レイニーフロッグから2018年3月14日に配信開始されたニンテンドー3DSダウンロード用ソフト『80's OVERDRIVE』は、「俺たちは当時こんなレースゲームで遊んでいた!」という、8ビットや16ビットのタイトルへのオマージュが溢れる2Dドット絵のレースゲームだ。収録されているのは、1980年代に大人気だったスーパーカー6台。クルマをアップデートしながら、レースに身を投じていくことになる。搭載されたコースジェネレーターを使って、独自のコースを作って友だちとシェアすることも可能だ。

 本作を開発したのは、ポーランドにスタジオを構えるInsane Code。いったい、どのような経緯で本作が開発されたのか。Insane CodeのCEO&リードプログラマーのクリス・マリンスキー氏に聞いた。

『80’s OVERDRIVE』は1980年代~90年代のレースゲームへのノスタルジー溢れる1作、開発スタジオInsane CodeのCEOに聞く_08

――せっかくの機会ですので、Insane Codeという会社について教えてください。

クリス 私たちはさまざまな会社と協力してソフトを作ってきました。過去にはGamelionといっしょにモバイル向けのゲームや任天堂のニンテンドーDSi/3DS用のゲームを制作したことがあります。たとえば『Monster Shooter』や『SpeedX Hyper』といったタイトルですね。Replay Games Inc.の『Leisure Suit Larry Reloaded』のSteam版とモバイル版の制作にも参加しました。こうしたプロジェクトに参加しつつ、空いた時間を使って作ったゲームはすべて、自分たちの情熱の100%を注いだものです。だから胸を張ってこう言えます。「こういうゲームこそ自分たち自身がプレイしたいと思えるゲームであり、だからこそ作ることに大きな価値を見いだせるゲームなんです」と。

――『80's OVERDRIVE』を開発するにあたってのコンセプトを教えてください。どのような発想から本作を開発するに至ったのですか? ポーランドの会社がこのようなテイストのタイトルを手掛けるということで、ちょっと意外だったのですが……。

クリス 別に意外とは思いませんよ。1980年代後から1990年代序盤のポーランドでは、コモドール64やAmiga 500といったコンピューターはけっこう一般的でしたから。当時は著作権法もなかったもので(1994年まで)、海賊版がかなり出回っていました。おかげでと言うのも変ですが、ビデオゲームはかなり普及していたんです。そういうわけで家庭用コンピューター向けのゲーム、『Lotus 3』や『Crazy Cars』といったたぐいのゲームはとても人気があったんです。こうしたゲームで遊んだことが、私たちの子ども時代の思い出となっています。さらに、共産主義が瓦解した後は、アーケードゲームがポーランドにも入ってきました。たとえば、派手でカラフルな『アウトラン』のゲーム筐体は、当時の子どもたちにとっては灰色がかった冴えない現実から抜け出すための手段だったんです。

――8ビットと16ビットのコンソールやアーケードを彷彿とさせるビジュアルですが、こういったビジュアルを採用した理由を教えてください。

クリス ノスタルジーです。それに2000年以降はこうした2Dレーシングゲームをほとんど誰も作っていなかったことですね。私たちはいま、とても美しく素晴らしい時代を生きています。インディーゲームでも多くのファンを獲得でき、大成功を収めることができたりします。だというのに、誰もしっかりとした2Dレーシングゲームを作ろうとしない。だから私たちはチャレンジしてみたんです。できればもっと多くの人に同じチャレンジをしてほしいですね(そして私たちよりいい物を作ってほしいです(笑))。

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――開発にあたってこだわったポイントや、とくに苦労した点などありましたらお教えください。

クリス そうですね。インディーゲームの開発者なら日中の仕事を終えた後、夜になって開発に取り組むかと思いますが、序盤の熱意は数ヵ月もすれば消えてなくなります。そしてすべてが間違っているような気がし始め、何も完成していないような気分になり、だんだん心身ともに疲れ始める。でも、インターネットのコミュニティーからのプレッシャーは増すばかり。さらには、友だちや家族と過ごす時間もほとんどなくなってしまう。これは本当にストレスが溜まる状況で、まさに現実はきびしいといった感じです。私たちのような少人数のチームだと、年がら年中やるべきことで手元がいっぱいです。プログラムを書いたりピクセルを描いたりするだけでなく、ゲームデザインもプロダクトマネージャーもテスターもPRもソーシャルメディア担当もすべて自分でこなさなくてはなりません。ときどき逃げたくなります。「こんなことやってられるか!」ってね。

――BGMに関してのこだわりポイントなどありましたら、お教えください。

クリス このゲームの音楽はレトロなエレクトロミュージックにしないといけないと初めからわかっていました。そういう楽曲がしっくりと来るんです。だけど、それに加えて実際の1980年代や1990年代のゲームの音楽よりもハイファイなサウンドの楽曲にしようとしました。サウンドトラックを手掛けてくれたアーティストはもともと友だちだったみたいな連中で、このプロジェクトを知って手伝いたいと言ってくれた人たちばかりです。いっしょにいい仕事ができたと思います。本当にイカした曲ばかりになりましたからね。

――当時のお好きなゲームなどありましたら、いくつかお教えください(その理由もお願いできるとうれしいです)。

クリス 厳密に1980年代に絞ると、やはり私たちはNES(ファミコン)のゲームが一番好きですね。シンプルで素晴らしいゲームばかり。限られた性能のハードウェアのポテンシャルを見事に引き出しています。秀逸なデザインやプログラムが、制限さえも利点に変えてしまっていた印象です。一連のゲームは重要な部分にフォーカスして、そこを増幅することにこだわっています。『悪魔城ドラキュラ』や『スーパーマリオ』、『ゼルダの伝説』などには大いに楽しませてもらいました、『バルーンファイト』や『バトルシティー』などもよく遊びましたし、とても印象に残っています。

――本作を開発するにあたって、当時のゲームから影響を受けた箇所や、とくにこだわりをもって盛り込んだ箇所などありましたら、お教えください。

クリス 当時のゲームの影響は『80’s OVERDRIVE』のいたるところに散りばめられています。まさにノスタルジーでこのゲームは構成されていて、1980年代や1990年代にレースゲームをいろいろプレイしたことのある人なら、絶対にグッと来る要素がこのゲームにはあると思いますよ。

――プラットフォームにニンテンドー3DSを選んだ理由をお教えください。

クリス ニンテンドー3DS用ゲームの開発経験は何度かあります。今回が初めてのニンテンドー3DS用ゲーム制作というわけではないんですよ。でもニンテンドー3DS用にパブリッシングもデザインも自分たちで全部こなしたのは今回が初めてですけどね。総じて私たちは任天堂が大好きだし、画面の解像度がいい意味で限られているニンテンドー3DSは、ピクセル表現には最適だと思ったんです。こうした制限を私たちはむしろアドバンテージにしたんです(先ほど話した昔のファミコンのゲームがそうだったように)。

――最後に本作に期待している、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

クリス レイニーフロッグさんの助力のもとで、ついに日本のプレイヤーたちにこのゲームを楽しんでもらえることができることを喜んでいます。私たちが思っている以上に、日本のプレイヤーたちはゲームの大事な部分とは何か、よいゲームとはどんな雰囲気を持っているのかなどを、知っていると思います。なんといっても日本は『アウトラン』を生みだした国ですから。私たちはプレッシャーも感じています。どうかお手柔らかに。ものすごくがんばって作りましたので(笑)。

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