セガとColorful Paletteが贈るiOS/Android向けリズム&アドベンチャーゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(プロセカ)が、2023年9月30日をもってサービス開始から3周年を迎えようとしている。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 音楽ゲームとしても、そして練りに練られた物語を堪能するノベルゲームとしても評価が高い『プロセカ』は、この3年の間に膨大な数のシナリオを各ユニットごとに配信してきた。

 “Leo/need”、“MORE MORE JUMP!”、“Vivid BAD SQUAD”、“ワンダーランズ×ショウタイム”、“25時、ナイトコードで。”。

 個性豊かなキャラクターたちの人となりと、その歩みを掘り下げるシナリオは、メインストーリー以外にも“キーストーリー”という形で各ユニットそれぞれ20本(!)も実装。それが、3周年を目前に控えた2023年夏の提供を持ってひと区切りとなり、いよいよ10月からは各キャラが“進級”となって“キーストーリー・第二幕”が始まるのである。

 そんなタイミングだからこそ、このとてつもない量の『プロセカ』のシナリオをここで一度収束し、歴史を整理しようと思った。

 全メインストーリーと、全キーストーリーのあらすじをまとめ、それぞれについての筆者の考察と感想を交えて、ずっと『プロセカ』を追いかけてきた熱い読者にも、進級を機に改めてこのセカイに入ってこようと思っているルーキーにも刺さる永久保存版の記事をここに刻もう。

 この、“【プロセカ3周年記念特集】ユニットごとの全シナリオまとめ!”を読めば、『プロセカ』が歩んできた道筋がすべてわかる。

 そんな短期集中連載の最後は、“25時、ナイトコードで。”に締めてもらおう。

※この記事はセガ/Colorful Paletteの提供でお送りいたします。

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25時、ナイトコードで。(ニーゴ)のメインストーリー

 作曲家の父の心が壊れてしまったことをきっかけに、“誰かを救える曲”をただひたすら作り続ける宵崎奏と、その引力に引き寄せられて集まった“問題を抱える子たち”の群像劇。それが、ニーゴのメインストーリーだ。

 “ナイトコード”というチャットツールを使い、深夜1時(25時)を境に動き出すクリエイター集団。作曲担当のK、作詞・編曲担当の雪、イラスト担当のえななん、動画担当のAmiaの4名は、互いの本名も、顔も知らぬままチャットツールを頼りに作業をし、聴くものの心を揺さぶる楽曲を投稿し続けていた。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 そんなあるとき、ネット上で話題になっている楽曲投稿者“OWN”の話題が出る。奏の曲と違い、ひたすらに冷たくてあらゆるものを拒絶するような曲調が、多くの視聴者に刺さっているのだという。その曲を聴いて奏は、「雪が作っているのでは?」との疑念を抱いた。

 そして4人は謎の曲『Untitled』に導かれて、“誰もいないセカイ”で邂逅を果たす。「もうニーゴでは活動しない」と断言する朝比奈まふゆ。同時に、「あなたたちも、誰よりも消えたがっているくせに」と、それぞれが胸に秘めている核心を突いてきた。戸惑う奏(K)、東雲絵名(えななん)、暁山瑞希(Amia)の3人――。

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 それでも、初音ミクの導きにより奏は、「雪のために曲を作り、その曲で雪を救いたい」と決意を新たにする。そしてこの想いが、その後のニーゴの活動の柱でもあり、原動力にもなるのである。

 メインストーリーはもちろんだが、ニーゴの物語はイベントストーリーもほぼすべて、色のない水の底のような世界で展開すると言っていい。他のユニットの世界観とは明らかに一線を画しており、ともすれば暗くて痛いと感じる人も少なくないかもしれない。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 しかしだからこそ、ニーゴの存在感は際立つ。奏も、まふゆも、絵名も、瑞希も、ひとかたならぬ問題を抱えて水の底であえいでいるわけだが、それゆえに、誰もが抱える心の傷に訴えかけてくるのである。

 そんなニーゴの世界観の根幹を成しているのが、心を失くしてしまっているまふゆの物語である。“見失っている”ではなく、“失くしてしまっている”のが大きなポイントで、その原因である“まふゆ母”の絡みにより、ニーゴの物語は混迷を極めていくのだ。

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キーストーリー:“囚われのマリオネット”

あらすじ

 まふゆを救うために曲を作り続ける奏だったが、いくら作っても響いてくれない。どうにもならずに悩んでいたある日、家事代行のアルバイトとして奏の家にお手伝いに来た望月穂波から、「寄り添って、たくさん話をしてみては」とのアドバイスを受ける。そしてその際に穂波から、4人分の人形展のチケットをもらったのだった。

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 まふゆを始めとするニーゴのメンバーを人形展に誘う奏。これをきっかけに、まふゆに変化があれば……と期待しながら見学を始めたが、まふゆは糸で吊られたマリオネットを見て体調を崩してしまう。

 後日、まふゆはマリオネットから感じたことを歌詞にする。それまでのまふゆとも、OWNとも違う詞を見て驚くメンバー。そして奏がこの歌詞に曲を付けて完成させ、まふゆは「――こんな曲になるんだね、私の歌詞」と笑顔を見せるのであった。

キーストーリー:“囚われのマリオネット”を読んで

 ニーゴが活動するうえで最大のモチベーションになっているのが、“まふゆの心を取り戻す”こと。よって以降のイベントストーリーも、掘っていけばその根底には必ず、まふゆの心を取り戻そうとして足掻く奏の姿がある。

 この“囚われのマリオネット”はある意味、ニーゴの物語を短く圧縮して提示しているようなものかもしれない。なんとかしようと必死になる、奏、絵名、瑞希。心を失くしたまま色のない世界を彷徨い続けるまふゆ。

 その佇まいはまさに“囚われのマリオネット”で、いったい何が彼女をそうさせてしまっているのかが徐々に紐解かれていく。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 他のユニットとはまったく違う集まりであるニーゴの特殊性が、くっきりと浮き彫りになるイベントストーリーだ。

囚われのマリオネット【プロセカ公式】

キーストーリー:“満たされないペイルカラー”

あらすじ

 マリオネットをモチーフにしたMVがバズり、いつも以上に再生数が伸びて喜ぶニーゴの面々。イラスト担当の絵名も、自分のこだわりを評価してくれるコメントを見て喜びを隠し切れないでいた。

 しかし、個人でやっているイラスト専用アカウントには反応がなく、画家である父に言われた「お前には才能がない」という台詞を思い出してしまうのだった。

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 そんなとき、絵名はリビングでアートコンクールのフライヤーを見つける。「自分も賞をもらえたら」と思っていたところに因縁の父親がやってきて、「お前も応募するのか?」と聞かれる。

 そして、「レベルが低いお前では賞を獲ることは難しい」とまで言われてしまい、反発する絵名。しかし、応募した作品は何の賞も獲得できず、絵名は絵が描けなくなってしまう。

 最終的に彼女を救ってくれたのは、やはりニーゴの仲間だった。「誰かに認められたいなら、認められるまで描けばいいじゃない」というまふゆのひと言で何かが吹っ切れた絵名は、ニーゴのために絵を描き上げるのである。

キーストーリー:“満たされないペイルカラー”を読んで

 ニーゴのイラスト担当、絵名の、挫折と葛藤、そして“才能”というものに抗う姿を描いた物語。これは絵に限らず、音楽、文章、動画制作、演技……などなど、“何かを作る”ということを目指した人に、間違いなくグサグサと刺さりまくるイベントストーリーだ。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 こういったクリエイティブな世界を歩もうと決めた人って、そのきっかけとして一度は必ず、「俺って、才能あるかも……!」と思った瞬間があったはず。筆者もそうだけど(笑)。その想いに背中を押されて走り続けることができれば、きっとある程度の結果を残すことができると思うんだけど、絵名に至っては……!

 画家である父に憧れ、その背中を追って絵の道を目指そうとしていた矢先に、あろうことか父本人から「お前には才能がない」と言い切られてしまったわけで……!

 このイベントストーリーから始まる絵名の物語のテーマは、“足掻き”だろう。

 父親に対する足掻き、自分の才能に対する足掻き、何かよくわからないものへの足掻き――。決して格好よくはない絵名の立ち回りを見て、口を突いて出てくる言葉はいつも、「くじけないで!」なんだよな。

満たされないペイルカラー【プロセカ公式】

キーストーリー:“シークレット・ディスタンス”

あらすじ

 新作を完成させて、いつもの風景が戻ってきたニーゴだったが、瑞希は心が晴れずに絵が描けなくなっていた絵名のことを思い出し、「もっと互いのことを知っていれば助けられたかもしれないのに」とそのときの行動を悔やむ。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 そんなときに奏から、「スランプで曲が作れない」と告げられた瑞希は、これ幸いと「みんなでミステリーツアーにいこう」と提案する。何がきっかけになるのかわからないなら、なんでもやってみようという論理だった。そして、いくつかの心霊スポット巡りを楽しんだ末に、廃校舎の裏で大きな桜の木に出会う。

 その帰りの電車の中で、ふいに悲しそうな表情を見せる瑞希。それを見た絵名は、瑞希が誰にも言えない大きな悩みを抱えているのでは……と気づくのであった。

キーストーリー:“シークレット・ディスタンス”を読んで

 それぞれが何かしらの問題を抱えているニーゴのメンバーの中でも、おそらくもっとも大きな秘密を抱えているのが瑞希だ。ふだんから底抜けに明るくて要領がよく、他のメンバーの機微にもいち早く気づける瑞希が、ニーゴのメンバーが大切だからこそ言えない悩みを、心の底に封じ込めている事実……。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 このイベントストーリーをきっかけに、もっともがさつと思っていた絵名(失礼)が瑞希の“何か”に気づき、「悩みがあるなら話して」と問いかけるが……?

 言った瞬間にいまの関係が崩壊してしまうかも……と思っている秘密を簡単に口にできるわけもなく、瑞希は明るい仮面の下で懊悩を続ける。果たして、瑞希はこの葛藤から解放される日が来るのだろうか……?

 ちなみに、瑞希の過去を掘り下げるという点に関しては、“KAMIKOU FESTIVAL!”というイベントストーリーも詳しい。キーストーリーではないけど、ぜひこちらにも目を通してほしいと思った。

シークレット・ディスタンス【プロセカ公式】

キーストーリー:“お悩み聞かせて! わくわくピクニック”

あらすじ

 大成功のうちに終わったように見えたミステリーツアーだったが、それ以降、企画者の瑞希が暗い表情をしていることに絵名が気づく。しかし「何かあるなら相談して」と言っても、暖簾に腕押し。絵名の心配は募るばかりだった。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 そんなとき、MORE MORE JUMP!の桃井愛莉から、「日野森雫を交えて遊びにいかないか」との提案が。その際、瑞希のことを相談すると、「同じグループではない自分たちだったら、瑞希も悩みを話してくれるかも」と愛莉と雫に言われて……。そして、一風変わった4人でのピクニックが始まった。

 当初は順調だったピクニックだったが、あろうことか4人は遭難してしまう。携帯の電波も繋がらない中、崖から落ちてしまう絵名と愛莉。助けを呼びに走る瑞希。そして、瑞希はたまたま来ていた神代類と草薙寧々を見つけ、救助してもらうのである。

 こうして、トラブル続きではあったものの貴重な経験をして、絵名たちは帰ってくることができた。しかし、当初の目的であった“瑞希の悩みを聞くこと”は達成できずじまい……。そのことを愛莉と雫に謝られたが、絵名は、

「今日の瑞希、久しぶりに笑ってた気がして。ずっと楽しそうだったし、やっぱり誘ってよかったな」

 と前を向き、

「瑞希が私を助けてくれたみたいに、私も、瑞希が困ってるなら助けたいの」

 そう言って、決意を新たにしたのだった。

キーストーリー:“お悩み聞かせて! わくわくピクニック”を読んで

 ニーゴの絵名、瑞希だけにとどまらず、モモジャンの愛莉と雫、さらにワンダショの類、寧々まで登場するという、非常に豪華なイベントストーリー。こういった、ユニットの垣根を越えた展開は『プロセカ』の真骨頂なので、期待して読んだファンも多かったと思う。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 そんな、きらびやかなメンバーが揃い、口が滑らかになりそうなハプニングが続出しても、瑞希は心の奥底にしまった秘密を話そうとはしない。そんな、話したくても話せない瑞希のことを想い、絵名は、「もっと踏み込んで、助けてあげたい」と誓うんだけど……。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 友だちのことを想うからこその絵名の反応は、きっと正しいのだろう。しかし正しいことが本当の答えなのかどうかは……当事者の瑞希が決めるわけで。このイベントストーリーを読んだ直後、絵名が先走って踏み込んでしまうんじゃないかと心配になった思い出がある。

お悩み聞かせて! わくわくピクニック【プロセカ公式】

キーストーリー:“カーネーション・リコレクション”

あらすじ

 まふゆのために闇雲に曲を作ってきた奏だが、いまだどんな曲が彼女の心に響くのかわからないでいた。そしてまふゆも、自分の心に宿るかすかな違和感を言葉にして伝えられずにいる。近寄っているようでもあり、遠のいているようでもある。そんな歯痒い状況に、ニーゴは陥っていた。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 ある日、曲が完成した奏は、ミステリーツアーのときに桜を見たまふゆの表情に変化があったことを思い出し、「新曲はセカイに集まってみんなで聴こう」と提案する。しかし、それでもまふゆに変化はなく、奏は袋小路に迷い込んでしまう。

 そんなとき、瑞希に声を掛けられた奏は、ヒントを探すために街を歩くことにした。そして、かつて両親といっしょに訪れ、白いカーネーションに感動した小さな花壇を見つけるのである。

 インスピレーションを得た奏は曲を完成させ、ニーゴの仲間に披露したのだが、そのときにまふゆは、「よかった、と思う」と無意識の笑顔を浮かべたのだった。

キーストーリー:“カーネーション・リコレクション”を読んで

 健気な奏を応援したい気持ちと、心を動かしてくれないまふゆに対する歯がゆさ、そして、大きな秘密を抱えながらもムードメーカーとして奮闘する瑞希の“らしさ”が全開になるイベントストーリー。なんとか奏を元気づけようと走り回る瑞希は、本当にいい子なんだろうなぁ……と心の底から思ったりする。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 そして、タイトルにもなっている“カーネーション”をきっかけに、奏の思い出が紐解かれていく。もう戻ることのできない、かけがえのない両親との日々を思い出す奏。その目から落ちる涙を見て、もらい泣きしない人はいないんじゃないかと確信するわ……。

カーネーション・リコレクション【プロセカ公式】

キーストーリー:“灯のミラージュ”

あらすじ

 奏が作った曲に、言い知れぬあたたかさを感じたまふゆ。その感情はどうして生まれたのか知りたいと思ったまふゆだったが、熱を出して寝込んでしまう。

 翌日になっても体調は戻らず、帰宅して薬を探そうとすると、そこには昔のアルバムを見て盛り上がる両親の姿があった。その際、昔の自分の写真を見たまふゆは、奏の曲を聴いたときと同じような胸の苦しさを感じる。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 翌日、体調が悪いまま登校するも、その日はいつも以上に忙しい。それでも優等生らしく勉強や委員会作業をこなすも、ついに帰り道の公園で倒れてしまった。そこに通りかかった奏。まふゆの自宅に行っても誰もいないことを知った奏は、ひとまず自分の家で看病することを決める。

 そして、体調が戻ったまふゆは、自分が無意識のうちに笑っていたという奏の曲に歌詞を付ける。それはいつもの悲痛な叫びではなく、その底に誰かを想う温かさが感じられる素敵な歌詞だった。

キーストーリー:“灯のミラージュ”を読んで

 もともと重いニーゴのストーリーが、いよいよまふゆを中心にのっぴきならない黒い渦に飲み込まれていく――。その端緒となるのが、この“灯のミラージュ”という物語だと思う。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 高熱を出し、奏のベッドでうなされるまふゆ。体調のせいかひとりになることを極度に怖がり、奏に助けを求めてくる。このとき、夢の中に浮かぶまふゆとその母親は、絵に描いたような優しい親子関係なのに……と、思わずにはいられない。

 なぜ人は温かかったときの記憶を簡単にどこかに置き忘れ、あえて苦しい水の底に向かおうとしてしまうのか――。そんなことをついつい考えてしまう胸に痛いストーリーが展開するんだけど……!

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 痛みや辛さを乗り越えたその先には、もしかしたら小さな光もあるかも……?

 本当にかすかなものだけど、読者に希望を感じさせるこの構成……じつは、すごく好きです。

灯のミラージュ【プロセカ公式】

  • 書き下ろし楽曲:『再生』(作詞・作曲:Picon)

キーストーリー:“ボクのあしあと キミのゆくさき”

あらすじ

 初めてまふゆが笑ってくれた曲を完成させ、公開したニーゴ。その反響は想像以上のもので、多くの人に響いたことを証明するものだった。この曲の完成までを振り返った瑞希は、問題を抱えながらも前に進もうとする仲間のすごさを実感するとともに、どこにも向かえていない自分を卑下するのだった。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 そして、新曲完成を祝う打ち上げの帰り道。瑞希と絵名はイベント帰りのVivid BAD SQUADの面々とばったり遭遇する。そのとき、瑞希と白石杏がクラスメイトと知った絵名は何気なく、「学校での瑞希はどんな感じ?」と質問するが、すべてが白日の下にさらされてしまうかもしれないと、瑞希は大いに焦るのだった。

 いろいろと釈然としない絵名は、学校の屋上で瑞希に迫る。「バレてしまったのでは」と困惑する瑞希だったが、絵名が口にしたのは「瑞希、やっぱり悩んでるでしょ。それも、何かすっごく大きなことで」というもの。

 これに対して瑞希は、(まだバレてない……)とホッとしたものの、自分のことを本当の友だちだと思ってくれている絵名だったら、すべてを話しても変わらないでいてくれるのでは……という希望を抱く。しかし、口を突いて出てきた言葉は、「いつか、ちゃんと話せるようになるまで待っててほしい」だった。

 絵名は完全には納得できなかったものの、瑞希の意向を汲んで、「正直、待つのってすーっごく苦手だけど、特別に待ってあげる。だから――いつか、ちゃんと話してよね」とひと言。しかし、けっきょくは秘密を抱えたままの瑞希は、

 (いっそ、ボクの代わりに、誰かが全部話してくれたらいいのに)

 と、複雑な想いに苛まれるのであった。

キーストーリー:“ボクのあしあと キミのゆくさき”を読んで

 表向きは天真爛漫な瑞希が、何かを察して切り込んでくる絵名と不協和音を奏でてしまう。どちらが悪いわけでもないやり取りなため読んでいるこっちが心配になり、胸が締め付けられてしまう。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 なによりも辛いのが、互いが互いのことをしっかりと思いやっていることだ。もしもどちらかに悪意の片鱗でも見えれば感情の矛先を向けられるのに、ふたりともいい子すぎてそういうわけにもいかず……。

 この、なんとも歯がゆい状況を打破するには瑞希がすべてのことを絵名に打ち明けるしかないと思うも、その瞬間にこれまでの関係が崩壊してしまうかも……と考えてしまう瑞希の気持ちもよくわかる。けっきょく読者は、決め手のないふたりのやり取りをヤキモキしながら見続けるしかないのだ。

 とはいえ、他のユニットの物語にはない、感情の奥のほうで繰り広げられる攻防は、ニーゴだからこそのもの。読むのが多少辛くても、画面をタップする手が止まることはないのであった。

ボクのあしあと キミのゆくさき【プロセカ公式】

キーストーリー:“いつか、絶望の底から”

あらすじ

 日々、新曲の制作に精を出すニーゴのメンバーだったが、奏はふと、父が倒れてから2年もの月日が流れたことに思い至る。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 楽曲制作の合間、この2年間の活動を振り返るニーゴの4人。その中で、「最初のころのニーゴってどんな感じだったの?」という瑞希のひと言をきっかけに、奏とまふゆのふたりだけで楽曲を作っていた時代の出来事が語られる。

 絶望を抱えていた奏とまふゆだが、ともに、「この人となら、絶望の底に光を灯す曲が作れるかも――」と予感し、サークルを作る流れになる。それが、初期のニーゴだ。以来ふたりは顔も本名も知らぬまま、奏は作曲を、まふゆはその曲をアレンジすることで作業を続けていた。

 奏は、「誰かを救える曲を」

 まふゆは、「自分を救ってくれる曲を」

 求めるものは違いながらも、ふたりは同種の引力に引き寄せられて、25時のナイトコードに集ったのであった。

キーストーリー:“いつか、絶望の底から”を読んで

 いわゆる振り返りのストーリーだが、ニーゴのように一筋縄ではないものを抱えている子たちの過去を紐解くことは、非常に意義があると思う。

 ……っていうか、そうしてもらわないと読者も心に折り合いをつけることができないので、この“いつか、絶望の底から”に端を発する過去をさかのぼる展開は、とてもありがたかった。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】抱えた問題に立ち向かい続けるニーゴの物語を振り返る。救済、呪縛、才能、存在……異なる事情に囚われ続ける4人の歩み【前編】

 どんな引力があれば、これだけの才能と問題を抱える子たちが集まるのだろうか……? そんな読者の疑問に少しずつ答えてくれるかのようなモノローグが続くので、ニーゴ推しの人だけでなく、すべての『プロセカ』ファンに読んでもらいたいと思った。

いつか、絶望の底から【プロセカ公式】

後編では“空白のキャンバスに描く私は”から“仮面の私にさよならを”までの感想をお届け

 ビビバスのキーストーリーを辿っていく後編の記事では、“空白のキャンバスに描く私は”から“仮面の私にさよならを”までの感想をお届けしていく。

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