黒川塾に期待しているのは“化学変化”
おなじみ黒川文雄氏による“黒川塾 (三十) ”が、デジタルハリウッド大学大学院 駿河台キャンパスにて2015年11月12日に開催された。今回のテーマは“裏・黒川塾”、“エンタテインメント・行雲流水(こううんりゅうすい)”。音楽、映画、ゲーム、ネットワークなど、すべてのエンタメビジネスに精通した黒川氏が、過去3年間の開催内容を振り返り、エンタメ界の移り変わりを振り返る内容となった。以下に黒川氏によるトークの内容をお届けしよう。
黒川塾で参加者に望んでいることとは
行雲流水とは「自然に移り変わっていくこと」を意味している。黒川氏は、CDからダウンロード販売へと音楽業界販売メディアがあっという間に移り変わっていたことや、ゲームにもソーシャルゲームなどの新しい流れができたこと、ときには破産申告をする企業も出てきたほどにエンターテインメント業界が厳しくなった現状を指して、この行雲流水というテーマを掲げたようだ。それを踏まえ、黒川氏は「執着をせず、自分の有り様を見つけることも重要です」と、時代の流れにあった身の振り方をすることが重要であると考えているようだ。
黒川氏にとって、この黒川塾は“人生の集大成”であり、ゲーム、映画、ネットコンテンツなど、いろいろな人によっていろいろなエンターテインメントの形があり、それを参加者や登壇するゲストと共有して、前向きのフィードバックやポスティングができるように活動しているとのこと。そのうえで、黒川塾で参加者にいちばんに望んでいることは、“黒川塾に来た方と知り合ってほしい”ということだそうだ。黒川氏は「新しい方と知り合うことで、お互いに何かしらの化学変化が起きるかもしれません。実際、私もゲストの方から学ぶことが多いのです」とも語っていた。
また、黒川氏はとくに印象に残っている回として、丸山茂雄氏と久夛良木健氏が出演した第10回“国際エンターテインメントの生きる道”、声優とマネージャーの両方を迎えてニュートラルなスタンスでトークができた第25回“声優は一日にしてならず・・・声優事情変遷史”、手妻師の藤山晃太郎氏などを迎えた第26回“バーチャルリアリティーの未来へ2”を挙げていた。
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SFが現実となってきた社会で
ここからは、黒川氏が自身の視点でエンターテインメントやバーチャルリアリティー(以下、VR)などについて語ってくれた。
黒川氏は、ソーシャルゲームは無料が前提のようになり、高額なパッケージソフトが売れにくくなったという現状があることや、『パックマン』のようにIPがフリーとなったコンテンツが出て来るなど、時代によりゲームの形態が変わってきたことをあげていた。
また、映画『ブレードランナー』の原作であるフィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の文中にVRのような装置が出てくることや、映画『マイノリティ・リポート』においてタッチ型の透明スクリーンが出てきたことなど、かつて空想レベルだったSFの世界が現実的になったことを踏まえ、黒川氏の大好きなフレーズとして “できないことが、できるって、最高だ。” というプレイステーション4のキャッチコピーを挙げた。黒川氏は、VRは日本ではまだまだ“個人戦”になっており、国外と比べて規模の大きさで負けているが、今後は大きなバジェットのものが出てくることを期待しているそうだ。
黒川氏は、海外で暮らしたときの便利なIT文化についても語った。“Uber”というタクシーのサービスでは、自分の位置がスマートフォンでわかり、アプリひとつでタクシーをすぐ呼ぶことはもちろん、クレジットカード情報を登録しておくことで、降りるときに小銭をいちいち払う必要もないのだという。
黒川氏は、クラウドファンディングについて、手数料額や出資へのリターン額が高く、実質的に開発に当てられるのが達成額の約6割程度になるという現状を語った。ゲーム『シェンムー3』や『KAKEXUN(カケズン)』、アニメ『Under the Dog』や『この世界の片隅に』は超高額の金額を集めることができたが、リターンの送付といった運営の大変さもあり、まだまだクラウドファンディングも敷居が高いところがあるようだ。