ソーシャルの力があれば、何の変哲もないことも楽しくなる

 日本時間の2016年3月16日、アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコで、PlayStation VRの発表会が行われ、価格や発売時期などが発表された。

 しかし実は発表自体はイベントの冒頭部分に過ぎず、後半は3時間以上たっぷりと各種デモが体験可能。その中で、VR空間内で交流する“ソーシャルVR”デモが面白かったのでご紹介しよう。

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▲手が使えるとなると握手とかハイタッチをなんとなくしたくなる。

 ソーシャルVRデモは総勢4人でのマルチプレイになっており、イベントでは解説役にガイドされて、さまざまな小ネタが仕込まれたエリアを巡回していくというツアー形式での体験ができた。
 各プレイヤーはPS VRを被り、両手にPS Moveを持ってプレイ。簡素な3Dアバターとして世界に降り立ち、操作・移動はすべてPS Moveで行う。ボイスチャットも可能だ。

 キモとなるのはMoveのトリガーとボタンの組み合わせで、さまざまな機能を実現している。例えば移動は進みたい方向を指し示し、Moveのトリガーを引くだけでオーケー。向きを修正したい時は自分がグルグル回転しなくても、Moveの×/○ボタンを押せばいい。スイーッと移動する際はちょっとだけ酔いを感じることもあるのだが、個人的にはほぼ無視できる程度。

 そしてもちろんフィールドに転がっている物を持ったり投げたりすることも可能で、それを利用したピンポンごっこや、超弾むボールを使って自分ごと空高く打ち上げるハイジャンプごっこ、全員で押すと怪獣が出現するトラップなども仕込まれていて、ゲラゲラ笑いながら楽しく遊んだ。こうして書くと割りと他愛もない内容なのに、コミュニケーションを取りながらだと楽しくなるのは、まさにソーシャルの力。

 そのいい補助となっているのがハンドジェスチャーだ。トリガーとボタンの組み合わせで人差し指や親指を立てたり、同時押しでゲンコツを作れて、さらにジェスチャーによってアバターの表情も変わる。
 なので、ニッコリ親指を立てたり、逆に雪球をぶつけられて親指を立てた手を逆さまにしてサムズダウン(親指を下に立てる)で怒ってみたり、(そういう機能があるわけでもないのに)やたらとハイタッチしたり、「YOU!!」と言いながら人差し指で指してハルク・ホーガンの真似をしたり、MCハマーの某曲を歌いながらカニ歩きしたり……と書くと年がバレるが、そんな感じに国際交流した次第。

 VRと聞くと、プレイヤーとキャラクターの視点が一致する個人性や、外からはどんな体験をしているのかわかりづらいといったことからか、孤独または個人的な体験と考える人もしばしばいるが、実はこういったソーシャル性は、VRのプラットフォーマー各社や周辺サービスを提供しようとしているメーカーが研究を進めている分野でもある。バーチャルにお互いがそこに存在することを実感できるようなコミュニケーションを成立させることができれば、そこには距離を超えた対面のやり取りという、VR時代ならではの新たなコミュニケーション領域が広がっているはずなのだ(あとはチェスや将棋などを楽しめるようにしたり、より複雑に拡大していけばいいだけ)。

 PS VRには外部スクリーンを通じてギャラリーにも体験の様子を見せたり、PS VRを被ったプレイヤーと“周囲の被ってない側”が非対称なゲームを楽しんだりするソーシャルスクリーン機能もあるし、VRの普及のためにはぜひこういった機能の研究も進めていって欲しいところだ。