収録リーグなどは夏に発表予定

 エレクトロニック・アーツのサッカーゲームシリーズ最新作『FIFA 17』。ゲームエンジンをバトルフィールドシリーズのFrostbiteに移行し、新モード“The Journey”を追加するなど、さらなる進化を遂げた本作について、クリエイティブ・ディレクターであるMatthew Prior氏に話を聞いた。すでにお届けしているプレイリポートと合わせてチェックされたし。


Jリーグの噂、新モードについて

『FIFA 17』クリエイティブ・ディレクターにインタビュー。Jリーグ収録の噂から新モードの仕様までいろいろ聞いた【E3 2016】_02

――今年はじめ、エレクトロニック・アーツがJリーグのトップパートナーになることが発表されました。もちろん、契約は契約、ゲームはゲームで基本的に別のことですが、これがFIFAシリーズにJリーグが収録される予兆だと考える人もいます。何かいい発表が来る期待をしてもいいんでしょうか、あるいはしない方がいいんでしょうか。
Matthew Prior (やっぱりそこを聞きたいよね、という顔で)それについては話せないんだ。収録チームやリーグのライセンスについては、夏に入ってから発表できる、とだけ言っておくよ。

――今回、The Journeyモードが新要素として登場します。キャリアモードを選手でプレイするのと少し似ていますが、よりストーリー性が強化されたモードになっていますね。しかし、たとえばプレイヤーにキャラクターを作らせるのではなく、アレックス・ハンターという架空選手を固定の主人公に持ってきたのはなぜでしょうか。
Matthew この点については、数年前にこのモードについて検討した際にもよく議論した。まずはビジュアルの密度、外見のもっともらしさが理由のひとつだ。ユーザーが作ったものと我々が作って提供するものでは基準のレベルが違ってくるからね。ルーキーがステップアップしていくストーリーを真実味を込めて描くうえで、外見だけを考えてもできるだけよく見えるものにしたかった。だから固定のキャラクターにしたんだ。Frostbiteはとてもパワフルなゲームエンジンだから、そうすればかなり没入感のある人物像を提示して、プレイヤーを驚かせることができる。

『FIFA 17』クリエイティブ・ディレクターにインタビュー。Jリーグ収録の噂から新モードの仕様までいろいろ聞いた【E3 2016】_05

Matthew もうひとつの理由は、固定のキャラクターならば、観衆に彼の名前を叫ばせたり、彼の話をしたりするように、もっとフォーカスした演出ができるということ。もちろんプレイヤーを作りたい人がいるのもわかるけども、実際に今のやり方でテストしてみると、彼(アレックス・ハンター)として時間を投資してプレイしていくうちに、多くの人が感情移入できることがわかった。
 一方で、自分でプレイヤーを作ってマンチェスターに入れたければ、それはプロモードでできる。この方法はなくしていないからね。でもこのモードでは限界があって、結局は自分のキャラを作った場合でも、例えばアグエロとしてサッカー人生を送っていくのも、どっちでもできるような作りなわけだ。

――ということは身長や体重、顔、肌の色といったものは変えられないんでしょうか。ポジションはどうですか?
Matthew 彼は固定のキャラクターなので、数値が決まっているものは変更できない。でもポジションは変えられる。できるだけ面白いストーリーにしたかったので、全ポジション対応にすることでバラバラになって薄くならないよう、アタッカーのポジションに限定したけど、ウィンガーでも、ストライカーでも、セントラルMFでもなれる。

Frostbiteエンジン採用について

――Frostbiteへの移行はどうでしたか? スムーズに行きました?
Matthew 非常に大きな転換で、長い時間をかけてやってきた。ここまで大きなテクノロジーの変更となると、必ず障害があるからね。チャレンジはもちろんあったけど、うまくこなしてきたと思う。その成果はすぐにわかってもらえるはずだ。この冒険なしにはゲームはここまでよくなっていない。大変な仕事だったが、やってよかったし満足している。やりがいがあったよ。

――EA Sportsブランドとしては『Rory McIlroy PGA TOUR』でFrostbiteを採用していますね。そのことによるメリットはありましたか?
Matthew Frostbiteのいいところは、他のチームと一緒に仕事を共有出来ることだ。仕事が早くなり容易になり、素材もシェアできる。PGAからは芝生を参考にした。3Dの芝がよくできていたので、こちらにも持ってこれた。

――ちなみに『Rory McIlroy PGA TOUR』みたいに、バトルフィールドの戦場でサッカーができるみたいなコラボは?(※『Rory McIlroy PGA TOUR』にはバトルフィールドの戦場でゴルフできるおまけ機能がある)
Matthew (オフィシャルで契約している)スタジアムを破壊できないから無理だね(笑)。メリットは効率が良くなるということ。プレイヤーにクールだと思ってもらえるものを、これまでより短い時間で届けられる。これまで技術開発にかかっていた時間をもっと直接的に使えるのは我々にとっても、プレイヤーにとってもいいことだと思う。

『FIFA 17』クリエイティブ・ディレクターにインタビュー。Jリーグ収録の噂から新モードの仕様までいろいろ聞いた【E3 2016】_01

――Frostbiteはいろんなジャンルで使われていますが、基本的にはFPSのエンジンですよね。FIFAで使うにあたってFrostbiteチームへのリクエストなどをやったんですか?
Matthew そう、まったく違うゲームだから、他のチームには必要ないもの、FIFAだからこそ必要とするユニークな機能を入れる必要があった。エンジンのチームは素晴らしい仕事をしてくれていると思う。『ニード・フォー・スピード』もそうだけど、それぞれゲーム固有のユニークなものを要求するわけだからね。

――ところでEA Sportsで以前大々的に採用したIgnite Engineには何が起こったんですか?
Matthew Igniteはさまざまなツールを集めたもので、当時は素晴らしいものであり、移行したときに色々言ったメリットや長所は本当だった。あれなしには今のゲームプレイもここまで良くなっていないと思う。だがFrostbiteはそれを超えた異なるレベルに持っていける完全なゲームエンジンであり、さらに進化しているんだ。
 IgniteでThe Journey用にロッカールームやアパートなどのシーン環境を作ることもできただろうが、時間も労力も必要だったと思う。多分、毎年のスケジュールには合わなかったろうね。Frostbiteではこれが可能だった。クリエイティビティのドアが開き、これまでできなかったことが出来るようになったと言える。

『FIFA 17』クリエイティブ・ディレクターにインタビュー。Jリーグ収録の噂から新モードの仕様までいろいろ聞いた【E3 2016】_06

その他の新機能、デモの予定について

――今年のカバーアスリートは、リオネル・メッシから4人の若手スターになりました。
Matthew 新しいFIFAの誕生となる重要な年なので、若くてエキサイティングなプレイヤーに未来を象徴させたかったんだ。それだけじゃなくて、4人はそれぞれ新たな要素の象徴でもある。ハメス・ロドリゲスは新操作を入れたセットプレイ、アザールはフィジカルプレイ、マルシャルは新シュートやスルーパスのアタッキングテクニック、ロイスはスペースを見つけてアタックしていくAIシステムといった具合にね。

――実際に発売されるカバー(パッケージビジュアル)は各リージョンによって選手が変わるのが通例ですが、今年はどうなりますか?
Matthew カバーなどについても、この夏に徐々に発表していくことになる。

『FIFA 17』クリエイティブ・ディレクターにインタビュー。Jリーグ収録の噂から新モードの仕様までいろいろ聞いた【E3 2016】_04

――今年の改善点では、セットプレイのオーバーホールなんかは遊んでいてすぐに気が付きました。新しいコーナーキックがいい感じです。
Matthew コーナーキックはいいよね。自由とクリエイティビティを提供したかった。どこでも蹴りたいところを選んで、プレイヤーをそこに走りこませることができる。基本的にセットピースは現実のサッカーと同じようにゴールへの期待が高まるよう、エキサイティングにしたいんだ。

――自分はコーナーからの展開が苦手だったんで、ショートコーナーなんかに頼りがちだったんですが、今回は叩きつけるヘディングや、低弾道フィニッシュも追加されてるんで、何かを起こせそうな感じがします。
Matthew そこが重要だ。以前は低くハードに打つのは難しかったからね。自分もよく使うよ。

『FIFA 17』クリエイティブ・ディレクターにインタビュー。Jリーグ収録の噂から新モードの仕様までいろいろ聞いた【E3 2016】_03

――新機能の“精密スルーパス”と通常のスルーパスの違いについて説明してもらってもいいですか。
Matthew 例えばミッドフィールダーとアタッカーがここにいて、ディフェンダーがここ(間)にいるとする。これまでのスルーでは直線的に蹴るので、スペースが空くのを待つか、一か八か蹴るッて感じだった。でもそこで精密スルーパスだと、スペースに向かってカーブをかけて蹴ったりするんだ。実際のサッカーでよくあることだよね。今回はそれができるようになった。攻撃の要素のひとつだけど、より本物に近付けられたと思う。

――では最後に、さまざまな新機能・改善点のなかで、自分がひとつピックアップするとすればどれですか?
Matthew ゲームエンジン、モード、そしてよりクールなゲームプレイのための要素。3つとも同じように重要なので、選ぶのは難しい。しいて言えば、The Journeyかな。クリエイティブ・ディレクターとして、これには一番投資した。これまでやったことのないモードを導入するのは難しいし、新しい領域の専門知識が必要だったので、いろいろ学習や下調べもやったよ。個人的にはこれをおすすめしたい。でもたくさん見せたいものがあるんだ。今回は最初の発表という形で、これからいろいろ出していくよ。(例年通りデモは出ますか?)もちろん。