2018年11月16日〜11月17日(現地時間)の2日間、アメリカ・ラスベガスで開催される『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の大規模ファンイベント“ファンフェスティバル 2018 in Las Vegas”。初日の日程を終えた直後、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏と、リードバトルシステムデザイナーの横澤剛志氏にインタビューを実施。短い時間ではあったが、初日を終えての感想を聞くことができた。

吉田直樹氏(よしだなおき)

スクウェア・エニックス 開発担当執行役員 第5ビジネスディビジョン・ディビジョンエグゼクティブ。『ドラゴンクエスト』初のアーケードタイトルである『ドラゴンクエストモンスターバトルロード』シリーズのゲームデザインとディレクションを担当。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。

横澤剛志氏(よこざわつよし)

『FFXIV』のリードバトルシステムデザイナー。バトルの計算式といった『FFXIV』の根幹とも言える部分の設計を始め、大迷宮バハムート:邂逅編のボスデザインをすべて担当。絶アルテマウェポン破壊作戦の担当デザイナーでもある。

──いままで何度となく話題にはなっていましたが、ついに公式に5.0(『漆黒のヴィランズ』)を発表できましたね。

吉田トレーラーを観ていただいて感じてもらえるといいんですけど、僕がこれまでのやりかたに飽きてきたということもあって、作りを意図的に変えています。いいとこ取りの、まさに映画のティザーのように作って、かつ音楽の方向性も王道のクラシックではなく、シチュエーションに合わせて最後のほうに山を持っていくという、かなり挑戦的なことをいろいろやっています。ゲーム自体も新しい挑戦をしているので、そのへんがトレーラーからうまく伝わってくれればいいなと。幸い、祖堅(祖堅正慶氏。『FFXIV』のサウンドディレクター)がビビっていたほどのネガティブな反応はなく、わりとすんなり受け入れていただけたかなとは思っているので、まずはよかったなというのが感想です。

──祖堅さんはそんなに懸念されていたんですね。ギターが入って、ロック調なあたりですか?

吉田そうですね。いきなりギターから入るのは『FF』らしくないというか。そのへんは、祖堅も「大丈夫かなコレ……」と本気でビビっていたので。

──これまでのハリウッド調から、ヨーロッパの映画のようなテーマ性が前面に出ている感じでしたね。

吉田そうですね。ティザーだけでは何が起きているかよくわからないけど、「なんかすごそう!」という感じは狙えたかなとは思っています。

──今後のファンフェスで、ティザーが追加されていく形ですか?

吉田ファンフェスごとにシーンを追加したり、入れ替えたりして、だんだんパズルが組み上がっていく感じになればなとは思っています。まずは、今回のトレーラーであれこれ想像していただけるといいかなと。

──『漆黒のヴィランズ』の主人公キャラは暗黒騎士ですか?

吉田そうですね。主人公ジョブは暗黒騎士になります。基調講演で言うのを忘れましたね(笑)。「光の戦士が闇の戦士になる」までは言ったのですが、「光の戦士のメインジョブは暗黒騎士です」と言うのは忘れたなと(笑)。

編注:インタビュー中では「光の戦士のメインジョブ」と発言していましたが、正確には「闇の戦士のメインジョブ」と思われます。

──『紅蓮のリベレーター』を発表したときのファンフェスと比べて、最初の開催地から発表の内容が多かった印象ですね。

吉田そこはやはり、観ている方が飽きないように発表の順番を入れ替えてみたり、一歩踏み込んだ発表内容にする箇所を作ったりとか、工夫はしています。でも、どうしても最初のファンフェスの時点では、開発中のものが多すぎて素材が出しづらいので、どうやって“具体性”と“演出での盛り上げ”のバランスを取るかは気をつけました。結果、皆さんに「発表内容が多かった」と感じていただけたのであれば、うまくいったのかなと。

──そういう意味では、今日まさか青魔道士が発表されるとは思いませんでした。

吉田ここは僕も「発表されるとは思わなかった!」と言ったほうがいいのかな(笑)。あれだけ解説用のスライドを用意しておいて、「そんなわけないだろ!」という話なんですが(笑)。

──ちゃんと情報が用意されていると(笑)。

吉田あれは社長(松田洋祐氏)に絶妙な演技をしていただいて(笑)。あそこを最後の山にしようとは思っていたので。実際、パッチ4.4、4.5を目指してかなり長期計画で作ってきて、うまく間に合わせてくれました。

──その青魔道士を手掛けた横澤さんですが、国内のイベントでも顔出ししたことがなかったにもかかわらず、いきなりファンフェスの開発パネルに登場ということで、いかがでしたか?

横澤生の反応はいままで見たことがなかったのですが、想像以上のすごい反響があったので、楽しかったですね。

──緊張はしませんでしたか?

横澤自分はしなかったですね。

──かなりステージ慣れしていそうな雰囲気があったのですが。

横澤あれは、“吉田に説明をする”という経験が貯まっていくと、慣れていくんです(笑)。

──今日の開発パネルでは、吉田さんが「開発チームには変わった奴が多い」とおっしゃっていましたが、確かに横澤さんはエキセントリックな方だなあと(笑)。あれは演出上のものなのか、それともふだんからあんな感じなのでしょうか?

吉田今日はあえて演出的にしたところは間違いなくありましたね。でも、本質は中二病なので。

横澤そういう部分は表に出す必要がないので、今日の開発パネルでお話ししたような内容は、社内でしたことはありません。今回は“出さないといけなかった”ので、出したと(笑)。

吉田そういう意味では素に近いです(笑)。開発にいるときのほうが出さない。あんな脳内設定なんていちいち話さないですからね。「タイタンが須藤(須藤賢次氏。『FFXIV』のバトルコンテンツデザイナー)」とか、あんなの初耳ですもん。

──あれは本当なんですか?(笑)

横澤そう思って作りました(笑)。

吉田横澤は何から何まで計算して作るタイプで、“『FFXIV』チームに横澤がいなかったら、いまの『FFXIV』はこうなっていない”というくらい、重要な部分を新生から作ってきています。

──以前から、「バトルシステムの根幹や、大迷宮バハムート:邂逅編のボスを全部ひとりで作った天才がいる」といったことをインタビューでしばしば耳にしてきましたが、あえて表には出さないのだろうと思っていました。それが、今回登場するということで、ちょっと驚いたというか……

吉田基本的に、仕事は“ゲームを作ること”であって、表に出ることではないので、そこは本人の意思を最大に尊重します。あまり気が進まないなら、代わりに僕が話すから、ということでやってきたのですが、「そろそろどう?」と横澤に聞いたら、「ちょっと考えます」と言った後、意外とすぐに「じゃあ行きます」という感じだったので、「よしよし」と(笑)。あと、やっぱり僕としては、これだけコアで『FFXIV』を支えてくれている人間に、お客様……とくに北米のストレートな興奮を見てほしかったんです。今後のためにも。みんな、子どもみたいだよね(笑)。

横澤そうですね。笑顔がかわいいですね(笑)。

──皆さんの反応を見ていてどうでしたか?

横澤いっしょに熱くなれたので、やっぱりそういうのは大事だなという気持ちになりましたね。ずっと拒否してきましたけど(笑)。

──つぎのパリでのファンフェスまであと100日以上ありますが、それまで『漆黒のヴィランズ』の情報は出ないのでしょうか?

吉田ないですね。でも、パッチ4.5にもいろいろ隠されているので。

──毎回思うんですが、パッチの作業と並行しながら、よくぞ拡張パッケージの準備をしたという感じですね。バトルのメンテナンスなどは想像がつきますが、ワールド間テレポやフェイスなど、あんな大掛かりなシステムを水面下で企画していたとは。

吉田フェイスも半分は横澤ですね。新しいシステムはたいがい僕が無茶振りをして、横澤がしかたなく請けるというパターン……。

横澤たいへんなんです(苦笑)。

──そんな最中に絶アルテマウェポン破壊作戦も作り……(笑)。

吉田そりゃ、しばらく“絶”はやりたくなくなりますよね。横澤の仕事は、1パッチ単位というよりは、何パッチかかけて設計するものが多いです。あと、見積もりの精度がとにかく高くて、プログラマーに対してもデザイナーに対しても発注がものすごく正確です。スケジュール(コスト感)がもっとも読みやすいデザイナーだと思います。

──だからこそ、青魔道士がパッチ4.5に間に合うと。

吉田スタッフからは「もったいないから『漆黒のヴィランズ』に合わせればいいのに」なんて言われたりもしましたけどね(笑)。

──最後に、ファンフェス1日目を終えた感想で締めていただけますか。

横澤開発パネルでは、当初の予定よりもけっこう好きなことを言ってしまったので、いろいろといまだに不安だったりします(笑)。

──台本はなかったのですか?

横澤ある程度はありましたけど、それ以上のことを……(笑)。

──社内的に心配と?

横澤社内も社外もです(苦笑)。どんな反応になっているのかと……。

吉田ほら、僕がちょっと言いすぎちゃう気持ちわかるよね?(笑)

横澤言いたくなっちゃいますね。喜んでくれると思って(笑)。

吉田そうそうそう。

横澤明日もプロデューサーレターLIVEで新情報を出していきますので、よろしくお願いします。

吉田僕は何より基調講演が最大の仕事なので、基調講演がスムーズに終えられたのが一番だったかなと思います。さすがにステージに立ったらもうちょっと緊張するかなと思っていたんですが、場慣れって怖いなと(笑)。ファンフェスでもわりと平気か……というのが自分自身、ちょっと新鮮でした。今日はかなり余裕のあるプレゼンテーションができたような気がしていて、結果、オーディエンスの皆さんと対話をするかのように『漆黒のヴィランズ』の情報を出していけたのはとても新鮮でしたし、“いっしょに盛り上がる”ということがファンフェスのスタートとして体現できたので、この勢いを使って明日のパッチ4.5のコンテンツを紹介していくときにも、また驚いてもらえるようにしていきたいなと思います。まだ1日残っているので、がんばります。

『FFXIV』ファンフェス初日を終えたばかりの吉田Pと横澤氏にインタビュー。緊張知らずのふたりの秘密に迫る!_01