これでついにすべてが解決

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアから2017年1月19日に発売されたプレイステーション4用ソフト『GRAVITY DAZE 2/重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択』。同作の大型無料DLCである『GRAVITY DAZE 2 Alternative Side :時の箱舟 - クロウの帰結』が、2017年3月21日についに配信された。

 1作目で未解決だった懸念事項の“ロストチルドレンと箱舟の問題”も、このDLCで綺麗さっぱりの大団円。キトゥンとクロウの物語はひとまずすべて完結となった。そこで今回は、『GRAVITY DAZE』シリーズを通してのインプレッションをお届け。改めてシリーズの3つの魅力について語らせていただきたい。もちろん、『クロウの帰結』についても詳しく解説していく。

 『クロウの帰結』については、ストーリーのネタバレはできるだけ控えた言い回しにはしているものの、察しのいい読者であればピンときてしまうかもしれないので、まずはサクッとクリアーしてしまうことをおすすめする。ボリューム的には3時間前後といったところだろう。

 ついでに言うと、「シリーズの魅力? そんなん知ってるわ!」と読み飛ばさず、できれば読んでもらって「うんうん」とシンパシーを感じてもらえればうれしい限り。

『GRAVITY DAZE 2』大型DLC“クロウの帰結”をプレイして思うこと――“空に落ちる感覚”の偉大さや、“これ以上はない”と思う完結の形について語る_01

5年間、この操作感を超えるものは現れなかった

 「重力を操り、あらゆる方向を下に見立てて落下していく斬新な操作感覚は、唯一無二の存在。独特の浮遊感はこれまでに味わったことのないものだった」

 各メディアの『GRAVITY DAZE』インプレッションの類には、上記のようなレビューが書かれているし、プレイしたユーザー全員が感じていることなので、これは定番中の定番な感想だ。まあ、操作感覚のことは、本作を語るうえで絶対避けては通れない話題であるのは間違いない。

 PS Vita用として1作目が発売されたのが2012年。初めてそんな感想を抱いてから早くも5年が経つが、その間、“空へ向かって落ちる”という、この衝撃的体験を超えるものは、ほかになかったように思える。『2』から少し間を空けてDLCの『クロウの帰結』をプレイしてみて、改めてそう感じた次第。

 ホント、定番の感想しか思いつかなくて申し訳ないのだが、『GRAVITY DAZE』の操作が斬新で唯一無二の存在なのは5年経っても変わらない事実。とにかく空へ落下するのが楽しいのである。

 本作はすべてのエリアがオープンワールド的につながっており、エリアチェンジすることなく端から端まで落下していくことが可能。おかげでとてつもなく広い空間の移動が楽しめる。『1』では横の広がりしかなかったが、『2』ではこれに縦の高さも加わって縦横無尽に落ちまくれるようになった。

『GRAVITY DAZE 2』大型DLC“クロウの帰結”をプレイして思うこと――“空に落ちる感覚”の偉大さや、“これ以上はない”と思う完結の形について語る_02

 無論、ワープして近道もできるが、わざわざ遠く離れた目的地までいくつものエリアを超えて移動することもざらにある。メインストーリーに関わることですぐさま移動したいというのに、「チッ、遠いよ」などと言いつつ、猛ダッシュで遠回りするのである。ワープすれば近いのに、だ。ゲームの移動は徐々に面倒に感じてくるものだが、このシリーズほど終始一貫して移動が楽しいのも珍しい。これはおそらく多くのユーザーが感じていることではないだろうか。

 『2』では、かかる重力が小さくなるルーナチューンと、反対に重力が大きくなるユピトールチューンというふたつの重力特性が新たに登場。プレイヤーは状況に応じてこれを切り替えながら進むことになる。筆者はとくにルーナチューンのふわふわした感覚がお気に入り。何十メートルもほわーんとジャンプ(バーチカルライズ)したり、気を付けの姿勢でギューンと前方へ跳んでいったり(ホリゾンタルダイブ)と、移動にバリエーションが増えたのがうれしかった。

 落下だけでも十分だったのに、重力特性による変化が加わり楽しさが倍増。最初に“空へ向かって落ちる”という衝撃体験を超えるものはなかったとは言ったが、強いて言うなら、『GRAVITY DAZE』の革新的な操作感覚を超えたのは、同シリーズの『2』だったのかもしれない

丁寧に作られた世界をチラ見で済ます贅沢

 本シリーズがこんなにも楽しいのは、何も操作感覚が特別なだけだからではない。やはり舞台となる世界が醸し出す雰囲気のよさに引き込まれているからだろう。

 「雰囲気がいい」とは、これまた自分でも簡単に表現しちゃったなとは思うが、プレイしているときに感じているのは、だいたいそんな程度じゃなかろうか。落下しながら高速に移ろう景色を見ながら感じる、雰囲気のよさ

 それは異国情緒を感じさせる風景だったり、美しい空だったり、街の人々の溢れる生活感だったりと、単に見た目の話でもある。あるいは近くの空を自由自在に飛んでいる重力船。あんなでっかい街が宙に浮いていたりする高度に発展した科学の設定。レトロっぽさがあるのに、なぜか未来的で非常に興味をそそられる。

 キトゥンやクロウたちが話す、フランス語に似た語感のあるグラビティ語。トゥワセララーとか、イブイボーイとか、何を言っているのかわからないけど、何となく雰囲気で感情が伝わってくる謎言語もおもしろい。

 完璧なハンサムや美人ではない味のある顔つきのキャラクターたちが織りなす物語。独特のフォルムを持った敵、ネヴィの存在。場面ごとに多彩な楽曲で耳を楽しませてくれる田中公平氏のサウンド。『GRAVITY DAZE』を構成するすべての要素をまるっと含めた世界は、兎にも角にも魅力的。

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 そんな世界だからこそ醸し出される空気というのは、やはりゲームにもある。いろいろな要素で彩られたその中を、細かいことは考えずに高速に、雲を突っきってぶっ飛ばす。これが気持ちよくないわけがない。

 そう言えば、『2』ではゆるいオンライン要素として“フォトレビュー”と“トレジャーハンティング”がある。説明を省いてざっくり言うと、雰囲気のいい街の中で写真を撮影してほかのプレイヤーに見てもらうものなのだが、これが最高におもしろい。単純に風景を堪能するのに加え、各人が考え抜いた構図を上から目線で評価するのが超楽しいのだ。

 画角がさほど広くないため、風景と人物をバランスよく押さえつつ、りんご型の宝箱を写すみたいに欲張ると、どこかが切れてしまったりしてなかなかうまくいかない。ゆえに、人は“他人に意図を伝え、かつ自分の欲求を満たす工夫”をするのだが、そういった努力が写真からモロに伝わってくるので、にやにやが止まらない。それを「がんばったじゃねーの」とか「ダメだなー」とか言いながら、“いいね!”してあげるわけだ。これがもう、かなりやみつきになる魅力を持っている。本作のプレイヤーで未経験の人はいないと思うが、なかなかすごいアイデアだと思うので、未体験の人がいるならぜひチャレンジしてほしい。

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21世紀を代表する最強のヒロイン

 『GRAVITY DAZE』シリーズの三本柱を挙げるとすると、独特の操作感と、魅力あふれる世界設定、もうひとつは主人公の女の子、キトゥンの存在になるのではないだろうか。彼女は21世紀を代表するプレステファミリーの最強ヒロインといっても過言ではない。一瞬だけ2Bの顔が脳裏をよぎった気もするが気のせいだろう。

 重力姫ことキトゥンは、金髪に褐色の肌というエキゾチックな少女。ひと言で言い表すなら“ちょろイン”である。獣臭を撒き散らしたり、作業着やドレスの胸の部分に謎のポッチを見えさせたりと、ふつうのヒロインらしからぬ部分も大いに魅力となっている。さらに言うなら食いしん坊キャラの属性も持つ。顔もかなりかわいいが、ゲームの世界ではさほどモテたりはしていない。

 そんなキトゥンが本シリーズの柱のひとつであることは、疑いようのないことだった。そう、数日前までは。『クロウの帰結』が配信されたいま、その評価は微妙な線。筆者がそうだったように、今回のDLCでクロウの魅力に目覚めてしまう人も多いのではなかろうか

 まあ、そのあたりの評価は後世の歴史家に委ねるしかないので、本記事では三本柱の3つ目は、やっぱりキトゥンとクロウの存在と訂正しておくことにする。

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遊べば納得の秘密

 シリーズの三本柱を解説した後は、配信されたばかりのDLCについても詳しく解説してみよう。

 『クロウの帰結』はクロウを主人公とした本編とは独立したモードで、タイトルから選んで起動する仕組みになっている。時間軸的にも本編とは密接には関係ないため、遊びたいときに遊んでかまわない。ボリュームは前述の通り、物語を進めるだけなら3時間前後。トロフィー取得などのやり込みを含めるとその限りではない。無料ということを考えれば、かなりお得感が感じられる内容だ。

 そうそう、トロフィーのコンプリートを目指す人は各章のはじめにセーブしておくことを推奨する。筆者の場合はオートセーブ頼りだったため、トロフィーのために最初からプレイすることになってしまったからだ。

 で、気になるストーリーは、当然ながら1作目で未解決だった箱舟事件にピリオドを打つというもの。「これを待っていた!」というユーザーは筆者だけではないはずだ。『1』でエンディングを迎えたとき「おいおい解決してねーよ!」と叫び、『2』のエンディングでは「箱舟はスルーっすか!?」と絶叫してしまうほどだったので、待ち焦がれ具合はハンパではない。

 ただ、『クロウの帰結』を終えたいまでは、『2』本編で完全スルーだったのも納得できる(こういう風に書くこと自体がネタバレな気がするが……)。“帰るまでが遠足”ではないけれど、『クロウの帰結』までで『GRAVITY DAZE』という物語が完成するのは間違いない。逆に『クロウの帰結』を遊ばないと『2』本編でのスルーっぷりに齟齬が……って、思わせぶりを装いながらのネタバレはもうやめておこう。

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クロウの幼少時代も疑似体験

 『2』本編でも少しのあいだだけクロウを操作する機会はあったが、一瞬の体験に過ぎず、「もっともっと!」と余計に欲しがり屋さんになってしまった人も少なくないはず。まんまと開発者たちにノセられてしまった感は否めないが、『クロウの帰結』のおかげでようやく待ち望んだ“存分にクロウを操作できる”機会を得ることができた。

 □ボタン連打で連続ヒットが気持ちいい“ブラッディタロン”や、強力な重力で前方の空間をねじ曲げて敵を殲滅する“グランプレッシャー”など、キトゥンとは性能が異なる技を使いまくるのも楽しいが、幼少時代のクロウであるところの“サチア”を操作できるのも大きな魅力。

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 散らばってしまった思い出の欠けらを集めていく過程で、サチアとザザの大切な思い出や、いかにしてクロウになっていったかなど、数々のバックストーリーが語られ、より彼女に感情移入できるようになっている。ほかにも、護衛をしたり探しものをしたり、物語の中ではさまざまな体験をすることになる。

 もちろん、クロウを操ってド派手なバトルをくり広げることも可能。今回のDLCでは、おあつらえ向きな敵キャラクターとして、“光の番人 ルミノ”、“闇の番人 テネブリア”、“時空の番人 ガベージコレクター”が新たに登場。これらのデザインは、ゲストキャラクターデザイナーである吉川達哉氏と竹安佐和記氏が手掛けている。

 陣取りの要素を絡めた特殊なバトルなど、本編とはひと味違う体験ができるのもなかなかよかった。最後はお約束の巨大ボスとの戦いもあり、クロウならではの技をこれでもかというくらい使えるようになっている点にも注目してほしい。それにしてもブラッディタロンの使い勝手のよさはスゴイ。ほとんどのプレイヤーが「クロウを本編でも使わせてくれー!」と思ったんじゃないだろうか。

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寂しいけどうれしい物語

 書けば書くほどネタバレが増えていくのでもう黙るが、筆者的にはロストチルドレンと箱舟の問題をうまくまとめてくれて本当によかったと思う。プレイ後の印象は、クロウの言葉を真似するなら、寂しいけどうれしいという気分で間違いない。

 ともあれ、これ以上はなかったのではないかと思えるエンディングなので、とくに1作目をプレイした人は絶対に『2』と『クロウの帰結』をプレイしてみてほしい。スタッフロール直前のクロウのセリフは、いまでも思い出すと熱いものがこみ上げてくる。

 今回、『GRAVITY DAZE』シリーズの3つの魅力も併せて紹介したが、なかでも操作に関してはゲームファンであるなら、絶対に体験しておいてもらいたいところ。自分の中では、当時そのくらい衝撃的な体験だった。

 慣れないうちは少し手間取ってイライラすることもあると思うが、慣れて自在に動かせるようになると本当に気持ちがいい。空を飛べるゲームは多々あるが、空に落ちるゲームはそう頻繁には遊べない。まだ未経験の読者がいるならば、ぜひとも『GRAVITY DAZE』シリーズをすべて遊んでみてほしい。いまから始めるとしても、たった2作でいいので!

 筆者などは、この『クロウの帰結』を踏まえ、改めて1作目からストーリーを追ってみたい気持ちになった。いま遊べば、『1』と『2』のクロウを違った目線で見られるだろうしね。