『ファイナルファンタジー』シリーズの最新作である、プレイステーション5(PS5)用タイトル『ファイナルファンタジーXVI』(以下、『FF16』)が2023年6月22日に発売日を迎えた。

 ナンバリングタイトルでありながらゲームジャンルをアクションRPGに変更するなど、多くの挑戦を経て生まれた本作。発売日を迎えたいま、多くのゲーマーたちがさまざまな想いを胸に本作をプレイ、または注目していることだろう。

 そこで本インタビューでは、ひと足早く本作のストーリークリアーまでプレイした取材メンバーが、実際のプレイで感じたことなどを、『FF16』の開発を率いる3人にうかがった。

※なお、本インタビューでは物語上のネタバレは基本的に避けているものの、物語に関する言及などをふんだんに含んでいる。予備知識なしで『FF16』の物語を楽しみたい方は注意してほしい。

 また現在公開の『FF16』特設サイトでは、このインタビュー以外にもさまざまな情報を掲載している。あわせてチェックしておくと、より『FF16』の理解が深まるはずだ。

▼『FF16』攻略&解説まとめ

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

吉田直樹(よしだなおき)

スクウェア・エニックス 取締役執行役員 第三開発事業本部長。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。現在、『ファイナルファンタジーXVI』のプロデューサーも兼任している。

高井浩(たかいひろし)

代表作は『ファイナルファンタジーV』、『サガ フロンティア』、『ラストレムナント』。現在は『ファイナルファンタジーXVI』のメインディレクターを務める。

※高井氏の“高”の字は、正しくははしごだかです。

前廣和豊(まえひろかずとよ)

『ファイナルファンタジーXIV』、『ファイナルファンタジーXII』、『ラストレムナント』の開発に携わった。現在は『ファイナルファンタジーXVI』のクリエイティブディレクター&原作・脚本を担当している。

“自分たちが考える最強の『FF』”を目指して

――この記事が公開されるときには、ついに『FF16』が発売となりますが、みなさんの率直な感想をお願いします。

高井じつは僕のキャリアのなかで、こんなにも余裕のあるマスターアップは初めての経験です(笑)。(インタビューを実施した2023年5月11日時点で)「発売日までけっこうあるな」という感じで、いまは心情的にいちばん平穏な状態ですね。この記事が公開される発売日には、きっとワクワクとドキドキが入り混じっている状態になっていると思います。

前廣僕としては、「やっと出た!」ですね。この3人が最初に吉田の部屋に集まって開発がスタートしてから、7年ほど経ちました。それが、ようやく完成してみなさまにお届けできたことは、とてもうれしく思います。

吉田僕も企画開始から参加していて、プロデューサーとして開発チームのがんばりを客観的に見ることができました。だから、ゲーマーとしても『FF』ファンとしても、「プレイをして、ストーリーのラストシーンまで見届けたときに、大きな満足感を得られるゲームが完成した」と胸を張って言えます。

 ただ、『FF』シリーズの約35年の歴史……つまり過去15作のナンバリングタイトルと、多数の派生タイトルがあるシリーズを目の前にして、“皆さんがどのように感じてくださるか”というところは、やはり蓋を開けなければわかりません。ですからマスターアップ後もなにもホッとできておらず、当分メンタルの平穏は訪れないと思います(笑)。

 とくにいまの時代は、発売を迎えたとしても初動の数字だけで結果が決まるわけではないですし、今回は先々も含めていろいろな施策を用意しています。

 しかも、僕は取締役としての視点でも『FF16』の動向を見ていかないといけません。PS5専用タイトルということもあるので、この先も発売日の後も、PlayStation5というハードとともに『FF16』を買ってもらえるようPRは続きます。ですので、僕の役割としてはまだまだ終わりが見えません。

 いっぽうで、開発チームはココまで本当にがんばってくれました。よくぞ、こんなにも素晴らしいゲームを作ってくれたと思います。本当におつかれさまでした。

――プロデューサーである吉田さんから見て、海外でのPS5の普及率も含めた“『FF16』の手応え”はいかがですか?

吉田僕は『FF16』のプロモーションのために、いろいろな国を巡ってゲームメディアの方々とお話をさせていただきました。そのなかで「おもしろいな」と感じたのが、国によってゲームメディアの特色が違うことです。

 たとえば、欧米のゲームメディアさんは「『FF』シリーズをバッチリやり込んだファンで、シリーズの歴史にもめちゃくちゃ詳しい」という人と、「『FF』シリーズはまったく知らない」という人に二極化していることが多く、ニュートラルなスタンスの人は少なめです。ゲーム開発の責任者としては、これはこれで両方の意見が聞けるのでうれしかったりします。

 そして先日、そんな彼らに向けて、本作のデモ版をプレイしてもらうメディアツアーを開催しました。まずは冒頭から3時間ほどのメインストーリーと、フィールドのウォークスルーに触れてもらい、その後にバトルデモを遊んでいただく。トータル7~8時間ほどのゲームプレイを体感してもらったことになります。

 今回のメディアツアーは、前回のバトルデモのみのツアーから数えると2回目になります。1回目から引き続き参加してくださったメディアの皆さんは、冒頭のストーリープレイで、「アクションゲームとして非常に良くできていると思っていたけど、ストーリー冒頭からプレイすると、まさにこれは『FF』とアクションの融合だ。」と言っていただきました。

 逆にまったく『FF』を知らない人からは、「ワォ! ブロックバスタームービー(日本的に言えばハリウッドの超大作映画的なニュアンス)を、そのままゲームとして遊べるのか!」という反応がもらえました。

 また、ずっと『FF』シリーズを追いかけている30~40代の人は、本作に限らず“新たなことに挑戦する”という行為自体を非常にポジティブに受け止めてくれています。そのうえで「ちゃんと『FF』だった」、「挑戦に成功している」、「時代に則した進化が感じられる」と言ってもらえたので、ゲームそのもののおもしろさに対する手応えはすごく感じています。

 ちなみに、内容とは別に「こんなボリュームの試遊をさせてくれるゲームなんて聞いたことない」、「ゲーム発売前の段階で、ここまで安定して動作しているゲームは見たことない」といったことも言われましたので、開発チームには感謝ですね(笑)。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

――実際、プレイしたうえで、『FF』らしさは確実に感じました。ただ世代によっても、シリーズに対する印象はそれぞれ異なるかもしれません。

吉田最近の『FF』シリーズを振り返ると、旧『FF14』は作り直しが必要なほどの大きな問題がありましたし、続く『FF15』もたくさんの人に遊んでもらえましたが、同時にストーリーに対する不満点を挙げる声もありました。こういった『FF』に対する厳しい評価が尾を引いているのは、グローバルで共通した事実ですし、シリーズである以上当然のことだと思っています。僕自身も、世界中を巡ってきてそれを肌で感じてきました。

 『FF16』は、そんな風評を“ゲームの中身で覆す”と決意して作り上げ、それに対する自信もあります。ただ、いくら僕がそう話しても「けっきょく、スクウェア・エニックスの手前味噌でしょ?」と言われたらそれまでなので、PRだけでは初動に対する不安感を晴らしきれないのが実情なのです。

 昨今の日本の映画やマンガのヒットの仕方を見てもらえればわかると思いますが、若い世代になるほど“発売日が勝負”という考えかたではなくなっています。それこそ、ネタバレの有無すらあまり関係がありません。“自分たちが時間とお金をつぎ込むに値する”と確信が得られたときに、初めて爆発的に広がっていくと考えています。

――ゲームの配信文化が一般化したことで、昔と比べて“ジワ売れ”の比重も増してきた印象ですね。

吉田また、国や地域ごとにメンタリティの違いがあるので、それも考慮したうえで発売日以降の戦略も練っている最中です。そういったマーケティングが、本当に難しい時代になりました。

――さきほど“『FF』らしさ”のお話がありましたが、本作では開発の発端として、『FF』というものをどう体現していこうと考えて作っていきましたか?

吉田じつは、全員がそろったうえでの「『FF』とは、こうあるべきだ」という会議はしていません。

前廣もともと、初期メンバーである我々3人はゲームの趣向が似通っていますしね。本作を作るにあたって、まずは僕がプロットを出したわけですが、ぶっちゃけて言えばそれは“僕が考えた最強の『FF』”だったんです(笑)。「僕が小学生や中学生時代に体験した『FF』を、いまの時代のゲームにするとしたらこうなる」というものを形にした感じです。

高井ですから「『FF』って、こういうものだろうな」という自分なりの定義を決めて、それがしっかり入っているものにしようと考えた形ですね。

――実際にプレイすると『FF』らしいストーリーに加えて、要所に過去作品のオマージュが散りばめられており、古くからのファンとして小さな発見に胸が踊りました。

吉田我々も『FF』オタクの集まりですから(笑)。ただ、過去シリーズの小ネタをいろいろ仕込みつつも、開発チームには「『FF14』のように、突けばオマージュが出てくる」というようにはしないように、と一度だけ念を押しました。

 僕がプロデューサー兼ディレクターをしている『FF14』は、コンセプトが“『FF』のテーマパーク”なのでそれで問題ありません。ですが、『FF16』でそれをやってしまうと、過去シリーズを知らないプレイヤーの方が疎外感を感じてしまいます。

 スタンスとしては、むしろそういうものはなくしていこうという感じですね。ただ、ロア(世界設定、伝承)を含めた細かい部分で“ニヤリとできる要素”として留まるぐらいならいいかな、とOKを出していました。

前廣コラボ感を前面に出してしまうような、大きなレベルのものは入れていないです。

―― “テツキョジン”がカタカナ表記なのがうれしかったです(笑)。

前廣テツキョジンは、スタッフから漢字表記でチェックに回ってきたので僕がカタカナに修正しました(笑)。そういったシリーズ要素については、“こう来たらこう”というのを外さずに少しずつ置いていったぐらいです。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

吉田『FF16』では、そういったオマージュだけでなく、これまでのシリーズにあったすぐれたシステムも意図的に取り入れています。例えば、高井がこだわって調整した“召喚獣のアビリティの習得&付け替え”は、『FF5』のジョブシステムをイメージしたものだと思います。あとは、敵からの攻撃の予兆がしっかり表現される、というのは『FF14』から引き継いだノウハウですね。

高井僕としては、“『FF14』の攻撃範囲の可視化は、遊びとして素晴らしいアイデアである”という思いが前提としてあり、だからこそ予兆表現の実装はマストでした。

 開発チームにも、「“敵から何をされたかわからないのにダメージを受ける”ということがないように」と言い続けていました。さらに『FF16』の予兆表現は『FF14』からさらに一歩進んで、自然の摂理の中にあってもおかしくないクオリティに進化させています。

――たしかに、雷の攻撃でしたら地面に帯電している範囲が表示され、「ここに雷のような攻撃がくるんだな」というのが、スッと予想できました。

高井『FF14』の“オレンジ色で、かつ単純な円やドーナツ状の予兆表現”は、さまざまな要因から割り切らざるを得なかった部分でした。『FF16』で、やっとリベンジを果たせた形ですね。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

吉田“敵から攻撃されていることがわかる” 、“攻撃を受けてしまっても、なぜダメージを受けたか納得できる”。そのうえで、それが“VFX(視覚効果)として自然な表現になっている”という部分は、海外メディアの方々にも「すさまじく上手に作られている」と評価してもらえた点でしたね。

――アクションゲームはトライアル&エラーの積み重ねのイメージでしたが、確かに「わからない」理不尽さはストレスに繋がる部分もあるかもしれません。

高井アクションゲームを苦手とする人が、そのジャンルに触れていて一番理不尽に感じるところは“なぜダメージを受けたのかわからないから、どうすればいいかもわからない”だと考えています。

 そういう詰まり方をするとゲームをすること自体がイヤになってしまうので、攻撃の予兆をはじめとした“プレイヤーがわかったほうがいいもの”は、露骨なぐらい目立たせています。そのうえでサポートアクセサリを用意することで、さらに漏れなくカバーできるようにしました。

吉田とはいえ、攻撃予兆だけを見て「『FF14』に似ている」と判断されるのは、我々としても心苦しくて……。『FF14』を遊んだことがないプレイヤーも多いでしょうし、彼らが疎外感を受けないようにというのはPRのキーワードでもあります。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

PS5のスペックを活かした“誤魔化しのない表現”への挑戦

――今回、実際にプレイをしてみて、『FF』であることを抜きにオリジナル作品として見ても、アクションPRGとして素晴らしいクオリティに達していると感じました。この手触りのよさを実現するには相応の苦労があったと思いますが、みなさんはどのあたりで「これはいける!」と手応えを感じましたか?

高井僕が確かな手応えを得たのは、シヴァの召喚獣アクションが完成したあたりです。“RPGとしてレベルアップなどの育成要素がちゃんと機能している”、“どの召喚獣アクションを使っても満遍なく楽しめるおもしろさを内包できている”……。シヴァが出来上がったときにそう感じられて、すごく満足感がありました。やはり、ここに至れたのは、鈴木(※)たちバトルチームががんばってくれたおかげでもあります。

※『FF16』コンバットディレクターの鈴木良太氏。株式会社カプコンで『デビル メイ クライ 5』や『ドラゴンズドグマ』などを手掛けたのち、2019年にスクウェア・エニックスに入社。

前廣高井と僕には、最初から目指すべき着地点が見えてはいたのですが、なかなかそこにたどり着けなくて苦労しました。僕としては、かつて自分がバトルデザインを担当した『FF12』の開発を思い出したんです。

 “全体像が見えてからでないと、開発チームにもよさが伝わりにくい”感じがまさに同じで。今回もある程度作りきった段階でやっと「おもしろい!」と言ってもらえて、そのときは心の中で「イエス!」とガッツポーズをしてしまいました(笑)。

吉田そういう意味では、僕がPRしていく皆さんは、“未プレイのゲーマー”ですので、いまがまさに「伝えたくても伝わらない」ということに苦戦している状態です……。

 以前から、“物語とバトルが一本の導線の上を止まることなく走り続ける”という本作のプレイ感覚を指して、“ジェットコースターのようなゲーム体験”と表現しましたが、この言葉をひねり出すまでにすごく苦労しましたし、ストーリーのネタバレを極力避けてこれをPRしていくのは、本当に厳しくて(苦笑)。

高井やっていることの複雑さを考えれば、未プレイの段階や、物語とバトルがバラバラの開発段階では、伝わらないのも仕方がないかなとは思います(苦笑)。

吉田プロデューサーとして、物量もクオリティも、「よく作りきったな」と感じます。“ストーリーとゲーム体験をひとつにする”ということは言葉にすると短いですが、とてつもない作業量と決めごとのオンパレードでした。

 そのことで、一生忘れられない思い出になったエピソードがありまして。体験版にも収録されているゲーム序盤に、ロザリア大公エルウィンと大公妃アナベラがベッドに腰かけて会話するシーンがあります。そこに映るベッドひとつについてだけで、80人ほど参加しているオンライン会議で4時間ぐらい話し合いました……(笑)。

 “ベッドに腰掛けるのか”、“ベッドをどれぐらいカメラに映すのか”、“ベッドのポリゴン数はどうするのか”“シーツを被せるのか”など……。その際、「このゲームが目指すクオリティに至るには、ここまで決めていかないといけないのか」と驚愕したのを覚えています。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

高井「現実だとベッドに座ったら、その部分がヘコみますよね?」、「そこまで作り込んでいない場合、カメラに映したらベッドが硬いことがバレちゃいますよ」といったやり取りが(笑)。

吉田前廣の脚本には、“2人がベッドに腰掛ける”とひと言書いてあるだけなんです。ですので、演出で誤魔化すこともできるのですが、腰を掛ける距離感によって2人の関係性のニュアンスが伝わるので、絶対にカメラで見えるようにしたほうがいい。

 過去のゲーム機の表現レベルであれば、“座る途中までは映して、カットが変わったら上半身しか描写しない”といった形や、“妥協して沈まないシーツに座らせる”という方法でも許されていました。

 しかし、最新鋭であるPS5の表現レベルになると、そういう誤魔化しは違和感にしかなりません。そういった理由から、本作では映像演出専属のスタッフにも監督として参加してもらい、クオリティを可能な限り高めています。

 ゲーム系の演出のスペシャリストである彼らも、この場面についてはやはり「絶対に(ベッドを)映したほうがいいです」と判断していました。でも、ポリゴン数もメッシュも一体どれくらいの水準が必要になるんだ……と。

高井そう、シーンとしては絶対入れたほうがいいんです。ですが、そうなると「このベッドは、このシーンにしか出てこないけど、どこまでコストをかけるのか」、「ベッドが出てくる全部のシーンで同様のコストを割くのか」という問題が出てきてしまって。

吉田「実際に中古のアンティークベッドを買ったほうが安上がりだよね」と(苦笑)。

高井正直、このクオリティのカットシーンを作るのであれば、現物を実写で撮影したほうが安く済むと思います。

吉田プロデューサーの視点になりますが、いまの時代にストーリーベースのゲームを作ろうとすると、こんなにもコストが必要なのかと衝撃を受けた一件でした。

 もちろん、「ゲームの面白さに関係がない!」「そんなところにコストをかける意味がない、勘違いしている!」というお声もありそうなのですが、「ゲーム体験を底上げする没入感」を維持するためには、描かないと醒めてしまうのです。

 このクオリティのグラフィックスになると、誤魔化されている、適当に処理している、というのを人間は見抜いてしまうんです。だからこそ、コストをかけるべきなのか、上手く避けるべきなのか、めちゃくちゃ悩みました。

 結果、「このシーンは徹底しよう、そうすれば他のシーンでも同じようにやっているはずだ」という印象を作ることができる。他は上手くコスト調整するけれど、このシーンは突っ張ろう、ということになりました。

――実際にプレイをしていても、キャラクターの細やかな表情の変化や所作、ボイスアクターの方々の熱演など、カットシーンに対する並々ならぬこだわりを感じました。

前廣本作では中世ヨーロッパ的な雰囲気の世界観がベースにあるので、まずは表情の動きを英語版に合わせて作り、そのあとに日本語版に適応させています。なので、英語音声・日本語字幕でもスムーズに遊んでいただけます。

 また演技については、基本的に中世ヨーロッパの時代設定に合わせたものになっているので、モーションキャプチャーは日本のほかに海外でも行っています。

 また、日本で行う場合も、コージ(※)が付きっきりでレクチャーをしています。たとえば、日本人は何かにつけ“おじぎ”をしがち、といった、日本人ならではのクセなどを指摘してもらいました。また映像の尺に合わせて、セリフを現場対応で調整したりもしています。

※『FF16』ローカライズディレクターのマイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏。『FF11』『FF14』『FF16』など、さまざまなタイトルでローカライズを担当。

吉田今回のストーリーは最初に前廣が脚本を書き、それに対してまずコージが英語の現代風口語に翻訳をしました。

前廣それを僕に再度戻してもらって、映像の尺に合わせつつ中世ヨーロッパ風の口語に直しています。

高井いままでの『FF』でも“日本語を英語へ翻訳”は何度もやったことがありましたが、“英語を日本語へ翻訳”というのは初めての試みですね。

前廣そして、さっきお話したように収録現場でも口の動きが自然に見えるようにセリフに調整をかけているので、最終的には自分で書いたものに3回手を加えていることになります(笑)。回数が多ければいいという話ではないですが、それぐらいイベントシーンの表現や台詞回しにはこだわりました。

――プレイ時は洋画や海外ドラマを観ているような印象を受けたのですが、お話をうかがって合点がいきました。

吉田こういう手法を採ったのは、登場人物や世界の空気感に合う言語をベースに開発するほうが、我々の目指すリアル感に合致するだろうと考えたからです。「『FF16』のキャラクターは日本人ではないので、日本語ではなく英語ベースに開発しよう」というのは、早い段階で決まっていたと思います。

高井もし僕が、江戸時代を舞台にしているのに横文字だらけの時代劇を見せられたら「え?」となると思うんです。ですので、そこに関しては最初から「英語圏の人が見て、違和感を覚える映像には絶対にしない」と決めていました。前廣とコージにはたいへんな苦労をかけてしまいましたが、そこは絶対に譲れないこだわりでしたね。

吉田なお、これはちゃんと言っておきたいのですが、日本のファンをないがしろにしているわけではありません。次世代機になったことで、とてつもなく精密な描写が可能になったことに伴い、“中世ヨーロッパ風のキャラクターが日本人的な演技をする”といった、いままでは許されていた違和感がとてつもなく目立つようになったからなのです。

前廣その違和感をできるだけ小さくするため、ボイスアクターは洋画吹き替えや舞台活動なども含めて、さまざまなメディアで活躍されている経験豊富な実力派の方々にお願いしています。

高井その甲斐あって、日本語のボイスもすごくいいものになったと感じています。

手を止めさせない工夫の末にたどり着いた“ジェットコースター”

――つぎにシステム全般についておうかがいします。『FF16』はアクションを中心に据えながらも、育成・強化などのRPG要素も取り入れています。そこで気になったのですが、初期には“アクションに完全特化する”という案もあったのでしょうか?

高井いえ、最初から“アクションRPGである”という部分は大前提で動いています。

前廣僕らが考える『FF』には、“登場人物の人間的な成長”、“プレイヤーの腕前としての成長”、“ステータス面の成長”など、それらをすべて含めた“成長”が不可欠です。

 もちろん、武器や防具に関しても「『FF』ならエクスカリバーを装備したい!」といった想いがあると思うので、それらの要素をなくすことは頭にありませんでした。

――成長といえば、プレイ中は“レベル上げ”のための戦闘をまったく意識することなく、クライヴの成長とフィールドの敵のレベルの上昇具合が、非常に噛み合っていた印象でした。

吉田メインストーリーの本筋部分に関しては、かなりの回数の通しプレイをしてバランスを調整しています。

高井そのあたりのバランス調整のために、僕自身も回数にして2ケタ以上の通しプレイをしています。「ここのレベル上昇幅が大きすぎたね」、「こっちを修正したから、そっちも修正しないと」といった、ゲーム全体のレベルバランス調整だけでも、最低3回はやり直しました。

吉田またゲームを気持ちよく遊べるように、高井は意図して『FF16』のRPG要素をどれもかなりシンプルにしています。

――たしかに複雑なものはなく、シンプルでわかりやすい印象でした。

吉田我々は『FF14』も開発してきましたし、開発チームを率いる人間が『FF5』を作った高井と『FF12』を作った前廣なので、やろうと思えばいくらでも複雑なメカニズムを作ることもできます。ですが、あえて『FF16』では行わないようにしたのだな、と感じています。

 以前、とあるオープンワールド系ゲームが大好きな海外メディアの方とお話する機会がありました。そのときに、彼から「最近は、複雑なクラフト要素を組み込んだアクションRPGゲームも多い。でも、『FF16』はクラフト要素があまりにもシンプルだよね。もっと複雑化してもよいのでは?」と言われました。

 そこで、僕は「ちなみに、どれぐらいのゲームでクラフトをコンプリートしましたか?」と尋ねたのです。すると、「コンプリートはほとんどしてない」と(苦笑)。こういった感じで、複雑なメカニクスのクラフトを用意しても、多くの人はコンプリートせずに終わってしまうのです。

 シンプルか、複雑か、という部分は面白さには関係がないと思っていて、複雑であれば一見「きっちり作られている」と思われがちです。もちろん、「やり込みたいから、もっと複雑にしてくれたほうがよかった」という人がいることも、もちろん承知しています。

 ですが、本作はアクションRPGでありつつも、“ゲームの各要素がストーリー体験の邪魔をしないこと”を最重視されていると感じます。それが開発チームで徹底された結果、システム自体はいずれも意図的にシンプルなものになっています。

――メインストーリーを追っていくだけなら、ストーリー中に手に入る手持ちの素材を使って装備をクラフトしていくのみで問題ないと感じました。

吉田本作のクラフトは、“素材を持ってきてNPCに渡せば完成”という非常にシンプルなものです。いっぽうで強力な武具をクラフトする場合は、強大な敵が落とすレア素材が必要になることがあります。プレイヤーは、素材がどこで入手できるのかを調べ、そのモンスターを見つけるために探索をし、そのモンスターを倒すためにレベルを上げ、武器防具をアップグレードし、プレイヤースキルを磨き、手に汗握るバトルを繰り広げることになる。随分と手間と時間がかかります。これは“作ることが楽しい”ではなく、その工程を含めて“全体として楽しければいい”というスタンスだからなのです。

――「強い武器を作ろう!」という意欲が、リスキーモブ討伐(※)などにつながると。

※リスキーモブは、メインストーリーを進めていくとフィールド各地に出現するユニークエネミー。通常の敵よりも圧倒的に強大な力を持つが、撃破することで特別な素材などを入手できる。

吉田そのリスキーモブ討伐についても、挑戦するかどうかはプレイヤーの判断にゆだねています。このあたりは、現代風のゲームデザインなのかもしれません。

 これはインタビューのたびに話している気がしますが、『FF16』は“忙しい人でも絶対にエンディングを見てもらう”ことを目標にゲームを作りました。ですので、つまずいたり煩わしく感じたりする必須要素はできるだけなくしています。クラフトのシンプルさもその一環です。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

――たしかに、「ゲームを途中でやめさせない」という意思は、プレイ中にもとても感じました。

高井これだけ娯楽があふれている現代で、ひとつのゲームに多くの時間を使ってもらうことは、想像以上にたいへんなことです。だからこそ、『FF16』は“気持ちよく遊んでもらうこと”に重点を置きました。

吉田『FF16』は、まっすぐメインストーリーを追うだけでも海外ドラマシリーズのシーズン4つぶんぐらいのボリュームがあります。もちろん、途中にCMなんて入りませんし……と聞くと、「え、そんなにやらないとダメなの?」と感じてしまう人もいるかと思います。

高井そのうえで、“剣1本作るのも難しい”と感じるようなシステムになっていたら、触ってもらえなくなってしまいます。

吉田プレイに詰まった瞬間、「もう明日でいいかな」になってしまうと思うんです。そして、翌日になにか突発的な出来事があって「今日はゲームするのをやめておこう」となったら、つぎはもうゲームを起動してもらえるかもわかりません。そんな時代なので、詰まる要素は徹底的に排除してもらいました。

――そのうえで、じっくりプレイするスタイルの方にとっては、旅の途中で訪れるフィールドが想像よりも広大で、探索甲斐のあるエリアになっているかと思います。フィールドを作るにあたって、意識したことを教えてください。

前廣そのあたりは、“ダンジョンを抜けたらつぎのフィールドが広がっている”というような、いままで作り慣れてきたRPGの作りと同じです。「このフィールドは広大じゃないといけない!」といったように、特別に意識したことではないですね。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”
【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

吉田「エリアが全部繋がっていないからこそ、4カ所ぐらい大きなフィールドがあったほうがいいよね」くらいのノリでスタートしています。

 その感覚は間違っていなかったと思っていますが、開発中は「フィールドがなくなればいろいろな問題が解決するので、いっそなくしませんか?」と何度も言われました(笑)。

――“フィールドではなく、“ステージ”として作ってはどうかということですか?

高井そうです。描画系のプログラマーには、いまでも「あれだけ大きなフィールドにするなら、オープンワールド形式にもできましたよ!」と言われます(笑)。

 ただ、オープンワールド形式にするとなると、世界を持て余さないように多くの新しい遊びを詰め込まないといけないので、それはそれで問題が出てくるのです。

吉田海外メディアとの会話でも似たような話がよく出てくるのですが、例えばロザリア公国から砂漠を渡ってダルメキア共和国に向かうとします。ようやくダルメキアへ向かう最後の砂漠へたどり着いたクライヴ、しかし眼前には200kmもの砂漠が広がっている……オープンワールドにした場合、この砂漠を作る必要が出てきます。この砂漠、歩きたいですか?と。

 「何もないというならピラミッドでも建てればいい」と言われるケースがありそうだけれど、クライヴはフーゴと戦うためにダルメキア共和国に向かっている最中なので、ピラミッドがあっても寄り道はしないだろう、と。ストーリー重視のゲームの場合、キャラクターの感情的にそれどころじゃないからです。

 そう答えると、「そんなに遠いならファストトラベルすればいい!」と言われるケースがある。でも、「だったらオープンワールドにしなくてもいいじゃないか!」と。この話はメディアの皆さんには、とてもウケがよかったですね(笑)。

――(笑)。

吉田話を戻しますが、このフィールドの広さは、ヌケ感も含めて粘って作り切ってもらってものであり、結果的によかったと思っています。

 最適化という視点ではさらなる作り込みもできたかもしれませんが、そこまでいくと限界値の先を目指すようなものなので、それはつぎに我々が作るタイトルに活かしていければと思います。そういう意味で、『FF16』は開発チームとしても、すごく経験を積ませてもらった作品でもあります。  

――フィールドでメインストーリーと関係ない場所を走っていると、思わぬところでとんでもなく強いリスキーモブに遭遇することもあり、探索の楽しみもありました。

吉田メインストーリーは全員に楽しんでもらうために、ほどほどな難易度になっていますが、逆に本筋以外のところはハメを外しているところも多いですね(笑)。

――寄り道といえば、サイドクエストの数もかなり多いですよね。

高井サイドクエストに関しては、メインストーリーの進行に沿って出現していくことを意識して配置しています。

前廣数は、全部で100個……ぐらいはあった気がします。

――オススメのサイドクエストはありますか?

前廣サイドクエストで語られる物語では、ヴァリスゼアやその地域が置かれている状況、クライヴ以外の登場人物の過去などを知ることができるようになっています。『FF16』の世界を深く知り尽くすという意味では、ぜひ全部やってほしいですね!

――たしかに、ベアラーが置かれている過酷な環境などは、サイドクエストをやることでより深く理解できました。

吉田人は環境に慣らされてしまうといいますか……、物語中では過酷な状況にありながらも、クライヴたちを批判するベアラーが少なくない。そのあたりの機微も、サイドクエストなどを通してちゃんと描けたと思います。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

前廣サイドクエストの大まかな流れとしては、“特定の場所に行って敵を倒してこい”といった単純なものも多いですが、その物語では本編で語られなかったロアをしっかり丁寧に書いています。

吉田とはいえ、サイドクエストはあくまで物語の深掘りの部分です。まず、1周目はジェットコースターに乗るかのようにメインストーリーを一気にクリアーまで突っ走ってほしいですね。

 そして、物語が気に入ったら“つよくてニューゲーム”で再開してから、強くなったクライヴで各要素を総ナメするのがオススメです。

高井吉田の言うように物語の深掘りの部分なので、じつは序盤に発生するサイドクエストであっても、物語の全貌を知ってからのほうが楽しめるものがあったりします。

――物語を深く知るという意味では、ハルポクラテスの備忘録やヴィヴィアンレポートなど、出来事や用語を振り返る手段がここまで充実しているゲームは初めてでした。

前廣正直に言えば、最初のころはあそこまでやるつもりがありませんでした。ですが、吉田ナニガシという人物が、「詳しく見られるようにして!」と横槍を入れてきたのです。

吉田あ~、僕から言い出したことだった気がするけど、記憶違いかもしれないから黙ってようって思っていたのに……。それをお願いした理由としては、物語を読み込んでいく途中において、“いま、どの国同士が戦っているのか”がわからなくなった時点で、ゲームから心が離れてしまうと感じたからです。

高井状況把握ができなくなったら、ゲームへの熱も冷めてしまうということですね。

吉田ヴァリスゼアの世界では、国家間で大きく技術レベルが違うわけでもないので、兵装も似ています。体験版の範囲でも、ザンブレク皇国兵がロザリア公国兵に変装していますよね。

 敬礼の仕方が違うなどで見分ける手段はあるものの、プレイヤーが初見ですべてを理解するのは難しいと思ったのです。また、戦況も逐次変わっていくので、それらのフォローが必要だなと伝えました。

前廣最初は、『ファイナルファンタジータクティクス』に登場する読み物“ブレイブストーリー”くらいの規模で考えていました(※)。

 ですが、吉田ナニガシが、「これじゃ足りない」とわがままを言い出したので、そこまで詳しくやるのなら文字だけではダメだなと。文字は“読んで、理解して、解釈する”ところまでいかないと伝えることができないので、ビジュアルを交えて説明するシステムを作りました。

 とくに、ゲーム中で戦況を解説する場合は、マップに加えて各勢力の動きも描画するようにしています。

※ブレイブストーリーは『ファイナルファンタジータクティクス』に登場した書物。ゲーム中の出来事を未来の人物が書物にまとめたという形で、人物や用語の説明などが客観的に書かれている。

――その描写は、とてもわかりやすくて助かりました。

吉田アクティブタイムロア(※)もその一環です。海外メディアの方々からも、「ありとあらゆる場面で表示できるのに、状況に合わせてテキストが変わるのは衝撃的だった」と絶賛していただきました。

※イベントシーン中などにタッチパッドを長押しすると表示される画面で、現在のイベントにおいて重要となるキーワードや登場人物を確認できる。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

高井ちなみにアクティブタイムロアでは、場面にあわせて説明される項目が変わるのですが、その区切りは全体で2000カ所ぐらいあります。

前廣1つのカットシーンにおいても台詞やカメラ単位で更新していて、テキストや表示されるロアが変わるタイミングがそれぐらいですね。

――そんなに!?

吉田例えば、カットシーンの途中で登場人物が増えたときにアクティブタイムロアを開くと、ちゃんとその人の項目がリアルタイムに増えますからね。

――さらに状況が進むと、同じ登場人物や用語でもテキストのアップデートが入りますよね。

吉田ですのでプレイ中に気になったことがあれば、ぜひポーズをかけてアクティブタイムロアを開いてもらえればと思います。

高井そのときに知りたい情報が、ちゃんとわかるようになっています。さらにあとからハルポクラテスの備忘録で見返すこともできます。

いまの時代に合わせた表現へのこだわり

――つぎにストーリーに関してですが、実際にプレイしてみて、歴代『FF』シリーズで最も大人向けのシナリオになっていると感じました。過去に“かつての『FF』ファンが大人になったいまでも満足できる作品にする”と発表されていましたが、おもにメインターゲットとして想定しているのはどういった層なのでしょうか。

前廣メインターゲットは、高井と僕です(笑)。なんといっても、自分たちにとってしっくりくる物語でないと、お客様に提供できないと思っています。

 また、さきほどもお話しましたが、映像技術の向上によって映像もシナリオも都合のよい誤魔化しができなくなりました。そして、そこを誤魔化さずに丁寧に書いていくと、大人向けという印象のものになっていくのです。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

吉田みなさんだけでなく、海外の人からも「今回はマチュア(成熟している、大人の、といったニュアンス)な『FF』だね」と言われました。ですがその感覚は、いまと昔とでは少し変わってきていると考えています。

――具体的にはどのように変わっていると考えられていますか?

吉田僕らが子どものころは、自分たちの”世界という認識”は、“近所と学校と公園と原っぱ”程度だったと思うのです。

 ですが、いまの子どもたちは情報獲得手段が豊富になったことで、見たい・見たくないにかかわらず、見える世界が格段に広がりました。当時の僕らとは比べ物にならないスケールなんです。さらに、非常に残念なことですが、世界では紛争がなくなったことがありません。我々はその気さえあれば、そんな戦争の映像も自分から望んで垣間見ることもできてしまう時代です。

 そして、そういう時代を生きてきたいまの10~20代の人たちは、僕らの時代と比較したら、数十倍もの情報に触れた鋭い感覚や現実感を持っているのです。それは、もう僕らの言う“大人”の感覚と変わりません。

 そういった時代的な背景があるので、“大人向けの『FF』”という感覚自体が、我々のような古い世代の認識であり、おそらくいまの中高生は『FF16』の物語を問題なく理解できると考えています。幼児向けというジャンルは別として、子供向け、大人向け、という区分けは存在しないと思っているのです。

 だからこそ前廣には、“かつてあったかもしれない現実世界の出来事”としても受け入れてもらえるような、リアルな描写をお願いしました。

高井嘘をつかない、極端なご都合主義をやらない……これらを守らないと、誰も納得させられない時代になっているのです。

吉田 “大人向け”という表現自体が、大人の意見なのかなと感じています。『ガンダム』っぽいセリフになっちゃいますが、「いつの時代も、大人は子どもをあなどっているんだ!」みたいな(笑)。

――たしかに……その点は認識のアップデートが必要ですね。

前廣ちなみに、これまで我々が手がけたオフラインタイトルのレーティングはCERO:B(12歳以上対象)がほとんどでしたが、本作はCERO:D(17歳以上対象)になりました。これは“暴力やセクシャルな表現をしたいからレーティングを上げた”わけではなく、“表現したいことを誤魔化さずに書いたら上がってしまった”が正しいです。

吉田ですから、レーティングこそ上がってしまったものの、僕らとしては、10代後半から幅広い層に楽しんでいただけるゲームにしたつもりです。

――つぎにキャラクターについてうかがいます。まず主人公クライヴについてですが、本作はクライヴの人生を追うシナリオということもあり、彼のキャラクター性がゲームの内容に大きく影響します。そんな彼の設定作りには非常に苦労したのではないでしょうか?

前廣造形に関しては、プロデューサーのこだわりもあってとても難航しました。ですが、内面的なキャラクター性は苦労した覚えがありません。“クライヴ”という名前を付けた時点で、キャラクター性はすでに固まっていましたね。少年~青年~壮年期と彼の成長の物語を書いていったら、自然とこうなった感じです。

――さまざまな作品で、よく「キャラクターが勝手に動いた」という表現を耳にしますが、そんな印象ですか?

前廣いえ、僕はキャラクターの動きはちゃんと制御したいタイプなので、しっかりと意識して書いています。クライヴが年齢を重ねていく表現が、プレイヤー自身の“クライヴの理解度”とマッチするように書いているので、そういった部分がより感情移入できるようになっていると思います。

高井あとは、単純に“いいヤツ”ということも、クライヴの特徴かと思います。見ていて安心できるというか、「そんなことする!?」といったような突拍子もないことをしないんですよ。

吉田クライヴの見た目について言うと、発表段階では多くの方から「無個性だな」と言われていました。クライヴのあの姿でも、けっこう引き立たせようとデザインしたハズなのですが……。

 これはもう、第三開発事業本部がゲームを作るときのクセみたいなもので、ゲームの世界観、今回で言えばヴァリスゼアにある各国の兵装とクライヴを並べたときに、極端に浮くデザインにどうしてもできない……。

高井何度も話し合いを設けましたが、いま以上に派手には出来なかったですね。

吉田体験版を遊んでいただけるとわかるのですが、序盤のクライヴはザンブレク兵と同じ服装をしています。この状態だと、そのへんにいる兵士と並んでも見分けがつかない。ただ実際のところ、復讐者として鳴りを潜めているはずのクライヴが、他者と違う目立った姿でいるわけがないので、仕方がないよなぁ、と。

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――そこも、“嘘や誤魔化しをしない”ということの一環ですね。

吉田本作のアシスタントプロデューサーでさえも、開発中盤ぐらいまでは、「この見た目は『FF』感がない」と何度も愚痴っていて、そのたびに、僕らは「通してプレイできるようになれば印象が変わるから」と説得をしていました。

 そして、実際に通しでプレイが始まって以降は、「なんか悔しいんですが、最近クライヴがカッコイイです」と言い出して、「ほらな?」と(笑)。

――いっぽうで、弟であるジョシュアにはクライヴとは違った“華”を感じました。

前廣クライヴは最初から復讐の鬼として設定してあったので、デザインも黒主体になっています。だからこそ、ジョシュアは対象的に“国から持てはやされているきらびやかな存在”としてデザインをお願いしました。

 性根はやさしいけれど、どことなく、お坊っちゃま感が漏れ出ているのがジョシュアの個性ですね。ちなみに、彼が金髪なのは母親のアナベラからの遺伝です。アナベラ的には、どんどん自分に似てくるからこそ強烈な執着を見せるのですが、心の奥底では長子のクライヴがフェニックスを受け継いでいれば……と思わずにはいられない。そんな愛憎の裏返しが、リアルな映像だからこそ見えてくると思います。

――ちなみに、皆さんが好きなキャラクターを教えていただけますか。

高井それを聞いてしまうと、3人ともクライヴになってしまうので、彼は殿堂入りということで候補から外しておきます(笑)。そのうえでいちばんとなると、自分はバイロン(※)ですね。彼の登場シーンが本当に大好きなんです……。

※物語の中盤に登場するキャラクター。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

前廣頑張ってよかった!

吉田そのシーンについて、じつは米津さん(※)にまつわるエピソードがありまして。米津さんにテーマソング制作をお願いした段階では、開発状況的にまず脚本とVコンテ(プレゼンテーション用の映像付き台本)のみをいったんお渡ししたんです。

 それを見た米津さんは、そのシーンについて、「感動よりも滑稽さが先に立つ可能性もありそう」と思っていたそうです。ですが、通しで『FF16』を遊んでもらったときには、「これ、ひとりだけでプレイしていたら泣いていました。本当にヤバかった……」と言ってくれまして。それを聞いて、演出を含めて「開発チームは本当によくやってくれたな」と思いましたね。

※米津玄師氏。日本を代表するミュージシャンで、本作のテーマソング『月を見ていた』を担当。テーマに対する深い解像度から生まれるハイクオリティな楽曲と、それを表現し切る圧倒的な歌唱力により、多くのファンを獲得。YouTubeに公開されているMV『Lemon』は8億再生を突破している。

高井バイロンのボイスアクターさんにも素晴らしい演技をしていただきました。

前廣僕もバイロン推しですが、ほかにもたくさん好きなキャラクターがいて。あえてあげるとするなら、脚本を書いていくなかでクライヴとともに成長していった、ガブでしょうか。

 ガブはクライヴの相棒のひとりでありながら、彼が一方的に思っているだけではあるものの、クライヴのライバル的なポジションでもあります。ボイスアクターをされた勝杏里さんも、めちゃくちゃ演技がすばらしくて、より印象が強くなりました。

 ちなみにメインストーリーを進めていくと、いずれいろいろなキャラクターにフォーカスしたサイドクエストが解禁されます。そのときに受けられるガブ関係のサイドクエストも含めて、彼はお気に入りですね。

吉田僕はシドルファス・テラモーンでしょうか。ハードボイルド兼三枚目の雰囲気でクライヴのガチガチに固まった心をほぐしていくさまを、すごく上手に表現していると思います。それに加えて、全言語のボイスアクターのみなさんの演技がとにかく凄まじいのも、お気に入りのポイントです。

 あとは、やはりトルガルですね。カットシーンの表情や動きがすばらしくて、気づけば普通のバトル中ですら演技しているように見えてきちゃって。「こいつ……そんなに俺が好きか~」みたいな(笑)。本当にモーションを作った人たちを全力で褒めたいですね。

前廣トルガルの話が出たので宣伝しちゃいますが、ぜひトルガルのサイドクエストもプレイしてみてください。とてもいいシナリオなので!

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メインストーリークリアー後に待つ“真の『FF16』”

――続いてバトルについておうかがいしていきます。召喚獣アクションは非常にバリエーションが豊富で、個々の特徴も大きく違います。我々取材メンバーも、最終的に使っていたアビリティが全員バラバラとなり、その自由度も含めて本当におもしろいバトルでした。

吉田プレイした方からいろいろ話を聞くと、“敵への接近手段を何でまかなうか”によって装備する召喚獣アクションもガラリと変わってくる感じですね。

――そんな召喚獣アクションについて、扱いがほかと異なるイフリートを除く、各召喚獣アクションのコンセプトを教えてください。

フェニックス

高井フェニックスは最初の召喚獣アクションなので、とにかく使い勝手のいいものをそろえており、単体攻撃、範囲攻撃、カウンターといった、プレイヤーが基本アクションとして欲しくなるものをすべて持っています。

吉田接近手段として優秀なフィート“フェニックスシフト”を使えますが、これは『FF15』にあった“シフト”を本作用にアレンジしたものです。この能力を最初から使えないと、バトルにモタモタ感が出てしまうのです。ですから、「設定を変更してでも、最初から“シフト”を入れてほしい」とお願いしました。

前廣ですので、じつはゲームシステム側のそういった要望から“フェニックスの祝福”という設定が生まれたんです。

吉田「“フェニックスの祝福”があるから、最初からクライヴが召喚獣アクションを使えるようにして大丈夫!」と、前廣を説得しました(笑)。

ガルーダ

高井ガルーダは、手数の多さと攻撃速度、それに空中戦が得意ですね。鈴木には“誰が遊んでも空中コンボを強要するゲーム性にはしたくない”と伝えていましたが、だからといって空中コンボをなくしたいわけではありませんでした。

 ですからガルーダは、「これを使えば空中コンボが簡単に出せる」という要素も含めてデザインしています。あとは、ウィルゲージを減らす技が多めなのも特徴ですね。

タイタン

高井タイタンはガードや溜め攻撃が特徴的な召喚獣アクションで、かなり特殊なタイプです。これはコンセプトがハッキリしすぎていてそれ以上言うことがないですね。とても強いです(笑)。

ラムウ

高井ラムウは、ちょっとトリッキーなものもありつつ、使い勝手のいい召喚獣アクションが多いという位置づけです。複数の敵に弾をつけて起爆することで、少し長めにダウンをさせられるという、複数を相手にする際に有効なフィートを持っています。そこに強力な単体攻撃と範囲攻撃に加え、攻撃に反応して範囲攻撃をばら撒く“ライトニングロッド”を使えるのが特徴ですね。

シヴァ

高井シヴァは、フェニックスの対抗馬となりえるようなフィートを持つ召喚獣としてデザインしました。移動に加えて敵を凍結させられるという強烈な性能のフィートなので、移動手段としてフェニックスを使っていた人にとって新しい選択肢となるように意識しています。アビリティは、離れた敵を引き付ける、近くの敵を吹き飛ばしながら氷漬けにするなど、中間距離が得意な性能をしていています。

バハムート

高井バハムートは“ギガフレア”という攻撃力で言えば最強に近いアビリティを持っています。また、ゲージを溜めることでバトル中に攻撃が継続するフィートの“メガフレア”をはじめとして、遠距離攻撃かつトリッキーなアビリティが多い、クセが強めな召喚獣ですね。

オーディン

高井オーディンは超強力なフィート“斬鉄剣”が最大の特徴です。ほかのアビリティは“斬鉄剣”をうまく使うための布石のような性能が多く、これもまたトリッキー寄りですね。

――ありがとうございます。ちなみに、ちょっと気になっていたのですが、ゲーム中で言及されていた伝説の……。

吉田あれは“伝説”です。今はこれ以上申し上げられません。ただ、途中で削った、などではなく、最初から意図的にそうしてありますので、その点は何となく察していただけると助かります。

――なるほど、今後何らかの形で明かされるのを楽しみにしておきます(笑)。ではつぎに、みなさんがプレイする際にメイン使っていた召喚獣を教えてください。

前廣僕は面倒くさがりなので、ガルーダをセットして“ガルーダエンブレイス”で敵をひたすら敵を引き寄せていました。それに合わせて、目の前にトラップを仕掛けておくといったアビリティ構成にしていましたね。

吉田僕は、「クライヴなんだから、ジョシュアのフェニックスは外さないだろ!」と感情移入しすぎて、フェニックスを常時セットしています(笑)。フェニックスを外してみようと何度もトライはしたのですが、思い入れが強すぎてダメでした。

高井僕はディレクターとして、“使えないアビリティは存在しない”という確信がほしくて、何度も周回プレイをしてすべての召喚獣アクションに触れてきたので、正直全部に愛着があります(笑)。強いて言えば、“ライトニングロッド”が好きなのでラムウでしょうか。

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――“ライトニングロッド”はハマればムチャクチャ強いですよね。

高井じつは開発中はさらに強すぎて、使う人と使わない人で攻略しやすさに差がですぎていたので、初期段階よりも弱く調整しました(笑)。それでも、まだまだ強いアビリティですし、使っていてとても気持ちがいいですね。あとはタイタンの“レイジングフィスト”も好きです。

吉田こんな感じで、みなさんと同じように我々も好みの召喚獣アクションがバラバラなんです。だからこそ、スコアアタックを競い合う人たちが、最終的にどんな組み合わせで召喚獣アクションを使っていくのか、いまから楽しみで仕方がありません。

高井絶対に、我々が想定していないことをしてくると思うので、期待に胸が膨らみますね(笑)。

――バトルの話題といえば“召喚獣合戦”も外せませんが、なかでも物語が進んだ先でのイフリートの使い心地がとても気持ちよくて驚きました。召喚獣を操作するというバトルでいちばん注力した部分はどこですか?

吉田イフリートの操作を作ったメンバーは、“クライヴが変身しているのに、クライヴを感じない操作感にはしない”と決めていたとのことです。そして、僕もそこがいちばん大事なポイントだと思っていました。

 クライヴの成長とともにイフリートの力を使いこなせるようになり、それによってやれることが増えていくという流れは、すごくよい形にできたなと。物語とシチュエーションに遊びをリンクさせていったのは、アクションゲームではなく、アクションRPGだからこそ、「見事だな」と感じています。

高井クライヴでできることはイフリートでもすべてできるようになっていて、クライヴが突進技の“ランジ”を習得していると、イフリートでも突進技が使えます。このように、クライヴとイフリートの繋がりは、とても気を配って作ってもらっています。

前廣僕からの要望としては、「『FF16』には青魔道士がいないから、イフリートでラーニングさせてくれないか。シナリオは俺のほうでどうにかするから、なんとか頼む!」とお願いしました。

――なるほど(笑)。それでイフリートが戦闘中に新たな技を習得するのですね。

前廣やはり、変身モノとしては新しい技をひらめきたいじゃないですか(笑)。

吉田とはいえ、さすがにこのゲームで、サガシリーズのように「ピコーン!」と電球を出すわけにもいかないですし、ラーニングの方向で進めました。実際のシーンはセリフも演出もカッコイイので、ぜひ楽しみにしていてほしいです。

高井僕は、そのシーンで「召喚獣を顕現させていても、会話ができる形にしてよかったなぁ」と思いました(笑)。

 いまだから言えますが、開発初期のころは召喚獣状態で人間の声を発することに懐疑的でして。前廣の「大丈夫!」に対して、僕は「ほんとかなぁ?」という感じだったのですが、実際にプレイしてみたら本当に違和感がなくて驚きました。

前廣2周目プレイのときに意識してもらうとわかると思うのですが、じつは召喚獣同士では会話をしていません。全部独り言なんです。それが、あたかも会話になっているように見える工夫をしています。

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

――2周目のお話が出ましたが、周回プレイでは“つよくてニューゲーム”で選択可能な高難度モード“ファイナルファンタジーチャレンジ”が解禁されます。これを実装した狙いを教えてください。

吉田本作は、ジェットコースターのようにメインストーリーを駆け抜けていく作りにしており、それ以外のことに手を出すのはメインストーリークリアー後でもいいと考えました。

 冒頭にもお話した通り、前作のストーリーに対しての懐疑的な部分を払拭したい、という想いが何よりも強かったからです。だから、とにかくストーリーをラストシーンまで見届けていただきたいと思っています。

 そのために用意したのが“つよくてニューゲーム”です。そして、ゴリゴリのアクションゲームファンのために用意したのが、“ファイナルファンタジーチャレンジ”というモードになります。「物語、ストーリーは全員にクリアーしてほしいので、難易度をイイ感じにしてあります。ですが、ヌルいと感じた方も安心してください。その先にはやりたい人だけ挑める地獄が待っていますよ」という感じです。

 高井や鈴木が言うには、「“ファイナルファンタジーチャレンジ”が本来想定した難易度」だそうで。“メインストーリーというチュートリアルを終わらせた”玄人アクションゲーマーに向けて、難易度を下げる前の『FF16』を遊んでもらうためのモードといったところですね(笑)。

高井吉田の言うように、僕らの想定ではこの“ファイナルファンタジーチャレンジ”が、ストーリープレイ中の難易度のつもりだったんです。

吉田それがチェックとして出てきたとき、僕が実際に通しプレイをして、「頼むから考え直してくれ」とお願いしたのです。

高井「普段まったくアクションゲームをやらない人にも遊んでいただくんだぞ!」と言われて、「たしかに」と納得した覚えがあります。

吉田高井は調整のために何周もプレイしていますから、ゲームのすべてを知り尽くしていて「初々しかったころのあなたはどこへ?」状態なのです。

 最初は高井も、「良太くん(鈴木氏)はアクションが上手だから、難しいものを作りすぎるかもしれない……」なんて空気を出していたのに、気づけば「なんか物足りないよね」とか言い出していて(笑)。

高井吉田に見せる前に3段階ぐらいは敵を弱くしていたのですが、その時点で僕の感覚も麻痺していたんでしょうね。

――1周目で習得した召喚獣アクションを引き継いで歯ごたえのあるバトルが楽しめるのは、かなり新鮮でした。手慣れたアクションが使えることも合って、2周目というより難度が上がった“続き”をプレイしている感覚があります。

吉田2周目と聞くと、クリアーしたあとの余興のようなイメージがあるかもしれませんが、 “ファイナルファンタジーチャレンジ”はぜひ遊んでもらいたいモードなので、周回ではなく実質的な続きと捉えていただきたいです。

 あのモードでは敵の配置や出現数もまったく異なるので、“真なる『FF16』登場!”といった感じで遊んでくださると嬉しいです! カットシーンについても、気に入っているからもう一度じっくり見たい、というシーン以外は、どんどんスキップしていただいてOKです。

 ちなみに、このモードを実装すると決めたとき、前廣が「これを“ファイナルファンタジーチャレンジ”と呼ぶ!」とドヤ顔で言っていたのを覚えています。

高井開発版だと名称は“究極幻想モード”になっていますね(笑)。

吉田ちなみに『FF16』を発表したときに、SNSなどでは「吉田の第三事業本部がアクションゲーム作るって、どうせ難しくなるんだろ」という評判があふれていました。ですが、PAX EASTなどで、実演やサポートアクセサリの説明を行った途端、今度は「え、ヌルゲーか?」という声がたくさん出てきまして……。

――そんなことが(笑)。

吉田先日のメディアツアーでも、「簡単なのではないかと、難度を心配する声が多い」という質問がありまして、「ええ……数カ月前の反応はどこへ……」と。

 もちろん、それに対しては「みなさんにクリアーしてもらいたいので、この難度で問題ありません。ただ、その先には“ファイナルファンタジーチャレンジ”という、さらに上位のコンテンツが待っています」と説明させていただきました。ただ、これを強く推していくと今度は「やっぱり難しいんじゃん!」と言われてしまいそうですし、PRは難しいですね(苦笑)。

とあるシーンのために書き下ろされた、米津玄師氏の『月を見ていた』

――米津さんの手がけるテーマソング『月を見ていた』が発表されたときは、SNSを含めて大きな反響がありました。ちなみに全世界共通で、ゲーム中に米津さんの曲が使用されているのでしょうか?

吉田はい、全世界共通です。この『月を見ていた』は、とあるシーンのためだけに書き下ろしてもらいました。具体的な言及は避けますが、そのイベントシーンの感情に刺さる素晴らしい歌です。

 ただし、言語が日本語歌唱であるため、ゲーム内の言語音声が日本・アジア言語の場合と、それ以外の言語の場合で、ほんの少しだけ曲が挿入されるタイミングを変更しています。

 米津さんは、『僕のヒーローアカデミア』の『ピースサイン』や『チェンソーマン』の『KICK BACK』などが全世界でヒットしていて、その知名度もまさに世界規模になってきています。それでも、日本語の楽曲である以上、言語に合わせて適切なタイミングで挿入する必要があると考えました。

 米津さんの歌唱と歌詞のよさ、そしてあのシーンの印象が一体となって感じられるはずです。もしもういっぽうが気になる場合は、つよくてニューゲームで1周目とは別の言語に変えてみると、また違った印象を感じられると思うのでオススメです。

――最後に、本作をすでに遊んでいる、またはこれから手に取るか悩んでいるユーザーに向けてひとことずつコメントをお願いします。

吉田今日はインタビューながらゲーマー談義のようなお話ができて楽しかったです。メディアの皆さんですし、お仕事ではあると思うのですが、ゲームそのものを楽しめていないと、こういう話はできないと思うのでとても安心しました。

 発売後、生放送などで遊んでくれた人たちとネタバレ&裏話アリでお話できたら楽しいと思うので、なんとか機会が作れたらと思います。それぐらい、“ゲームをプレイしたことを周りと話したくなるようなゲーム”になっています。発売日でなくてもいいので、購入していただけたらうれしいです。

前廣もう30年近くゲームを作っている中で……ここではあえて“作品”ではなく“ゲーム”と言いますが、過去に作ってきたものと比べてもいちばんのデキのゲームになりました。

 そして、それに見合うだけのゲームシナリオを書けたと自負しています。難しく見えるところがあるかもしれませんが、遊んでもらえればこの感覚は伝わると思うので、手にとって楽しんでいただけたらありがたいです。

高井スタッフ一同、この瞬間に詰め込めるだけのものを、全力で詰め込んだゲームが完成しました。

 遊んでいただいたプレイヤーのみなさんが、どういう感想を言ってくださるかはいまからドキドキですけれど、『FF』というシリーズのなかに並べても恥ずかしくない、胸を張れるゲームができたと思っているので、ぜひ買って遊んでいただきたいと思います。

 そしてPS5持っていない人は、本体とセットで買ってね! よろしくお願いします!

【FF16インタビュー】吉田直樹氏&高井浩氏&前廣和豊氏が目指した最強の『FF』とは。風評を“ゲームの中身で覆す”

▼『FF16』攻略&解説まとめ

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