期待作を多数抱える野村氏の動きから目が離せない!

 アメリカ・ロサンゼルスで2016年6月14日~16日(現地時間)にかけて開催されるE3に先駆け、ひと足早くトレーラーを公開した『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナル チャプター プロローグ』(以下、『KH2.8』)。発売時期が2016年12月と公表された本作について、E3会場で触れることのできた試遊版や、最新映像の内容、そしてシリーズの動きなどを、ディレクターを務める野村哲也氏に直撃。野村氏が手掛けるそのほかのタイトルについても、少しずつではあるがコメントをいただいた。

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【『KH2.8』収録作品】
キングダム ハーツ 0.2 バース バイ スリープ -フラグメンタリー パッセージ-(完全新作、文中はKH0.2
キングダム ハーツ ドリーム ドロップ ディスタンス HD(HDリマスター化作品、文中はKHDDD
キングダム ハーツ χ(キー) バックカバー(新規映像作品、文中はKHχ バックカバー

野村哲也氏が語る『キングダム ハーツ HD 2.8』! 『FFVII リメイク』も順調に進行中【E3 2016】_11
▲『KH』シリーズを始めとする多くの期待作を手掛ける野村哲也氏(文中は野村)。

あらゆる部分が進化してボリュームも十分な『KH0.2』

――『KH0.2』、試遊させていただきましたがすばらしいデキですね! まずグラフィックに目を奪われました。ただリアルなだけではなく、『KH』らしくも新しさがあって。

野村 よかったです。『KH0.2』は、シリーズで初めてライティングを取り入れた作品で、ライト次第で見た目はかなり変わってくるので最後まで調整はしますが、方向性はお見せすることができているかなと。Unreal Engine 4の開発元の方々ともしっかりと組ませていただいています。

――それは心強い。今回試遊できたのは、製品版の冒頭の部分ですか?

野村 はい。冒頭のプレイ部分を切り取ったものです。場所はシンデレラ城の城下町ですね。

――高低差があったり、入り組んでいたりして、まるで町を探索するような感覚が楽しめました。

野村 入り組んでいるところは迷いやすい一方、高いところへ行けば、そこから全体を俯瞰することで位置関係を把握できたり、ギミックを見つけられるといったマップになっています。移動も低い段差はオートで乗り越えたり、『KHIII』と同じ仕組みで、フリーランが可能なように作っています。

――この町は、時が止まっているようでしたが、闇の世界は全般的にそうなのでしょうか。

野村 このマップだけですね。進めば違うエリア、違う遊びがあります。“闇の世界をアクアが冒険する”というのがどういうことなのか、これまではわからなかったと思うんですが、この場所ではいろいろなワールドが……闇に飲まれた世界が融合しています。試遊していただいたパートの後、シンデレラ城に入っていくと違うワールドがあり、そこを抜けるとまた違う場所に出て、といった具合です。

――そのままシンデレラ城を探索するわけじゃないんですね。試遊版では最後にテラが登場しましたが、幻のようなものだったのでしょうか。

野村 どうでしょう(笑)。そのあたりは実際に製品版をプレイしてみてもらえればと。

――城下町では、歯車のギミックを作動させて時を巻き戻していきましたが、仕掛けを動かすたびに新たな能力がどんどん開放されていって、テンポが早いなと。これも製品版と同じなのでしょうか?

野村 そうです。『KH0.2』はこれまでのシリーズのようなフルボリュームではないので、早い段階でいろいろなシステムが開放されるようになっています。バトルは『KH バース バイ スリープ』(以下、『KH BbS』)のデッキコマンドではなく、『KHIII』を踏まえた仕様になっています。

――スタイルチェンジ(コマンドスタイル)やシュートロックなど、『KH BbS』の要素もありました。

野村 そのふたつは『KHIII』にも採用していますが、『KH0.2』においては『KHIII』とも『KH BbS』とも少し違っています。『KHIII』でも任意発動にはなっていますが、スタイルチェンジは基本的にキーブレードに依存したものになっていて、『KH0.2』ではアクア自身に依存しているので『KH BbS』とのハイブリッドですね。シュートロックに関しても『KHIII』のほうができることが多いですが、『KH0.2』は『KH BbS』に寄ったものになっています。

――なるほど。もうひとつ、進化が著しかった要素が魔法です。派手かつ便利になっていました。

野村 ただダメージを与えるだけでなく、ブリザガであれば敵やフィールドを凍らせてその上を滑ったり、サンダガなら感電で硬直させたり。戦術的に使えるようになっているのが特徴です。

――フィールドのザコ敵も目新しく、シャドウ以外に3種類ほど新しいものがいました。とくに印象深いのがシャドウの集合体の敵です。ヌルヌルした動きをして……ちょっとキモかったんですが(笑)。

野村 あの状態のシャドウのことは、デビルズウェーブと呼んでいます。『KHIII』の最初のトレーラーに出ていたやつです。ただ、まだフルパワーじゃないですけど。

――“まだ”? 

野村 今回は序盤なので。フルパワーはすごいことになりますよ(笑)。

――それはちょっとイヤですね(笑)。アクアもそれに対抗できるように、育成や強化などができるのでしょうか。

野村 レベルアップによるパラメーターの上昇など育成要素はあります。

――新しいキーブレードが手に入ったりは?

野村 キーブレードは、エラクゥスから継いだ“マスターキーパー”のみです。

――『KH0.2』ではキーブレードではなく、スタイルの変化でバトルのバリエーションを出すわけですね。ちなみに、やり込み要素のようなものも?

野村 コレクション要素というか、ゲーム進行とは別のカスタマイズ要素があります。

――なるほど。思いのほか、やれることが多い印象です。プレイボリュームは、どれくらいになりそうでしょうか。

野村 当初は1ワールド分くらいと言っていたのですが、最初から最後までつなげたウォークスルーをチェックして、「これは遊び応えがあるな」と感じています(笑)。なかには、「30分程度で終わる体験版くらいかな?」と思っている方もいると思いますが、そんなことはぜんぜんなくて。ストーリー進行もあり、カットシーンもたくさん入っていますので、ワールドの数こそ多くはないですが、新しくなった『KH』を十分に楽しんでいただけると思います。

――そこまで本格的な作品だったとは!

野村 お話としてもけっこう重要な位置づけの作品ですよ。『KH 3D[ドリーム ドロップ ディスタンス]』(以下、『KH3D』)と『KH0.2』のシナリオは、本来、『KHIII』のプロローグとして考えていたものですし。『KH2.8』の収録作品を検討しているとき、『KHIII』よりも早く現世代機の『KH』を遊んでほしいと制作を決めたのが『KH0.2』でした。ストーリーは『KH3D』、『KH0.2』、『KHIII』とつながっています。自分の中では、『KHIII』は『KH3D』から始まっているんです。そういう意味で『KH2.8』のサブタイトルも付けています。

――『KH3D』のみならず、『KH0.2』にまでお話を持ってきてしまうと、『KHIII』のボリュームが減ってしまうのでは?

野村 持ってきたと言うより、『KHIII』内で語ろうとするとテンポが悪くなってしまう部分を分離させたという感じでしょうか。むしろ『KHIII』のボリュームが圧倒的で、削れる内容でもないですし、扱いに悩んでいた部分でもありました。それと自分としては、これまでRPGをたくさん作ってきて、ゲームをスタートしたら長い説明を聞かされるより、すぐに冒険を楽しみたいと思っていて、経緯説明的な導入部分を『KHIII』ではなるべく省略しようと思っていました。それらの意味で『KHIII』は、「ソラはなぜここにいるの?」と、比較的唐突に始るように感じるかもしれません。もちろん、遊んでいけば最低限の状況は把握できますが、。

――ん? 『KHIII』でソラがいる場所を疑問に思うということは、その直前の物語となる『KH0.2』にソラも登場する……?

野村 あー(笑)。ちなみに、『KHIII』は前置きは短く、すぐに始まりますが、久々にシリーズをプレイする方や、今回が初の『KH』になる方に向けてのフォローはきちんと考えています。ただ、詳細に経緯を語っているのは『KH3D』と『KH0.2』なので、『KHIII』を待つあいだに『KH2.8』をプレイしていただくと、ストーリーの流れが把握しやすいかと。これまで通り、旅立ちの前に詳しく把握しておきたい方は、『KH2.8』を遊んで備えておいていただくのがベストかと思います。

野村哲也氏が語る『キングダム ハーツ HD 2.8』! 『FFVII リメイク』も順調に進行中【E3 2016】_01
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