以前本誌で紹介した、施設アトラクション型のVR体験を提供する“The VOID”を覚えている人はいるだろうか? ユタ州にある本拠地でのβ公開が決まったという記事を掲載したのは2015年のこと。以降VOIDは提携先を増やし、アメリカ各地の施設にVOID式のVR体験を提供してきた。

 そして今回、Oculus VRの技術カンファレンス“Oculus Connect 5”会場で出張版を体験できたので、その驚愕の内容をご紹介しよう。プレイできたのは、ルーカスフィルム傘下ILMxLABと共同開発した、映画『スター・ウォーズ』ネタの『Star Wars: Secrets of the Empire』。

 THE VOIDのVR体験の特徴は、特製のVRヘッドマウントディスプレイと処理系と震動表現用のベストを装着し、ギミックが仕込まれまくったプレイエリア内を探検していく全身体験であるということ。

 VR空間内で通路を歩いていく時、それは本当に通路を歩いているし、レバーを引かなければいけない時、そこには本当にレバーが仕込まれていて、自分の手で作動させることができる(手の検出自体はヘッドセットにマウントしたLeap Motionを使用しているようで、時々ダルシムのように手が伸びるものの、素手でも手の状態がVRの視界にもちゃんと表示される)。

VR空間を歩き回り、熱や地響きまで感じるVRアトラクション“THE VOID”を体験。俺は確かに帝国軍基地に潜入し、ベイダー卿の襲撃から生還した_01

 ストーリー的にはストーム・トルーパーに扮装して溶岩が煮えたぎる惑星ムスタファーの帝国軍基地で極秘情報を奪うという潜入ミッションを描いており、前説のビデオにはスピンオフ映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に出てきたキャシアン・アンドーが登場(演じるのは映画と同じくディエゴ・ルナ)。彼のその後の運命を思いつつ「イエス・サー!」と出撃準備に移る。

 そして装備を着用していくわけだが、ベストはなかなかずっしりと重いものの、バンドを締めてカッチリと止められるようになっており、体型の差などもある程度対応できる模様(記者のグループにはやや小柄な女性もいた)。ヘッドセットを被って待機ルームに行けば準備完了だ。

VR空間を歩き回り、熱や地響きまで感じるVRアトラクション“THE VOID”を体験。俺は確かに帝国軍基地に潜入し、ベイダー卿の襲撃から生還した_02
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 そして係員の合図に合わせてバイザーっぽくフリップできるヘッドマウントディスプレイを下ろすと、そこはもう潜入部隊を乗せた宇宙船内。ここから先はあらゆるVR内の行動をすべて実際に行うことになる。

 ベンチに腰掛けてくれと言われてVR空間で見えるベンチに腰掛ければ、そこにはちゃんとベンチがあって座れるし、映画にも出てきたドロイド“K-2SO”がお見送りしてくれるシーンでは、そこに同じ形をした像が置かれていて、ちゃんと触ることができる。パネルを操作するシーンではそこにパネルがある。銃を手に取るシーンでは、そこに本当に銃型のプロップス(小道具)が置かれているのだ!

VR空間を歩き回り、熱や地響きまで感じるVRアトラクション“THE VOID”を体験。俺は確かに帝国軍基地に潜入し、ベイダー卿の襲撃から生還した_04

 実にうまいのはコースの設計で、恐らく限られた空間を最大限に活かすように通路や小部屋が置かれており、ちゃんとあっちこっち色んな方向に基地内を歩いている感じで、狭い所をぐるぐると回されているような気がしない。

 驚いたのは(案の定)偽装がバレてとっ捕まって基地に連行されていくくだりで、眼下にマグマがグツグツと煮えたぎっている場所を歩かされるシーンで熱まで感じること。多分そこの壁にヒーターか温風機を仕込んであるのだろう。火山地帯の匂いまで感じた気がするのはアロマの仕込みか、それとも幻か?

 こうなってくると没入感が一気に上がり、後半の戦闘では「フォースは我と共にあり」の精神で戦っていたものの、敵弾が当たってベストが振動すると一瞬冷や汗まで感じるヤバさ。思わず「ちくしょう撃たれた!」と(一応同行者の事を考えて英語で)叫んでしまった。

 そして最奥では、「コホー」という独特な呼吸音が先から聞こえてきたかと思えば、暗闇からゆっくりとダース・ベイダーが……。「撃て! 撃て!」とモブ兵士丸出しで叫ぶものの、当然弾は赤いライトセーバーの光跡とともに蹴散らされていく……。

 ラストで間一髪救出されて現実に帰ってきたのだが、現地価格で1回30ドル以上という値段分のものはあると感じた濃厚な体験だった。ロサンゼルス近郊やラスベガスなど全米8箇所で展開されているようなので、フォースに呼ばれた人はぜひトライしてみて欲しい次第だ。