ユービーアイソフトが2018年9月20日に発売するプレイステーション4用ソフト『F1 2018』の本物感はどのようなものなのか。本作の魅力と楽しさを、プロレーシングドライバーの宮田莉朋選手に聞いてみた。

『F1 2018』本作の持つ魅力と楽しさをプロドライバー・宮田選手に聞いてみた【インタビュー】_01

宮田莉朋

レーシングドライバー。さまざまなレースでタイトルを獲得する若きプロレーサー。前作『F1 2017』を自身のレースにおけるシミュレーションのツールとして使用したり、海外のモータースポーツにおけるesportsにも関心があり、さらにゲームも好きでよくプレイをしている。

−−プロのドライバーから見て、『F1 2018』はどのような作品ですか。率直な感想を聞かせてください。

宮田 『F1』シリーズは以前から遊んでいますが、毎年の進化を感じています。僕がレースで乗っているフォーミュラ3のマシンは、F1と同じフォーミュラカーで動きも似ているんですが、それをゲームで体験できるのは素晴らしいと思います。

−−今作のキャリアモードに搭載されているメディア対応はどのように感じられましたか?

宮田 メディア対応は、一般の方にさまざまな情報を伝える大切な手段になりますし、チームの方も見てくれるものですので、そういったレース外の対応ができるのはすごくおもしろいと思います。本物のレーサーなら、ゲームで先にメディアの受け答えをやっておいて、本物のレースで調子が悪かったときにゲームのような受け答えをしてみる、なんてこともできますからね(笑)。実際のレーサーはこういったメディア対応もしているんだということを知ってもらえるといいですね。

−−レースゲームは昔から遊ばれていたんですか。

宮田 プレイステーション2の頃から遊んでいました。基本的にクルマで走ることが大好きなので、現実ではカートで走って、家に帰ってきてからはレースゲームで走ってばかりいました。実際のレースは人間どうしの駆け引きになるので、「こいつならこんな動きをするはず」ってある程度の予想はできるんですが、ゲームのライバルカーはAI(人工知能)なので、何をしてくるかわかりにくいんですよね。でも、そういった予想外の出来事って現実世界でも起こりえるので、そういった対処を学ぶこともあります。

−−昔からゲームが好きで遊ばれていたんですね。でも、いまは忙しくてゲームで遊ぶ時間がなかなか取れないんじゃないですか?

宮田 僕の世代はゲーム好きが多いんですが、みんな遊ぶ時間が取れないって言いますよね。でも、本当に好きだったら時間は作れると思っています。僕はそんないいわけはしたくなかったので、PS4とモニターを内蔵できるゲーミングケースを入手しました。実際のレースでは土曜に予選、日曜に決勝があるんですが、土曜の開いてる時間に気持ちを高めるべくゲームをやって、いい走りをしてモチベーションをあげています。ゲームで調子がいいと、本番も気持ち良く走れて、調子が良くなることもありますからね。

※上記Twitterで紹介しているのが、宮田選手がレース参戦時にサーキットに胎動させているゲーミングケース。

ーー宮田選手にとって、ゲームはコンセントレーションを高めるツールにもなっているんですね。『F1 2018』で遊ぶ時は、どのチームで遊んでいるんですか?

宮田 やっぱり速いメルセデスと言いたいところですが、ザウバーで遊んでいます。これには理由があって、いきなり速いマシンに乗ると、何もしなくてもある程度速く走れてしまうからです。でも、少し下のマシンになると、何か試さないとチャンスが訪れません。それは現実のレースの世界でも同様で、厳しい状況のときはクルマのセットアップをしっかりと決め、さらにドライバーも120%を出し切らなければなりません。そういった努力がうまくいったときは達成感もありますし、その理由もしっかりと理解して、成長することができます。ですので、僕は少し遅めのチームを選んで、開発やセットアップを楽しみながら遊んでいます。

−−経験値を積み重ねて、より強い敵を倒す。まるでRPGのような感じですね(笑)。

宮田 そうやって下のチームから始めてステップアップしていくと、速いチームに合流したときに「もっと速くしよう」という気持ちにもなれますからね。

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−−ちなみに『F1 2018』を遊ぶとき、アシストのモードとAIのレベルはどのくらいにしていますか?

宮田 アシストは基本的にすべてオフにしています。ただ、始めてのサーキットを走る場合は、フリー走行時はレーシングラインを表示して、予選以降はオフにして、自分の感覚で走るようにしています。AIのレベルは116か117くらいです。この辺りのレベルだと、ある程度同じレベルで走ることができて、そこからセットアップを詰めていけば勝つことができたり、万一うまくいかなくても極端に遅れすぎることもない。そんな難度ですね。

−−収録コースの中で、鈴鹿は本物のコースも走られていると思いますが、ゲームと比べてみてどうですか?

宮田 厳密に言うと、縁石やコース幅に微妙な違いがあるところはあります。でも、路面からくる凸凹のフィードバックがすごくしっかり再現されているんですよね。その再現度がすごく印象深いです。また、F1とF3ではステアリングを切るタイミングやスロットルコントロールが違うとは思いますが、攻略法、走っているフィーリングなどはほとんどいっしょだと思います。

−−やはり、将来的はF1に乗って戦いたいですか?

宮田 僕はいま若手として走らせてもらっていますが、世界に挑戦したいという思いは持っています。当然、目標はF1です。ただ、現実のF1はお金に左右される面も大きくなってきています。僕はいまF3に乗っていますが、あとふたつクラスを上げればF1に乗れるという目標に切り替わった反面、そういった現実的な問題が見えてきていて、難しさも感じています。

−−F1の世界は巨大なお金が動いていますし、そもそもレーシングドライバーになるにはお金もかかりますからね。

宮田 レースってやってみたくても、金銭的に難しい人って多いですからね。でもいまは、F1のレースウィークにesportsのF1公式レースが行われているんですが、僕も日本代表のesportsのレーシングドライバーとしてやってみたらどうなるのかな……って興味津々なところもあります。ゲームでもF1と同じく世界を回って戦って、チャンピオンになって注目を集めることができる。これってすごくいいことだと思っています。

−−アメリカでは、FPSの大会のうまいプレイヤーを軍隊がスカウトするなんて話も聞きます。

宮田 esportsで活躍した選手を実際のF1に乗せることは難しいと思いますが、チームが使っているシミュレーターに乗ってもらって、マシン開発に協力してもらうことはできますからね。F1まで登りつめるのはすごく難しいですが、ゲームをがんばってF1の世界に行くことはできるんです。それってすごいことですよね。

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−−いまのF1には宮田選手と同年代のドライバーも多数参戦しています。彼らの活躍を見て刺激を受けますか?

宮田 若手で注目されているマックス・フェルスタッペンですが、彼はカートでチャンピオンになって、フォーミュラでも結果を残しています。でも、僕も同じように全日本のカートで最年少チャンピオンを獲得して、フォーミュラでも成績を残しています。国は違えど、同じような道を辿って結果を出しているので、絶対に世界でも通用すると思っています。

−−F1は久しく日本人ドライバーがいないので、ぜひF1に参戦して、かつてのようにF1を盛り上げてもらいたいですね。

宮田 いま、ホンダがそのようなプロジェクトに取り組んでいますが、欧州の選手ってメーカーを問わず、自分で道を切り開くのがうまいんですよね。自分も挑戦する気持ちを大切にしつつ、道を切り開いていきたいと思います。

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宮田莉朋選手・これまでの戦績(宮田莉朋 公式Webサイトより)
●2008年 - 東日本ジュニアコマー60エキスパートクラス(シリーズ3位)
●2009年 - 東日本ジュニア カデットクラス(シリーズチャンピオン)
●2010年 - NTCカップ Sクラス(シリーズ2位)
●2011年
- NTCカップ ジュニアMAXクラス(シリーズチャンピオン)
- ハルナカップ ジュニアMAXクラス(シリーズ2位)
●2012年 - 地方カート選手権 FS125(シリーズ2位)
●2013年 - 全日本カート選手権 KF2クラス(シリーズ2位)
●2014年 - 全日本カート選手権 KFクラス(シリーズチャンピオン)
●2015年
- 全日本カート選手権 KFクラス(シリーズ3位)
- FIA-F4 Japanese Championship(シリーズ15位)
●2016年
- 全日本カート選手権 KFクラス(シリーズチャンピオン)
- FIA F4 JAPANEPE CHANPIONSHIP(シリーズチャンピオン)
●2017年
- 全日本フォーミュラ3選手権(シリーズ4位)
- FIA F4 JAPANEPE CHANPIONSHIP(シリーズチャンピオン)

『F1 2018』本作の持つ魅力と楽しさをプロドライバー・宮田選手に聞いてみた【インタビュー】_05

発売日:2018年9月20日発売
プラットフォーム:プレイステーション4
価格:パッケージ版 7980円[税抜]/ダウンロード版 7100円[税抜]
プレイ人数:オフライン 1人/オンライン 2〜20人
CERO:A(全年齢対象)