2023年2月2日~5日、台北南港展覧会ホール1にて台北ゲームショウ2023が開催された。今年の台北ゲームショウには、25ヵ国から275社が参加。約250タイトルが出展され、大盛況で幕を閉じた。

 今回の台北ゲームショウに、日本から初出展したのがコーエーテクモゲームス。会場入り口近くにブースを構え、『Wo Long: Fallen Dynasty』(以下、『ウォーロン』)、『ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術士と秘密の鍵~』(以下、『ライザのアトリエ3』)、『零 ~月蝕の仮面~』(以下、『月蝕の仮面』)、『三國志 覇道』の4タイトルを出展。大型モニターでは各タイトルのPVのほか、鯉沼久史代表取締役社長から台湾のゲームファンに向けたメッセージも上映されていた。

 この記事では、現地で行った鯉沼社長へのインタビュー(インタビューは2月3日に実施)の模様をお届け。台北ゲームショウ出展の目的から、2月、3月にタイトルが集中した理由、各タイトルの手応え、そして今後のプロモーション方針など多岐にわたってお話を伺った。

『ウォーロン』、『ライザ3』など2~3月にタイトルが集中! その理由や手応えを台北ゲームショウ会場でコーエーテクモ鯉沼社長にインタビュー。アジア市場の“いま”も聞いた

鯉沼久史氏(こいぬま ひさし)

コーエーテクモゲームス代表取締役社長。『戦国無双』シリーズなど、数々のタイトルでディレクターやプロデューサーを務めてきた。

アジアのゲームファンに、コーエーテクモのタイトルをもっと知ってほしい

――コーエーテクモゲームスとしては、初めての台北ゲームショウ出展になりました。今回の出展にいたった経緯、目的からお聞かせください。

鯉沼まず大前提として、コーエーテクモゲームスは“グローバルIPの創造と展開“と“グローバルビジネスの飛躍“を経営方針として掲げ、ワールドワイドでビジネスをしているのですが、ここ数年アジア地域のセールスが順調に伸びていて、その重要度が増してきているということがあります。また、台北ゲームショウも自社出展こそしていませんでしたが、パブリッシャーさんからご招待いただいてステージに登壇するといったことはこれまで何度もあって、会場の雰囲気や来場者の皆さんの熱量も実感できていました。

 これに加えて、今回は当社のゲームの発売時期が2月、3月に集中していて、グローバルマーケティングのチームから「出展したい」と強い要望があったんです。各タイトルのプロデューサー陣も協力する、と。そういった状況も重なって、自分たちで出展してみることにしました。アジア地域のゲームファンの皆さんに、我々のゲームタイトルをいま以上に認知してもらうためには、やはり自分たちから積極的に打って出ることが大事だろうと考えた結果です。

――ワールドワイドで見ても、アジア地域のセールスの伸び具合は顕著なのでしょうか?

鯉沼そうですね。たとえば『仁王』は、欧米を中心にワールドワイドでしっかり受け入れてもらえるように開発、マーケティングもしたのですが、蓋を開けてみると思った以上にアジア地域のゲームファンの皆さんに遊んでいただけたんです。それは数字を見てもはっきりしていて。そういった前例があるなか、今回の『ウォーロン』は、『仁王』の系譜かつ“三国志”をテーマにしていることもあり、より一層の興味を持ってもらえるチャンスがあると期待しています。

――ちなみに、台北ゲームショウは台湾で開催されているイベントになりますが、プロモーション面では、アジアの他地域への波及効果も見込んでいらっしゃるのですか?

鯉沼それは強く期待しています。台北ゲームショウには周辺各国からもさまざまなメディアが取材に来ますし、たくさんの一般のゲームファンも来場します。インフルエンサーやコスプレイヤーが登壇するブースも多く、東アジアだけではなく、東南アジアまでニュースが届くとも聞いています。それから、台湾自体はそれほど大きな国ではないですが、ゲーム市場としては1兆円くらいの規模になっているんです。PCやアプリも含めての数字ですが、市場としても重要度が増してきているととらえています。

――台湾のゲームファンの特徴といったものはあるのでしょうか?

鯉沼台湾に限らないですが、アジア全般に、日本のアニメやコミックをきっかけに日本のエンタメカルチャーに興味をもって、ゲームも熱心に遊んでくれている人は多いように思います。それと、能動的に情報を取りに来てくれる印象もありますね。ですので、こういったイベントへの出展や配信番組といった仕掛けも重要だと感じています。

――コーエーテクモゲームスのタイトルは、たとえば『ウォーロン』や『無双』シリーズから『アトリエ』シリーズまで、ジャンルが多岐にわたっています。とくにアジア地域で伸びているジャンルやタイトルはあるのですか?

鯉沼どれかが突出しているわけではないんですよね。たまたまではありますが、当社が得意とする歴史ものも、『アトリエ』のようなキャラクター人気が高いゲームも、アジア地域との相性がいいように感じています。そうそう、意外かもしれないですが、『零』も人気があるんです。『零 ~濡鴉ノ巫女~』は、2021年にアジア地域も含むワールドワイドでリマスター版を展開したのですが、このときアジアの売れかたが突出していて私も驚きました。

――いわゆるジャパニーズホラーへのニーズが、こちらでもあるんですね(※)。今回の台北ゲームショウには、『ウォーロン』、『ライザのアトリエ3』、『月蝕の仮面』、『三國志 覇道』の4タイトルが出展されていて、『三國志 覇道』以外はすべて試遊台が中心の構成になっていますね。いずれもビジネスデイから大行列で、『ウォーロン』のまわりは歩きにくいくらいでした(笑)。

※台湾では、昔から日本のさまざまなホラー映画が上映されていて人気があるとのこと。そういった経緯から、ホラーゲームも安定して人気があり、興味を持たれやすいという。

鯉沼現地の皆さんに興味を持ってもらえて安心しました。ステージを作ろうか迷ったのですが、今回はどのタイトルも発売が近いので、試遊台を重視することにしたんです。『ウォーロン』は、昨年の東京ゲームショウでも展示した呂布の立体物を台湾まで運んでます。なかなかにコストはかかりましたが、しっかりアピールしたかったのでがんばりました(笑)。

『ウォーロン』、『ライザ3』など2~3月にタイトルが集中! その理由や手応えを台北ゲームショウ会場でコーエーテクモ鯉沼社長にインタビュー。アジア市場の“いま”も聞いた
『ウォーロン』、『ライザ3』など2~3月にタイトルが集中! その理由や手応えを台北ゲームショウ会場でコーエーテクモ鯉沼社長にインタビュー。アジア市場の“いま”も聞いた
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『ウォーロン』、『ライザ3』など2~3月にタイトルが集中! その理由や手応えを台北ゲームショウ会場でコーエーテクモ鯉沼社長にインタビュー。アジア市場の“いま”も聞いた

――とても目立ってました(笑)。そのほか、各タイトルともに試遊するとノベルティがもらえる仕掛けになっていて、『三國志 覇道』もアプリをダウンロードするとゲーム内アイテムがもらえましたよね。ほかのメーカーのブースでも同様の施策が多くて、これも印象的でした。

鯉沼試遊やアプリのダウンロードに対してノベルティを配布することは、台湾ではスタンダードでマストの施策になっていると聞いたので、当社もしっかり対応しました。『三志 覇道』はアジアでもサービスインして1.5周年になります。おそらく知らないかと思いますが、じつは毎月、台湾独自の配信番組も展開しているんです。

――それは知らなかったです。完全に現地向けに番組を構成しているんですか?

鯉沼はい。MCなども現地の方を起用して、生配信番組をお届けしています。この台北ゲームショウのタイミングでは、伊藤(伊藤幸紀プロデューサー)が番組に出演することになっています。そのほかにも生配信番組を予定していて、『ウォーロン』では安田(安田文彦プロデューサー)と山際(山際眞晃開発プロデューサー)が、『ライザのアトリエ3』では細井(細井順三プロデューサー)とトリダモノさん(キャラクターデザイン担当)が出演することになっています。トリダモノさんにはサイン会にもご協力いただく予定です(※それぞれ予定どおりに実施、終了済み)。

――台湾のファンの皆さんにとっては、こんなに嬉しいことはないですよね。

鯉沼各プロデューサー陣には、「せっかく出展するんだから必ず台湾に来るように」と伝えました。台湾のファンやメディアの方とコミュニケーションが取れる機会はそうそうないですし、当社のタイトルに興味を持ってもらうためにも、この機会を最大限に活用したいですから。

――すばらしいです。鯉沼さんご自身は3年ぶりの台北ゲームショウと伺いましたが、会場全体の雰囲気はどうでした?

鯉沼以前と変わらず会場全体にすごく活気がありますよね。3年前とは会場も変わって広くなったのですが、それでもこの大賑わいですから。林さんの感想は?

――昨年の東京ゲームショウとは違って、ステージ設営などへの規制がないように感じました。だからなのか各メーカーともにブースの作りが独創的で、配布物も多かったり、物販もあちこちでしていたり、コンパニオンさんも多かったり……なんというか自由で元気な印象です。雑然としているからこそのおもしろさを感じます。

鯉沼そうですよね。私も同じ感想です。縁日的なおもしろさがありますね。

2~3月にタイトルが集中した理由と手応え、期待すること

――ちょっと話を戻しまして。先ほどから話があるとおり、今年は2月、3月にコーエーテクモゲームスのタイトルが集中しています。これはクオリティーを突き詰めた結果、そうなってしまった、ということでしょうか?

  • WILD HEARTS 2023年2月17日発売予定
  • Wo Long: Fallen Dynasty 2023年3月3日発売予定
  • 零 ~月蝕の仮面~ 2023年3月9日発売予定
  • ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術士と秘密の鍵~ 2023年3月23日発売予定
  • Winning Post 10 2023年3月30日発売予定

鯉沼ユーザーの皆さんには、ご負担をかけることになってしまって本当に申し訳なく思っています。ご指摘のとおり、当初の予定より開発が遅れてしまったタイトルが多いのですが、どれもクオリティーを上げるために開発期間を延ばそう、という決断をした結果、この時期に重なってしまったというのが実情です。

――ユーザーにとってもうれしい決断です。せっかくなので各タイトルのいまの手応えも聞かせてください。

鯉沼では発売日順に。まずは『WILD HEARTS』ですが、これはエレクトロニック・アーツさんがパブリッシャーなので、私から予約等の状況はお伝えできないのですが、動画の視聴数や反応はとてもよくて、ほかの大型タイトルと比べてもそん色ないと聞いています。『討鬼伝』の流れがあるとはいえ、我々としても新しいチャレンジですし、ユーザーの皆さんの声を聞きながら大事に育てていきたいと思っています。

『ウォーロン』、『ライザ3』など2~3月にタイトルが集中! その理由や手応えを台北ゲームショウ会場でコーエーテクモ鯉沼社長にインタビュー。アジア市場の“いま”も聞いた

――発売された後の展開もとても大事なタイトルですよね。

鯉沼はい。ユーザーの皆さん、エレクトロニック・アーツさんといっしょに長く続けていきたいと思います。続いては『ウォーロン』ですね。『仁王』は2作品にわたって日本の戦国時代をテーマに開発したのですが、今回は三国志の時代がテーマで、まさにアジアにどストライクのタイトルですし、欧米でもしっかり勝負できると期待しています。ちょっと余談ですが、シブサワ(シブサワ・コウ氏)が延々とテストプレイをしては日々開発チームに細かく突っ込みを入れています(笑)。

――シブサワさん、すでにハマっているんですね(笑)。体験版もとてもクオリティーが高く、遊び甲斐がありました。

鯉沼ありがとうございます。開発チームはぎりぎりまで大変そうですが、クオリティー面の心配はしていないですし、きっと皆さんにご満足いただけると思います。

『ウォーロン』、『ライザ3』など2~3月にタイトルが集中! その理由や手応えを台北ゲームショウ会場でコーエーテクモ鯉沼社長にインタビュー。アジア市場の“いま”も聞いた

――個人的にもとても楽しみにしています。そして『零 ~月蝕の仮面~』ですね。

鯉沼先ほども話しましたが、『零 ~濡鴉ノ巫女~』がアジア地域でしっかり売れているので、今回はプロモーションも強化して、前回以上にセールスを伸ばしたいと考えています。弊社の海外スタッフからの人気も高くて、台北ゲームショウに出展するべきだ、という声も多かったです。

それから、じつは『月蝕の仮面』は2008年の発売当時、日本でしか販売されていなかったようなんです(当時はテクモから発売)。そういった点からも、とくに海外のファンの方には新鮮に遊んでいただけるのでは、と思っています。

『ウォーロン』、『ライザ3』など2~3月にタイトルが集中! その理由や手応えを台北ゲームショウ会場でコーエーテクモ鯉沼社長にインタビュー。アジア市場の“いま”も聞いた

――3月23日には『ライザのアトリエ3』が発売されます。

鯉沼『ライザのアトリエ3』は、“秘密”シリーズの集大成です。『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』から熱く応援いただいていますが、最後をさらにいい形で締めるべく、開発コストもしっかりかけてここまで進めてきました。ガストブランドが手掛けるJRPGのよさ、おもしろさをひとりでも多くの方に知ってほしいと思っていますし、それがこの先のシリーズにもつながると期待しています。

――まさに『ライザのアトリエ』から、シリーズの人気が跳ねた印象がありますが、これは日本が中心なのですか?

鯉沼そうですね、市場シェアは日本が大半です。ただおもしろいのは、日本がどちらかというと初動型なのに対して、海外はじりじりと長く売れる傾向にあります。日本での評判や口コミなどから少しずつ認知が広がっているのかもしれないですし、一方で、我々がアジアや欧米に対してしっかりとプロモーションができていないとも言えます。これは反省点で、まさに強化しようとしているところです。

『ウォーロン』、『ライザ3』など2~3月にタイトルが集中! その理由や手応えを台北ゲームショウ会場でコーエーテクモ鯉沼社長にインタビュー。アジア市場の“いま”も聞いた

――いずれのタイトルもワールドワイドで同タイミングでリリースされる、ということですよね。数年前までは台北ゲームショウで“中文化決定”を発表するだけでニュースになっていましたが、あっという間に時代が変わった気がします。

鯉沼本当ですよね。いまはそれだと満足してもらえませんから。もちろんタイトルによりますが、グローバルで展開するものについては、全世界で同タイミングでリリースすることが基本になります。ユーザーの皆さんはもちろん、販売効率やプロモーションコストなどを考えても、そのほうが効果的だと感じています。

――各タイトルの発売を楽しみにしています。ちなみに、来年の台北ゲームショウも出展されるおつもりですか?

鯉沼この時期に発売されるタイトルがあれば、ですね。また、我々は今回が初出展なので、ユーザーの皆さんの反響、各タイトルの売れかた、遊ばれかたなどもしっかりと見ながら決めていくことになります。ただ、先ほどもお話ししたとおり会場は活気がありますし、週末(2月4日~5日)はもっとたくさんのゲームファンが会場にいらっしゃると思いますので、すでに手応えは感じています。

コロナ禍になってデジタルマーケティングがより主流にはなりましたが、一方で、このようなフィジカルなイベントに出展して、ユーザーの皆さんの熱量をじかに感じながらプロモーションをすることもやはり大事だと、個人的には強く思っています。タイトルの発売タイミング次第にはなりますが、これからもコーエーテクモゲームスらしいさまざまなプロモーションを仕掛けていきたいと思います。