開発チームのメンバーをゲストに招いて制作工程の解説や開発秘話などが語られる、開発パネル。今回は、キャラクターコンセプトアーティストの生江亜由美氏が登壇。プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏とともに、『FFXIV』のキャラクターや装備がどのように作られていくのかを解説していった。

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プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏(左)と、キャラクターコンセプトアーティストの生江亜由美氏(右)。
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 生江氏は、『FFXII』の2Dアートを担当し、オープニングムービーでアーシェが着ているウエディングドレスや、エンディングのパンネロの踊り子の衣装などを手掛けた。『FFXII』の後に『FFXI』チームに異動し、コルセアや青魔道士、からくり士、学者、踊り子のアーティファクトのデザインなどを担当。『FFXIV』の立ち上げとともに兼務で『FFXIV』チームに配属。

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生江氏は『旧FFXIV』からいまに至るまで、さまざまなキャラクターデザインを手掛けてきた。その代表的なキャラクターたちがコチラ。主要なNPCばかり!

月下美人のキーワードからヨツユが作られた!

 まず最初に、『紅蓮のリベレーター』で登場したNPCのヨツユを例にして、NPCがどのように作られていくのかが解説された。

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 アートセクションは、開発の早い段階から制作が始まる。そのため、シナリオ上でのセリフも決まっていない、おおまかな設定状態でアートセクションに発注が来るのだという。

 ヨツユの場合は、夜露を連想させる名前の響きなどから、イメージがしやすかったとか。さらに、ラフ作成のためのモチーフを考えるという工程に。ヨツユのラフを作る際は、“月”や“夜露”、“アゲハ蝶”など、さまざまなものがモチーフとして考えられたが、とくにひと晩だけ花を咲かせる“月下美人”にはこだわったと生江氏は語った。

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シナリオ上でのヨツユのイメージにぴったりの月下美人だが、ラフの作成段階ではシナリオを把握していないので、後ほど物語を見て感慨深い気持ちになったという。

 モチーフとなるキーワードが決まると、作画作業に入る。そして、最初に出てきたのが下の4つ。日本の振袖を表現したかったという生江氏だが、「MMOの中でそれを表現するのは難しい。理想を言えばAのデザインにしたかったというが、実現が難しいということで、B、C、Dのような袖の内側にスリットが入っていて、後ろに広がりを見せるようなデザインにした」とコメント。なお、NPCはプレイヤーキャラクターと違い、ある程度動きを制限できるので、なるべく激しい動きをしないという条件のもと、B、C、Dのような袖の形にしたという。

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セクシーに足を出したB、レザーの膝立てがあるC、露出が多すぎるとNGになった場合のDと、さまざまなタイプが用意された。

 ほかのキャラクターとの差別化を図るため、顔のバリエーションも複数作成。この中から吉田氏が選んだのはD。その際、「ヨツユは(自分自身のことを)そのままで美しいと思っているから、髪の毛をお団子にしたり、ちょっとしたアレンジもしないようなキャラクターなんだよ」と吉田氏から力説され、よりいっそうのイメージが固まった、と生江氏は語った。

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 また、ヨツユの持つキセルは、既存のNPCが持っている短いタイプのキセルでいいと企画チームから言われたという。しかし、生江氏に「それではどうしても様にならない」という思いがあったため、3Dチームに相談して、そこまでたいへんな作業ではないということで、いまの長めのキセルが出来上がったのだとか。キャラクターがさりげなく持っているものでも、開発チーム内ではそういった話し合いが行われている。そういったこだわりや調整を経て、ヨツユが完成へと近づいていくことに。

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 ある程度の動きに制約があるNPCのヨツユでさえ、3Dチームから、「裾をマーメイドラインのようにして可動域を広げないと実現できない」とアドバイスをもらって現在の形になっている。そのようなやり取りを経て、日本の着物をベースに西洋のドレスのようなシルエットに仕上がった。

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 そしてここから、ラフをもう一段わかりやすくバランス調整をしたり、構造の整理をしたりするブラッシュアップの工程に。3Dモデルチームは、2Dで描かれたものを3次元で再現する。そのため、“厚みがどれぐらいあるのか”、“どのような素材が使われているか”、“どこが重なっているか”などを、しっかりと絵で示さないとモデルに起こせないのだとか。整合性を整えるためにも、ブラッシュアップの作業が行われるのだ。

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