2020年2月13日に発売されたNintendo Switch用ソフト『初音ミク Project DIVA MEGA39's』。セガゲームスのリズムゲーム『初音ミク Project DIVA』シリーズの最新作となる同作には、シリーズと初音ミクの歴史を彩ってきた101曲が収録されている。

 なお101曲のうち、10曲はシリーズ初収録となる楽曲だ。今回はその中から、主題歌『Catch the Wave』を手掛けたアーティスト kz(livetune)氏と、ライブなどでも人気の楽曲『テオ』を手掛けた音楽ユニットOmoi(Sakurai氏、Kimura氏)のインタビューをお届け。楽曲制作時の思い出や、『初音ミク Project DIVA MEGA39's』のPVへの感想などをうかがった。

kz(livetune)

アニメソングやゲーム音楽などを多数手掛けるクリエイター。livetune名義では、Google ChromeのCM曲として知られる『Tell Your World』など多数の初音ミク楽曲を生みだしている。

Sakurai

男女ふたり組のVOCALOID音楽ユニットOmoiの作詞/調整/ドラムを担当。

Kimura

音楽ユニットOmoiのシンセサイザー/キーボードを担当。OmoiはKimura氏のシンセサイザーを主軸に、ロックサウンドを展開している。

kz(livetune)

――『Catch the Wave』はどのようなコンセプトで作ったのですか?

kz今回はシリーズ10周年作品ということ、そして初のNintendo Switchというプラットフォームでのリリースということで、ドラマチックさよりも、日常に寄り添うような気軽な楽曲にしようと作り始めました。歌詞についてもいままでの総括にするのではなく、10年という節目を迎えつつも、作り手もプレイヤーも自然と世代を交代していって受け継がれるシリーズになってほしいな、という目線で書かせていただきました。

――『DECORATOR』(2014年)以来のテーマソング担当となりますが、やはり楽曲制作時はプレッシャーを感じましたか?

kzプレッシャーというよりも、どういうコンセプトで作ろうかというところでちょっと迷いはしました。最近の曲が重めというか感情デカめの曲が多かったので、そこからは離れたかったなと。テーマソングというと風呂敷広めの曲にしがちですが、「こういう曲があってもいいんじゃないかな」となってからはそこそこ早かった気がします。

――久しぶりにVOCALOIDソフトに触れてみて、いかがでしたか?

kz相変わらず打ち込みかたを微妙に忘れてるので勘を取り戻しながらやってましたね……。その間に中国語の楽曲のエディットとかはしてたんですが、それはまた全然違うベクトルなので日本語は久しぶりの作業でした。ソフトは『初音ミク V4X』を使っていて、昔に比べたら格段にやりやすくなってるのでありがたい限りです。

――『Catch the Wave』発表後、kzさんのもとには、どのような反響が届きましたか?

kzYouTubeのコメントなどを見る限りですが、変わらず海外の方々も楽しんでくれているみたいでうれしいですね。サウンド自体はFuture Bassを下地にしつつ、いろいろなものを混ぜ込んでいる曲になるので、親しみやすいというのはあるかもしれないです。あとシンプルに明るい曲は久しぶりだったせいか、昔を思い出すようなコメントも見かけた気がします。

――今回のオープニングムービーとリズムゲームPVは、ミクが世界を巡る内容になっています。ご覧になって、いかがでしたか?

kzめちゃくちゃポップで気に入ってます。色の使いかたやテンポ感も洒落てるし、いままでとコンセプトというか世界観がガラッと変わってるのもいいですね。リリースされてからこれまで、世界中でライブをやってきたいまだからこそ表現できることというか。ゲームPVのほうも、SnapとかWater Dropの音に合わせてバッチリ音ハメがあったりして最高でした。自撮り棒を持ったりと、全体的に浮かれてる感じがすごい好きです。

『初音ミク Project DIVA MEGA39's』アーティストインタビュー。主題歌担当のkz(livetune)、『テオ』を手掛けたOmoiが想いを語る_02

――モジュール“Catch the Wave”デザイン担当のLAMさんとkzさんがタッグを組むのは初かと思いますが、出来上がったデザインを見て、どう感じましたか?

kzLAMさんとは前々から交流があったんですが、サウンド的にも絶対ハマりそうだなーと思って初めてオファーさせていただきました。ビビッドな衣装が来るだろうなとは思ってましたが、ルーズソックスをこのテイストにブチ込んでくるのはさすがでした。モデル自体も前髪ぱっつんの時点で優勝なんですが、LAMさんならではの眼力の強さもちゃんとあって、個性の強さとかわいさが両立してるモジュールだと思います。

『初音ミク Project DIVA MEGA39's』アーティストインタビュー。主題歌担当のkz(livetune)、『テオ』を手掛けたOmoiが想いを語る_01

――kzさんはゲーム好きとしても知られていますが、ゲームファンの視点から見た、Nintendo Switchというハードの魅力は?

kzボリュームがあるゲームを、いつでも気軽に起動できて持ち歩けてテレビにも映せるということのすごさは、使ってみて初めて実感できるものだと思います。短時間での起動がこれほどゲームを身近にするんだと最初驚きました。このサイズで大作が遊べるのもすごいんですが、それ以上に、要求スペックが低くコントローラーでの操作がメインのインディー作品との相性は最高じゃないでしょうか。いろいろなゲームをやりたくなるハードです。

Omoi

――『初音ミク Project DIVA MEGA39's』への楽曲収録が決まったときのお気持ちを教えてください。

Sakurai同じセガさんの音楽ゲームである『チュウニズム』などには、すでに楽曲を収録していただいていましたが、やはり『初音ミク Project DIVA』は初音ミクが主役のゲームですので、声をかけていただけて、とてもうれしかったです。とくに今回、専用の映像まで制作していただけたのは、ほかのゲームではなかった経験で、制作チームの皆さんが1曲1曲に込める情熱を感じました。

――『テオ』はOmoi活動開始から約4年後の2017年7月の発表曲で、初のミリオン再生達成楽曲となります。ぜひ、楽曲制作当時の思い出を教えてください。

Sakurai『テオ』は過去発表した楽曲の中でも、もっとも自信の持てなかった作品でした。とにかくサビがあまりにも長く続くので、聴き手としては疲れてしまうんじゃないか、というのが発表前に思っていたことです。この曲は、Omoiで初めて映像も自分たちだけで制作したのですが、それは単に「こんな曲の映像を他人にお願いするのは申し訳ない」と思っていたからです。その予想を覆してヒットしてしまったときは少し複雑でしたが、ほかの方に褒められるうちに「めっちゃいい曲だな」となっていきました。

――『テオ』のリズムゲームPVは、光の使いかたが非常に印象的です。このPVに関し、何かリクエストしたことはありますか?

Kimura映像についてはあまりこちらから細かい指示をするのも野暮かなと思ったので、シンプルに元動画の感じで、とだけお願いしました。

――『テオ』のリズムゲームPV完成版をご覧になったときの感想は?

Kimura暗い空間に幾何学的な光が差していて、後半に進むにつれて鮮やかになるイメージは、歌詞とサウンドの世界観どちらにもよくマッチしていると思います。PV完成版では、最後にもうひとりのミクちゃんが上から降りてきて消える演出がありますが、監修途中の段階ではそのミクちゃんにつかまれて上に引っ張り上げられていくシーンがあって、あれはあれでおもしろかったです(笑)。

『初音ミク Project DIVA MEGA39's』アーティストインタビュー。主題歌担当のkz(livetune)、『テオ』を手掛けたOmoiが想いを語る_03
『初音ミク Project DIVA MEGA39's』アーティストインタビュー。主題歌担当のkz(livetune)、『テオ』を手掛けたOmoiが想いを語る_04

――『初音ミク Project DIVA』シリーズの魅力は、どんなところにあると思いますか?

Sakuraiもう何年も前ですが、初期のアーケード版をプレイしたことがあります。譜面を追いつつ映像も同時に楽しめるような画面配置は当時の音ゲーとしては珍しく、おもしろいなと感じました。また『初音ミク Project DIVA』シリーズは、一般的な音楽ゲームとは違って、“初音ミク”という巨大なカルチャーに内包されたコンテンツであるという点も独特だと思います。それだけに強い思い入れがある方は多いでしょうし、今回の新作発売はとても意義深いことだと思います。

――これから『初音ミク Project DIVA MEGA39's』をプレイする方に、どんなところを楽しんでほしいですか?

Sakurai『テオ』は最近の公式ライブイベントでも披露されることが多い楽曲ですが、改めてゲームで遊んでみるとライブとは違う発見があったり、またその逆もあったりと、より多角的に楽曲を楽しんでいただけるんじゃないかなと思っています。

Kimura曲全体を通して8分音符中心のストレートな縦ノリで構成されているので、リズム的にはシンプルだと思います。音ゲーあるあるですが、EASYやNORMALで音符が減ると、逆にノるのが難しくなるパターンかも知れません(笑)。