2017年12月8日、VirtuaLink in DiverCity Tokyo Plazaにて、『バイオハザード7 レジデント イービル ゴールド エディション』の発売を記念するメディア向けのクリエイタートークショウが実施された。また、同日の夜には、『バイオハザード』の公式コミュニティ“バイオハザードアンバサダー”向けのスペシャルイベントも開催。本作の開発陣や特別ゲストが登壇し、『バイオハザード7』の制作秘話を思う存分語ってくれた。本稿では、そんなふたつのイベントの模様をお届けする。
【登壇者】
川田将央氏(シリーズプロデューサー)
神田剛氏(プロデューサー)
中西晃史氏(ディレクター) ※バイオハザードアンバサダー向けスペシャルイベントのみ
地 宏之氏(アートディレクター)
鉢迫 渉氏(サウンドディレクター)
川中子悠介氏(VirtuaLinkプロジェクトリーダー) ※メディア向けイベントのみ
てんちむ(タレント、バイオハザードアンバサダー) ※メディア向けイベントのみ
“エンド オブ ゾイ”実機プレイでは素手で戦うジョーの姿も
メディア向けイベントのオープニングでは、まず川田氏が登壇。『バイオハザード』のコンセプトは“恐怖”であると述べ、『バイオハザード7』では、テクノロジー部分などに関して「恐怖に回帰するように開発を進めてまいりました」と、挨拶とともに語った。
続いて、今回のイベント会場であるVirtuaLink in DiverCityが、『バイオハザード7』とコラボレーションすることが決定し、VirtuaLinkプロジェクトリーダーの川中子氏も登壇。2017年12月9日(土)~2018年1月31日(水)の期間、前日譚にあたる『バイオハザード7 ビギニングアワー』を、VirtuaLink in DiverCityで体験できることが明かされた。さらに、ゲームプレイの際に着席するポッド(イス)の一部は、今回のコラボに合わせて本作のDLC“Not A Hero”の仕様に。フォトスポットとして、ジャックのスタチューも設置されることとなった。
川中子氏がステージを後にすると、ここからはいよいよ『ゴールド エディション』の紹介と、本作の後日譚に当たるDLC“エンド オブ ゾイ”の情報公開へ。ここでは新たなゲストとして神田プロデューサー、てんちむが登壇し、“エンド オブ ゾイ”の最新映像を紹介した。映像には、石灰化されたゾイや彼女を助けようとする謎の男・ジョーの姿。そして、「お前は俺の家族だ」とゾイに語り掛けるジョーなど気になる内容が盛りだくさん。
さらに、会場では神田氏による“エンド オブ ゾイ”の実機プレイも公開。今回はベイカー家の近くにあるジョーの小屋を舞台に、ジョーを操作して、石灰化したゾイを治すための薬を取りに行く部分を確認できた。小屋の中にはゾイとアンブレラ兵が横たわっており、外に出ると複数のモールデッドの姿も。
モールデッドに対してジョーは一体どのような方法で戦うのか……と楽しみに映像を見ていると、さっそく神田氏がモールデッドに対して攻撃を開始。ジョーはなんと拳でモールデッドに殴り掛かり、そのまま近接攻撃を行った。アクションゲームを彷彿させるほど豪快な連続殴打で、モールデッドの顔面をえぐるジョー。加えて、倒れたモールデッドに対しては、ストンピング攻撃でとどめの一撃。背後からこっそり接近することも可能となっており、不意打ちをするとモールデッドの顔面を素手でかち割る超人的なアクションが見れるなど、これまでの『バイオハザード』とはひと味違うプレイが楽しめそうな内容となっていた。そして、薬を手に入れて小屋に戻ると、なんと小屋が燃やされており、そこでは一瞬だけだが新たなモールデッドのような姿も。なんとか小屋からゾイを救出し、ジョーはボートに乗って……というところで、神田氏の実機プレイは終了した。
そして、ここからはてんちむが、神田氏がプレイしたデータの続きを、プレイステーション VRで体験。ボートで移動した後のジョーを操作し、ゾイを抱えて陸へと上がろうとする。しかし、ここでなんとワニに襲われる事態に。予想外の敵の襲来に、あっけなくやられてしまった。短時間しか体験することができなかったてんちむだが、今回のプレイを通して、とくにゾイの魅力に惹きつけられた様子。川田氏も今回のDLCはゾイにスポットが当てられているということで、クリエイターがゾイのグラフィックに力を入れていたと述べ、VR越しに見るゾイの姿にてんちむは釘付けになっていた。
ちなみに、アンバサダー向けのイベントでは、中西氏による実機プレイが披露された。基本的な内容は同じだったが、ここではジョーのユニークな体力回復の方法を目にすることができた。ユニークな回復方法に関しては、会場だけの秘密ということだったので、ぜひ自身の目で確かめてほしい。
開発陣が制作の裏側を語る
つぎに行われたのは、地氏と鉢迫氏も交えてのトークセッション。ここでは、まず“PlayStation Awards 2017”などで受賞したトロフィーなどが公開され、本作の反響について川田氏が言及。また、本作がVR完全対応だったことに対する手ごたえも大きかったようで、「新しいゲーム体験というのも、評価に結びついたのではないかなと思います」と語った。
続いて、開発陣がテーマに沿って、本作の制作秘話などについてトーク。最初のテーマである“キャラクターの個性”では、とくにベイカー家の強烈な個性が、ユーザーには好評だったと語った。また、敵としても登場したヒロインのミアに関しては、長い髪の毛にとても苦労したらしく、地氏によると、動いているときの髪の動きがなかなか怖さに結びつかず、試行錯誤したとのこと。本作が、恐怖に対して非常に細かい部分にまでこだわっていることがよくわかる、貴重な話を聞かせてくれた。
ふたつ目のテーマ“ヒロイン”については、神田氏が作中での究極の選択などを例に挙げ、本作ではミアとゾイの存在が非常に大きかったと解説。地氏は「悲壮感はあるけど、ヒロインでなくてはならない」と、ビジュアル面でのヒロインに対するこだわりについて触れ、小汚くしてはいけないけど美しすぎてはいけないという、バランスに気をつけたと語った。
3つ目のテーマでは、一人称視点のため最後まで顔が見られなかった“主人公・イーサン”についてトークを展開。川田氏によると、本作はプレイヤーがつねに確認できる主人公のパーツとして、“手”を主人公ととらえて開発を行っていたとのことだ。そのため、なんと主人公の表情などを手から読み取れるよう、手の動きには専用のモーションキャプチャーなどを使っていることが明かされた。さらに、鉢迫氏は主人公のセリフについて「ヒーローというよりも、一般の男性という形でセリフを構築していった」と話し、イーサンがいままでのシリーズのカッコいい主人公とは少し異なることをアピール。イーサンが感じている恐怖などをプレイヤーに共感してもらえるよう、セリフはもちろん息遣いも心がけたと話した。ちなみに、主人公の顔は用意はされていたようだが、イケメンすぎて怖くなってしまうという理由から、使わなかったらしい。
4つ目の“戦闘”に関する裏話では、モールデッドから発せられる音が、鉢迫氏のお風呂掃除から発想されたものであったことが判明。排水溝に溜まった髪の毛を見て、質感がモールデッドと似ていることから、髪の毛がきしむような音をモールデッドの動きに取り入れたという、意外な話が飛び出した。
そして、最後のテーマである“シナリオ”については、なるべく説明を出し過ぎず、入手できるアイテムや資料からストーリーを感じ取ってもらえるように気を遣ったとのこと。また音楽についても、なるべく入れ過ぎずに恐怖を感じてもらえるよう、雰囲気が感じ取れる程度の音楽に注力したと鉢迫氏が述べた。
開発中のさまざまな資料が公開されたアンバサダー向けイベント
ここからは、中西氏を交えて行われたアンバサダー向けイベントでのトークセッションをリポートしよう。こちらのセッションでは、映像などの資料を交えて制作の裏側を公開。中西氏、地氏、鉢迫氏が、それぞれの視点で、本作のこだわりのポイントを紹介した。
まず、中西氏は本作の開発中の映像を流し、ボツになってしまった案など公開。開発中の映像の中には、赤いリュックのようなものを背負った警察官の姿や、そんな警察官をスコップで串刺しにして持ち上げるジャックの姿が。さらにガレージでの戦闘では、ジャックが車を放り投げてくるという豪快な演出も確認することができ、あまりにも人間離れしたジャックの怪力に、来場者も思わず笑ってしまうほどだった。
続いて地氏は、映像面のこだわりとして本作で取り入れた“フォトリアル”と“アイソレートビュー”の技術について紹介。ふたつの技術を取り入れることで、ジャックの外見やキャラクターの動きがどのようにして作られていったのかを、実際の開発の様子を交えながら解説してくれた。さらに、本作は背景作りにも非常に力を入れており、舞台となっているアリゾナ州へ実際に撮影に行ったとのこと。とくに、実写映像のようだと好評だったという、序盤でイーサンが車を運転しているシーンに関しては、なんと360度撮影可能なカメラを利用して、実際の映像に木を増やすなどの加工を加えたもの使っているということも語ってくれた。つまり、イーサンの運転中に見ることができたアリゾナの景色は、ほぼ実写と言っても過言ではないのだ!
つぎに、サウンドディレクターの鉢迫氏は本作の音全般がどのようにして作られていったのかを、実際の開発の様子などを写した資料と共に解説。映像がとても作り込まれていることに驚いたという鉢迫氏は、サウンド面でも徹底的にこだわろうということで、“フォーリー”と呼ばれる実際のものを使った録音方法で、あらゆる音をいちから収録。ドアを開ける音にいたっては、ドアの形などに合わせて約100種類の音を録ったという、驚愕の逸話も飛び出した。そのほか、本作の舞台は湿地帯ということで、夜の琵琶湖を録ってきたという話も。どうせなら、目だけでなく耳も塞いでもらえるような恐怖を演出したかったと、本作の音に対する熱意も語ってくれた。
そして、開発陣のトークセッションも終わると、イベントもいよいよ終盤に。川田氏は、「ここにいる人間が汗水たらして作った自信作となっておりますので、ぜひ機会があればプレイしていただきたいと思います」と語り、イベントを締めくくった。