2020年12月10日発売予定のオープンワールドRPG『Outward』(発売元:DMM GAMES/PS4、Xbox One、PC)をひと足早くプレイ。何者でもない冒険家として生きる楽しさや主人公の強化要素など、本作の見どころをお届けします。

【レビュー】『Outward』は何者でもない一般人の冒険譚。お金の力で魔法やスキルを覚えて厳しい世界を生き抜け!
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これはどこにでもいるような選ばれていない者の冒険譚

 本作は中世ファンタジーをベースとした世界を旅するオープンワールドのRPG。主人公が優れた力を持つわけでも神に選ばれたわけでもない、ごくふつうの村人であるというのが特徴です。

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借金を返済しようとしたら船が転覆して村八分にされかける主人公。普通のRPGなら話しかけるとクエストが始まるNPCくらいの役回りでしょう。

 そんな“選ばれていない者”がいろいろとあって冒険の旅へ。モンスターや盗賊を倒したり、素材を集めて装備を手に入れたりして好きなように外の世界を探索していくこととなります。

 一応、村の外に出るきっかけになった理由はあるのですが、何かを強制されるわけではなく本作の旅は何をするのも自由です。ただ、一般人だけあって主人公はあまり強くありません。それこそ装備も貧弱でプレイに不慣れな序盤なら、ゲーム中最弱と思われる少し大きめのニワトリサイズの動物にも負けかねない。複数人の盗賊に囲まれたらひとたまりもないですね。

 というのも、本作の戦闘は攻撃にも回避にもガードにもスタミナを消費するシステム。そもそもの話として複数の敵と戦う時点でどうしても不利になります。そこに加えて、敵をのけぞらせるにはある程度連続して攻撃することが重要。適当に戦っていると、相打ち覚悟で繰り出された鳥のくちばしの前に主人公は地に倒れ伏すというわけです。

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少しの油断で力尽きる。一般人にとって外の世界はあまりに過酷です。

 ただ、選ばれていないなりに主人公はタフな様子。村の側で鳥に倒されてしまったら付近を通りかかった人に助けてもらって村から再スタート。強固な要塞に乗り込んで返り討ちにあったらその要塞の地下で奴隷生活のスタート。

 と、このように力尽きることはあっても命を失うことはありません。力尽きることは多々ありますが、力尽きたなりに物語が進んでいく。そんな冒険生活が待っています。

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力尽きた際は、意識を取り戻すまでのできごとがテキストで表示。

 基本的に荷物も再スタート地点付近に置かれているので、カバンに詰めずに道端にアイテムを散らかしていたなどの特殊な状況でない限り力尽きてもアイテムを失う心配はなし。身ぐるみを剥がされるシチュエーションで再スタートした場合も回収手段は用意されているので、力尽きやすい代わりに力尽きることに大きなデメリットはありません。

 唯一困るのは現在位置の把握。本作はダンジョンなどを除いたフィールド上ならいつでも地図を確認できますが、RPGでは定番の現在位置の表示はなし。

 これもまた選ばれていない者の宿命でしょうか。助け起こされた場所が見知らぬ場所だったり盗賊の拠点に連れ去られたりすると「ここは……どこ?」となることもありますが、そういった行き当たりばったり感もまた本作のおもしろいところでしょう。

選ばれていないので生きるだけでも一苦労

 また、本作にはサバイバル的な要素があるのも大きな特徴。空腹になれば攻撃を受けたときに最大HPが減りやすくなり、のどが渇けばスタミナが減っていきます。食事は街で買ったり、敵を倒した際に手に入ったりするほか、自分で作ることも可能。水辺では魚が採れ、動物やモンスターを倒せば肉や卵などが手に入ります。

 食材は生で食べると、ものによってはステータス異常にかかることがあるので調理が必須。たき火を用意すれば簡易的な調理ができ、鍋があれば複数の食材をまとめて調理してより効果の高い食事を作ることも可能です。

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たき火のもとでアイテムを選べば調理が可能。複数の素材を使う料理は基本的にレシピを教わって把握していきます。

 また、定期的に睡眠を摂ることも冒険には重要。さすがに地面に直接寝るわけにはいかず、寝袋やテントなどの寝具が必須。睡眠不足もまたステータス異常と同等のよくない効果を引き起こします。

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寝袋さえあれば道端でも他人の家でも、どこでも眠ることができます。

 と、このようにある程度長期の冒険をするならそれに備えた準備が必須。戦闘に備えて体力を回復するポーションや包帯を用意することもあれば、ダンジョン奥地の宝箱などから手に入れた戦利品を持ち帰ることもあるでしょう。

 ただ、この世界ではあらゆるものに重量があります。一応いくらでも物を持つことはできますが、大量に物を持ち歩くとスタミナの最大値がどんどん減っていき移動も遅くなるため実質的には持ち歩ける量に制限がかかっています。

 食材はある程度持ち歩きたい、ポーションは必須だ、予備の武器も用意したい……となんでもかんでも持ち歩こうとすると簡単にカバンは許容量を超えるもの。

 ですが、逆に持ち歩くものを制限するほどダンジョンなどで見つけたものを大量に持ち帰れるようになります。なんでも持ち歩きたいなか、本当に必要なものを考えてやりくりする。これもまた、選ばれていない者の冒険の楽しみかたですね。

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素材やアイテムの種類は豊富。食材など複数持ち歩きたいアイテムもあるのですぐにカバンはいっぱいになります。

選ばれていない者は金を力に世界を歩く

 動物に倒されることもあるくらい貧弱で、定期的に食事を摂らなくても倒れる。そんな一般人の主人公なので、当然のようにレベルのような育成要素はありません。敵を何体倒そうがいっさいレベルは上がらず、逆に装備の耐久度が落ちて戦いにくくなっていくだけ。同じ武器を使い込んでプレイヤーの腕前が上がることはあっても、主人公の成長はありません。ただ、そんな選ばれていない者でも強くなることはできます。

 その手段のひとつが装備の新調。強力な装備を手に入れればそれだけ強くなれるというのは、一般人であっても変わりありません。鍛冶屋から購入したり、ダンジョンの奥地で逸品を手に入れたりすればそれだけ戦闘は快適になっていきます。

 また、世界各地にいる武器のエキスパートや魔法の使い手に金銭を支払って、師事すればさまざまなスキルを習得することが可能。常時スタミナの最大値が上昇するなどのいわゆる“パッシブスキル”や敵をよろめかせやすい攻撃を繰り出すなど“アクティブスキル”を習得していくと、次第に主人公は一般人とは言えないほどの強さを手に入れることになるでしょう。

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人によって教われるスキルは異なるので、世界各地を巡っていろいろな人と話すというのが強くなるための目的にもなっています。

 おもしろいのは装備に金銭、スキルに金銭と強くなるためには金銭が必要だということ。ダンジョンで手に入れた武器を使う場合も、高額で売る代わりに自分のものにしているので間接的に金銭を消費していることになります。見方によっては、本作において金銭は一般的なRPGにおける経験値的な役割を兼ねているとも言えますね。

 冒険をするには食事などの消耗品が必要。ただ、消耗品にだけお金をかけていてはいつまでも強くなれない。消耗品も武器も買える潤沢な資金を得るには、それなりに時間がかかって冒険を始めるのが遅れてしまう。

 そんなヤキモキした感情はあるけれども、やはりいい武器を使ってみたくなる。そういった、ままならなさに一切ストレスがないと言えばウソでしょう。ですが、ストレス以上に自分の資金をどう使って次の冒険に生かしていくかを考えるのが楽しいんです。

強敵への打開策もやはり金!

 生活にも強化にも金銭がかかる本作。そこに加えてもう重要になるのが、飲食以外の出費。本作では一部の魔法を使うのにアイテムが必要になります。例えば、“火のシギル”という魔法を使うには“火の石”というアイテムが必要。火の石は1回魔法を発動するごとに1個消費する消耗品です。この火のシギルを唱えると、主人公の周囲に火の魔法陣が出現。その中央では宙に浮いた石が赤々と燃えあがります。

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アイテムを消費するだけあって、いかにも大がかりな魔法といった雰囲気。

 ただ、この魔法単体ではいっさいの効果はなし。というのも、この火のシギルという魔法は、別の魔法などいくつかのアクションを強化するもの。

 たとえば“スパーク”という魔法は、相手をよろめかせやすいもののダメージはわずか。スキが大きく射程距離も短いと、あまりいいところのある魔法ではありません。

 ですが、火のシギルで設置した魔法陣の上で使うと中距離に爆発を引き起こす魔法に変化。消耗品を使うだけあって、少なくとも序盤はこれだけでなんとかなるくらいの強力な魔法です。ほかにも本来は焚き木に火を付けるための火打石を魔法陣の上で使うと魔法陣自体を炎上させて敵にダメージを与えられるなど、さまざまな効果があります。

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魔法陣を事前に準備する、魔法陣の上で目当ての魔法を唱える、というふたつの制約があるためか魔法陣の上で使う魔法はいずれも強力。

 この火のシギルの発動に使う火の石が絶妙にお値段の高いもの。買うか自分で作るかを問わず、コストとうまく使えたときの収益を天秤にかけるとお得なアイテムではあるのですが「素材のまま売って武器の新調に使った方が……」「これを売れば数日分の食費に……」と悩んでしまう価格になっています。

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1、2戦のために使う火の石を7個も売れば防具を新調できる。火の石は消耗品としては高額。

 また、魔法を使わないにしてもトラップを使った戦闘を行うこともできます。トラップは起動用のスイッチと仕込むものをそれぞれ別途に用意するもの。例えば、ワイヤーを設置してそこに鉄の釘を仕込むと、敵がワイヤーの上を通った際に地面から鉄の釘というよりも槍が飛び出すといった具合です。

 トラップもかなり強力なアイテムで大量に仕込んだ場所に敵をおびき寄せれば、真っ向勝負では勝てない相手を無傷で倒すことも難しくはありません。

 ただ、やはりこれも結構なコストがかかるもの。金属などトラップの素材が装備の素材と被っていることも多々あり、また違ったもったいなさがあります。

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一度限りの使い切りトラップ。これだけで1日分の食費に相当します。

 こういった消耗品のコストもまたやりくりの一環。まるでもったいなさを感じないコストなら、直接戦う意味が薄くなります。逆に強力な代わりにゲーム中限られた数しか手に入らないなら、使うことを極端に渋る人も出るでしょう。完全回復アイテムがラスボスを倒したあとにもまだアイテム欄に残っている症候群的なものです。

 火の石やトラップはそういった極端な位置づけではなく、もったいないけれどもいくらでも手に入れられるというライン。使うことに悩みはするけれども、ここぞという時に使えばコスト以上の恩恵をもたらしてくれる絶妙さが本作のスパイスとして機能している印象です。

 オープンワールドRPGで、日々の食事や気温の変化を意識するサバイバル要素もあり、素材を集めて装備や消耗品を作るというクラフト要素もあり。しかも戦闘はスタミナの管理が重要なアクションと、色々な要素がてんこ盛り。

 いろいろと意図的に不便になっている面があり、それがゲーム自体の楽しさにつながっているアクの強さはありますがオープンワールドRPGが好きならきっと満足できるタイトルになるでしょう。

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