世界で人気のゲーム音楽の演奏プロジェクトが日本にやってきた

 2017年3月25日、VIDEO GAME ORCHESTRA東京公演が、昭和女子大学 人見記念講堂にて開催された。VIDEO GAME ORCHESTRA(VGO)とは、米国ボストン在住の音楽プロデューサーのShotaこと仲間将太氏が、2008年に設立したゲーム音楽の演奏プロジェクト。日本での知名度こそあまりないが、海外ではすでに数万人規模のライブを何度も成功させ、また植松伸夫氏やカプコンといった有名どころとのコラボや、著名タイトルへの楽曲提供を実現させるなど、高い評価を得ているユニットなのだ。それだけに今回の日本での初公演は、ゲーム音楽ファンにとっては“待ちに待った瞬間”だったわけだ。

 前置きがやや長くなったが、ゲームをテーマとするだけに、音と映像が一体となった新感覚のエンターテイメントで約1800人の観衆が熱く盛り上がったたその様子を詳しくリポートしていこう。

ロック+オーケストラで奏でられる数々の名作ゲーム楽曲! 北米最大のゲーム音楽エンターテイメント、VIDEO GAME ORCHESTRAの東京公演をリポート_01
▲バンドの背後に設置されたスクリーンには、ゲーム中の映像が。しかも楽曲が使われるシーンの映像を流すあたり、ゲームへの深い愛情とリスペクトを感じさせる演出がなされた。

ゲームの音楽と映像が渾然一体となって押し寄せてくる豪華な演出

 最初に披露されたのは、セガの人気アクションゲーム『ソニック』シリーズから“Endless Possibility”と“Escape From The City”の2曲。どちらも3Dソニックを代表する名曲にして、アップテンポなロック調という、オープニングの盛り上げにはもってこいのナンバー。男女ふたりのボーカルがステージ上を所狭しと駆け回ると、オーディエンスもそれに応えて、早くも場内は熱気に包まれていた。

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▲激しいギターの音色で来場者を魅了したVGOリーダーのShota氏。「ロックコンサートだから自由にガンガン盛り上がっていってね!」と客席を煽った。

 3曲目はギリシャ神話を題材とした『ゴッド・オブ・ウォーII 終焉への序曲』より“The End Begins(to Rock)”。この曲はVGOライブでの定番曲なのだが、その理由はロックバンドの背後に控えるフルオーケストラが演奏に加わる点。ワイルドなディストーションギターの音色にフルオケの厚みが加わっての演奏は、なんともゴージャスなもの。スクリーンに映し出されるダイナミックな映像と併せ、ダークなヒロイック・ファンタジーの世界を見事に表現していった。

 続いてのナンバーは、Rayark社のスマートフォン用音楽ゲーム『Cytus』、『Deemo』から。じつは、VGOはこの2タイトルに楽曲提供をしており、その縁があっての演奏。いずれも音楽ゲームの楽曲らしく、ピアノとバイオリンが山場を盛り上げる構成に、元の楽曲を知らない来場者でも盛り上がっていたようであった。

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 ここで、バンダイナムコスタジオの椎名豪氏がステージに登場……とくれば、当然ながら演奏されたのは『ゴッドイーター2 レイジバースト』の楽曲。前者の楽曲について椎名氏は「自分の中の黒い部分、いわば中二病的な部分を出した」とコメントしただけに、激しくも儚げな世界観が全開に。アラガミとの激しいバトルや赤い雨の降る中でのあのシーンの映像とともに奏でられる名曲に、来場者は興奮を隠せなかったようだ。

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▲『ゴッドイーター2 レイジバースト』のメインテーマ“Tree of Life”は、ゲストボーカルのJoelleさんを迎えての披露。甘く切ない歌声に、来場者は聞き入っていた。

 続いても椎名氏の作曲による『テイルズ オブ ゼスティリア』からの2曲。とくに“Journey's End”は、オリジナルで作詞・歌唱を担当したイングリッド・ガルデス(Ingrid Gerdes)さんが昇る朝日のゲーム映像に載せて生歌で披露しただけに、ファンにとっては感動もひとしおだったはず。

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▲VGOのボーカリスト・イングリッドさんは、“Journey's End”の生歌を国内で初めて披露。現地で聞けた人はラッキーにほかならない!

『FFXV』の楽曲を豪華に生演奏! 次回公演にも期待が高まる

 休憩を兼ねたゲーム実況コーナーを挟んで演奏されたのは、そこでプレイされた『悪魔城ドラキュラ』から“VAMPIRE KILLER”。原曲よりもゆったりしたテンポにアレンジされた一曲は、バイオリンやオルガンが奏でる旋律が、重厚かつ荘厳な雰囲気をたっぷりと醸し出していた。

 『サイレントヒル 2』、『D4: Dark Dreams Don't Die』と、アドベンチャーゲーム2タイトルの楽曲を経て演奏されたのは、この日の目玉であろう『ファイナルファンタジーXV』の楽曲。VGOのメンバーも楽曲制作に加わっているだけに、この日のライブで最多の5曲を演奏。また、スクウェア・エニックスの柴田徹也氏、鈴木克崇氏も観客席から来場者への挨拶を行った。

 演奏のほうは、荒野の田舎町を思わせるブルージーなテイストで聴かせる“Hammerhead”を皮切りに、朝のフィールドで流れる“Wanderlust”、イフリートとの戦いのシーンで流れるハードな“Hellfire”と、これで興奮するなというのは無理なほど、印象的なシーンからのイイトコ取り状態。

 続いて演奏された“Bros on the Road”は、Shota氏が作曲を手掛けた一曲。イベントシーンで何度か聞く曲だけに、印象的なギターリフとともにゲーム中のシーンが脳裏に浮かんできた来場者は多かったことだろう。そして『FFXV』コーナーの最後を飾ったのは、“Apocalypsis Noctis”。ゲーム中のクライマックスシーンのひとつ、水神リヴァイアサンとのバトルBGMだ。下村陽子氏が手掛けた荘厳な楽曲を、バンド、オーケストラ、そしてコーラスがフルパワーで奏るさまは、まさに鳥肌モノであった。

 メーカーの垣根を越えた名曲の共演に大いに盛り上がったライブも、残すは2曲。ラストナンバーは、『メタルギア ソリッド』シリーズから“HEAVENS DIVIDE”と“SNAKE EATER”。ハリウッド映画を思わせるようなスケール感のドラマチックなボーカル曲が、約2時間に渡るライブを締めくくると、来場者からは大きな拍手が沸き起こっていた。

 演奏のクオリティーはもちろん、ゲーム映像をふんだんに使うなど、耳と目とでゲームの感動を追体験できた今回のVGO公演。リーダーのShota氏は公演後に「今回はたくさんの人にお越しいただき本当にありがとうございます。ゲーム音楽のコンサートはどう鑑賞していいかわからないという人もいると思いますが、VGOはクラシックコンサートではなくロックコンサートです。踊って歌って騒いで、パーティーですから大いに盛り上がってもらいたいです。本当に楽しかった! 次回公演もぜひお越しください」(公式リリースより)と語っているだけに、次回以降の公演にも早々に期待したいところだ。

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■VIDEO GAME ORCHESTRA 東京公演セットリスト
1:Endless Possibility
 『ソニックワールドアドベンチャー』より
2:Escape From The City
 『ソニックアドベンチャー2』より
3:The End Begins(to Rock)
 『ゴッド・オブ・ウォー 2』より
4:RAYARK MEDLEY
 『Cytus』、『Deemo』より
5:走馬灯
6:Wings of Tomorrow
7:Tree of Life
 『ゴッドイーター2 レイジバースト』より
8:Rising Up
9:Journey's End
 『テイルズ オブ ゼスティリア』より
※ゲーム実況コーナー
10:VAMPIRE KILLER
 『悪魔城ドラキュラ』より
11:Theme of Laura
 『サイレントヒル 2』より
12:D4 Theme -Battle
 『D4: Dark Dreams Don't Die』より
13:Hammerhead
14:Wanderlust
15:Hellfire
16:Bros on the Road
17:Apocalypsis Noctis
 『ファイナルファンタジーXV』より
18:HEAVENS DIVIDE
 『メタルギア ソリッド ポータブル オプス』より
19:SNAKE EATER
 『メタルギア ソリッド 3 スネークイーター』より