最初のパートナーはロシアのDatcroft社

 “メサイヤ”ブランドの展開などで知られる、エクストリームが、このほど海外ゲームパブリッシャーのDatcroft社と提携。そのDatcroftの人気タイトル配信を第1弾として、海外ゲームの日本でのパブリッシング事業を開始する。編集部ではさっそく、代表取締役社長CEOである佐藤昌平氏にインタビューを敢行。同氏のコメントを交えながら、新事業の詳細を紹介しよう。

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▲事業展開を説明してくれた、代表取締役の佐藤氏。

 まずは、海外ゲームの国内パブリッシングを決断するに至った経緯を、佐藤氏に伺った。同社では『桃色大戦ぱいろん』シリーズの配信がちょうど夏に終了したこともあり、つぎの展開として、このタイミングでの新規事業発表となったとのこと。
 「『桃色大戦ぱいろん』の終了を決めたころから、何か新しいことをやろうと、準備をしていました。そのなかで海外のSteamなど、日本にはない盛り上がりがあることに注目し、それをぜひ日本にも広めたいという気持ちから、海外との提携に目を向けたのがきっかけになります」という。海外の良質ソフトを国内に紹介したいということが、今回のプロジェクトの根幹にあるという。その背景には、スマホアプリのようなライト層向けゲームのトレンドがひと巡りし、ミドル~ハードコアなファンが本格的なPCゲームを志向してきているという市場状況もあるようだ。
 「本当にゲームを好きな人たちの心に刺さるようなゲームをご提供できればと考えています。将来的にタイトルが増えれば、ポータルサイトなども展開していきたいです」(佐藤氏)。

 佐藤氏によると、こうしたグローバルな展開のプランは早くから検討しており、海外の注目ゲームメーカーのHPにメールを送ってアプローチするなど、地道な下準備をずっと進めていたそうだ。
 「とくにコネがあるわけではなく、いわば正面突破ですね。われわれは日本の東京にある会社で、ついては御社に興味があり……といった内容で、多くの会社にメールをコツコツ送りました」という佐藤氏。Datcroftもそのなかのひとつだった。
 「彼らの拠点はモスクワですが、いまは通信技術も発達していますし、思ったほど“距離”はなかったですね。またDatcroftさんは、日本の会社と取引されていた経験もあったので、非常に友好的に接していただき、話がスムーズに進みました」と佐藤氏は語る。結果、今年になってから交渉はトントン拍子に進み、このほどパートナー関係が実現する運びとなったわけだ。もちろんほかにも、現在は30社ほど、多数のメーカーとの交渉が進んでいるという。

 多くの海外ゲームメーカーから、Datcroftを第1弾のパートナーとして選んだ要因を、ここで佐藤氏に伺ってみた。
 「1タイトルだけが突出して優れているというわけではなく、いろんなジャンルで良作がそろっている会社なんです。バラエティー豊かな作品を提供できるという意味でも、ぜひ提携させていただきたいと思いました。ちなみに、社長がイケメンで、絵になる方で……(笑)。日本でメディアに出たら、人気が出そうです」(佐藤氏)。

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▲佐藤氏と握手を交わしている左の人物が、Datcroftの社長。

 ちなみに佐藤氏は、海外メーカーの発掘という意味でも、海外のゲームイベントにはなるべく足を運ぶようにしているという。最近ではChina Joy(中国・上海)、gamescom(ドイツ・ケルン)など。イベントの印象を聞いてみた。
 「China Joyは、とにかく暑かったですね(笑)。gamescomもそうですが、ゲームを見て気になったブースには、積極的にアプローチしました。というのは、最近のイベントを見て思うことなのですが、どこの国がどうとかは、関係ないということです。以前は、ゲームは日本や北米がリードしていたかもしれませんが、いまはアイデアしだいで、どこの国にもチャンスがあります。とくにこのふたつのイベントでは、インディーズの方々が出展されていたVRタイトルのクオリティーが高く印象的で、刺激を受けましたね」(佐藤氏)。

第1弾はバラエティーに富んだ4タイトル

 エクストリームが、海外ゲームの国内パブリッシング事業を進めるに当たって最初に選んだパートナー・Datcroftは、前述の佐藤氏のコメントにある通り、ロシアのモスクワを拠点としたゲームメーカー。欧米・北米・アジアなどの幅広いエリアに向け、積極的にゲームを開発・運営している新進パブリッシャーだ。今回まず日本でリリースされるのは、以下に紹介する4タイトルとなる。

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[1]フルーツ・フォレスト

ジャンル:マッチ3パズルゲーム
事前登録開始:2016年10月中旬予定
リリース時期:2016年10月下旬予定

プロジェクトの第1弾投入タイトルとなる本作は、親しみやすいビジュアルと、レベル100以上の豊富なステージ設定が特徴のパズルゲーム。カジュアル向けの内容だが、キャラクターの育成や高い戦略性など、奥深い要素がそろっている。

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▲動物をモチーフとしたキャラクターが愛らしい。

[2]バトルドラゴン~いにしえの財宝~

ジャンル:ストラテジー型シミュレーションゲーム
リリース時期:2016年11月上旬予定(世界同時配信)

自身のドラゴンが住む空中島を繁栄させながら、相手のドラゴンとのバトルをくり広げていく、ストラテジー要素が強いシミュレーションゲーム。20以上の島、100以上のアイテムなどの育成・進化要素もあるなど、ボリューム面も充実している。

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▲さまざまなタイプのドラゴンが育成できるようだ。

[3]ガンズ オブ レクイエム

ジャンル:MMOシューティングゲーム
リリース時期:2017年春予定

北米において累計500万ダウンロードの実績があるマルチプレイ対戦型のシューティングゲーム。操作が簡単で一戦ごとのプレイ時間も短く、気軽に遊べるのが特徴だ。“2015年モスクワ DevGAMM”でベストオンラインゲーム賞に輝くなど、数々の賞を受賞。

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▲キャラも濃く、マルチ対戦は大いに盛り上がりそう。

[4]FRGORIA plus(フラゴリア プラス)

ジャンル:MMORPG
リリース時期:2017年春予定

Datcroftを代表する、ハイクオリティーなグラフィックスを誇る正統派MMORPG。かつて2009年にアクワイアより日本でもサービスが展開されていたタイトルだが、大幅なリニューアルが施されたシリーズ最新作が、今回満を持して日本再上陸となる。

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▲美麗グラフィックスに注目の、壮大なMMORPG。

 各タイトルは、PCでのブラウザソフトとして、フリートゥプレイでのサービスとなる予定。その後のスマホアプリなどへの展開は未定で、まずはリリース後の反響しだいといったところだろうか。また日本向けのローカライズに関しては、エクストリーム社が担当。「日本向けの味付けは、ケースバイケース」(佐藤氏)ということだが、今回は基本的にはオリジナルのままでアレンジは加えず、キャラクターの修正などもとくには追加していないそうだ。

新社屋で社員の士気もさらに充実

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 新たな事業の発足にあたり、それが今後どんな広がりを見せていくのかという点も気になるところ。佐藤氏によると、もちろんタイトルは充実していく予定で、今期中(2017年3月末)までには新たに3~4社との契約締結を目指し、10タイトルを目標に、順次新タイトルを配信してくという。加えてそうしたタイトルをまとめた“新ブランド”を立ち上げ、ファンのコミュニティーの場となるような自社ポータルサイトの運営も、将来的には視野に入れていくとのことだ。
 「ファン交流の場としてのサイトを作り、攻略動画がアップされたりするなど、そのゲームシーンがさらに盛り上がるような展開を考えています」(佐藤氏)。

 あわせて佐藤氏が考えているのが、eスポーツの展開。ネットのみならず、実際のリアルイベントも開催したい想いがあるとのことだ。
 「リアルなeスポーツが体験できる場所を、日本で作ってみたいなと思っています。たとえばバーで、片隅でお酒を飲んでいる人がいれば、片隅でVRを楽しんでいる人がいるような、本当にリアルな場所ですね。最初はイベントという形になるかもしれませんが、実現できればと思っています」という佐藤氏。強調するのは、ライブイベントとしてユーザーが体験することの楽しさ。たとえば有名なプロゲーマーのプレイは、大々的なeスポーツの決勝大会など、ネット画面ではいくらでも見ることができる。でも、本人が実際にその場にいて、そのプレイを真近で見られて会話ができるとしたら、ネット観戦とは違う魅力や楽しみがそこにはあるはずだ。

 そうしたエクストリームの、今後への意気込みを示すひとつの象徴的な事例が、新社屋への移転だ。この9月20日に、東京・池袋駅と直結するオフィスタワーの最上階に居を構え、職場環境はさらに充実した。会社の体制をステップアップさせることで、より優れたゲームや、新しいムーブメントの誕生につなげていきたいという方針だ。
 自慢の施設は社員の交流エリア“Co-CORE”(ココア)。ここには社員が技術研修を受けられるセミナールームや、VR体験コーナーなどがあり、なかでもVRは大人気だとか。
 「社員が集える場所を作らなければいけない、という想いがずっとありましたて。このエリアは夜10時まで解放しています。レトロゲーム、ダーツ、VRなど、みんながいろいろと、仕事以外にも集える場所となっています」(佐藤氏)。ちなみに“Co-CORE”の“Co”はカンパニー、“CORE”は核で、会社の核という意味なのだとか。
 「ここで、なんか海外っていまおもしろいよね、という話が出たのがきっかけとなり、じゃあやろうよ、となって今回のプロジェクトも実現しました。ですので、今回の新事業は、ここから生まれたと言っても過言ではないかもしれません」(佐藤氏)。

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▲ダーツなど、さまざまな娯楽が楽しめる“Co-CORE”。社員がリラックスできる重要なスペースだ。
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▲社員研修用のセミナールームには最新機材が並ぶ。
▲VR体験コーナーには、もうすぐPS VRも設置される予定だ。

 海外人気作の国内パブリッシングという、新たな方向性を示したエクストリーム。最後に佐藤氏に、今後の展開などを含め、読者に向けてメッセージをいただいた。
 「『桃色大戦ぱいろん』が終了して、つぎはどうするの? とヤキモキしていたかたもいるかもしれませんが、今後は世界中の人気作を積極的に紹介していきたいと思っています。いずれ世界からも注目されるようなサービスにするつもりで、まずは第1弾をリリースしますので、ぜひともプレイしていただきたいです。ご期待ください!」(佐藤氏)。

 最後の最後にオマケで、ファンならやっぱり気になる、“メサイヤ”ブランドの今後についてもちょっぴり聞いてみた。
 「“メサイヤ”については『超兄貴』ですとか『ラングリッサー』ですとか、ライセンスの問い合わせは多くきていまして、マーベラス様の『剣と魔法のログレス』と『超兄貴』とのタイアップも実現しました。そのほかもいろいろと企画は検討中であり、べつにメサイヤブランドを忘れているわけではありません。発表できる時期が来れば発表したいと思っています」(佐藤氏)。
 どうやら“メサイヤ”ブランドは健在で、今後もいろいろと展開していく様子。ファンはぜひ、ご安心あれ!