ファミ通.comの編集者&ライターが年末年始のおすすめゲームをひたすら紹介する連載企画。今回取り扱う作品は、PCソフト『Cuisineer(キュイジニア)』です。
【こういう人におすすめ】
- のんびりダラダラ遊べるゲームを探している
- かわいいキャラの登場するファンタジー世界が好き
- アクション操作の快適さにはこだわりたい
タワラのおすすめゲーム
『Cuisineer(キュイジニア)』
- プラットフォーム:PC
- 発売日:2023年11月10日発売
- 発売元:Marvelous Europe、XSEED Games
- 開発元:BattleBrew Productions
- ジャンル:ローグライトアクション
- 価格:2800円[税込]
世界を救う大冒険から離れたいときに遊ぶゲーム
『キュイジニア』はダンジョンで食材を集め、ひとりでレストランを切り盛りして生活をしていくローグライトアクション。牧歌的で平和な町でのんびり、自由気ままに生活できるゲームとなっている。
本作のいいところは、緩やかな日常を過ごせる舞台設定、世界観の土台が作り込まれている点。世界が滅びるような危機は訪れないし、町が魔物に襲撃されたり誰かが死んだりもしない。襲ってくるのは返済するたびに増える借金くらいだ。
心が震えるようなドラマチックなストーリーや壮大な冒険譚は胸躍るが、それはそれとしてのんびり遊べるゲームもいいものだと『キュイジニア』は思わせてくれる。住民の些細なトラブルを解決したり、大会に出場するような少しだけ特別な日常を味わえるため、じっくり遊んでみたいと思わせるゲームだ。
一方でアクションゲームとしても作り込まれていたり、レストランの内装変更などやり込み要素も充実しているため、好きな人は時間を忘れて没頭できるゲーム性。世界観やキャラデザイン、ゲームシステムなどひとつでも気になる部分があったら、ぜひともプレイしてみてほしい。
飯テロ注意なワンオペレストラン
重要な要素であるレストラン経営についても詳しく触れていこう。
レストランは好きなときにオープンでき、訪れた客の注文を受けて料理を作成して代金をもらうまで一連の流れをひとりでこなすことになる。従業員を雇えないワンオペ状態だが、ひとりで完璧に処理できる絶妙なバランスでできているのだ。
慣れてくると忙しいけどギリギリ完璧にこなせる、思考は追いついていないが身体が勝手に動く状態が形成される。プレイしていて学生時代の激務だったアルバイトをふと思い出す、妙にリアルな忙しさを味わえた。
プレイヤーは料理の作成、配膳、会計の3工程をひとりでやることになるが、アシスト機能が充実しているため複雑さは一切ない。注文を受けた料理は自動的に選択されるため、アイコンが赤く光ったら調理器具を稼働するだけでオーケー。食材を入れたり、レシピを検索するといった手間がないのでサクサク料理を提供できる。
配膳についても一部の客を除き、出来上がった料理は自分で取りに来てくれるので各テーブルを細々回る作業は発生しない。ただ、訪れる客層は店の家具などで変わり、上流階級の客が来た場合は配膳をすることになる。
セルフ式にして作業量を減らすか、高級レストランを目指して完璧な配膳をするか。自分がどんなお店にしたいかによってアレンジできるが、配膳まですると一気に難度が上がるので、ピーク時は貴族に極力来てほしくなかったりする。
最後に食べ終わった客がレジの前に立つので、一度ボタンを押して会計をしたら接客は終了。これを来客した数だけこなして、キッチンとテーブル、レジを慌ただしく行き来するのがレストラン経営の流れだ。ちなみに、遭遇率は低いが食い逃げしようとする輩も現れるので、店を出る前に会計させたりとトラブルも発生する。
レストラン経営でお金を稼いだら、新たな家具や調理器具を揃えたり、店を改築してさらに広げたりとやれることを増やしていける。
序盤こそ狭いお店だが、終盤になると大規模なお店になりこだわれるポイントも増えるため、お金稼ぎのモチベーションもドンドン上がっていくはずだ。レストランの内装やテーブル、家具の位置などはすべて自分でカスタマイズできるため、自分好みの理想のお店を追求してほしい。
本作の魅力であり危険な点として、レストランで提供される料理の描写が最高なことにも注目してほしい。アジア系の料理のほか、開発陣が日本の文化が好きらしく、とんかつや寿司などの和食もレシピとして用意されている。
これら料理の描写がどれも食欲をそそる見た目で、深夜にプレイしていると余計なカロリーを摂取することになりかねない、というより実際になった。時間を忘れて遊んでいると料理のビジュアルで急に空腹を刺激されるので、ダイエット中の人は要注意だ。
アクションは爽快かつ意外とハードで手応え抜群
料理に使う食材は町で仕入れることはできず、すべてダンジョンに潜って調達する仕組みだ。このダンジョンがアクション、ローグライトの部分で、毎回形の変わるダンジョンからタマゴや小麦粉を持ち帰ることになる。
アクション操作はシンプルかつ定番の形式で、無敵時間のあるダッシュを駆使しつつ、装備したふたつの武器を使って敵を処理していく。このアクションがスピーディーでクセもない良好な操作性で、くり返し遊んでもストレスなく楽しめた。
持ち込む装備は肉たたき、投げ皿、フライ返しなど調理器具が武器化したもの。このあたりは徹底的な世界観のこだわりを感じられる。フライ返しは軽量でイメージとしては片手剣、肉たたきは重いが一撃が強いハンマー的なポジションだ。
武器はそれぞれスペシャルアタック(いわゆる必殺技)も使用可能で、一度発動するとクールタイムが必要になるが強力な一撃がくり出せる。こういった技を駆使しつつ、トラップ満載のダンジョンでひたすら食材を集めるのがアクションパートのサイクル。
無敵時間のあるダッシュも使い放題でハイテンポな戦闘が楽しめるダンジョン攻略だが、意外と難易度は高い。というのも、回復手段が持ち込みアイテムや特定ポイントなど限られており、被弾しすぎるとアッサリ倒されてしまう。
各種アクションに制限がほぼないぶん、回避を含む立ち回りが重要になってくる。個人的には、強い敵2~3体と戦うより、5体以上で襲ってくる弱い群れのほうが被弾率が増えて苦手だった。
食材が十分に集まったらダンジョンからはいつでも撤収できるが、最下層までたどり着けばちゃんとボスも配置されている。道中の敵を含め、ガッツリアクションを楽しみたい人でも満足できる難度だ。
ダンジョンでドロップする装備品にはランダムで特性が付与されているのだが、こちらもやり込み要素のひとつ。
特性はダッシュ時に毒をまき散らしたり、ダメージを与えるといったアクションの強化を始め、戦闘スタイルを大きく変化させる要因だ。料理を使って自分で特性を付与することも可能で、後半はこの要素を追求して最強の装備セットを作るのも醍醐味になってくる。
終盤になると特性を詰め込んだ上でなお倒すのが難しいボスなども登場するため、アクションローグライクが好きな人もぜひ遊んでみてほしい。
緩やかな日常の変化に癒される
登場キャラクターのデザインも魅力的で、町での日常を彩ってくれる。町民たちはそれぞれ細かい背景が設定されており、少しずつキャラどうしの物語が進んでいくのも見どころだ。
語るときりがないほどキャラエピソードは豊富で、アーカイブを見るとより登場キャラたちが好きになれた。大工屋のアルターに一目ぼれしたアンズが定期的に大工屋の近くをうろついていたりと、微笑ましい描写が町には溢れている。
貴族と平民の身分差恋愛を楽しむカップルや、それを目撃した貴婦人など、日常のちょっとしたイベントが町では発生しているため、毎日町民たちと会話をするだけでも癒されること間違いナシ。
一見忙しそう、というより実際慌ただしいゲーム性ではあるのだが、日常的な描写も豊富で緩い雰囲気で遊べる『キュイジニア』。一気にクリアーまで進めるのではなく、余裕のあるときにゆったり遊べるため、じっくり楽しんでほしい一作だ。