2017年春季シーズンは特設スタジオで試合を実施

 2017年1月20日、PC用オンライン対戦ゲーム『League of Legends』の日本プロリーグ“League of Legends Japan League”(以下、LJL)2017 Spring Splitが開幕した。

 この春季シーズンでは試合の実施形式が大きく変更。昨季まではレギュラーシーズンの通常の試合はオンライン上で行われてきたが、今回から毎週金曜、土曜に都内の特設スタジオで開催される。選手たちは毎試合、相手と顔を合わせ、視聴者の視線を浴びながら、まるでオフライン決戦のような雰囲気の中で戦うわけだ。

 20日の開幕戦に先駆けて、主催のライアットゲームズは記者発表会を開催。ディレクターの齋藤亮介氏が今シーズンの注力ポイントなどについて解説した。

『League of Legends』日本プロリーグ“LJL”の2017年春季シーズンが開幕、eスポーツで世界に通用する日本人の育成を目指す_01
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▲ライアットゲームズ ディレクター・齋藤亮介氏。

 最初に、斎藤氏は「2016年は日本のチームにとって飛躍の年となりました」と述べた。LJL 2016は春夏の2シーズン実施され、それぞれ代々木第二体育館と高輪プリンスホテル・飛天の間で決勝戦を開催。1500~2000人ほどの観客が訪れ、優勝チームは国際大会に駒を進めた。

 2015年も国際大会に参加していたものの、結果はあまり振るわなかった。だが、2016年は順位的には中堅ポジションまで進み、ファン投票で選ばれたオールスターチームが出場する“IWCA”では2位。世界大会の本選に進む一歩手前まで到達した。

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 ライアットゲームズでは、チームの強化を見据えた長期的な視点でリーグを運営している。たとえば、選手のキャリアも考慮したトレーニングプログラムを実施。プロレスラーの蝶野正洋氏をゲスト講師として招き、プロ意識に関する講義を行ったこともあるという。トレーニングの内容は選手に向けたものだけでなく、チームオーナー向けのものもあったようだ。

 努力の甲斐もあって試合の質が向上し、配信の総視聴者数はおよそ300%アップ。決勝戦の最大同時視聴者数は3~6倍にもなった。この結果を受けて、斎藤氏は「まだまだではあるが、いいコンテンツを提供していい試合を見せれば、日本でもちゃんとファンが増え、成長していく」と自信を深めたという。

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 以上の昨年の活動を踏まえて、斎藤氏は2017年の活動方針として、“視聴者満足度の向上”、“日本チームの強化”、“LJLや選手の認知向上”を挙げた。

 まずは多くのファンが見てくれる放送のクオリティーを高めることに注力。また、「スポーツの知名度が飛躍的に高まり、成長していくためには、“世界で戦う日本人”というシーンが不可欠」と語った。サッカーやラグビー、フィギュアスケート、テニスを例に挙げ、「日本人プレイヤーが世界大会で活躍した結果、多くの人が興味を持った。(eスポーツでも)世界に通用する日本人を育成する」と力強く宣言した。定期的にリーグ戦を開催し、ひたむきな努力を見せることで、選手の中からヒーローが生まれるような活動をしたいという。

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 施策の目玉は全試合を特設スタジオで実施すること。試合中の選手の感情を伝え、試合後にはインタビューで試合を振り返る。大規模な大会ではステージの上でプレイすることが多いが、これまでは決勝戦のみ、つまり1回しか経験できなかった。配信を通して見られることに慣れれば、世界大会でも臆さずに戦える。何より、“人に見られている”という意識がモチベーションを高める。

 ライアットゲームズとしては最大限の支援をするが、主役はチームであり、選手。LJLに参加する6チームのオーナーが意気込みを語った。

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◆7th heaven 斎藤義明氏
7th heavenはつねに上位に食い込むチームではありますが、残念ながら一度も優勝の経験はありません。今年こそは初優勝という意気込みで臨んでいます。昨シーズンは絶対王者と呼ばれたDetonatioN FocusMeに対して見事勝利を収めました。チームの特徴としては爆発力、何が起こるか分からない試合展開がチームの強みだと考えています。

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▲7th heaven 斎藤義明氏

◆DetonatioN FocusMe 梅崎伸幸氏
DetonatioN FocusMeにはTopのYutapon、MidのCerosという日本の『LoL』を背負って立つ2大スターがいます。2016年は惜しくもRampageに負けましたが、今シーズンはRampageから新たにPaz選手を獲得しました。日本人を中心とし、華麗なチームワークを見せて集団戦で勝つスタイルを目指しています。DetonatioN FocusMeは過去に絶対王者と呼ばれました。今年はまずLJLで優勝し、過去3回世界大会に出場した経験を活かして、世界大会の本戦出場を目指していきます。

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▲DetonatioN FocusMe 梅崎伸幸氏

◆Rampage 中村洋樹氏
Rampageは(LJL参加チーム中)いちばん古いチームだと自負しております。2013年に初めて日本王者となった後は、長く不調の時期が続きました。2016年にようやく世界大会に出場でき、すごく幸せに思っています。これから世界大会でどう戦うかが我々の課題。Rampageは育成のチームと呼ばれたことがあり、韓国の最先端の技術や育成マニュアルといった専門知識を活かしてきました。自分は海外在住の経験もありますので、日本ではほかのチームが取り入れていない知識を活かして、どんどんチームを強くしていきたいと思います。

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▲Rampage 中村洋樹氏

◆Rascal Jester 大川孝行氏
Rascal Jesterも非常に古いチームです。LJL初期から参戦して、一時はトップにいたチームではありますが、2016年は苦しいシーズンとなりました。春季シーズンで降格したときは(チームの運営を)続けるかどうかも迷いましたが、多くのご声援をいただき、続ける選択をしました。その後の夏季シーズンで一部復帰をした勢いで今期も邁進したいと考えてはいますが、現実的には少し厳しいと見ています。大半のスターター選手が一部リーグ未経験だからです。とはいえ、リーグは長い。中盤・終盤にかけて選手が成長する様子をお見せできたらと思います。

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▲Rascal Jester 大川孝行氏

◆SCARZ 友利洋一氏
SCARZは「人々の心に痕を残す」という存在を目指して作られました。私たちはもともとアマチュアチームです。数を重ねることで成長し、LJLという場を目指して這い上がってきました。今年の目標は昨年の5位以上。4位、3位と、下克上のような形で去年よりいい成績を残せるチームに育ってきました。目玉はMidプレイヤーのSearch。彼はすごくアグレッシブ。ゲーム内でどんな波乱を起こすか、(チームメイトの)私たちも想像できません。彼のプレイにご注目ください。

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▲SCARZ 友利洋一氏

◆Unsold Stuff Gaming 高橋大輔氏
Unsold Stuff Gamingは若いチームです。昨年からLJLに参戦して、春季は3位、夏季は4位と、中堅の順位を維持できました。今年は韓国人の選手2名が加入しました。単なる助っ人ではなく、チームの一員として、一丸となって戦ってくれるメンバーです。必ず今年は(DetonatioN FocusMeとRampageの)2強体制を塗り替え、もっとエキサイトしたLJLを見せられるチームになるべく進んでいきたいと思います。

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▲Unsold Stuff Gaming 高橋大輔氏
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▲いちばん右はLJLを運営するRIZeST代表の古澤明仁氏。「ここから生まれる感動のシーンをひとりでも多くの人にお届けしたいと考えています」とコメント。

 発表会の後、関係者向けのパブリックビューイングを実施。350インチ相当の大画面で開幕戦を観戦させてもらった。画面にはPCの画面を直接ラインアウトして表示させることもできたのだが、あえて一般の視聴者と同じように配信されたものを映していた。

 ここまで大きい画面だと映像の乱れが気になりそうなもの。それでも違和感なく楽しめたことから、もとの映像の品質の高さがうかがえる。素直に「おー、すごい」と感心してしまった。活動方針として挙げた“視聴者満足度の向上”を、有言実行してくれたわけだ。口だけじゃないですよ、と。

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 観戦会場には発表会でコメントした各チームオーナーの姿も。2017年シーズンの意気込みを聞いてみると、やや慎重な発言が目立った。大きく編成を変えたチームもあり、始まってみないと何とも言えないということだろう。

 一方で「ただ勝つだけではなく、選手たちの成長が大切」と、ライアットゲームズ・斎藤氏の発言と通ずる意見も見られた。「もちろん優勝はしたい。それでも、一度くらいは負けたほうがいいかもしれない。自分で原因を考えることを強く意識できるから」という発言も。短期的に名声を得ても意味は薄い。先々を見据えるのなら、ときには耐え忍ぶことも必要なのである。

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 試合はDetonatioN FocusMeとRampage、ともに優勝経験のある強豪どうしがぶつかった。結果は2-0でDetonatioN FocusMeの勝利。とくに2戦目は一瞬の隙をつく攻防が熱く、手に汗握る展開が楽しめた。

 初戦の最大同時視聴者数は2万4000人を超え、LJLは着実なステップアップを重ねている。つぎはチームの実力や人間性が試される番だ。強くなければ世界と戦えないし、どんなに強くても人間的な魅力がなければ人はすぐに離れていく。春季シーズンを戦い抜いたとき、選手たちがどこまで成長しているか、楽しみだ。

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