世界中のゲームファンの心を揺さぶるインタラクティブなアドベンチャー作品を生み出してきたフランスのスタジオQuantic Dream。ファミ通ではQuantic Dreamへ訪問し、独占取材を決行。ファミ通.comで連日インタビュー記事を公開してきた。その番外編として、Quantic Dreamの最新作『Detroit: Become Human』(以下、『デトロイト』)から、少女アリスを守るべく逃避行を続けるアンドロイド、カーラを演じた声優の佐古真弓さんと、アリスを演じる声優の宇山玲加さんの対談をお届けする。アンドロイドと少女の愛を演じる中に、どんな思いがあったのだろうか。

『Detroit』インタビュー カーラとアリスが語らう。カーラ役・佐古真弓さん&アリス役・宇山玲加さん対談【Quantic Dream特集その10】_04

佐古真弓(さこ まゆみ)

東京都出身。舞台や海外ドラマ、映画の吹き替えなど、幅広く活躍している。吹き替えでは、スカーレット・ヨハンソンやジェシカ・チャステイン、フェリシティ・ジョーンズなどを担当。

宇山玲加(うやま れいか)

神奈川県出身。海外ドラマや映画吹き替えを中心に活動。代表作は映画『ナルニア国物語』シリーズのルーシー役、ドラマ『やりすぎ配信!ビザードバーク』ペイジ役など。

ここまで選択が“人間らしい”ゲームは初めて

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家事手伝いのために作られたアンドロイドのカーラ。

――初めに、ご自身が演じているキャラクターの第一印象をお聞かせください。

佐古 カーラを演じているヴァロリー・カリーさんは、以前、『ザ・フォロイング』という海外ドラマで吹き替えを担当させていただいたことがありますが、すごく透明感がある女優さんですよね。嫌味がないと言いますか、みんなが好きになってしまうような女優さんなので、子どもを守る役にはぴったりだなと思って。すんなりと役に入っていけました。

――主人公がアンドロイドという設定については、どう思われましたか?

佐古 メインキャラクターの3体は、それぞれが違ったタイプで、すごくおもしろいなと思いました。アンドロイドが1体だけではなく、メインキャラクターの多くがアンドロイドなのも、おもしろい設定だと思います。

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カーラのオーナーである失業者トッドの娘、アリス。

――アンドロイドであるカーラを演じるにあたって、人間を演じるときと、意識して変えたことはありますか?

佐古 いえ、ほとんど(人間を演じるときと)同じです。このゲームは、実写かと思うぐらい映像がキレイなので、感覚としては、ふだんの吹き替えの仕事とあまり変わらず……向こうの役者さんの演技に、すっと入れました。とくに、ゲームだからとか、アンドロイドだからとか、そういうことは意識しなかったですね。

――そんなカーラにとって守る対象のアリスを演じた宇山さんは、アリスにどのような印象を抱きましたか?

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アリスは、荒れるトッドから暴力を振るわれることも。

宇山 “守ってあげたくなるような、弱くて小さくて、いまにも潰れてしまいそうな女の子”という印象を最初は持ちました。ですが、物語が展開していくと、“強い芯のある子だな”というイメージに変化しました。カーラといっしょにいるうちに、彼女自身が成長していったのかなと感じています。

――アリスが置かれている状況は、人間である父親に疎まれ、アンドロイドであるカーラに守られるという複雑なものです。そんなアリスの役作りは、どのように行ったのですか?

宇山 アリス役が決まってからすぐに収録だったので、準備する時間が短かったのですが、だからこそ、毎回台本をいただくたびに、すごく新鮮な気持ちで演じられました。役を作り込むというより、収録現場でなるべく柔軟でいよう! という気持ちでいられたので、むしろよかったのかなと思います。

――現場では、どんな指示があったのでしょうか?

宇山 いえ、指示はあまりなくて。「こんなにも採用してもらえちゃうんだ!」と思うほど、自分の感情のままに、のびのびと演じさせていただきました。

――カーラとアリスの行く末は、プレイヤーの選択によって分岐しますが、異なるシーンを演じる際は、演技も使い分けたのでしょうか。

佐古 カーラの選択は、イエスかノーの2択ではないんですよね。3.5択みたいな……そういう意味ではすごく人間っぽいんです。「こういう道もあるかもしれないけど、いま選ぶ最善はこっち」、「悪いということはわかっているけど、でもこれを選ぶ」というように、正しい、正しくないで計れるものばかりでもない。罪悪感を持ちながら選択することもあります。そういった、選択肢ごとに揺れ動く人間の感情を意識しながら演じました。

――たとえば、カーラがあえて悪事に手を染める場面もありますが、「悪いことだとわかっている」という基本の気持ちは変わらないと。

佐古 「それは絶対に悪いことで、自分もしたくはない」という気持ちが根底にあります。これまで、ゲームの仕事もいろいろとやらせていただいていますが、ここまでプレイヤーの選択の幅が人間の感覚に近いものは初めてです。演じる側としても感情移入しやすかったですね。

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