1888年、カフェ・ド・ラ・ガール。ゴッホが過ごした空間を体感する

 Borrowed Light Studiosの『The Night Cafe』は、ゴッホの名画「夜のカフェ」の空間を、あのタッチのまま歩き回れるというVRアプリケーション。Oculus VRのVRヘッドマウントディスプレイGear VR用のゲーム/アプリを対象にした開発コンテスト“Mobile VR Jam 2015”で、非ゲーム系部門での大賞とコミュニティ賞を獲得し、合計11万ドルの賞金が贈られた作品だ。

 その『The Night Cafe』のOculus Rift DK2(Oculus VRの主力ヘッドマウントディスプレイであるOculus Riftの第二世代開発キット)に対応したバージョンが、コンテンツ配布プラットフォームのOculus Shareで公開されている。

 『The Night Cafe』の体験は、「夜のカフェ」の題材となったフランス南部アルルのカフェ・ド・ラ・ガールの、まさに絵画と同じ構図のポジションから始まる。体験者は自由に空間を歩くことができ、廊下を抜けて隣の部屋へ向かうと、ピアノを聴きながらパイプをくゆらせ、時折窓際から夜景を見ているゴッホ本人も存在する。

ゴッホの名画「夜のカフェ」の中を歩けるVRアプリ『The Night Cafe』のOculus Rift版が公開中_03
▲体験は「夜のカフェ」と同じ構図からスタートする。廊下へ歩いて抜けるとピアノのある部屋へ。
ゴッホの名画「夜のカフェ」の中を歩けるVRアプリ『The Night Cafe』のOculus Rift版が公開中_01
▲ピアノを聴きながらパイプをくゆらせ、何やら思索しているゴッホ。

 面白いのは制作上の都合か、絵画に描かれていた酔客たちが描かれていない一方、ピアノの音が加わることで空間自体のテーマが若干変わっていること。本来、大衆居酒屋のような存在だったカフェの、身を持ち崩していきかねない猥雑で退廃的な部分を描いた作品とされているが、『The Night Cafe』では当時このカフェのある建物に住んでいたという、まさに近所の行きつけの店ならではの、静かに流れる思索の時間が伝わってくる。
 あるいは「夜のカフェ」そのものを再構築した作品というよりも、正しくは“これから「夜のカフェ」を描くために思索しているゴッホ”を描いた作品と解釈するのが正しいのかもしれない。

 なお、オリジナルのGear VR版もVRJAMバージョンが引き続き公開中。DEVPOSTの該当エントリー経由でダウンロードすることができる(提供元不明のアプリのapkファイルをインストール可能にするよう設定を変更する必要がある)。

ゴッホの名画「夜のカフェ」の中を歩けるVRアプリ『The Night Cafe』のOculus Rift版が公開中_04
▲あのタッチのまま動くゴッホ本人にグイッと近づくこともできる。
ゴッホの名画「夜のカフェ」の中を歩けるVRアプリ『The Night Cafe』のOculus Rift版が公開中_02
▲ゴッホが時折近づく窓辺からは、グニャ~っと輝く月と星(光が動く)。