『Minecraft』(マインクラフト)の新規タイトル『Minecraft Legends』(マインクラフト レジェンズ)が2023年4月19日に発売される。対応プラットフォームは、Nintendo Switch、プレステーション5、プレステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PCで、Xbox Game Passにもラインアップされる。

 本作は、おなじみ『マインクラフト』の世界観をモチーフにしたアクションストラテジー。オーバーワールドを守るために、ネザーからやってきたピグリンたちの軍勢に、仲間たちと立ち向かう。

 ストーリーモードにあたるキャンペーンと4対4によるPvPが用意されており、『マインクラフト』ではPvPが実装されるのは初めてだという。

 今回、マイクロソフトの配信番組“Developer_Direct”の放送に合わせて、『マインクラフト レジェンズ』の開発を手掛けるMojang Studiosのエグゼクティブ・プロデューサー デニス・リース氏とBlackbird Interactiveエグゼクティブ・プロデューサー リー・マッキノン・ピーダーソン氏にインタビューを実施。『マインクラフト レジェンズ』の魅力を聞いた。

『マインクラフト レジェンズ』インタビュー。PvPを導入したのは『マイクラ』にさらなる新しい遊びかたを提案するため
『マインクラフト レジェンズ』インタビュー。PvPを導入したのは『マイクラ』にさらなる新しい遊びかたを提案するため

デニス・リース(左)

Mojang Studios エグゼクティブ・プロデューサー

リー・マッキノン・ピーダーソン(右)

Blackbird Interactive エグゼクティブ・プロデューサー

『マインクラフト』のユニークな体験を、そのまま活かしたストラテジーゲームにしたいと思った

――まずは、『マインクラフト レジェンズ』が開発された経緯を教えてください。

デニス『マインクラフト』に対して、「『マインクラフト』の世界を広げるために、どのような新機軸を追い求めるか」ということで、Mojang Studios内で話し合いを重ねたんですね。その結果として、“アクションストラテジーで行こう”ということになりました。

 方向性が定まったところで、いっしょにアクションストラテジーを作ってくれるパートナーをということで、Blackbird Interactiveにお声かけさせていただきました。

――Blackbird Interactiveに声をかけた理由は?

デニスまず第一に、Blackbird Interactiveがストラテジーゲームの開発に強みを持っていたことが挙げられます。Blackbird Interactiveは、「どうすればすぐれたストラテジーゲームを作れるのか」という点に関してノウハウがありましたし、何よりも『マインクラフト』に対してとても熱意を持っていたんです。じつは候補は何社かあったのですが、話し合った結果、何よりも『マインクラフト』への熱意があるということが決め手になりました。

――開発は何年くらい前から着手しているのですか?

リー『マインクラフト レジェンズ』の開発は2018年の初頭から始まっています。まずは小さなチームでプロトタイプを作って、そこから進めていきました。

『マインクラフト レジェンズ』インタビュー。PvPを導入したのは『マイクラ』にさらなる新しい遊びかたを提案するため

――『マインクラフト』の新機軸をとのことで、アクションストラテジーを選択したとのことですが、開発にあたって気を配った点は?

デニス『マインクラフト』の世界観にアクションとストラテジーを組み合わせることで、『マインクラフト レジェンズ』はとてもエキサイティングなゲームになっていると思います。我々としては、ストラテジーゲームに『マインクラフト』が加わったという形にはしたくありませんでした。あくまで『マインクラフト』が中心で、そこにストラテジーという要素を組み込むことで、とてもユニークなワクワクするような体験を提供することに注力したのです。

――ストラテジーゲームありきにしたくはなかったということですか?

デニス皆さんがご存じのストラテジーゲームに、ただ単にクリーパーを組み込むとかいった、そういったことをしたくはありませんでした。『マインクラフト』というのは非常にユニークで、ほかのゲームとは違うものです。そんな『マインクラフト』のユニークな体験を、そのまま活かしたストラテジーゲームにしたいと思っていました。

 また、『マインクラフト レジェンズ』は、ストーリーにもとても力を入れています。シネマティックにも注力することによって、とても豊かなゲーム体験がもたらされると自負しています。

――『マインクラフト』は世界中にたくさんファンがいますが、ファンの期待を損なわないためにどのようなことを念頭において開発を進めたのですか?

デニス新鮮でありながら、どこかなつかしさやなじみのあるものをお届けしたいというバランスですね。なじみやすさという意味では、本作では、おなじみのキャラクターが多数登場しますよ。クリーパーやゾンビ、スケルトンたちが友だちになったりするんです。彼らの挙動なども同じなので、しっくりくるのではないかと思います。

 一方で、『マインクラフト レジェンズ』では、これまでとは異なるビジュアルを志向しました。

――あら、それはなぜですか?

デニス『マインクラフト』の基本的な感じは継続したかったのですが、一方で新鮮さを求めたからです。『マインクラフト レジェンズ』では新しい遊びを導入したがゆえに、見た目もそれに合わせて変えたかったんですね。

『マインクラフト レジェンズ』インタビュー。PvPを導入したのは『マイクラ』にさらなる新しい遊びかたを提案するため

――リーさんが本作を開発するにあたって苦労した点は?

リー『マインクラフト』の世界に飛び込むというのは、とにかく勇気のいることでした。『マインクラフト』には熱意を持ったファンが多く、長い歴史もあります。『マインクラフト』のコミュニティーは膨大なものがあります。そのコミュニティーに、新しい要素の提案をするというのは、本当に怖いことでした。

 本当に難しかったことのひとつは、“新しい『マインクラフト』だけど、『マインクラフト』の雰囲気はそのままある”という、新しいものとなじみ深いものとのバランスでしょうか。クリエイティブとアートの方向性ですね。Blackbird Interactiveには、バンクーバーのほかにストックホルムにもチームがいるのですが、Mojang Studioの皆さんとも連携しながら、うまく作り上げられたのではないかと思っています。

――既存のファンを大切にしつつ、新しい要素も……ということで、バランスがたいへんだったのですね。どのようにして落としどころをつけたのですか?

リーゲームを開始したらすぐに、「この見栄えは『マインクラフト』だな」というようなことはわかるようなものにはなっています。先ほどデニスさんがゾンビのことを話していましたが、たとえばゾンビは日差しが強いから帽子をかぶらないといけないといった、ファンの方から見たら、「そうそう!」という要素が盛り込まれています。

 一方で、ゲーム中では説明しすぎないようにもしています。ゲームをプレイするとさまざまな疑問が生じるかと思うのですが、それらを全部答えない。『マインクラフト レジェンズ』では、ゲームをプレイすることによって、「これどうやっているの?」といった、新しい“?”が頭に浮かぶようなゲームではないかと思います。“?”を入り口にして、自分たちのストーリーを築き上げる形になっています。

――なるほど……。ところで、さきほど『マインクラフト レジェンズ』は、ストーリーにもとても力を入れているとお話しされていましたが、ユーザーの楽しみを損なわない範囲で、どのようなストーリーなのか、お教えいただけないでしょうか。

デニスじつはストーリーはあまり共有したくないんです。それはプレイヤーさんたちが体験すべきことであって、楽しみとしてとっておきたいので……。まあ、大まかに言えば、レザーワールドからピグリンズたちが攻めてくるんですね。オーバーワールドという、平和だった世界にピグリンズたちが攻めてくるわけです。オーバーワールドの住人たちには何らの援助が必要になります。そこでヒーローが出てきて、住民たちがオーバーワールドに戻れるようにお手伝いをするのです。

――では、ストーリーのテーマを教えてください。

デニステーマですか? 難しいことをお聞きになりますね。うーん、パッと思いついたところでは“インスピレーション”。そしてユニティ(団結力)……。あまり聞かれたことがなかったので、答えづらいですね(笑)。

『マインクラフト レジェンズ』インタビュー。PvPを導入したのは『マイクラ』にさらなる新しい遊びかたを提案するため

『マインクラフト レジェンズ』で新たな“レジェンズ(伝説)”を

――PvPモードのことを聞かせてください。PVPモードが搭載されるのは、『マインクラフト』史上初とのことですが、なぜPVPモードを搭載することにしたのですか?

デニス開発のプロトタイプの段階で、PvPモードを導入してみたらとにかく楽しかったんです。何よりも我々が楽しみました。それで、「ではこれで行こう!」と決めて、PvPを導入することにしました。

――導入するにあたっては、議論はなかったのですか?

デニス『マインクラフト レジェンズ』のPvPは4対4で、チームになって相手を倒すことが目的です。チーム内ではリソースを共有しないとやっていけないんですね。

 2020年にリリースした『Minecraft Dungeons』(マインクラフト ダンジョンズ)において、プレイヤーさんがいっしょに遊ぶことの楽しみを味わっていることを私たちは見てきました。そこから、PvPを導入して、新しい『マインクラフト』体験を提供してもいけるのではないかと判断したのです。

――『マインクラフト ダンジョンズ』を受けて、さらなる新しい遊びかたの提案を……ということで、PvPを発想したのですね。

デニス『マインクラフト』では、オンラインでお互いに協力しながら遊ぶという楽しみかたがあって、『マインクラフト ダンジョンズ』では新しいゲーム体験を提供しつつも、マルチプレイでの基礎は従来と同じものでした。『マインクラフト レジェンズ』ではそれをさらに発展させて、キャンペーンとPvPを両方組み合わせて、より楽しんでいただくことを志向したのです。

『マインクラフト レジェンズ』インタビュー。PvPを導入したのは『マイクラ』にさらなる新しい遊びかたを提案するため

――実際にPvPを導入するにあたって心掛けたところは?

デニスPVPを楽しめるゲームは、多くの場合チャットができるようになっていると思うのですが、我々は意図的に、チャットは導入しないことにしました。その代わりに、“Ping”ができるようになっています。チームメイトに“Ping”することによって、どうやってリソースを共有するかといった、自分の意思が伝えられるわけです。

――なぜチャットを導入しなかったのですか?

デニス『マインクラフト レジェンズ』のようなゲームをプレイしている最中に、チャットをすると、楽しみが削がれてしまうのではないかと判断しました。チャットを使わないで成功しているゲームも、いろいろあるので、本作では“Ping”というシステムを導入することにしました。

リーあとはマップですね。RTSのゲームとかだと、同じ世界で何回も戦闘をすることがあるかと思うのですが、『マインクラフト レジェンズ』ではマップはプロシージャルで自動生成するようになっていて、プレイするたびに新しいマップで楽しめるようになっています。

 PvPのマップは、キャンペーンよりも小さいフィールドですが、たとえばバイオームが違うとか、地形が違うとか、環境が違うとか、マウントとタワーがある場所が違うとか、マップが毎回新しくなるわけです。

――それは楽しそうですね。ちなみに、PvPモードのルールはどのような感じに?

デニス現時点では、PvPモードのゲームプレイは、敵の拠点を攻略するという1ルールです。ソフトのローンチ後に、ほかの体験をプレイヤーさんに提供することを予定しています。

――それはどのような体験になるのでしょうか?

デニス残念ながらいまはお話しできません(笑)。

『マインクラフト レジェンズ』インタビュー。PvPを導入したのは『マイクラ』にさらなる新しい遊びかたを提案するため

――『マインクラフト レジェンズ』でもクロスプラットフォームを採用しているとのことですね。

デニスそうですね。『マインクラフト』はどこでも遊べるという伝統がありますので、あらゆるフランチャイズでクロスプラットフォームで遊べる環境を提供したかったんです。

――クロスプラットフォームの実現はすんなりといったのですか?

リー『マインクラフト レジェンズ』を開発するにあたっては、新しい別のゲームとして、新しいシステムや新しいレンダリングなども導入しました。一方で、いままで培ってきた『マインクラフト』の技術の土台もあります。

 『マインクラフト レジェンズ』では、いままでの土台のうえに、新しい技術を上乗せてして作っていきました。過去の土台があったからこそ、この短期間で開発できたわけです。本当にいちから作るということになったら、10年間くらいはかかったのではないかと思います。

――10年ですか。培った蓄積は大きいですね。ところで、『マインクラフト レジェンズ』というのはかっこいいタイトルですが、どのような由来でつけられたのですか? ネーミングはストーリーとも関係してくるのでしょうか?

デニスじつはこのタイトル名に落ち着くまでには相当時間がかかりました。『マインクラフト』のストーリーというのは、プレイヤー次第なんです。プレイヤーの遊びかた次第です。そんな『マインクラフト』には、いままで多数のストーリーが発生しています。今回のゲームが提供するのは、そのうちの新たなひとつになるわけです。それを提供できるのがうれしいので、そんな思いを込めて、『マインクラフト レジェンズ』としました。

――新たなレジェンズを作るということなのかしら……。ちなみに、ボツになったタイトルとか教えていただけますか?

デニスお教えできません(笑)。おもしろいご質問ですが、ゲーム内容にも関わってくるので。

『マインクラフト レジェンズ』インタビュー。PvPを導入したのは『マイクラ』にさらなる新しい遊びかたを提案するため

――冒頭で、Blackbird Interactiveさんは『マインクラフト』に対する熱意が溢れているので『マインクラフト レジェンズ』の開発を担当することになったというお話でしたが、スタッフの皆さんはそんなに『マインクラフト』好きなのですか?

リーはい! 私たちは『マインクラフト』のおもちゃやぬいぐるみに囲まれて仕事をしています。レゴで『マインクラフト』風に建物などを作って飾ったりしています。アーティストのひとりが、ガストのコスチュームを作って大喜びしていましたね。

――楽しそうですね(笑)。

リーとにかく我々は『マインクラフト』に楽しませていただいております。我々は、ときにバイオレンス的なストラテジーゲームに関わることもあり、自分たちが作ったゲームを子どもたちと遊べないこともあるんですね。それが『マインクラフト』は子どもにも人気ですので、『マインクラフト』のタイトルに関わっているということは、子どもたちに対してかっこいい親になれるという体験ができるわけです。私たちに対する人気度が上がってうれしかったですね。

――いい話ですね! 最後に、『マインクラフト レジェンズ』を楽しみにしている日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

リー発売日を迎えることに対して、本当にワクワクしています。日本人のゲームファンが『マインクラフト レジェンズ』をどのように遊ぶのか、どのような物語を構築していくのか、楽しみにしています!

デニス私たちMojang Studiosのスタッフは、世界の中で、日本はもっとも熱意を持った『マインクラフト』プレイヤーがいる地域だと思っています。ですので、日本のゲームファンの皆さんに『マインクラフト レジェンズ』も本当に愛していただけることを願っています。『マインクラフト レジェンズ』は、我々が多くの労力を費やして作った自信作です。日本のファンの皆さんに、どのように遊んでいただけるか、楽しみにしています。

『マインクラフト レジェンズ』インタビュー。PvPを導入したのは『マイクラ』にさらなる新しい遊びかたを提案するため