ゴシックホラーRPG『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』の公式Discord(ディスコード)で実施された、ユーザーからの質問回答企画“AMA(Ask Me Anything、なんでも聞いてくださいの意)”第2回の町田松三氏の回答をまとめてお届けする。

 本作は、町田松三氏ら『シャドウハーツ』シリーズを開発したスタッフが企画した新作ゲーム。対応機種はプレイステーション5、Xbox Series X|S、PC(Steam、Epic Games Store)、発売時期は2025年春予定。Kickstarterにて10月1日までクラウドファンディングが行われており、支援額によってゲーム内容が豪華になっていく。

 なお、記事中のユーザー質問や町田氏の回答は筆者が編集・要約したもの。質問と回答の順番は音声そのままではなく、入れ替えている。文中の※部分は筆者による補足となる。

『ペニーブラッド』への支援はこちら(Kickstarter)

町田松三(まちだ まつぞう)

『シャドウハーツ』シリーズを開発したゲームクリエイター。『ペニーブラッド』ではゲームデザイン・総監督・脚本を担当している。(文中は町田)

パーティメンバーは何人? 今作にも“へな絵”は登場する?

――共通ストレッチゴール(コンボゴール)の“ニューゲームプラス”とはどういったものなのでしょうか?

町田いろいろなアイデアを考えているのですが、2周目を皆さんに新鮮な気持ちで遊んでいただきたいので、1周目にはなかったキャラクターたちのモノローグを入れようと考えています。

 たとえば「俺はこのとき、こうなることを知らなかった」みたいなマシュ―のモノローグが入ったり、同じイベントシーンですが2回目ではエミリアのモノローグで「ちゃんと答えてあげられなかった私はバカだ」みたいなものが入ったりですね。

※マシュ―:『ペニーブラッド』の主人公であるマシュー・ファレル。危機に陥るとフュージョンモンスターへ変身し、敵に対して容赦ない攻撃を加え討ち滅ぼす。
※エミリア:『ペニーブラッド』のヒロインであるエミリア・ドーソン。イギリスの秘密情報部に所属する情報局員。片目と三肢をサイボーグ化した身体は驚異的な戦闘力を発揮する。

――パーティメンバーは最大何名を想定していますか?

町田最大8名を想定しているのですが、予算によっては全員を入れられなくなる可能性もあるので、そのときは優先順位をつけて人数を絞っていく可能性もあります。

――『ペニーブラッド』に東南アジアは登場しますか?

町田出る可能性はあります。

――ピットファイト(闘技場)はありますか?

町田ピットファイトという名前ではないと思いますけど、あります。

――マシュ―の身長はウルよりも高いですか?

町田マシュ―のほうが高いんじゃないですかね。インテリもマシュ―のほうが高いと思います。

※インテリ:インテリジェンス。知力、賢さ。『シャドウハーツ』内ではINT表記。『シャドウハーツ』『シャドウハーツ2』の主人公であるウルのINTは非常に低い。

――これまでに発表された登場人物のミニキャライラストは、『シャドウハーツ』でいうところの“へな絵”にあたるのでしょうか。

町田へな絵はウルから見ていた登場人物たちのイメージなのですが、今回の『ペニーブラッド』のデフォルメキャラもマシュ―から見た周りの人たちというイメージで加藤さんに描いてもらっています。

※へな絵:『シャドウハーツ』などで、おもにウルの過去回想や振り返り時に登場する子どもの落書きのような絵。ウルの目から見た登場人物や情景が描かれており、彼のINTの低さを物語っている要素。へな絵と同時にワイプ画面に実際のゲーム映像が流れるところも笑いどころだった。
※加藤さん:加藤美也子氏。スタジオワイルドローズのキャラクターデザイナー。本作のキャラクターデザイン・アートディレクションを担当する。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』
『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』
マシュ―のデフォルメイラスト
エミリアのデフォルメイラスト

――もしかしてマシューの性格はウルのようにやんちゃというかガラの悪い部分があるのでしょうか。イメージボードでパトカーを失敬していたところがおもしろかったです。

町田ウルとは性格が違うと思うのですが、マシュ―は好青年だとは思います。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』
イメージボード“夕陽に染まる摩天楼”。失敬したパトカーでハドソン川のほとりへとやってきたマシュ―が描かれている。

Gやアモンを彷彿させるモンスターは登場するのか?

――うちの小鳥なのですがペットリワードは難しいでしょうか?

町田ぜんぜん大丈夫です。たとえカタツムリであったとしても、ロケット噴射とかをさせて出場させますので。

 ペットとして現実味がないものは難しいかなと思います。あと、個人的にゴキブリはNGです。

 ルカがドッグレースに出てきたときは、プレイヤーの皆さんはルカを操作することになるので、ペットがライバルとして登場してきたら相当な脅威になると思います。勝たないとルカはパワーアップできないので。

※ペットリワード:支援者のペットを『ペニーブラッド』に登場させる権利が得られるリワード(支援のお礼)。パーティメンバーのひとりである狼少年ルカが狼形態となって出走するドッグレースで敵として登場する。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』
『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』
パーティメンバーのひとりであるルカ。彼の奥に眠っている真の力が目覚めたとき、白くて可愛い狼へ変身する。

――バグスは登場しますか?

町田バグスはたぶん出ると思います。僕は苦手なんですけどね。

※バグス:町田氏のゲーム作品によく登場するゴキブリに似たモンスター。動きがリアルなため苦手なプレイヤーを苦しめた。

――リワードについてなのですが、ボイスなりエネミーなりペットなり、写真を送ってそこからスタッフさんがモデリングを仕上げるのでしょうか。

町田やり方自体はまだこれからなのですが、ペットを登場させる場合は、ペットの写真を送ってもらってモデリングしたものを見てもらって、という流れになるんじゃないかと思います。

 仕様面などで制約もあり100%ペットを再現できるかどうかは難しいと思うので、多少デフォルメされたものになります。

――もなかさんはドックレースに参加されますか?

町田参加はしませんが登場します。

※もなか:町田氏のペットの猫。公式サイトの開発スタッフの項目では、“黒幕”とクレジットされている。

――おさえておくと、より『ペニーブラッド』が楽しめる作品や文献はありますか?

町田1920年代に興味を持っていただけてうれしいです。僕がこのゲームを作るために観た映画とかがあるので、そういうのを観ていただけると当時の文化などがわかります。たとえば『華麗なるギャツビー』や『映像の世紀』とか、『セブン』とかですね。

※華麗なるギャツビー:レオナルド・ディカプリオやトビー・マグワイアなどが出演した1920年代が舞台の映画。豪邸に暮らす謎めいた男、ジェイ・ギャツビーの人生をかけた秘密に迫っていく。
※映像の世紀:世界中に保存されている20世紀の映像記録を発掘、収集、再構成し、20世紀の人類社会を鮮やかに浮き彫りにするNHKのドキュメンタリー番組。
※セブン:ブラッド・ピット、モーガン・フリーマンが主演の1995年のサイコ・サスペンス映画。“七つの大罪”を模したおぞましい殺人を繰り返す、怜悧な頭脳を持つ連続殺人犯をふたりの刑事が追う。

――植松さんの『ペニーブラッド』参加にとても驚きました。他にも今後明かされる参加者の方はいらっしゃいますか?

町田町田も驚きました。弘田さんはサウンドの人脈が広く、もしかしたら、またそういう有名どころのメンバーも登場してくれるかもしれないので、僕自身もワクワクしています。

※植松さん:植松伸夫氏。『ファイナルファンタジー』シリーズの楽曲を手掛ける作曲家。
※弘田さん:弘田佳孝氏。『クーデルカ』や『シャドウハーツ』シリーズの音楽を担当。『ペニーブラッド』では海田明里氏とともに楽曲・サウンドを手掛ける。

Nobuo Uematsu, Yoshitaka Hirota, Michio Okamiya Interview

――アモンを彷彿させるデザインのモンスターは登場しますか?

町田登場はすると思います。

※アモン:『シャドウハーツ』『シャドウハーツ2』に登場した最強クラスのフュージョンモンスター。もともとはアルバート・サイモンが契約していたが、後にウルが使役することになった。

――『ペニーブラッド』の動画配信や実況については行っても大丈夫でしょうか。

町田はい。お願いします。興味のある方はやってみてください。

――公式サイトのインタビュー映像はいつごろ収録したものでしょうか。

町田7月の半ばごろです。

――ストレッチゴールの“バベルの塔”が何かについて教えてください。

町田“バベルの塔”は漢祭りの塔ではありません。聖書に書かれていたバベルの塔の物語を知っている方がいらっしゃればわかると思うのですが、人類は昔ひとつの言語で話をしていて国がひとつにまとまって天にのぼるバベルの塔を建てていくんですね。

 それを見た神様が、「なんておごり高ぶった奴らだ」と塔を崩します。これによって人類はいろいろな言語を話すようになって、団結が難しくなるという戒めみたいなものです。

 なので、バベルの塔のヒントというのはそういう内容からきています。

※バベルの塔:ストレッチゴールの予告で、ヒントとして記載された文言。多言語対応のヒントだったのだが、『シャドウハーツ2』で登場したインパクト大のイベント“漢祭り”のことだと考察するユーザーもいた。

今作はシンボルエンカウントに。過去作にあったパロディネタはどうなる?

――公式サイトの隠しコマンドでゴア版の動画が観られましたが、ゴアと通常の2種類の『ペニーブラッド』が発売されるという認識でよろしいでしょうか?

町田ノーマルで遊ぶのか、ゴア版で遊ぶのか、というのを切り替えてもらうような形なので、2種類の製品版が出るということではありません。

 『ペニーブラッド』はモンスターと接触するときに敵が見えている状態(シンボルエンカウト)になっているのですが、急に出現するなどプレイヤーをビックリさせるような演出も考えています。エンカウントは『シャドウハーツ』のときとは違うドキドキハラハラ感が楽しめると思います。

――ホラーなのにビックリ要素が少な目なのがうれしいです。

町田ビックリ要素は多いかもしれませんよ。

――CERO(レーティング)はどのくらいになりそうですか?

町田CEROでいうとZ指定(18才以上のみ対象)になると思います。

――ゲームリリース後にダウンロードコンテンツ(DLC)による追加要素はありそうですか?

町田あると思います。

――キャンディちゃんめっちゃかわいいキャラデザでうれしいです。この娘はそのへんの看板を引っこ抜いて武器にしたりしますか?

町田この娘はしないです(笑)。すごい発想ですね。

※そのへんの看板を引っこ抜いて武器に:『シャドウハーツ2』のパーティメンバーであるヨアヒム・ヴァレンティーナは、道端に落ちている(置いてある)ロッカーやポストなどを引っこ抜いて自分の武器にする。彼の新しい武器を探すためにマップをすみずみまで探索したり、一度訪れた町などを再訪したりする楽しみがあった。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』
キャンディ・ネーション。彼女を含めて、デザインやカラーリングはKickstarterキャンペーン終了後に再調整される予定。

――福引や歩数計はありますか?

町田あると思います。

※福引はストレッチゴールのひとつ(9750万円)として設定されている。過去作にもあった、ジャッジメントリング(今作ではサイコシギル)を活用したイベント。成功するとレアアイテムがもらえる。今作では、はずれのポケットティッシュをトイレに立てこもっている人物に30個わたすとお礼にすごいレアアイテムがもらえるとのこと。

――パッケージ版の通常販売の予定はありますか?

町田パッケージ版をふつうに売ることはあると思いますが、Kickstarterで購入していただくものとは違うものになると思います。

――過去に行われたAMAの回答はどこに記載されますか?

町田1回目の日本語でのやり取りが記録しきれていなかったため、もう一度記録を掘り起こしてみようとは思っているのですが、難しかったら載せることはできないかもしれないです。

――今回のモンスターデザインを担当された方は“見える”方ですか?

町田“見える”方ではありません。見たいと思って努力している方ですね。

――物語の中で、ブランカみたいに大きい狼や犬は出るのでしょうか。

町田狼はもしかしたら出てくるかもしれません。

※ブランカ:『シャドウハーツ2』のパーティメンバーの白狼。INTが非常に高い。ルカの狼形態のデザインが発表された際に、ブランカに酷似しているということでファンのあいだで話題となった。

――黒い三〇星のように、わかる人にはわかるネタは満載ですか?

町田あると思います。すでに、ヴィトーが『ゴッドファーザー』ネタだと気付いた人がいらっしゃったので、皆さんの考察力はすごいなと思っていました。

 『ゴッドファーザー』もフィクションのお話なので、直接ヴィトーが初代の人物と同一人物ということではありません。ああいうところから着想を得て、キャラクター作りをしているのは事実です。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』
パーティメンバーのひとりであるヴィトー・アンドリーニ。ユーザー投票によってCタイプの色設定に決まった。

――ウルフバウトに出る犬のパロディが好きだったので楽しみです。

町田ありがとうございます(笑)。あれは池田秀一さんありきのシステムでした。

※ウルフバウト:『シャドウハーツ2』にあったブランカ絡みのサブイベント。ふだんブランカは鳴き声のみで人語をしゃべらないのだが、ウルフバウト中は池田秀一さんのボイスで非常にカッコいいセリフを発する。担当声優が池田さんということで、「坊やだからさ」など某作品のパロディがたくさん盛り込まれており、魅了されたファンも多い。

『シャドウハーツ』とは違って、現代では描けないもの、描けるもの

――ユーザー投票によって登場したキャラクターのデザイン再調整後のお披露目はいつになりますか?

町田Kickstarterキャンペーン終了後も、プロジェクトの進捗を月に一度くらい公式で報告していくことになると思うので、その中で公表されると思います。

――ベビークトゥルフちゃんが気になります。どういったシステムになるのでしょうか?

町田いろいろなエサをあげて育成する形になります。そのエサをとってくるのが、意外と骨が折れるかもしれません。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』
マスコットキャラクターであるベビークトゥルフ。ベビークトゥルフを育て上げることが今作のグッドエンディングへたどり着くための道しるべとなる。

――1920年代アメリカといえばクトゥルフの本場なので楽しみです。

町田そうですね。ラヴクラフトの小説とかで、なかなか読むのが大変なのですが、読むとおもしろいと感じてもらえると思います。

――クトゥルフ以外の神話生物はいますか?

町田たぶんいると思います。

――“上海天国”はダメっぽいですが、“ビルダーカード”などはセーフですか? 『ペニーブラッド』にもあるか気になります。

町田20年前とは世の中も変わって、コンプライアンスが非常に厳しくなっているので、グロはオーケーなのですがエロに関してはかなり慎重に扱っていこうと思います。

 “ビルダーカード”であれば大丈夫だと思うのですが、よく検討していきたいです。

※上海天国:『シャドウハーツ』シリーズに登場するキーアイテム。純文学雑誌(意味深)。本がボロボロになるまで読んでも、その感動は色あせない。
※ビルダーカード:『シャドウハーツ2』のさまざまな場所で拾えるキーアイテム。筋肉ムキムキの男性が描かれており、ピエール・マジメルにわたすことでゼペットが操る人形“コーネリア”の衣装が手に入る。

――シナリオ規制のようなものを心配しています。英語圏の人がたくさん参加するKickstarterをきっかけに開発することで、シナリオの性質が変わってしまうことはあるのでしょうか。

町田僕自身は変わらないので大丈夫なのですが、やっぱり20年前に開発した『シャドウハーツ』とまったく同じというわけにはいかないと思います。

 たぶん、いちばん出せないのはマジメル兄弟みたいなキャラクター。日本特有のもので、世界から見ると難しいみたいですね。なのでマジメル兄弟は出てきません。

 そのかわりLGBTのキャラクターは出てくると思うので、そういう方たちの気持ちを大切に、いいキャラクターとして描きたいなと思っています。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』情報まとめはこちら
『ペニーブラッド』への支援はこちら(Kickstarter)
『シャドウハーツ』をAmazon.co.jpで検索する