『クーロンズ・ゲート』の世界をたっぷり展示

“クーロンズ・ゲート 原画展”が開催中 往年のファン感涙の貴重な資料がいっぱい_01

 東京都内の中野ブロードウェイ2F・Pixiv Zingaroにて、2015年6月25日から7月7日にかけて、『クーロンズ・ゲート』の設定資料集発売を記念した“クーロンズ・ゲート 原画展”が開催中だ。オープン初日には、プレス・関係者向け内覧会が行われ、展示品などが確認できた。関係者のコメントとともに、その模様をリポートする。

 『クーロンズ・ゲート』は、1997年に発売された、プレイステーション用のアドベンチャーゲーム。九龍城を舞台とした深遠なストーリーやフリーキーなキャラクターなどが、当時のファンを魅了し、いまもなお一部でカルト的な人気を誇る作品だ。
 今回の原画展では、キャラクター設定原画や絵コンテなどの豊富な資料とともに、当時のグッズなどもあわせて展示。『クーロンズ・ゲート』の世界観がじっくり味わえる内容になっている。またもちろん、設定資料集『KOWLOON'S GATE ARCHIVES』ほか、各種グッズも購入可能だ。

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▲当時の貴重な資料の数々が展示された。
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▲ポスターは、当時のスタッフの顔写真を加工して制作したという。広告は、発売前日の朝日新聞の見開きカラー広告。
▲Tシャツやポストカードなど、多彩な関連グッズを販売。

 オープンに先駆けた内覧会では、キャラクターデザインを担当した井上幸喜氏も会場に駆けつけ、貴重なコメントをいただくことができた。以下に紹介しよう。

 「18年前、まだプレイステーションが出る前から、この企画に携わっていたんですけど、まさかほぼ20年経ってこういった機会に恵まれるとは、思っていませんでした。これくらいインパクトのある作品に関われたのは、自分もラッキーだったと思います。この『クーロンズ・ゲート』というちょっと奇妙なタイトルには、流行病(はやりやまい)みたいな、一回かかってしまうと二度と出られないような、味のあるというか深い世界があります。みんな一回見ちゃうと、一生お付き合いしていこうかな、というのが、『クーロンズ・ゲート』かなと思います。
 今回、こういう機会をいただき、設定資料集が出るというので、僕も最初は“そんなもの売れるの?”という感じだったんですが、とてもいい反響で動き出しています。ファンの方はぜひ20年前を思い出しつつ、また新しいプレイヤーの方は、ゲームという文化が始まったころの、歴史みたいな形で見ていただければ、僕としてもこういう業界で働いてきて光栄かなと思っています。
 まだ現役でゲームクリエイターをやっているのですが、なかなか周りに、同じ年になって業界にいる連中はいなくなってしまったので、とても悲しく思っています。だからこそ、少しおじさんパワーを見せるためにも、もう一回当時の感動とかときめきとかを、これで取り戻していただけたらなと、思っております。
 この資料は、人に見せるために描いた絵ではなくて、自分で確認するために描いたものがほとんどです。なぜかというと、自分で描いて自分でCGにして動かすという、いまでは考えられないことをやっていましたので。だからこそ外に出していなかったので、ぜひ、見ていただければと思っております」(井上氏)

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▲井上氏は、いまだに現役のゲームクリエイターだ。
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▲展示では、当時のグッズも目玉のひとつ。とくにフィギュアは、井上氏の個人所有のもので、世界にひとつだけの貴重なフィギュアだ。
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▲スカジャンは、当時のスタッフが着用していたものだそうだ。
▲ファン投票で上位にきたキャラクターの缶バッジ。個数限定品だ。

“病が治らない方々”へのうれしいプレゼント!?

 また会場では、ミニインタビューという形で、井上氏を取材することもできた。紹介してリポートを締めよう。その内容は、以下のとおりだ。

――まずは今回、設定資料集の発売や原画展開催にあたり、ファンへのコメントをお願いします。
井上 病が治らない方々へ、というところでお話しましょうか(笑)。多分もう、お墓に皆さん持っていくネタなのかなと思います。なかなか同じようなネタでずっと話せるものって少なくなってきたと思うんですけど、『クーロンズ・ゲート』をネタ元として、新しいコネクションというか、仲間を作っていただけたらなと思っています。「こういうのがあったね」という思い出を、ずっと持っていていただきたいというところです。

――印象に残っているキャラクターなどは?
井上  キャラクターデザインも、自分はこの『クーロンズ・ゲート』が初体験というか、初めての仕事で、何もわからずに描いていました。ですので、何が印象に残っているかというと、もう、全体ですね。全部、取りつかれてましたね、いろいろなものに。
 本当に少人数で作っていたので、製作には3年半かかったんですが、そのうちの2年半くらいは、人数が5~6名。だからこそ、発売日も延び延びになりましたし(笑)。

――デザインはこういうものにしたい、というコンセプトは何かありました?
井上 着地点を誰かが決めたわけではまったくなくて、何か大きなものに流されていましたね。とりあえずゲームの最後には何が起きるか、誰もわからないまま走り出して。最後は何が決め手になったかというと、ディスクのデータがそれ以上入らなくなって(笑)。永遠にそこの街を歩いてもらおうというのが、テーマでしたね。
 いまみたいに産業としてゲーム製作が確立するまえの時代だったと思います。アートというものも入れたいなと、僕らも思っていたころで、やっと文化としてゲームが動き出す、その最初の作品になれたらなという気持ちで作っていました。

――来場者は、女性の方が多い印象です。
井上  もともと女性のファンが多いゲームだったことは把握しています。なんででしょうね? ちょっとグロテスクで猥雑なところは、たぶん男性よりも女性の方が冷静に見て、楽しめるのかなと思っています。作っているのは自分のような男ばっかりだったのですけど、でもこれが卑猥だと思って作ってはいなかったというところが、女性受けしたのかなとは思います。また陰陽道であるとか、風水であるとかのネタ元も、女性に響くところがあるのかもしれないですね。

――設定資料集は、どのあたりが見どころですか?
井上  見どころは、年を取った製作者の写真かな(笑)。冷静に自分たちも直視できない。ただ、本当に20年経ったんだなと振り返る、いいきっかけを作ってもらったと思います。20代で作っていて、それから倍、生きたんだなと。人生なんてあっという間なんだなという感じですね。まあ見てほしいところで言うと、全部を見てもらいたいと思っています。

――いま見ても、個性的で斬新なデザインです。
井上 自分のなかでは、吐き出すのに苦労したとか、そんなことはなくて。いちばん描きづらかったのは、ふつうの人なんですよ。主人公の女の子、シャオヘイがいちばん難しかったんです。あとのキャラは、何か自分のなかにあったんでしょうね。それを吐き出しただけで。
 いま、商品にコイツらがなったことに、逆にびっくりしています。子どものころから描いていた落書きから始まったようなキャラクターばっかりなんですけど、ソイツらが勢ぞろいして、1個の作品に出たら、こんな妙ちくりんな世界になっちゃったという感じですかね。

――今回は、当時のプレイヤーにとってはうれしいできごとですね。
井上  「忘れてたの? それとも、もう思い出したくなかったの?」という……(笑)。どうなんでしょうね。年を取って、またプレイしてもらえればいいと思っています。いろいろな媒体でまた、遊んでもらえる可能性はあるので、もう1回遊んでもらいたいなと思っています。

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▲初日のオープン直前には、長蛇の列が。
▲賑わう会場内。女性ファンの姿が多く見受けられた。

■クーロンズ・ゲート 原画展

日程:2015年6月25日(木)~7月7日(火)
   12:00-19:00 ※水曜定休日
会場:Pixiv Zingaro
   (東京都中野区中野 5-52-15 中野ブロードウェイ 2F
入場:無料
企画:シティコネクション・Pixiv
運営:Kaikai Kiki