“ファイアの日”にライブを満喫!

 1997年に発売された、プレイステーション用アドベンチャーゲーム『クーロンズ・ゲート』。九龍城を舞台としたストーリーや個性的なキャラクターの数々など、その独特な世界観から、伝説のカルトゲームとして、発売から19年経ったいまでも高い人気を集めている。
 2014年には完全版サウンドトラック、2015年には設定資料集、そして原画展の開催やゲームの再配信など、ふたたび大きな盛り上がりを見せる同作だが、このほど初のライブイベント“クーロンズ・ゲート コンサート 2016 九龍夜奏繪”の開催が決定した。今回、作曲者である蓜島邦明氏にお話をうかがうことができたので、コンサートに向けての抱負をうかがった。

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『クーロンズ・ゲート』の音楽を生で体感! コンサート“九龍夜奏繪”開催決定! 作曲家の蓜島邦明氏に聞く_03
『クーロンズ・ゲート』の音楽を生で体感! コンサート“九龍夜奏繪”開催決定! 作曲家の蓜島邦明氏に聞く_04
▲独特の世界観が魅力で、いまだに根強いファンを持つ『クーロンズ・ゲート』。
『クーロンズ・ゲート』の音楽を生で体感! コンサート“九龍夜奏繪”開催決定! 作曲家の蓜島邦明氏に聞く_02

 今回のコンサートは、ゲーム中に登場する廃劇場“天堂劇場”の在りし日のステージをテーマに設定。会場となる“東京キネマ倶楽部”は昭和初期のダンスホールをイメージした、レトロなライブハウスで、まさにイメージはピッタリだ。開催日はゲームの舞台となった5月22日“ファイアの日”で、その日にファンが集まり『クーロンズ・ゲート』世界の住人になって曲を聴くという、体験型のイベント感が強いコンサートになる。内容は2部構成となっており、作曲者である蓜島氏の曲はエレクトロな要素とクラシカルな要素のふたつのニュアンスがあって、2種類の音をそれぞれちゃんと強調して出してみたいというところから、2部構成になったとのことだ。

 なおこのコンサートでは、通常のチケットに加えて、プレミアム・セットが販売されるのも大きな特徴だ。プレミアム購入者には、ゆったりと会場を見渡せる2階席を用意。またリハーサルを見学できるほか、蓜島氏のサイン入りパンフレット、限定のピクチャー・チケットの発行、終演後の蓜島氏との交流タイムなど、さまざまな特典があり、ファン垂涎のゴージャスな内容となっている。

作曲者が意気込みをコメント!

 “クーロンズ・ゲート コンサート 2016 九龍夜奏繪”の主役的な役割を務めるのは、作曲者である蓜島邦明氏。CMからテレビドラマ、映画、ゲームなど幅広く活動を展開しており、『世にも奇妙な物語』のテーマ曲を手がけたことでも有名だ。その蓜島氏に、今回のコンサート開催についての心境を伺うことができた。
 
――今回、このコンサートの開催が決定して、率直にどんな感想を持たれましたか?
蓜島邦明氏(以下、蓜島) コンサートについては、決まるきっかけがちょっとあったんです。昨年“代官山まつり”というイベントのなかで、ライブをやった際に、新しい『クーロンズ・ゲート』の曲も演奏したんですね。そうしたら「クーロンズ・ゲートの、ライブをやりましょう!」というお話をいただき、「ありがとう!」と、抱き合って。それでちゃんと、企画を実現させていただきました。非常に感謝しています。

――10数年前のゲームが、昨年の原画展示会に、そして今回のコンサート開催となり、改めて盛り上がっています。このあたりはどう受け止めてらっしゃいますか?
蓜島 時代が、新しいサイバーパンクというものを求めているのでしょうか。いまは、すべてデザインが同じじゃないですか。音楽も似通っていて、すべてが何か平行線をたどっているでしょう。先に進もうという感覚がない。そのなかでも人間はやっぱり、おもしろさを求めますよね。原画展示会に来ていたお子さんたちも、18歳の方もいらっしゃったりして、けっこう若い。「どうして?」って聞くと、「お母さんがゲームを遊んでいた」とかおっしゃるんです。親御さんの遊ぶのをたまたま見ていて、印象に残ったようなんですね。そういう話を聞くと、なにか違う形のDNAの受け継ぎかたが、つぎの世代に来ているなという気もします。いま思うと、求めているものが、あのころは時代的にも早かったかもしれないですね。それがいまちょうど、なんとなくわかりやすくなって、「この世界観がおもしろい」と受け止められているのかもしれません。

――当時からやっぱり、特殊な作品だという印象はありました?
蓜島 マニアックですよね、このゲームは。絵にしろストーリーにしろ。だからそれぞれ、本当に才能があった人たちが集まったと思うんです。アーティストと言われる人間たちの、ひとつの結晶というか……、そんな気がします。

――当時、音楽をお作りになるにあたって、テーマやコンセプトというものに関しては、どうだったのでしょう?
蓜島 いちばん最初は、ソニーミュージックの担当の方から電話があって、『クーロンズ・ゲート』という香港を舞台にしたゲームを作りたいので、「テーマソングだけ、まず作ってくれ」と。ゲームの内容はよくわからなかったんですよ。それで1曲だけ作って、持っていったらみんな喜んでくれて……。当時は、アジアンゴシックというか、アフリカンリズムとか民族音楽というのが、これから出てくるなという予感があったので、それもやりたかったですし。『NIHGT HEAD』などもそうなんですが。それを打ち込みのデジタル化のなかにうまく溶け込ませてできたのが、『クーロンズ・ゲート』です。似非“闇のアジア”といった世界ですね。『ブレードランナー』じゃないですけど、フェイクのアジアを作ろうという思いがあったので。

――曲作りに関しての、思い出やエピソードなどはあります?
蓜島 曲は、楽器の音色で左右されるんですよ。だから『クーロンズ・ゲート』でも、「この場面で、こういう楽器を使いたい」と思うと、それによってぜんぜんできる曲が変わってくるんです。ムービーも、長いもので4分くらいあると、その世界観があるじゃないですか。そのなかでの音色にはこだわりましたし、時間もかけました。この時代はホラーゲームもけっこう頼まれていましたが、そちらの世界に引っ張られてしまうと、もっとダークなものができていたと思います。でも『クーロンズ・ゲート』だけは、妙に作っていてポップだったんですよね。だから『Happy Hour』という、中国語で歌っている曲があるんですけど、あれもそんな感じのポップさがとてもよく出ていますよね。

――印象に残っている曲とかはありますか?
蓜島 オープニング曲と、やっぱり『Happy Hour』ですよね。コンサートでは『Happy Hour』が、生歌で披露されますよ。中国語かもしれない歌詞で歌います(笑)。

――蓜島さんはいろいろな音楽を手掛けていますが、ゲーム音楽に対しての思いとか、魅力などについてはどうでしょう?
蓜島 ゲーム音楽はまず、制作期間が長いですよね。以前に手掛けた任天堂の『メトロイド アザーエム』も、1年半くらいかかったかな? でも最近のゲームの音楽は、やたらすごいオーケストラを使って、けっきょくはケータイで聴くというパターンも多いし、なんだかよくわからなってきています。似ているんですよね、音楽自体のすべてが、何か平行線をたどっていて。だからあまり最近は、聴こうとも思わないし、違うジャンルのほうがおもしろいなという気もします。

――こんなコンサートにとか、こんな演出がしたいとかは?
蓜島 いわゆるいままでの『クーロンズ・ゲート』を演奏するだけでは、おもしろくないじゃないですか。ゲームの内容自体、映像・音楽も、やっぱり本物だなと思うし、廃れないのですが、今度は新しい音楽を聴かせたいという思いもあります。ですので、編成は室内楽のカルテット、それとペットとトロンボーンとサックスのブラス系、それでやろうと思っているんです。あとは全部電子機材になります。おそらく即興から始まって、途中で新しい曲が生まれるような展開にもなると思います。それを来ているファンも体感できるというか、そういうこともやってみたいんですよね。

――ビジュアル的な演出は、どんな感じになるのでしょうか?
蓜島 スターダンサーズ・バレエ団の芸術監督・鈴木稔さんに演出を頼んだんですよ。それで、カルテットはダラス室内交響楽団のコンサートマスターである高木和弘さんが選んだ4人でやります。すごいメンバーですよ。あと注目は、2014年に出た『クーロンズ・ゲート オリジナルサウンドコレクション』でボーカルを担当してくれた王天戈さんがアメリカから来てくれて、その曲を歌います。

――いちばんの見どころ、聴きどころは?
蓜島 2部ですね。何が出るかわからないっていう内容になっています。『クーロンズ・ゲート』がライブで聴ける初の試みのなか、バックがカルテットというシチュエーションで、昔の『クーロンズ・ゲート』はアレンジされ、そのあいだに即興が入って新曲が生まれてきたり……。楽しい反面、「どこへ行っちゃうんだろう?」という思いを持たれるような気も、すごくしていますね。

――では最後に、心待ちにしているファンにメッセージをお願いします。
蓜島 「音楽を浴びに来てね」と。新しいものが生まれる瞬間を、きっと体験できるのではないかと思っています。

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●蓜島邦明氏プロフィール

 建築様式におけるオブジェ、様式美術に興味を持ち、デザイン彫刻を目指すも、そのマテリアル探求の過程で出会った“素材の出す音”に触発され、音を使った世界感で表現を確立したいと思い.作曲家となる。提供した楽曲数は数千曲にのぼり、そのジャンルはCM、テレビドラマ、ゲームソフト、アニメ作品、映画、美術館のテーマ曲やバレエ用楽曲と多岐にわたる。“恐怖感”、“緊迫した状況”、“微妙な心理状態”などを楽曲で的確に表現できる稀有な作家として日本の第一人者であり、独自のファン層から厚い支持を受けている。
 近年、作曲活動の幅を一気に広げ、日本の著名なほとんどの映画監督作品へ楽曲提供をするとともに、フジコ・ヘミング、デヴィッド・シルヴィアンなど世界的なアーティストとのコラボレーションも果たした。また手掛ける作品もフランス、中国、台湾等海外まで拡大している。2007年には『蟲師』(大友克洋監督)サウンドトラックが第40回シッチェス・カタロニア国際映画祭において最優秀映画賞.受賞。
 代表作は『世にも奇妙な物語』、『ナイトヘッド』、『クーロンズ・ゲート』、『スプリガン』、『MONSTER』『マスターキートン』、『ウルトラマンマックス』、『蟲師』、『TAROの堵』など。

【イベント開催概要】

イベントタイトル ーロンズ・ゲートコンサート2016 九龍夜奏会
日程 2016年5月22日(日)
オフィシャルサイト http://claricedisc.com/kg_con
会場 東京キネマ倶楽部
〒110-0003 東京都台東区根岸1丁目1−14
開場 17:00/開演18:00
チケット料金
一般 5,500円(税別)※整理番号順に入場。
プレミアム・セット 30,000円(税別)(数量限定)
※プレミアム・セットは座席指定。一般はスタンディングになります。
※ドリンク代別。

プレミアム・セットの販売は2月26日(金)22時よりクラリスショップにて開始。
 URL http://claricedisc.shop-pro.jp/
一般チケット抽選予約開始:3月12日(日)イープラスにて販売いたします。
 URL http://eplus.jp/sys/main.jsp