を見ることができたんです。高い熱量で楽しんでくれるファンの人たちを見ていて、改めてコラボ企画の可能性ときちんと向き合いたいと強く想うことができました。僕にそう思わせてくれたのは、ポケミクを楽しんでくれた皆さんです。僕からも、ありがとうございますと言わせてください。

――いい刺激を得られたようで本当によかったです。初音ミクさんの未来にもより期待ができますね。

佐々木旅のパートナーが的場さんだったから、ゼェゼェと声をあげながらも楽しんでやれたのだと思います。今回の企画で得た経験や見た景色は、僕にとって“一生もの”です。人生の最期にはきっと思い出すんじゃないかなぁ。ちなみに、今日は的場さんの熱量に負けないくらい話せるように、マケンカニ色の服を着てきました(笑)。

的場そういうことだったのですね(笑)。マケンカニかぁ、攻守すきがないので手強いですね(笑)。企画を持ちかけてからこれまでずーっと、佐々木さんは真剣にポケモンたちに向き合ってくださっていて、とても詳しくなっていただけてすごくうれしいです!

――SNSなどでファンの反応を見るだけでなく、リアルでも社内や周囲から反響があったのではないでしょうか。

的場もちろんです。追加楽曲やCDアルバムの制作も、私や誰かひとりだけで決められるものではありませんので。“ポケモンの可能性を広げていく”というのも、我々の大切な仕事ですから、音楽をキーに発展させていくとどれだけおもしろくなるのかということを、初音ミクさんやクリプトンさん、クリエイターの皆さんのお力をお借りして表現できているのは、とても喜ばしいことだと捉えています。

佐々木近しいところでは、僕がこの仕事をしていることを知った甥っ子から「僕はポッチャマが好きだ」と思わぬ角度からのアピールを受けたことがありました(笑)。社内の反応としては、「18曲って……まさか本気なのか?」っていう感じでしたね。

――クリプトンさんとしても、18曲はやっぱり多いんですね。

佐々木はい、間違いなくふつうではないです(笑)。しかも、共通のテーマにクリエイターさんたちが向き合ってくれている。そういった企画って、珍しいのです。そもそもポケモンのように18曲ものバリエーションに耐えうるほど、世界観に深みがあるコンテンツがそう多くはないですから。

――今回の企画を通して、今後に活かせる気付きなどがありましたら教えてください。

佐々木ポケミクでごいっしょするようになってから、日常生活に溢れるポケモンたちに自然と目が留まるようになりました。意識するようになると、本当に街中のいたるところにポケモンがいるんですよね。それを見ていると、株式会社ポケモンさんがプロデュースするポケモンたちの魅力的な見せかたや、それこそ商業的な部分とそうでない部分のバランス感覚は目を見張るものがあるなと感じます。勉強になったなんていうとおこがましいですが、学ばせていただくことは多かったなと思います。

的場こちらとしても数えきれないほど学ばせていただいたのですが、とくにクリエイターの皆さんへの向き合いかた、いかに自由に、根源的な“創作”をしていただくかについては本当に多くのことを教えていただきました。互いに現実世界と仮想世界の両方を豊かにする存在であり、類似点がありつつも明確に違う部分がある存在どうしだからこそ、個人としても会社としても勉強になったなと思っています。

 今回、クリプトンさんとともに16年間ボカロ文化を紡いでこられた、初音ミクさんやボカロPの皆さん、イラストレーターの皆さんたちと関わらせていただいたことで、私たちだけでは絶対にできなかった表現ができました。ポケモンたちの魅力をいっそう引き出せたと考えています。

――ふだんはなかなかない、“ここだけのポケモンの組み合わせ”も多くみられましたよね。

的場そうですね、最初のカモネギとピカチュウや、18匹の相棒ポケモンたちも、“Project VOLTAGE”以外では起き得ない組み合わせだなと。とくに応援イラストではできるだけそうした組み合わせを目指してしていました。

 初音ミクさんやバーチャル・シンガーの皆さんとごいっしょすることで、音楽だけでなく、音やダンス、そのほかさまざまな、これまでにないテーマが生まれたので。ちょっとめずらしい組み合わせで集まれることを、ポケモンたち自身が楽しんでくれるといいな、と思いながら、声をかけていきました。もちろん、ボカロPの皆さんに選んでいただいたポケモンたちも含めて、ふだんとはまた違う新鮮な大舞台で、全員が各々の魅力を発揮してきてくれたと思っています。

【ポケミク】企画陣インタビュー。ポケミクの軌跡を振り返り&創作への熱と未来へつなぐ想い。追加の新曲&CD発売など今後の展開にも迫る
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佐々木今回、みんなが同じ作品を観ても、抱く感想はそれぞれ違っていて。それを交流させることでお互いに楽しい気付きを得たり、クリエイティブのディティールをより詳しく感じ取れて、作品のことがもっと好きになる。

 そうやって作品にたくさん触れてインスピレーションを受けた人たちが、もっとポケモンのことを、初音ミクのことを深く知りたくなったり、クリエイティブをする側になりたいと思ったりするきっかけになれているのではないかと思います。その好循環を作り出せた自負があるというか、的場さんをはじめ、株式会社ポケモンさんといっしょに仕事をしているとそういう追い風に乗れたように思います。

的場我々も佐々木さん、そしてクリプトンさんには助けられていると感じることばかりです。とくに音楽に関する見識や、ボカロ文化の独特な感覚への理解度は我々の比にならないものですので。

――おふたりのお話を伺って改めて感じますが、企画側でここまでの熱量を持ってコンテンツを産み出す方がいるというのはファンとしてもうれしく、ありがたいことだと思います。

的場ポケモンたち1匹1匹にも、初音ミクさんたちにも、ファンの皆さんがそれぞれべつべつに抱く、好きなところや大事にしているところがあると思いますし、それらこそ彼女たちが持つ大きな魅力です。だからこそ、皆さんがポケモンたちや初音ミクさんたちと大切に紡いでくださっている物語や絆にヒビを入れることは、断じて許されません。

 そこを守りながら、より好きになってもらう新しい可能性を示していくには、生半可な熱量だと足りないんですよね。私や佐々木さんが敵わないほど、ポケモンたちや初音ミクさんを愛してくださっている方々は数え切れないほどいらっしゃいます。皆さんに向き合うために、我々は全力を尽くしてまず当然、だと思っています。

佐々木このインタビューを読んでいる人には、株式会社ポケモンさんには的場さんみたいなコンテンツに対する愛と熱意を持った人がいて、全力を尽くし続けたからこそ、ポケミクという企画をやり遂げられたのだと知ってほしいです。欲を言うと、次世代の企画プランナーが出てきてほしいです。このインタビューの内容もインターネット上にログが残りますし、いい時代になったものですね。

 ネットでポケミクの感想を発信していただくと、株式会社ポケモンさんがご覧になっていたり、弊社でも見させていただいています。そこでまた我々が前向きな気持ちになってよりよいものをお届けできるようになる、正のスパイラルができあがると思います。そしてあわよくば、ポケミクのように多様性を示す企画が、ポケモンと初音ミクだけに限らず増えていけばうれしく思います。

的場16年前から初音ミクさんをプロデュースし続けている佐々木さんに、そこまで言っていただけるのは本当に恐縮ですね……。もちろん、我々はあくまでも裏方ですので、気にせず楽しんでいただけた方がうれしいです。その上で、ポケミクが誰かの「やってみたい!」のきっかけになりうるのであれば、いちプロデューサーとしては、すごく励まされますね。

――そうなれば、インタビューを掲載した我々メディアとしても本望です。クリエイターさんの“未来”につながりますように。最後に、これからもポケミクを楽しみにされているファンの皆さんにメッセージをお願いします。

佐々木初音ミクファンもポケモンファンも、お互いに「これかわいいね」、「この曲いいね」と、自分が好きなものを好きだと伝えあえるきっかけを生み出した企画になったのではないかと思います。的場さんが率先してファンと肩を並べて楽しんでやっていますもんね。ボカロPさんたちとのミーティングで曲の好きなところを楽しそうに語られていて。そういう人が舵を取っている企画だからこそ、ファンのみなさんも同じように、素直に「好き」を伝えられるんだろうなと僕は思います。

 たくさんの人に「好き」が繋がっていく様子を特等席で見せてもらいました。僕も改めて「好き」を伝える意識を持って、音楽の仕事を続けていこうと思います。半年間ありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。あと、クリエイターの皆さんや関係各所との連絡調整を担当してくれたスタッフの皆さんにも改めてお礼を言わせてください。丁寧なお仕事ありがとうございました。

的場何度もくり返しにはなりますが、ポケモンたち、初音ミクさんとバーチャル・シンガーの皆さん、そしてクリエイターの皆さん、ファンの皆さんに感謝を伝えたいというのがいちばん強い気持ちです。

 私自身も含めて、すべての企画陣とクリエイターの皆さんが、みんなといっしょに楽しみたいという想いでこの企画にご参加いただけていると思います。きっと、何かひとつの作品が公開されるときには、関わったすべての方々はものすごくドキドキワクワクしながら迎えていたはずです。それをファンの皆さんも温かく迎えてくださって、全員が最高に楽しんでくださっている事実に対して、感謝しかありません。

 そして全員が心から楽しんでくださったおかげで、追加楽曲やCDアルバムの制作が叶ったというのは本当にすごいことだと思います。感謝すると同時に、これからもポケミクを楽しみ続けてもらえるよう、真摯に取り組んでいきます。

 最後に、初音ミクさんやバーチャル・シンガーの皆さん、そしてポケモンたち。かつてないコラボレーションの晴れ舞台において、従来から兼ね備えているそれぞれの個性的な魅力を、何倍にも大きくして、掛け合わせて魅せてくれました。私自身、ポケミクを通して、何度再発見を果たしたことかわかりません。みんな、本当に輝かしい存在だなと何度だって思います。ポケモンたち、初音ミクさんたちとの初めての出会いの場や魅力の再発見の場を作って維持できていることにも感謝ですね。

 いまこれを読んでくださっている皆さんが、もしポケミクのどれかひとつでもお気に入りになり、素敵だなと思ってくださっているようでしたら、そのことに最大限の感謝と敬意を込めつつ、まだポケモンたちや初音ミクさんたちと出会っていない方々に、ひとつの入り口・きっかけとして、自分なりに伝えてもらえるとうれしいです。できるだけ多くの方々の、これからの冒険と未来を楽しく彩っていけたらなと思います。
 
 さて、ぜひぜひ追加楽曲・CDアルバムをお待ちいただきつつ、既存のコンテンツもまだまだ味わい尽くしていただきたいと思います。ここまで本当にありがとうございました。これからも広がり続けるポケミクの世界を、どうぞよろしくお願いします。つぎの冒険、つぎの未来でお会いできたあかつきには、またいっしょに、どこまでもボルテージを高めていきましょう!

Rella_ポケミク

 

週刊ファミ通2024年4月4日号(3月21日発売)で、ポケミク特集の第二弾が掲載!

 週刊ファミ通2024年4月4日号(2024年3月21日発売)では、ポケミク特集の第二弾を掲載!

 前回の週刊ファミ通2024年1月25日号(2024年1月11日発売)で未掲載分の『俺ゴーストタイプ』以降の【10曲の楽曲インタビュー&コメント】+【応援イラスト&コメント】を一挙紹介。18曲目の楽曲『Glorious Day』を作曲したEveさんへのロングインタビューも。

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