スマートフォン向けゲーム『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(以下、『マギレコ』)のリリース6周年を記念して、『魔法少女まどか☆マギカ』(以下、『まどか☆マギカ』)の物語を新キャラクターの目線で描いた新シナリオ“魔法少女まどか☆マギカ scene0”(以下、“scene0”)が2023年10月3日に配信される。

 ファミ通.comでは、“scene0”のシナリオを手掛けるニトロプラスの下倉バイオ氏にインタビュー。9月24日に開催されたトークイベント“Magia Day 2023”(※2023年10月22日23:59までアーカイブ視聴可能)で全容が明かされたばかりの“scene0”について、制作経緯やシナリオの概要、キーパーソンの魔法少女“愛生まばゆ”がどのようなキャラクターなのか、下倉氏にお話を伺った。

“魔法少女まどか☆マギカ scene0”予告

ニトロプラス・下倉バイオ氏
下倉バイオ氏

下倉バイオ

 ニトロプラス所属のシナリオライター。代表作に『月光のカルネヴァーレ』(2007年)、『スマガ』(2008年)、『君と彼女と彼女の恋。』(2013年)などがある。『シュタインズ・ゲート』(2009年)にシナリオ構成協力で参加したことでも知られる。近年はテレビアニメの脚本も手掛けている。(文中は下倉)

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オリジナルアニメの企画を練り直して生まれた“scene0”

“魔法少女まどか☆マギカ scene0”下倉バイオ氏インタビュー。3人称視点(愛生まばゆ)で見る新しいループ、『まどか☆マギカ』の全貌を知っている人に刺激を与えるシナリオを

――下倉さんが“scene0”のシナリオを担当することになった経緯を教えてください。

下倉自分が最近いくつかのアニメに関わってきたなかで、『東京24区』と『Buddy Daddies』という作品で鳥羽さん(※1)とお仕事をさせていただきました。そこでブレストか何かをしているときに、「ループものでこういうアイデアがあるんだけど、アニメにできないか」みたいな相談をしたんです。

※1:アニプレックスの鳥羽洋典氏。『Angel Beats!』や『キルラキル』、『アイドルマスター』などのアニメ作品にプロデューサーとして参加している。

――最初はオリジナルのアニメとして考えていたのですね。

下倉どうすれば具体的な形になるだろうかと悩んでいたときに、鳥羽さんが「この内容なら『まどか☆マギカ』でもいけそうですね」といった話を急に投げ込んできたんです。

 言われてみればそうだなと思って、『まどか☆マギカ』向けにアイデアを練り直して企画を作ったのが最初でした。そこから紆余曲折あり、「ゲームでやるのはどうだろうか」と。

――アニメとゲームとでは物語の見せかたもかなり違ってきそうですね。

下倉ゲームなら自分もたくさん経験を積んできたので、むしろそのほうがストーリーは作りやすいなと思ったんです。それで、「じゃあスマートフォンのアプリでぜひ」と話が進んでいったというのが大雑把な経緯です。

――下倉さんといえば、PC用ゲームの『スマガ』(※2)でプレイ時間何十時間という超大作を手掛け、さらにファンディスクの『スマガスペシャル』(※3)も制作されていました。そこでループものは描き切ったのではとも思ったのですが、もう一度ループものに挑戦しようと思ったのはなぜなのでしょうか。

下倉『スマガ』で考えられるアイデアは全部入れたと思っていたのですが、時間が経てば経つほどいろいろなアイデアが出てきました。

 そのアイデアが『スマガスペシャル』にもなったのですが、『シュタインズ・ゲート』(2009年10月15日発売)や『君と彼女と彼女の恋。』(※4)などのループっぽいニュアンスのある作品に携わるなかで、「ループものでもこの切り口はまだないな」という考えが思い浮かぶこともけっこうありまして。そのなかで出てきたのが“scene0”のコアとなるアイデアでした。

『スマガ』通常版パッケージイラスト
『君と彼女と彼女の恋。』
『スマガ』(2008年9月26日発売)
『君と彼女と彼女の恋。』(2013年6月28日発売)

――ということは、今回描かれるループにはこれまでにない何かがプラスされている、と。

下倉そうですね。また新しい切り口、新しい見せかたができたんじゃないかと思っています。

※2:神様からリベンジ(やり直し)能力をもらった主人公が、何度も死と生き返りを繰り返しながら最高のハッピーエンドを目指す人生リベンジアドベンチャー。不可視の巨大怪獣・悪魔(ゾディアック)と戦い、不幸な運命をたどる魔女たちを救うためにリベンジし続けるという、奇しくも『まどか☆マギカ』でも似た展開が繰り広げられた。
※3:『スマガ』の続編・ファンディスクとなる人生リベリベアドベンチャー。キャッチコピーは“ハッピーエンドなんて、いらない。”。『スマガ』ではすでに死亡してしまっていたふたりの魔女が登場し、本編終了後の物語が描かれる。
※4:通称『ととの。』。ふたりのヒロインからひとりを選ぶ、一見するとふつうの美少女ゲーム。……しかし、じつは壮絶なギミックと展開が隠されており、当時のプレイヤーを大いに驚かせた。(初回限定版は)DVD-ROMではなく、小さな白い箱の中に結婚指輪のごとくUSBメモリーが入っているという常識破りな販売形態も話題に。もちろん、USBメモリーだったことにも意味がある。

『まどか☆マギカ』の全貌を知っている人に刺激を与える物語を

――当初は『まどか☆マギカ』とは関係なくループもののアイデアがあったとのことですが、“scene0”にするうえで変更した部分はあったのでしょうか。

下倉メインのアイデア自体はシンプルで、そこにどんな設定をつけていくか、その設定に対してどんな描きかたをするか、という部分はあくまで後から固める部分でした。

 そのため、元から考えていたものを作り変えたというよりも「『まどか☆マギカ』に合わせてストーリーを考えるとこうなるよね」といった具合でアイデアを過不足なく活かせたかなと思います。

――『まどか☆マギカ』ならではの苦労はありましたか?

下倉すでにキャラクターや世界観があるものなので、それを前提にした作りにしないといけませんでした。オリジナルでやる場合、「これは何なんだ」「いまはどういう状況になっているんだ」と謎の部分に興味を持ってもらえると思うのですが、『まどか☆マギカ』の仕組みはもう明らかになっているじゃないですか。

――そこはオリジナル作品とは大きく異なる部分ですね。

下倉そうなると、この仕組みがあるということは、「じゃあこのキャラクターはこうなるんだろう」、「この先はこうなるんじゃないか」みたいな、『まどか☆マギカ』を知っているからこその想像力が働きます。そこをしっかり刺激できるような作りにしようと意識しました。

――『まどか☆マギカ』で新たにループものの物語を描くとなったときに、作品の生みの親であり上司でもある虚淵玄さん(※5)に相談などはされましたか?

下倉やっぱり筋は通しておかなければいけませんので、「こんなアイデアがあるんだけど、どうでしょう」みたいな話はしに行きました。

 基本的には放任主義ですから(笑)。「好きにやったら」という感じだったので、それならと思いっきり自由にやらせていただいています。

※5:『まどか☆マギカ』の脚本を務めたニトロプラス所属のシナリオライター。2000年に『Phantom -PHANTOM OF INFERNO-』でデビューすると、『吸血殲鬼ヴェドゴニア』(2001年)、『鬼哭街』(2002年)、『沙耶の唄』(2003年)といった名作を立て続けにリリースし、美少女ゲーム業界での地位を確立。2008年からはテレビアニメの脚本にも活躍の場を広げ、2011年に『まどか☆マギカ』『Fate/Zero』(原作小説執筆)のふたつのテレビアニメが放送され脚光を浴びる。

――任せてもらえて、存分に下倉さんらしさを出せたと。

下倉プロットと企画書、大まかなストーリーの流れを見てもらったら「あとはよろしく」みたいなかたちでした。

 もちろん、アニプレックスさんやシャフトさんにも監修に入っていただいているので、それぞれのキャラクター性などはしっかりと守っています。

3人称視点(愛生まばゆ)で見る『まどか☆マギカ』のループ

――“scene0”はループものになるということでしたが、どんな物語になるのか、可能な範囲で教えていただけますか?

下倉『スマガ』などのいわゆる美少女ゲームのループものって、基本的には1人称でループを追いかけていく話が多いじゃないですか。

 「これはループしているぞ」と気付いた主人公の視点でストーリーを追うのがこれまでの作品だったと思っているのですが、『まどか☆マギカ』が放送されたときに印象的だったのが、ループの主体が暁美ほむらで、ループを2人称の視点で描いているんですよね。

――たしかに、主人公の鹿目まどかはループを認識できていないキャラクターでした。

下倉主人公自身ではなく、対になる2人称のキャラクターがループしているというのが、アニメ用にチューニングされた、おもしろい部分だなと感じた点です。

 アイデアの連続性という意味で言うと、“scene0”は愛生まばゆという新キャラクターが3人称的な視点でループを見ていく、というようなニュアンスの作品になっています。

――告知PVでは「あの日私は、時間が止まっていることに気付いて」という言葉があったので、時間停止には気付いているようですが、まばゆはループをも認識しているということですか?

下倉そこは……ストーリーが進むにつれて追々わかってくるということで、いまはお伝えできません。テレビアニメとひと続きになるようなお話になっているので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

“魔法少女まどか☆マギカ scene0”告知PV

――キーパーソンと思われる魔法少女の愛生まばゆについても伺っていきたいのですが、彼女はどういったキャラクターなのでしょうか。

下倉まばゆは3人称的にループを見る存在だというお話は先ほどもしましたが、そういう意味でストーリーを読んでいるユーザーが親近感を覚えるようなキャラクターがいいなと思って考えていきました。

 映画が好きで知識を貯めることに喜びを得ていて、ちょっとコミュニケーションが苦手な、いわゆるオタクっぽいところもある。親しみを感じられるようなキャラクターを目指しました。

――まばゆの視点で見滝原で起こったできごとを観測していくようなことになるのでしょうか。

下倉そうですね。彼女も見滝原中学校の生徒なので、そのあたりもどうなっているのか、実際にゲームをプレイして確かめてもらえればと。

――まどかやほむらと校内ですれ違っていた可能性もあるのですね。ほかにもオリジナルキャラクターは登場するのでしょうか。

下倉彼女の母親もオリジナルのキャラクターになります。でも基本的にはアニメに出てきたキャラクターたちがほとんどですね。ちょっとコアなところで言うと、アニメのオープニング映像でまどかが抱いていた黒猫のエイミーも出てきますよ。

――今回のタイトルが第0章などではなく、“scene0”となっているのには何か意味があるのでしょうか。

下倉まばゆがとにかく映画を見ている映画オタクなので、関連した言葉を使おうと思い、sceneという単語を使っています。

“魔法少女まどか☆マギカ scene0”キービジュアル

――なるほど、だからPVでもフィルムが出てくるわけですね。まばゆはハサミのようなものを持っていますし、フィルムが切られるような演出もありました。となると、時間の流れを切り貼りして改変できる編集能力のようなものがあるのでは、といった考察も進んでしまうのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

下倉まだあまり情報が出ていないのに、よく考察していますね(笑)。

――情報がないからこそ考察が捗ります。

下倉SNSを見ても、ファンの皆さんがすごいんですよ。前に見たときには、「スケネオーっていうのは……」みたいな考察もあって、何のことだろうと思ったら“scene0”をカタカナ読みしていたんですよね。ファンのなかでそういう符丁を使ってコミュニケーションがとられているのを見て、「これはがんばらないと」と思いました。

――当たっている、または正解に近い考察はありましたか?

下倉……言えないですね(笑)。でも、そんなに極端なことをやっているわけではないので、ある程度入り口や大枠に関しては予想された通りのものになるかなと思います。

シナリオボリュームは20万字以上。おもしろいギミックも用意

――“scene0”のシナリオボリュームはどの程度になっているのでしょうか。

下倉セリフや話者名、そのほかのテキストも含めた字数としては約20万字以上ありますね。昔のノベルゲームで言うと短編から中編くらいのイメージですが、今回はひとりが長く喋るよりも会話が多くなるようにしているので、より濃密になっていると思います。

――『マギレコ』内のシナリオと比較すると、どのくらいの長さなのでしょう。

下倉メインストーリー2~3章分くらいのボリューム感にはなると思います。

――話は変わりますが、下倉さんは長いあいだ美少女ゲーム業界の第一線でご活躍されてきました。過去にソーシャルゲームにも携わられてきたなかで、今回再びソーシャルゲームのシナリオに挑戦されていますが、改めて意識した点はありますか?

下倉アニメよりもソーシャルゲームのほうが経験もあったので、やりやすい媒体で書かせていただいたという印象ですね。

 むしろ、「こんなアイデアを入れたらおもしろいんじゃないか」みたいに軽く言ったことをギミックとして取り入れてもらったので、開発会社のf4samuraiさんに無理を聞いていただいたところのほうが大きいです(笑)。

ニトロプラス・下倉バイオ氏

――ソーシャルゲームの場合はシナリオの合間にバトルが入る関係もあって、ライターが意図した熱量で物語を届けるのがむずかしい媒体なのではないかと思うのですが、そのあたりのノウハウは『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ> SUICIDE MISSION』での経験が活きたのでしょうか。

下倉そうですね。ソーシャルゲームを始めたばかりのころと後半とでは、書きかたは全然違っていましたし、世の中的にもシナリオが持つ価値の比重が大きくなってきていると思います。そういう部分で変わってきたなという印象はありましたけど、今回は実装面などにはとくにとらわれずに、集中して自由にお話を書かせていただきました。

――f4samuraiさんに無理を聞いてもらったということですが、これまでの『マギレコ』にないギミックが実装されるということでしょうか。

下倉今回はテレビシリーズや劇場版の『まどか☆マギカ』をベースに進むので、それがもうちょっと立体的に見えるように、かつソーシャルらしくファン同士のコミュニケーションが密になるようなアイデアを入れられないか、ということで入れていただいたギミックがあります。

 とはいえ、メインで楽しんでいただきたいのはシナリオの部分なので、そこと合わせて“scene0”用に作っていただいたUIなども見てもらえたらうれしいです。

――それ以外にも、実現がむずかしいお願いもされたのですか?

下倉PCゲームを作っていたときも、ただの読みものでは嫌だなと思って、たとえばロボットたちが戦うゲームにしたり、攻略サイトが全然役に立たないゲームを作ったり、いろいろ試してきました。

 今回もスタッフ同士で集まって、「こんなことをしたらおもしろいんじゃないか」と現実的なリソースなどをあまり考えないでアイデアを出させていただいたんです。そのなかで、これならリーズナブルに作品のコンセプトに沿って表現できるね、みたいなところにうまく落とし込めたんじゃないかと思います。

――『君と彼女と彼女の恋。』でもすごいギミックがありましたが、あそこまではいかないにしても、何かしらの仕掛けが用意されていると。

下倉あれに関しては、諸々を自分たちでコントロールできるから実現できた部分もありました。今回はもうちょっと、ストーリーを軸にしたアイデアになっています。

――なるほど。“開発協力:ニトロプラス”という記載もありましたが、下倉さん以外の方も関わられているのでしょうか。

下倉初期のころはアイデア出しに付き合っていただいたメンバーもいました。でもいまは、基本的に演出なども含めて自分が見ていて、いっしょに作らせていただいています。

『まどか☆マギカ』放送前の虚淵氏とのやり取り。そして下倉さんの次回作は?

――『まどか☆マギカ』が放送されたのは12年前になりますが、当時の感想などを改めてお伺いしてもよろしいでしょうか。

下倉じつは、自分が『スマガ』を作っていたときに虚淵がデバッガーとして参加していました。そのときに虚淵から、「今度こういうアニメの企画があるんだけど、『スマガ』とアイデアが似通った部分があって、偶然そうなってしまったんだけど大丈夫かな」と相談を受けたんですね。それが『まどか☆マギカ』の存在を知ったきっかけでした。

――そんな出会いだったのですね。

下倉その段階で大まかな流れは聞いていたので、なんとなくそういう話になるんだろうなと思いながら見ていました。放送中は、「なるほど、ここらへんの要素がお互い何も見ていないのに似てしまうんだな」みたいに思ったのを覚えています。

 そのなかで、先ほどお話しした1人称と2人称の違い、発想の起点が同じようなところにあっても、アニメの媒体で表現するとこんな差異が生まれるのかとすごく印象的でしたね。作品としてここまで仕上げるんだな、という虚淵の脚本の手腕にも驚かされましたし、感心させられました。

――『まどか☆マギカ』は放送当時も大きくヒットしましたが、ヒットした理由の考察などはされましたか?

下倉理由がわかったら、自分ももうちょっとヒットさせられていたんですけどね(笑)。少しタイミングはズレますけど、『シュタインズ・ゲート』のアニメも同じくらいの時期に放送されてヒットしました。あのころって、美少女ゲームで洗練されたループものなどの想像力が、一般アニメにアレンジされて広がっていったタイミングなのかな、という印象があるんですよ。

――『まどか☆マギカ』が2011年1月から4月まで、『シュタインズ・ゲート』は同年4月から9月までと、ほぼ同時期でしたね。

下倉いまでこそ、「人生何周目だよ」みたいな表現も一般的になりましたけど、当時はまだ新しかったじゃないですか。そういうタイミングでループものをうまくエンタメに落とし込んで、広く共通の話題にすることができたのは大きかったと思います。

ニトロプラス・下倉バイオ氏

――個人的には、『スマガ』もそれらの作品に引けを取らない内容だと思っています。ループもののアニメが立て続けにヒットするのを見て、自分のゲームも、と思うことはありませんでしたか?

下倉『スマガ』は長いですからね。『シュタインズ・ゲート』も24話で長いと言われたところもありますけど(笑)。なるべく触れやすい尺で、きちんとおもしろさのエッセンスを凝縮して提供するのも、ひとつの技術です。『まどか☆マギカ』はそこが優れていたと思いますし、媒体の違いに合わせて表現をした結果だったと思っています。

――『まどか☆マギカ』という既存の世界や設定があるなかで、新たに“scene0”の物語を作るという構図は、かつて虚淵さんが『Fate/Zero』の小説を担当したときと重なって映ります。

下倉『Fate/Zero』は虚淵にとって転機になった作品でした。それまではバッドエンドしか書けないというのが作家としての強みでもありつつ、本人はコンプレックスに感じていたこともあったと聞いています。でも、『Fate/stay night』がある時点で『Fate/Zero』はバッドエンドになるのが確定しているんだから、「思いっきりバッドエンドにできるじゃん」みたいな開き直りがあったらしくて(笑)。

――おもしろい話ですね(笑)。

下倉でも、聞いていてなるほどなと思ったんです。実際、今回も似たようなところがあって、虚淵が『まどか☆マギカ』で最終的にああいった結末を描いているなら、そこをゴール地点にしたうえで好きなことができるし、そのなかで自分の個性を目一杯出せばいいじゃない、みたいな開き直りができました。そういう意味では、たしかに似ているところがあるのかなと思います。

――『Fate/Zero』は、『Fate』シリーズの一般的な認知度を拡大した作品だったと思います。今回の“scene0”も、それぐらいの立ち位置、内容になっているという自信はありますか?

下倉それはもう、自信は……どうでしょう(笑)。でも、そういうかたちになるよう精一杯がんばったので、あとは無事にお届けできればなと思いつつ、神妙に首を差し出しております。

 『まどか☆マギカ』は劇場版やスピンオフも含めて、すごく歴史の長い作品ですし、熱心なファンの方もたくさんいらっしゃいます。そういったなかで参加させていただくのは背筋が伸びるというか、緊張するところではあるのですが、ちゃんとストーリーが届いて、遊んでくださった方の感情を揺さぶらないと意味がありません。

 愛生まばゆというキャラクターが新しく入ったことによって、これまでにはない切り口で新たに心揺さぶられる物語が作れるように注力して書きましたので、まばゆちゃんのストーリーにぜひご期待ください。

――最後に、“scene0”が落ち着いた後、下倉さん自身の活動として何か計画されていることはありますか?

下倉食い扶持は稼がないといけないので、水面下ではつねに何か動いています。まだ発表されてはいないのですが、それが無事水面から浮上できるように祈っています。

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