2020年8月27日に日本ファルコムより発売されるプレイステーション4用ソフト『英雄伝説 創の軌跡』(以下『創の軌跡』)。これまで、リベール王国が舞台の『空の軌跡』シリーズ、クロスベル自治州が舞台の『零の軌跡』と『碧の軌跡』、エレボニア帝国が舞台の『閃の軌跡』シリーズと、『創の軌跡』を含め16年間10作品にわたってくり広げられてきた西ゼムリア大陸での物語。本作は、その集大成にして、『軌跡』シリーズ全体の後半戦への入り口という位置付けのものとなっている。

 本記事では、担当ライター、ギャルソン屋城による本作のレビューをお届けする。

『英雄伝説 創の軌跡』レビュー。新システムで快適にプレイできるシリーズ集大成! 伏線もバッチリ回収でクリアー後もスッキリ!_01
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今回も“ストーリーRPG”の看板に偽りなし

 『創の軌跡』は、日本ファルコムが誇る人気RPG『軌跡』シリーズの最新作。このシリーズには“ストーリーRPG”というジャンル名が冠されており、その名の通りストーリー面に大きな力が注ぎ込まれた作品となっている。

 ここでさっそく「どんな作品でも、ストーリーに力を入れていないなんてことはないだろう」とツッコミが入るかもしれない。それはその通り。しかし、『軌跡』シリーズの魅力は、“他に例を見ない規模の群像劇”が味わえることにある。主人公とその周辺だけを描くのではなく、ライバルたち、さらには本編には直接関わってくることのない街の住人たちさえも、本編、クエストでのサブストーリー、さらには何気ない街での会話などを通じて、細かく描写しているのだ。

 いたるところに用意されたそれらの物語に触れていくにつれ、いつのまにか『軌跡』の世界観の虜になってしまう。なるほど、たしかにこれは“ストーリーRPG”なのである。

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 そして本作では、とくに多くの人が気になっていたであろう“クロスベル再独立”を中心に、これまでの『軌跡』シリーズの“その後”が描かれていく。シリーズ作品を遊んできた人にとっては、残されてきたさまざまな“宿題”も回収されるので、スッキリした気分で2020年の秋冬を迎えられることだろう。

 さらに今回は3人の主人公を切り替えながら、それぞれのストーリーを進めていく“クロスストーリー”システムという新たな手法が採用されている。これは、1本のストーリーを3つの視点から描く……というよりも、3本の独立したストーリーがときどき交錯しながら最終的に1本に収束していくという形になっている。

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 注目は新主人公《C》のルート。『軌跡』シリーズのお約束である“ヒーロー”とはかけ離れたノリのメンバーと、そのやり取りが楽しめる。むしろ“悪役”のような行動ばかりの《C》ルートは、いい意味で『軌跡』ぽくないところばかりで、シリーズユーザーにとってはとくに新鮮に感じるはずだ。

 道中には、《C》一行がリィンたちとやり合う場面が登場する。《C》一行を操ってリィンたちと戦い、その後は反対にリィンたちを操って《C》一行と戦う……という、これまでになかったおもしろい演出も。直前まで自分で操作しているから手の内はわかっているはずなのに、敵として戦うと意外に虚を突かれることが多いので気を付けてほしい。

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 もちろん、本編外のストーリーも相変わらずの充実振りである。今回は本編攻略中の“クエスト”がなくなり、サブストーリーは後述する大規模やり込みダンジョン“真・夢幻回廊”内の“エピソード”に集約されているのだが、その質、量がとんでもない。

 エピソードでは、特定のキャラクター(複数名のことも)にスポットを当てたショートストーリーが楽しめるようになっている。道中バトルが発生するものもあるが、いずれも数十分程度でクリアー可能だ。おもしろいのがその人選で、シリーズのメインキャラクターだけでなく、ゲテモノ料理で名を馳せたトールズ第II分校のフレディや、オリヴァルト皇子の終生のライバル“怪盗B”など、名物サブキャラクターにもスポットが!

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 また、ただのサブストーリーと思いきや、今後のヒントになるような思わせぶりな情報も多数盛り込まれており、本編以上にテキストを読む際に気が抜けない内容となっている。なお、エピソードは本編を進めても真・夢幻回廊に行けるタイミングならいつでも閲覧可能。本編のカタを付けてからまとめて楽しむのもありかもしれない。

 街の人々との会話も、3つのルートごとに用意されているので、なかなかのボリューム。旧《VII組》のマキアスの幼なじみでクロスベルの百貨店の受付嬢になったパティリーや、釣公師団の面々、アパルトメントの住人たちなど、気になる“その後”も描かれており、本作でも“寄り道が楽しすぎて本編がなかなか進められない病”にかかるプレイヤーが続出しそうだ。

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便利すぎる新要素にハマるバトル

 先に“西ゼムリア大陸編”の集大成的作品と『創の軌跡』を評したが、集大成なのはストーリーだけではない。バトルもさらに進化しているのだ。

 シリーズ伝統の“ATバトル”の正統進化とも言える今回のバトル。行動順の調整が戦局を大きく左右する独特の戦術性はそのままに、ふたつの大きな要素が加わっている。

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 ひとつが新コマンド“ヴァリアントレイジ”。パーティーが5人以上(Extra枠含む)になると発動できる、強力な全体攻撃・回復技で、従来のリンクアタック(連携攻撃)“ラッシュ”、“バースト”よりも強力で、なおかつ使いやすいという驚きの新要素である。

 用途に応じてアタック(物理攻撃)、アーツ(魔法攻撃)、ヒール(回復)の3種類を使い分けることができる。さらにそれぞれの発動と同時にCPやBPといった、従来では枯渇しがちになっていたものも回復できることに加え、発動に必要な要素が、道中のオブジェを破壊することで簡単に補充できる“AP”であることが大きい。あまりに便利で、ゲーム後半にはヴァリアントレイジ依存症になってしまったほど。ただし、少人数で挑むヴァリアントレイジが発動できないイベント戦闘では、何度も「なんで発動できないのぉぉぉぉ……!」と絶叫した(笑)。

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 そしてもうひとつがATボーナスに追加された“ZERO CRAFT”。これはあらゆるクラフト、SクラフトがCP消費ゼロで使えるというもので、R1ボタン+方向キーでの割り込み発動でもゼロになる。バトルにのめり込んでいると見逃しがちだが、ものすごく便利な新要素。その他のATボーナスも“HELP”の“リスト”から確認できるので、シリーズプレイヤーもチェックしておくといい。

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 敵がいやらしい行動をしてくるようになったり、HPや攻撃力が上がっているなど、バトルの全体的な難易度は上がっているようだが、これらの新要素を活用することでそれもグッと下げられる。ほかにも装備品やクオーツの自動装備などもできるようになり、プレイのしやすさは前作よりもかなり良化した印象。

やり込み要素を集約したダンジョン“真・夢幻回廊”

 『軌跡』シリーズの魅力といえば、忘れてはならないのが“やり込み要素”の豊富さ。『創の軌跡』でもアイテム収集や各種ノート埋めにミニゲームなど、シリーズおなじみのものはほとんど継承されており、その量はとんでもないことになっている。

 中でも最大のものが、やり込みダンジョンの真・夢幻回廊。複数の階層から成るランダム生成の広大なダンジョンで、アイテム収集やレベル上げなどの用途のほか、ここで手に入る“封印石”や“幻夢の欠片”を使って、本編でも役立つ攻略要素や前述したエピソード、ミニゲームの解放を行うことができる。

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 ダンジョンの前には“創まりの円庭”という、いわゆるロビーのようなものがあり、そこではショップを利用したり、その時点で本編に登場しているプレイアブルキャラクター全員(進行によって一部除く)との会話も楽しめる。中にはミニゲーム“ヴァンテージ・マスターズ(VM)”で対戦できるキャラクターも。

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 なお、ダンジョンに挑むパーティーには、創まりの円庭にいるすべてのキャラクターから編成できる。ダンジョンにはさまざまなギミックが用意されており、敵を掃討したり、宝箱を回収したりしながらそれらを突破し、最奥にいる強敵を倒すのが目的だ。宝箱からは強力な装備品、クオーツのほか、使うと大量の経験値をゲットしたり、各種能力値を上げられる“雫”系のアイテムも入っているため、何回か挑戦をくり返せばあっという間にパーティーを強化可能。

 本作では、やり込み要素の多くが真・夢幻回廊に集約されたことで、本編攻略中にやらなければならない“時期限定”のものが少なくなっており、やり込みも非常にやりやすくなっている。“隠し”もあまりないので、自力でがんばりたい人にはいい環境なのではないだろうか。

ストーリーだけじゃない、遊びやすさの追求

 もうひとつ、注目ポイントを挙げておきたい。それは“テンポのよさ”である。

 本作では、『閃の軌跡I:改』などに搭載されている“高速スキップモード”を最初から搭載している。これは、ゲーム中のさまざまな要素が倍速になるというもので(もちろん、ボイスは等倍だ)、とくにマップ移動やバトルがサクサク進められるようになる。マップ移動ではダッシュも倍速になり、周囲の景色がボヤけて見えるくらいの高速移動に(笑)。

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 バトルでは前述のヴァリアントレイジを多用してBP、CPを回復しながら戦えば、つねに高火力の攻撃が可能に。結果としてバトル時間も短くなり、テンポよく進められることになる。あるとないとで戦いやすさが大きく変わってくるので、使えるようになったらすぐにでも使ってみてほしい。

 シナリオ面でもかなりテンポアップが感じられる。クロスストーリーの導入でルートが3つになったぶん、それぞれのボリュームがかなり抑えられているのだ。やり込み要素が真・夢幻回廊にまとめられたこともあって、本編攻略は街の住人たちに話し掛ける以外はじつにサクサク進む。やり込み要素はやり込み要素で、本編は本編でそれぞれ集中して臨みたいというプレイヤーにとっては、すごく遊びやすいだろう。

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 ストーリーRPGとしてのおもしろさはそのままに、メリハリの効いたシステムを導入して遊びやすさも大幅にアップさせた『創の軌跡』。筆者は本編クリアーに約50時間を費やしたが、まだまだ遊べる要素は大量に残っている。後日配信されるという追加要素も楽しみにしつつ、まだまだ続くコロナ禍により自宅で過ごす時間を本作とともに有意義にしていきたい。

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