これは確かに新しいQuakeだ!

 テキサス州ダラスで行われたid Softwareのファンイベント“QuakeCon”最終日、会場限定で同スタジオの最新作となるPC用オンライン対戦FPS『Quake Champions』の実機デモプレイが披露された。

 デモは『Quake』シリーズのトッププレイヤー10人による5on5のチーム戦で、直前に同会場で行われた『Quake Live』のDuel(1on1)決勝で壮絶な戦いを見せたRapha選手とevil_選手のほか、伝説的プレイヤーのFatal1ty選手なども参加。競技ゲームとしての『Quake』を知り尽くした男たちがシリーズに新たな新機軸を盛り込もうとする『Quake Champions』に挑むという、超豪華なエキシビションとなった。

『Quake Champions』世界トッププレイヤーによる最新FPSの実機デモを目撃! 『Quake Live』決勝リポートとまとめてお届け【QuakeCon】_02

 というわけで、世界初となる公開エキシビションマッチで判明したことをお伝えしよう。なお本作は2017年に海外でクローズドβテストを行う予定で開発が進められており、今回のデモはその遥か手前の段階のもの。まったくもって最終仕様ではないという前提でご理解頂きたい。

 『Quake Champions』では、プレイヤーはさまざまな“チャンピオン”を選択して戦闘に挑む。各チャンピオンは、“Ranger”ならオーブを放って任意のタイミングでその場所にワープできる技、“Visor”なら敵の位置の透視、“Nyx”は姿を消す能力、“Scalebearer”は猛スピードでの突進といった具合に固有の特殊能力をひとつ持ち、使用後は画面中央下部のタイマーがゼロになると再度利用可能になる。

『Quake Champions』世界トッププレイヤーによる最新FPSの実機デモを目撃! 『Quake Live』決勝リポートとまとめてお届け【QuakeCon】_05
▲実況はレンジャーのワープが他プレイヤーに重なると一撃死させることができると言っていたが、マジなのか?

 そして試合を見ていた限りでは、チャンピオンは特殊能力だけでなく、ヘルスとアーマーの最大値なども異なる(ただし旧作でメガヘルスを取った時と同様、上限を超えているシーンもあった)。チャンピオンはリスポーン時に切り替えが可能なようなので、ゲームモードとシチュエーションに合わせて選んでいくのが基本になるのかも。

『Quake Champions』世界トッププレイヤーによる最新FPSの実機デモを目撃! 『Quake Live』決勝リポートとまとめてお届け【QuakeCon】_03
▲QuakeConで参戦が判明したチャンピオンAnarki(Quake IIIから登場)は、ヘルス75のアーマー25というキツ目の数字が表示されていた。例えばレンジャーは100/50だ。

 一方で、武器の扱いはこれまでと同じ。初期装備以外の武器はマップ内の特定のポイントに湧くのを取るか、相手プレイヤーを倒して回収するという方式で、保持できる武器の数に制限はない。登場武器自体も今のところ、マシンガン、ショットガン、ネイルガン、ロケットランチャー、ライトニングガン、プラズマガン、レイルガン、そして近接のガントレットと、『Quake』シリーズ定番の物で固められていたように見えた。

『Quake Champions』世界トッププレイヤーによる最新FPSの実機デモを目撃! 『Quake Live』決勝リポートとまとめてお届け【QuakeCon】_04

 ゲームモードは基本的なチームデスマッチ以外に、新モードとなる“Sacrifice”を公開。これはマップ内に2箇所ある“オベリスク”(Aポイント、Bポイント)を確保してポイントを稼いでいく占拠系のモードだ。オベリスクは一定範囲内に滞在することで確保でき、あとは奪われるまで一定時間ごとにポイントが入っていく。
 ABポイントをどちらも確保するとポイント3倍になるので、攻撃力が著しく上昇するクアッドダメージを取った時に一気に両取りを狙っていくシーンが多く見られたが、残念ながら瞬殺されて終わることが多く、綺麗に決まることはあまりなかった。まぁ、お互い異常な反応速度の持ち主同士の対戦なので、(初見ではないとはいえ)マップ研究も連携も深まっていないこの段階では仕方がないかもしれない。

 すでにお伝えしたように、ロケットジャンプ(ロケットランチャーを足元に放ち、爆風でハイジャンプする)などのシリーズ定番のテクが使用可能で、全体的に高速&高機動な設計。目まぐるしく動きまわりながら、「ここに相手プレイヤーが出てくるだろう」という場所に先手でロケランやレイルガンを放ってキルするといった『Quake』らしいシーンも連発だった。
 記者の周囲のFPS関係者何人かに話を聞いたが「新しいし、ちゃんとQuakeしてるね」といった感想が多数。『Overwatch』などで新たな定番になりつつあるキャラクター制を採用しつつ、競技性と規模を兼ね備えた新たな『Quake』コミュニティを構築できるか、今後に注目したい。

『Quake Live』決勝は近年最高と名高い死闘に

 続けて、『Quake Live』のDuel(1on1)決勝の模様もお伝えしよう。決勝は、シードから順調に勝ち進んでウィナーズブラケットを制したRapha選手と、そのウィナーズブラケット決勝で3-0でRapha選手に敗れるも、ルーザーズブラケット決勝でk1llssen選手を破って復活してきたevil_選手の再戦の形(ウィナーズブラケット勝者のRapha選手が有利)。

 ゲーム1は、試合時間10分の終盤をevil_選手が0-2のリードで迎え、早速ひとつ借りを返す……かと思いきや、残り15秒でRapha選手がひとつキルを取り、さらに逃げるevil_選手を捕捉してライトニングガンで削りきり、残り2秒で2-2のタイに並んでオーバータイムに突入。逃げきれなかったevil_選手は立て直せず、最終的に3-1のスコアでRapha選手がファーストマッチを取って一気に王手に。

 しかしゲーム2は逆の展開になる。Rapha選手が3-1でリードするものの、3-2に並ばれ、さらに混戦の中で自死扱いになって2-2に並ばれてしまい、ふたたびオーバータイム。オーバータイムでは、基本的にevil_選手がメガヘルスなどをおさえて優勢に進め、ライトニングガンでRapha選手をあと少しまで追い詰めるシーンが続くも、最後の一撃が決まらず逃げられるという展開が続く。
 そんな流れのまま、なんとオーバータイムは7回目に突入。ここで逆転の流れを掴んだのは、数度の瀕死状態を切り抜けたRapha選手。立て続けにevil_選手を倒して4-2までスコアを進めるが、今度はevil_選手が見事なレイルガンで撃ちぬいてひとつ返し、残り数十秒でふたたび4-4のタイに戻してオーバータイム8へ。最終的に決着がついたのはオーバータイム9。スコア6-4でevil_選手が食らいつく。

 そして続くゲーム3を制してevil_選手が取得ゲームの合計2-2でタイに並ぶと、お互い最後まで諦めない死闘にRapha選手への「USA!」コールと、evil_選手への「Let's Go evil!!」コールが湧き上がり、場内は大興奮。

 お互い優勝にリーチをかけたゲーム4は、3分ほどの膠着を経て、最初にキルを取ったのはevil_ 選手。しかしその交戦で体力が削れていたため、Rapha選手がすぐに取り返して並ぶ。決め手となったのは、ふたたびevil_選手に1-2でリードされ膠着しかけた所から出合い頭を制したRapha選手のロケラン2発。まずは2-2に並び、そのままメガヘルスやアーマーを制し続け、一気に5-2まで引き離す。evil_選手はそれでも諦めずに残り50秒で5-4まで戻し、最後のメガヘルスを取って猛追を仕掛けたが、Rapha選手がそのまま逃げ切り、自身5度目の優勝を飾った。

『Quake Champions』世界トッププレイヤーによる最新FPSの実機デモを目撃! 『Quake Live』決勝リポートとまとめてお届け【QuakeCon】_01
▲あまりの激闘に、コメントを求められて言葉に詰まるシーンもあったRapha選手。見事1万2000ドルを獲得した。