Sloclapが2月8日に発売予定のクンフーアクションゲーム『Sifu』を紹介しよう。本作の対応プラットフォームはプレイステーション5/プレイステーション4/PCで、テキストで日本語に対応。(※2022年2月6日21時40分追記: 21時よりデラックスエディションの先行プレイが開始予定だったが、SloclapによるとPlayStation Storeでの配信に問題が出ているようだ 7日7時追記: 問題が解消したことが報告されている

父の仇である五人の悪党に怒りの鉄拳制裁!

 さて、本作のタイトルにあるSifu(師父)とは、武道の師匠のこと。主人公の父はかつて道場を構えて後進を育てていたが、ある日かつての教え子であるヤン率いる5人組に道場を急襲され、殺害されてしまう。

 そんな中、自身も傷つけられるも不思議な御守りの加護により命をとりとめた主人公は、8年間の鍛錬を経て父の仇に挑む……という、クラシックなクンフー映画を全力で意識したストレートな復讐譚となっている。

Sifu
プロローグではヤンとして道場を襲撃することになる。
Sifu
燃えるBGMとともに単色の背景の中で修行していく様子が流れる、香港映画の名門ショウ・ブラザーズっぽいオープニングクレジット。プロローグから引き続き、基本テクニックのチュートリアルにもなっている。

 ちなみに、主人公は男性キャラと女性キャラのどちらかを選べる。個人的には往年のクンフー映画スター、アンジェラ・マオっぽい女性キャラが結構好みだったりするのだが、セーブスロットは3つ持てるのでどちらもプレイするというのもアリだ。

Sifu
意思が強そうな眉毛がいい感じ。

何度も立ち上がって挑むハードな肉弾アクション

 ゲームはステージクリアー式の近接格闘メインの3Dアクションゲームとなっており、立ちはだかるチンピラやボディガードたちをなぎ倒し、各ステージのボスである5人の仇に迫っていく。

 しかし、その道のりは簡単ではない。敵の一発の威力がなかなか大きく、集団戦になることも多いので、数発のコンボを立て続けに食らってボコられあっという間に死亡してしまうこともある。各ステージはそこまで長くないのだが、最初のうちは一度も死なずにボスにたどり着くのは難しいだろう。

Sifu
集団戦をどうさばくかが重要なポイント。

やられるごとに歳を取っていくユニークなシステム

 本作では戦闘中にやられてしまうと、“御守りの効果によりその場で復活するが歳を取ってしまう”というシステムを採用していて、20歳からスタートし、やられるごとに年齢が増えていく。

 しかも最初は1歳上がるだけなのだが、連続して死亡すると“死亡カウンター”が上がり、それに応じて死亡した際に上がる年齢もどんどん増えていく。なので、さっきまでは20代だったのに気がつけば70代……なんてこともしばしば。

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最初のうちは、ボスにたどり着いたらもう老人なんてこともある。

 では年齢が上がると何が起こるのか? 結構いろんな要素が絡んでくるので、ここは箇条書きで説明していこう。

  • 年齢が上がると攻撃力が増えて体力が減る
    • つまり“敵の攻撃を引き続き不用意に食らってると弱いが、さっき食らった攻撃を見切って達人のように捌ききれるなら強い”という方向性になっていく
  • ステージクリアー時の年齢が次のステージのスタート年齢の基準になる
    • たとえば、第1ステージ“廃倉庫”で手間取って65歳でクリアーしたら、第2ステージ“クラブ”はいきなり65歳からスタートすることになる
    • ただし、前のステージをプレイし直してより低い年齢でクリアーすることでスタート年齢を更新可能。再プレイで22歳で廃倉庫をクリアーすれば、以降はクラブを22歳からプレイできる
  • 年齢が進むと10歳ごとに御守りについている硬貨の数が減っていき、ゼロになるとそれ以上復活できなくなる
    • 硬貨がない状態で死亡すると、そこまでに得た経験値やスコアを失って拠点に一旦戻る(プレイループのリセット
    • つまり高齢スタートになるとそれだけミスできる回数が減る
  • 道中の“社”で得られる能力ボーナスや、経験値を使って得られる追加の技の選択肢が狭まっていく(詳細は後述)

 というわけで年齢が上がってもプレイは続行可能だが、少しずつ苦しくはなっていくという感じ。なので“一度クリアーしたステージも適宜やり直して、最終ステージにたどり着くまでの年齢をできるだけ低く維持する”のがひとつのやり方となってくる。

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過去のプレイで学んだことを活かしてクレバーに対応し、できるだけやられずにクリアー年齢を更新したい。

強化やショートカット開けを通じて次のプレイの可能性を高める

 そして、年齢システム以外でも再プレイを前提にした設計の部分がいろいろとある。たとえば各ステージの構造も、メトロイドヴァニア系のゲームのようなショートカットがあったり、そのエリアのプレイだけではたどり着けないシークレットが用意されていたりする。

 前者はショートカットを通れば当然ボスに至る道のりでの無用な消耗を減らせるので、ダイレクトにより低年齢でのクリアーに繋がってくる。後者はどうやっても開かなかったドアの鍵や暗証番号が後のステージで手に入ったりするというもので、戦闘そのものには直接関わらないものの、仇のボス連中の背景がより詳しくわかったりするので物語上重要だ。

Sifu
鍵や情報を手に入れるとボードが埋まっていく。時間軸的に後で手に入れたものが手前のステージに作用したりするので、実はクンフーSFとも言える世界になっているのだ(ほんとか?)。

 もうひとつ、強化システムも再プレイを意識した作りの部分。こちらは以下のような感じになっている。

  • マップ内各所にある“社”では、そこまでのプレイで得た経験値を使って追加の技をアンロックできる
    • ただのアンロックだけだとそのプレイループのみ有効で、御守りの硬貨がなくなってリセットされるとその技を失う
    • ただしアンロック中の技は、さらにトータル5倍の経験値(5回払い)を支払って“永久アンロック”できる
      • 永久アンロックした技や永久アンロックのために既に支払った分は、プレイループのリセットがかかっても引き継がれる
    • 技のアンロックは死亡時のスクリーンでも行える。またステージクリアーして生還した場合は拠点(武館)でも可能
      • ステージをクリアーできそうにない時は、リセットになる前に死亡時のスクリーンで永久アンロックの部分支払いをすると経験値を無駄にせずに済む
  • 社では武器の耐久力向上やテイクダウン攻撃成功時の体力回復量増加などのアップグレードも得られる
    • アップグレードは3つのカテゴリーに分かれており、それぞれ取得可能な年齢・スコア・経験値が決まっている
    • プレイループがリセットされると、そのプレイの間に新たに獲得したアップグレードは失われる
      • ただしすべて失われるわけではなく、年齢同様に「最も低い年齢でそのステージに到達した時」のアップグレード構成で再スタートの形になる

 実際のプレイの流れがどんな感じになるのかまとめておくと、「何度もステージに挑戦しながらじわじわ追加技の永久アンロックなどを行いつつ、各ステージのベストなスタート年齢&アップグレードの引き継ぎを重ねていき、その過程でよりディープに物語に迫っていく」という塩梅だ。

Sifu
マップ各所にある社。必ずチェックして報酬をもらっておこう。体力も回復するしね。
Sifu
報酬はそれぞれ、年齢に応じてアンロックできるもの、スコアに応じてアンロックできるもの、経験値に応じてアンロックできるものがある。なお経験値のみ指定分を失うが、年齢カテゴリーのものとスコアカテゴリーのものは受け取っても何も失われない。

相手の一手を見極め、水のように柔軟に対応しろ!

 ここで戦闘システムについてもうちょっと掘り下げていこう。本作の戦闘は地上での格闘戦に特化していて、足も速くないしジャンプ攻撃などもなく、機動性はあんまりよくない。なので、いかに相手の攻撃をさばいて反撃に転じられるかが重要だ。防御系のアクションは以下の通り。

  • 防御(PSの場合、L1長押し)
    • ガードを続けていると“体勢”値が崩されていき、ゲージがいっぱいになるとガードクラッシュ状態で無防備になる
  • 受け流し(L1タイミング押し)
    • 成功するとダメージ回避だけでなく、相手の体勢値が崩れていき、一瞬よろめき状態になったりもする。相手の体勢ゲージがいっぱいになるとテイクダウン攻撃を出せる
  • 見切り(L1+スティック上下)
    • 上入力で下段攻撃を、下入力で上段攻撃をかわす
    • 成功するとノーダメージかつ相手のフォロースルーにスローモーションがかかって無防備になる
  • 回避(R2)
    • ショートステップでダッキングする。ガード不能攻撃などを避けるのに使う
Sifu
攻撃を見切りでかわしてカウンターを決め、他の敵が寄ってくる前に倒してしまいたいところ。

 まず覚えるといいのは結構猶予時間の大きい“見切り”だ。しかもほとんどの敵は上段攻撃だけで攻めてくるので、特に上段の見切り。コレで相手の連続攻撃の最終段を交わしてカウンターできるようになるだけで生存力がグッと上がる。

 そしてあまり意識しなくても自然に上段をさばけるようになったら、下段を対応しないといけない敵に集中できるようになる。最初は判断が怪しければ下段はL1押しっぱなしでガードでもいい。下段見切りをミスったりガードでやり過ごしたりしているうちに「あ、コイツ上段2回の後に下段だな」とか「いきなり距離取ったら下段来るな」といったタイミングが見えてくるはず。

 そうこうしている間に敵の攻撃のリズムが身に沁みてきて、気づけば受け流しも使えるようになっているだろう。こうなるとダンスを踊っているかのように戦いの流れに乗れるようになり、最初は無理だと思っていた敵や集団戦シチュエーションも対応できるようになっていく。かのブルース・リーがかつて言った「水のようになれ」の言葉のように、変化する状況に流れるように対応できれば恐れることはない。

Sifu
武館にある木人から練習モードに入れるので、AIを「攻撃的」に切り替えてから見切りや受け流し、そしてカウンターで出す基本コンボの練習をするとヨシ。

 一方攻撃面では、基本コンボをいくつかマスターした後に、ゲージを消費する代わりに強制的に割り込んでダウンやスタンを取れる“フォーカス”技や、倒れた敵への追撃、“体勢”ゲージを削りきった敵に発動できるテイクダウン攻撃などをきっちり決められるようになれば、クンフー映画の主人公よろしく次から次へと悪漢をなぎ倒していけるようになるだろう。

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テイクダウン攻撃は体力回復にもなるので便利……なのだが、たまに耐えてパワーアップする敵がいるのは注意。

新旧の格闘アクション映画にオマージュを捧げまくった数々の描写が燃える!

 そして本作にはコテコテの“こんなシーン、アクション映画でありそう”って感じのシチュエーションがバンバン出てくるので、うまく立ち回れるようになると本当に気持ちいい。

 ラウ・カーリョン監督『少林寺三十六房』あたりのクラシックな作品っぽい前近代風の場面があったかと思えば、現代っぽいクラブステージもあるし、さらに数々のオマージュ描写もクンフー映画にとどまらず、クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』やパク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』などの古今東西の格闘アクション映画も含まれていて、ほどよいごった煮感に思わずニンマリしてしまう。これは恐らく開発がフランスで日本と同じく“クンフーものに憧れた側”がゆえの視点ということもあるんじゃないだろうか。

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横視点に切り替わって敵をバキバキ倒していくシーンも。元ネタは多分クンフー映画ではなくてパク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』。
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コードネームが書かれた仇リストは『キル・ビル』かな?(他に『キル・ビル』のオーレン石井戦っぽいステージや、モロなトロフィー/実績名もある)
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スポーティーな格好+ハチマキの人が出てくるのは『ブラッド・スポーツ』のヤン・スエ(ボロ・ヤン)の感じがするのだが、あっているかは保証しない。

 ちなみにクンフーものの“魂”としての部分は、白眉拳を中国で学んだというベンジャミン・コルシ氏を格闘モーションや文化描写のアドバイザーとして招いているほか、エンドロールを見ると文化的な描写が正しいかチェックするチームなども入っていて、結構ちゃんとしている(テキトーアジアン描写が嫌いなわけじゃないけどね、それはそれ、これはこれ)。

 またローンチ段階では未実装なものの、中国語ボイスも準備中だとか。さらにゲームのテイストを紹介するための実写映像なんかも作っちゃってたりして、このフランス人たちかなり“ガチ”である。

師父への道は功夫あるのみ!

 というわけで結構マジメにプレイヤーのスキルを鍛錬しないといけないゲームなのだが、最初は本当に自己嫌悪するレベルでボコられていたのが一度も死なずに一気に数ステージ進めるようになったので修行あるのみだ。

 そもそも「功夫」(クンフー)とは、武術に留まらず鍛錬の蓄積やその成果として得られた類まれな技量のことを指すという。このゲームで功夫を重ねたあなたが物語の真の結末にたどり着いた時、師父の名にふさわしい技量を身につけているはずだ……いや「師父の名にふさわしい功夫を身につけた者だけが真の結末にたどり着ける」と言うべきか。

 あまりネタバレはしたくないのだが、各ステージに1回のプレイでたどり着けない要素があるように「1面から5面まで通しでノーミスクリアーしたとしてもまだやることはある」とだけ言っておこう(PS5版ではゲームヘルプ機能で何をすればいいか教えてくれる)。

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先に書いたように、武館の道場にはちゃんと木人椿(ブルース・リーが学んだ詠春拳の練習器具)も置かれている。ただしこれはフォトモードで無理やり撮っただけで、実際は木人でトレーニングできるわけではないのがちょっと残念(AIとの戦闘デモになる)。

 ところでクリアーまでのプレイ時間の目安が気になる人も多いかと思うのだが、ハード寄りかつ難度選択もないゲームなので、これは正直プレイを開始した時のアクションゲームの技量次第で大きく変わるとしか言いようがない。

 同じく4000円台という価格が妥当かどうかも、「繰り返しプレイしながら5ステージを進む」という構成をどう評価するか次第になる。個人的には密度の濃い体験ができるので非常に楽しんだし、世界観やテーマにグッと来る人ならそう間違わないと思うが、価格にシビアな人は本作のトリッキーなシステムを念頭に置きつつ検討してみるといいんじゃないだろうか。

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突然サイケデリックな表現が融合したりするのも面白い。