『ダンケルク』のここがすごい! 興奮冷めやらぬゲスト陣の解説
2017年8月17日、“『ダンケルク』×Wargamingサバイバル試写会”が都内で開催された。
本イベントは、ウォーゲーミングが提供する『World of Tanks』と『World of Warships』のプレイヤーを招待し、9月公開の映画『ダンケルク』をいち早く鑑賞してもらうというもの。両タイトルではすでに同映画とのコラボイベントが開催されており、記憶に新しいユーザーも多いことだろう。
映画『ダンケルク』本予告【HD】2017年9月9日(土)公開
映画『ダンケルク』は、『ダークナイト』や『インセプション』、『インターステラー』といった作品で未知の映像体験を提供し、毎回ファンの度肝を抜いてきた鬼才クリストファー・ノーラン監督の最新作。
史上最大の撤退戦にして、第二次世界大戦の大きな分岐点となったフランス・ダンケルクでのイギリスによる救出作戦“ダイナモ作戦”を題材とした本映画は、ノーラン監督が挑む初の実話映画としても話題を集めている。
今回のイベントは、『ダンケルク』とコラボしたウォーゲーミングが、ノーラン監督が初の実話映画撮影に臨むにあたり、さらにいっしょに盛り上げていければと思って企画したとのこと。
試写会の前のトークショーには、ウォーゲーミングジャパンのミリタリーアドバイザー宮永忠将氏をメインMCとして、アニメ『ガールズ&パンツァー』プロデューサーの杉山潔氏、ミリタリーファンとしても有名な声優の中村桜さん、さまざまなメディアや作品に出演している軍事評論家の岡部いさく氏が登壇。4名ともトークショーの前に『ダンケルク』を鑑賞したとのことで、語りたくて仕方がない様子だった。
「そもそもダンケルクの作戦はどういうものだったのか」という岡部氏の解説からスタート。
1940年5月に諸国への大侵攻を開始し、フランスへ破竹の勢いで攻め入ったドイツ。だが、フランス侵攻の最終局面でドイツの侵攻は一息つく時期となり、さらに空軍のトップであるゲーリングが「空軍のみで制圧できる」と大言を吐いたり、陸軍の戦力を温存しようとしたことで隙が生まれた。
そこを突いて時の英国首相・チャーチルが、フランスに取り残された派遣英軍40万人を撤退させようとしたのが、本作で描かれる作戦の概要だ。
ダンケルク港は破壊されているため、大型船は海岸線に近付けず、海中には潜水艦Uボート、空からは最新鋭のドイツ空軍の爆撃、陸から迫る倍の80万に達するドイツ軍の戦力と、イギリス軍が文字通り崖っぷちに追い込まれたダンケルクの浜辺。
40万のイギリス軍兵士は、この絶望的な状況からどう脱出したのか。民間の船舶までも多数駆けつけた、一大救出作戦の全容とは。この史実だけでも、映画や小説を超えた奇跡的なエピソードとなっているわけだ。
とくに今回のゲストの皆さんが熱弁をふるったのは、本作に出てくる兵器やその演出について。
アニメでさまざまな戦車を甦らせてきた杉山氏いわく、歴代の戦争映画などでも製作者は「実物らしく描く」ことに腐心してきた。かつては現用戦車を代わりに使ったりもしていたが、近年は実物大のプロップや現存する実際の兵器を使用することも増えてきているという。
今作では、戦闘機スピットファイアは現存する実機を飛行させて撮影。さらに、ドイツ軍のメッサーシュミットも、スペイン軍のものではあるが現存するものを使用するというこだわりように感動したとのことだ。
岡部氏いわく「とにかくノーラン監督のスピットファイアへの愛を観てほしい」とのこと。とにかくキレイでかっこいい、さらにCGも合成も一切なしという驚きの撮影技術を前に、普通ならこうした映画ではすれた戦争ファン(岡部氏自身も含むとのこと)ならアラを探してしまうが、『ダンケルク』に対しては素直に賞賛しか出なかったらしい。
鑑賞時に注目してほしい点も熱く語る! 恒例のポロリ情報も?
ここで情報整理と一息のために、映画『ダンケルク』、ゲーム『World of Warships』、アニメ『ガールズ&パンツァー』最終章のそれぞれのPVが上映された。
「『ガルパン』だけちょっと浮いてましたね」と苦笑する杉山氏に、すかさず宮永氏が「で、ガルパン最終章、何の戦車が出るんですか?」といううっかりを狙った質問を投げた。この流れはウォーゲーミングのステージでは恒例だが、今回は「ダメです」と中村さんともども受け流されてしまった。
ここで、宮永氏から本作で描かれる作戦はあくまで“救出作戦”であり、今回のイベントの“サバイバル上映”というタイトルにもつながっているとの提示が。
もしこのような場に居合わせた場合、宮永氏、杉山氏、岡部氏はどちらかというと命令を出す上官(あるいは中間管理職)側の人間。スキル的にも現場の人間になりそうな中村さんはどう行動するか、という質問に、中村さんは「集団行動は苦手ですけど、桟橋を作るシーンが映画の中にありまして。物づくりは得意ですから、黙々と干潮の間に作っていると思います!」と回答してくれた。
女性の奮闘のほかにも、なぜ浜辺から主人公たち兵士が戦闘機が迫っても一歩も動かないのかについても「命令がなければ何があっても動くことができないため」と、宮永氏が補足解説。
こうした当時の戦場における規則や風潮などが、ごく当たり前に描かれているのも、本作の魅力のひとつであるという。
ほかにも、語りたいことは山のようにあったように見受けられるゲストの面々だったが、トークショーは惜しくも終了の時間に。最後にひと言ずつ映画『ダンケルク』への想いを語ってくれた。
・杉山潔氏
残念ながら戦車は出てこないのですが(笑)、戦闘機の撮りかたが素晴らしい作品です。
また、こういった映画の背景には、有史以来ずっと戦争を続けてきたイギリスだからこその「仲間を助けに行って当然」というメンタルがあり、本作でもそこを忠実に再現しています。兵器だけでなく、テーマ性も感じ取りながら観ていただけると思います。
・中村桜さん
いままで見た映画とは違う、その場にいるかのような錯覚を覚える作品でした。
観た後に調べたんですけど、作中でも「空軍は何をやっているんだ!」と言われていたように活躍が隠れていた空軍についても、ちゃんと描いているのがすごいです。陸海空の全ポジションの人が救出のためにがんばっていたことがしっかりと描かれていますので、そこもエンタメとして、史実の描写として、楽しんでいただければと思います。
・岡部いさく氏
先のおふたりの話からさらに重箱の隅をつつかせていただきますと、本作で登場した救出のために駆け付けた民間の小船、それらはいまなお現存していまして、“ダンケルク小型船協会”という団体が管理しているんです。その船が実際に映画内に出ている。これは『忠臣蔵』の映画に実在の赤穂浪士が出るようなものでして。
それをやってくれた監督もすごいんですが、これらの貴重な船を実際に協力して出してくれたり、イギリス兵や本物のスピットファイアも出るしで、イギリス人すごいですよね! イギリス人映画とまでも言えるかも知れませんので、そこもぜひ楽しんでください。
・宮永忠将氏
個人的な話になりますが、最近子どもができまして。ヨーロッパでは第一次世界大戦から第二次世界大戦まで20年の間がありましたが、第一次大戦の終戦時、ドイツと講和したという記事の横に、「20年後、俺たちは死ぬんだ」と泣き叫ぶ風刺漫画が載っていたように、第二次世界大戦は当時から予感され、それでも回避できなかった戦争だったんです。
回避できなかった親の世代の責任というのもテーマのひとつとしてある、深く考えさせられる映画です。最近の大作の風潮としては珍しい、99分の映画ですが、短さを感じさせない作品になっていますので、ぜひお楽しみください。
・映画情報
■タイトル:『ダンケルク』
■公開:2017年9月9日(土)全国ロードショー
■配給:ワーナー・ブラザーズ映画